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レポート
【2025年国勢調査速報】 GISで可視化してわかった、 人口変動マップの「本当の姿」 【後編】
2026/08/20
前編では、令和7年国勢調査の人口速報集計をもとに、全国1,892市区町村の人口・世帯数の5年の変化を表形式のランキングデータとして読み解きました。後編では、前編で使用したデータを実際に当社のGIS(地図情報システム)「MarketAnalyzer® 5」にインポートし、地図上で可視化することで見えてくる実態を解説します。
ランキング表だけでは見えにくい「面としての広がり」をGISで可視化し、商圏分析・出店戦略への応用方法を紹介します。
目次
1. 前編のおさらい:数字だけでは見えてこないもの
前編では、令和7年国勢調査の人口速報集計をもとに、全国1,891市区町村の人口・世帯数の5年の変化を、表形式のランキングデータとして読み解きました。全国人口は5年間で約310万人(-2.45%)減少し、都道府県単位で見れば東京都・沖縄県以外はすべて減少という厳しい結果である一方、市区町村単位では242の自治体で人口が増加し、その背景には「震災復興」「都心回帰」「郊外ベッドタウン・新産業立地」「観光・移住」という4つの異なるパターンが存在することが分かりました。
減少側についても、2024年能登半島地震のような災害による急減、夕張市に代表される構造的な過疎化の継続、そして堺市南区・名古屋市港区のような大都市圏の旧ニュータウンにおける高齢化・世代交代という、性質の異なる3つの実態があることが見てとれました。
こうした分析はランキング表があれば一定程度できるものですが、「増加しているのはどのