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【国勢調査2025確定値】人口減少下の商圏分析 大事な視点は「世帯・格差・構成」の3軸

2026/10/01

【国勢調査2025確定値】人口減少下の商圏分析コラムカバー

日本全体で人口が減る中、自店舗の商圏はどう変化しているのでしょうか。 そして、「人」の数だけを見て商圏分析を行っていないでしょうか。

2026年9月29日、総務省統計局が令和7年国勢調査の人口等基本集計(国勢調査で最初にまとまって公表される基本的な集計、いわゆる確定値)を公表しました。2025年10月1日現在の日本の総人口は1億2,297万3千人。2020年から317万4千人(2.5%)減少し、減少幅は拡大しています。ただ、「人口が減っている」という事実そのものは、もはや目新しい話ではありません。

チェーン企業の出店・店舗開発・経営企画にとって本当に重要なのは、全国平均の数字ではなく「自店舗の商圏で何が起きているか」です。今回の確定値には、速報値の分析では得られなかった世帯・年齢・外国人・住居に関する集計が含まれており、人口減少の内側で起きている変化が見えるようになりました。

本コラムでは、人口減少という表層的なデータにとどまらず、「世帯の変化」「極端な地域格差」「人口構成の変化」 の3軸から、エリアマーケティングにおける視点を再確認します。

この記事のポイント

  • 全国では人口は2.5%減だが、世帯数は2.7%増。商圏の需要は「人」より「世帯」で見る必要がある。
  • 人口が増えた市町村は全体の8.8%(151市町村)にとどまり、都道府県平均では商圏の実態を見誤るおそれがある。
  • 同じ商圏人口でも、年齢構成・単独世帯比率・外国人比率で需要の中身は大きく異なる。
  • 確定値を使う際は、常住人口であること、増減率の計算方法、不詳補完値の違いに注意が必要。



国勢調査2025確定値の結論:人口は減り、世帯は増えた

国勢調査2025確定値の結論:人口は減り、世帯は増えた

まず、確定値の主要指標を2020年と比較して整理します。全国の総人口は1億2,297万3千人(年平均0.51%減)で、男性が5,977万2千人、女性が6,320万0千人と、女性が342万8千人多くなっています。

指標 2020年 2025年 変化
総人口 126,146,099人 122,972,528人 317万4千人減(2.5%減)
日本人人口 123,398,908人 119,131,935人 426万7千人減(3.5%減)
外国人人口 2,746,514人 3,840,039人 109万4千人増(39.8%増)
世帯数 55,830,154世帯 57,324,619世帯 149万4千世帯増(2.7%増)
一般世帯の1世帯当たり人員 2.21人 2.10人 引き続き減少
単独世帯(一般世帯に占める割合) 21,151,042世帯(38.0%) 23,689,024世帯(41.4%) 12.0%増
65歳以上人口の割合 28.5% 29.4% 0.9ポイント上昇
15歳未満人口の割合 11.9% 10.9% 1.0ポイント低下

出典:総務省統計局「令和7年国勢調査 人口等基本集計結果」。2020年・2025年の日本人・外国人別および年齢別は不詳補完値による。

この表で注目したいのは、総人口が減る一方で世帯数が増えている点です。人口が減っているのに世帯が増えているのです。この一見矛盾した状況が、商圏分析の前提を揺さぶっています。


なぜ「人の数」だけの商圏分析は危ういのか

なぜ人の数だけの商圏分析は危ういのか

従来の商圏分析は、「商圏内人口×原単位(1人当たりの年間購入額や来店率など、人口を需要に換算する係数)」で需要を見積もるのが基本でした。この方法は「人口=需要」という前提に立っています。しかし確定値は、この前提が3つの面で成り立たなくなっていることを示しています。

視点 従来の見方 確定値が示す現実
視点1:世帯で見る 商圏人口が需要の大きさを決める 人口は減っても世帯数は増加。単独世帯が4割を超え、1世帯当たり人員は2.10人まで縮小
視点2:格差で見る 都道府県・全国の平均値で傾向をつかむ 人口が増えた市町村は8.8%のみ。東京圏への集中と、県内・市内でも増減が混在する極端な格差
視点3:構成で見る 商圏人口の総数を比較する 同じ人口でも、年齢構成・外国人比率・住まい方が地域で大きく違う

以降、この3つの視点を順番に、確定値のデータと合わせて見ていきます。


【視点1】世帯の変化:商圏の需要は「人」ではなく「世帯」で測る

【視点1】世帯の変化:商圏の需要は「人」ではなく「世帯」で測る

人口が減っても、世帯数は増えている

全国の総人口は2.5%減少しましたが、世帯数は2.7%増加しました。この背景にあるのが、1世帯当たり人員の減少です。一般世帯(施設の入所者や寮の学生などを除いた、通常の家庭・一人暮らしの世帯)の1世帯当たり人員は、2005年の2.55人から2010年に2.42人、2015年に2.33人、2020年に2.21人、2025年に2.10人と、一貫して減少しています。

都道府県別に見ると、その差はさらに鮮明です。

都道府県 人口増減率(2020→2025年) 一般世帯数増減率(2020→2025年) 1世帯当たり人員(2025年)
東京都 +1.3% +5.0% 1.85人
沖縄県 -0.1% +6.6% 2.18人
大阪府 -0.9% +4.5% 1.99人
埼玉県 -0.8% +4.4% 2.16人
愛知県 -1.3% +4.0% 2.17人
青森県 -8.0% -2.6% 2.20人
高知県 -7.0% -2.5% 2.01人

※表中の「一般世帯数」は施設等の世帯を除いた世帯数で、第1章の総世帯数(2.7%増)とは対象がやや異なります。

大阪府や埼玉県、愛知県のように、人口は減っているのに世帯数は4%以上増えている地域があります。世帯が増えると、冷蔵庫や洗濯機、テレビのように世帯ごとにそろえる商品の需要はむしろ増えます。人口だけで商圏の需要を推計すると、住宅・家具・家電・日用品のように「世帯単位」で購入・消費される商品やサービスを扱う業態では、需要を過小に見積もるおそれがあります。

単独世帯が4割を超え、「ファミリー前提」が崩れている

一般世帯を家族類型別に見ると、単独世帯(一人暮らしの世帯。本コラムの「単身者」も同義です)は2,368万9千世帯で、一般世帯の41.4%(2020年は38.0%)を占めています。一方、「夫婦と子供から成る世帯」は25.1%から23.3%へ1.8ポイント低下しました(世帯数では4.8%減)。世帯人員別では、2人以下の世帯が増加し、3人以上の世帯はすべて減少、特に5人以上の世帯は10%以上減っています。

一人暮らしの中身も一様ではありません。各年齢層のうち一人暮らしの人の割合は、男性では25〜34歳(36.1%)、女性では85歳以上(29.6%)が最も高くなっています。65歳以上の単独世帯の人口は815万3千人で、65歳以上人口の22.6%(男性19.0%、女性25.3%)に達します。

商圏分析への示唆は明確です。「4人家族が週末にまとめ買いをする」といった来店・購買像を前提にした商圏設定や商品構成は、見直しが必要です。若い単身者は職場や駅の近く、高齢の単身者は自宅に近い徒歩圏で店舗を選ぶ傾向があると考えられ、同じ単独世帯でも商圏の広がりや来店行動は異なります。

共同住宅が46.1%、住まい方も商圏を左右する

住宅に住む一般世帯に占める共同住宅(マンション・アパートなど)の割合は46.1%(2020年は44.6%)と、引き続き上昇しています。東京都は共同住宅が71.4%、持ち家率は44.9%で全国最低です。一方、秋田県は一戸建が80.0%、持ち家が77.3%で最も高くなっています。

傾向として、共同住宅が多い地域は人が狭い範囲に集まるため徒歩・自転車での来店が中心となって商圏が狭くなり、一戸建中心の地域は住居が分散するため自動車での来店が中心になると考えられます。世帯の「数」に加えて「住まい方」を掛け合わせると、商圏の形をより現実に近づけられます。


【視点2】極端な地域格差:都道府県平均では商圏の実態は見えない

【視点2】極端な地域格差:都道府県平均では商圏の実態は見えない

東京都だけが増加、46道府県は減少

都道府県別に見ると、2020年から2025年に人口が増えたのは東京都(+1.3%、18万9千人増)のみです。減少率が最も高いのは秋田県(8.1%減)、次いで青森県(8.0%減)、岩手県(7.1%減)です。埼玉・千葉・神奈川・愛知・滋賀・福岡・沖縄の7県は、前回の増加から減少に転じました。東京圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)の人口は3,697万5千人で全国の30.1%を占め、人口密度は東京都が1平方キロメートル当たり6,471.4人、北海道が63.5人と、約100倍の開きがあります。

人口が増えた市町村は151、減った市町村は1,568

市町村単位では、格差はさらに極端です。全国1,719市町村のうち、人口が増加したのは151市町村(8.8%)にとどまり、1,568市町村(91.2%)が減少しました。そのうち、10%以上減少した市町村は488で、全体の28.4%を占めます。

区分 増加 減少
人口増減数の上位 特別区部(東京23区。+21万1千人)、大阪市(+5万3千人)、福岡市(+5万人) 北九州市(-3万5千人)、静岡市(-3万5千人)、京都市(-3万4千人)
人口増減率の上位 つくば市(+11.2%)、流山市(+7.6%)、印西市(+7.5%) 珠洲市(-34.6%)、渡名喜村(-32.7%)、輪島市(-28.3%)

※増加率の最上位は福島県大熊町(+81.0%)など、東日本大震災後の避難指示解除に伴う帰還・転入の影響が大きい自治体です。減少率の上位の珠洲市・輪島市は、2024年の能登半島地震の影響が大きいとみられます。

人口規模の小さい自治体ほど厳しい状況です。人口5万未満の市は291から313に、人口5千未満の町村は290から319に増えました。また、政令指定都市でも横浜市(2万7千人減)や神戸市(3万人減)のように大きく減る例があり、「大都市なら安泰」とは言えなくなっています。

同じ県内・同じチェーンでも、店舗によって商圏の環境は別物

格差は、都道府県の内側にもあります。たとえば福岡県は全体で1.1%の減少ですが、福岡市は5万人増え、北九州市は3万5千人減っています。千葉県も全体では0.4%減ですが、流山市は7.6%、印西市は7.5%の増加です。

都道府県平均や全国平均をもとにした売上計画・出店計画は、個店(個々の店舗)の実態から乖離しやすくなります。 店舗ごとの商圏内で人口・世帯の増減率を算出し、増加エリア・横ばいエリア・減少エリアに店舗を分類して、出店・改装・退店・人員配置の判断につなげることが重要です。


【視点3】人口構成の変化:総数ではなく中身で見る

【視点3】人口構成の変化:総数ではなく中身で見る

年齢構成:65歳以上が29.4%、地域差は約1.8倍

総人口に占める65歳以上の割合は29.4%(2020年は28.5%)、15歳未満は10.9%、15〜64歳(生産年齢人口)は59.8%です。75歳以上は17.2%(2020年は14.7%)に上昇しました。全都道府県で、65歳以上人口の割合が15歳未満人口の割合を上回っています。

都道府県(2025年) 15歳未満 15〜64歳 65歳以上
秋田県 8.5% 51.5% 40.0%
東京都 10.3% 66.9% 22.8%
沖縄県 15.3% 60.2% 24.5%

市町村単位ではさらに極端で、65歳以上の割合は群馬県南牧村の68.9%から福島県大熊町の14.0%まで幅があります。15歳未満の割合が最も高い鹿児島県三島村は24.7%です。同じ「商圏人口10万人」でも、子育て世代が中心の商圏と、高齢者中心の商圏では、需要の中身がまったく異なります。

商圏分析では、総人口ではなく、業態ごとのコアターゲット人口(例:15〜39歳、40〜64歳、65歳以上、子育て世代)に分解して評価する考え方が不可欠です。

外国人人口:384万人、日本人の減少を下支え

外国人人口は384万人(総人口の3.1%)で、2020年から109万4千人(39.8%)増加しました。日本人人口の減少(426万7千人減)に対し、総人口の減少が317万4千人にとどまっているのは、外国人人口の増加が下支えしているためです。国籍別では中国が92万3千人、ベトナムが60万9千人、韓国・朝鮮が39万8千人で、2020年からの増加はベトナム(22万6千人)、ネパール(18万4千人)、インドネシア(17万人)が上位です。

地域分布には偏りがあります。東京・愛知・大阪・神奈川・埼玉の5都府県で全国の外国人人口の52.6%を占め、都道府県人口に占める割合は東京都が5.5%、愛知県と群馬県が4.5%です。

商圏分析では、日本人と外国人をひとまとめにせず、居住する外国人の国籍構成や、食・通信・送金・多言語対応といったニーズを踏まえた業態別の検討が有効です。なお、国勢調査は常住人口の調査であり、訪日外国人観光客は含まれません。観光需要は、位置情報データなど別のデータで補完する必要があります。


確定値データを使うときの3つの注意点

確定値データを使うときの3つの注意点

これらの視点を実務に取り入れる前に、国勢調査データ特有の読み方を押さえておきましょう。誤読すると、せっかくの分析が判断ミスにつながります。

注意点① 国勢調査は「常住人口」であり、昼間人口や来街者は含まない

国勢調査の人口は、調査時に調査地域に3か月以上住んでいる(または住むことになっている)人の「常住人口」です。オフィス街・繁華街・観光地・駅前など、昼間人口(通勤・通学による流入出を加味した人口)や来街者が需要の中心となる立地では、国勢調査だけでは商圏の実態を捉えきれません。昼間人口データや位置情報データと併用することが前提になります。

注意点② 増減率は「境域組替」後の人口で計算されている

地域別の2020年から2025年の増減数(率)は、2020年の人口を2025年の市区町村の境域に組み替えて(境域組替)計算されています。そのため、表に載っている2020年と2025年の値から自分で計算した増減率は、公表された増減率と必ずしも一致しません。合併や境域変更のあった自治体を扱うときは特に注意してください。


商圏分析の実務に落とし込む

商圏分析の実務に落とし込む

ここまでの内容を、商圏分析で見直すべきポイントとして整理します。

見直す項目 従来 新原則での見直し
需要指標 商圏内の人口 商圏内の世帯数・1世帯当たり人員・単独世帯比率を併用する
評価の単位 全国・都道府県の平均 店舗ごとの商圏で、人口・世帯の5年間の増減率を算出する
ターゲット 総人口 年齢層別・世帯類型別・外国人の内訳に分解し、業態のコアターゲット人口で評価する
立地タイプの判断 人口密度・人口規模 共同住宅比率や持ち家率など住まい方も加味し、徒歩・自転車・自動車の商圏の形を見直す
将来の見立て 直近の売上実績の延長 人口・世帯・年齢構成の5年トレンドを加味し、店舗を増加・横ばい・減少エリアに分類する
データの補完 国勢調査のみ 昼間人口・来街者は流動人口(時間帯ごとに実際に移動・滞在している人の数)・位置情報データで補い、常住人口とあわせて見る

これらを店舗数の多いチェーン企業が人手で行うのは現実的ではありません。GIS(地理情報システム)を使い、店舗の商圏(円=半径○km、ドライブタイム=車で○分圏、ポリゴン=任意の形で描いた範囲など)ごとに人口・世帯・年齢構成などを自動集計し、全店舗を一括で比較・分類することが実務の近道です。

なお、今回公表された確定値は市区町村単位の集計が中心です。町丁・字等(町丁目単位の小さな地域)の小地域や地域メッシュ(地図を格子状に区切った区画)単位の集計は、今回の発表の後に続いて集計・公表される予定のため、店舗単位の精緻な商圏分析には、こうした小地域データの公開後に更新する流れとなります(公表時期は総務省統計局の案内をご確認ください)。

当社の商圏分析GIS「MarketAnalyzer® 5」では、国勢調査をはじめとする統計データを地図上に重ね、自社店舗の商圏ごとに人口・世帯・年齢構成を集計できます。さらに、AI売上予測「THE NOVEL」では、商圏の人口・世帯などのデータを変数として店舗別の売上予測に活用でき、「商圏レポートAI」で商圏の特徴をレポートとして整理することも可能です。人口減少下でも、店舗ごとの商圏の変化を捉え、データに基づいて出店・改装・退店を判断するための基盤になります。





まとめ:「自店舗の商圏はどう変化しているのか」を問い直す

まとめ:「自店舗の商圏はどう変化しているのか」を問い直す

令和7年国勢調査の確定値が示したのは、「人口が減っている」という一言では括れない、日本の多層的な変化でした。

世帯の変化: 人口は2.5%減でも世帯は2.7%増。単独世帯は41.4%に。商圏の需要は「世帯」で測ります

極端な地域格差: 人口が増えたのは全市町村の8.8%。平均ではなく、店舗ごとの商圏で増減を見ます

人口構成の変化: 65歳以上29.4%、外国人3.1%。総数ではなく、業態に合わせた中身で見ます

「人」の数だけを見た商圏分析から、世帯・格差・構成を踏まえた商圏分析へ。今回の確定値は、その見直しに踏み出す好機です。


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当社は、チェーン企業向けに商圏分析GIS「MarketAnalyzer® 5」やAI売上予測「THE NOVEL」を提供しています。国勢調査データを活用した商圏の見直しや、店舗ごとの人口・世帯の増減分析について、お気軽にご相談ください。

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監修者プロフィール

市川 史祥

技研商事インターナショナル株式会社
執行役員CMO シニアコンサルタント

一般社団法人LBMA Japan 理事
ロケーションプライバシーコンサルタント
流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師
統計士/医療経営士/介護福祉経営士
Google AI Essentials/Google Prompt Essentials

市川 史祥

1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。

電話によるお問い合わせ先:03-5362-3955(受付時間/9:30~18:00 ※土日祝祭日を除く)
Webによるお問い合わせ先:https://www.giken.co.jp/contact/

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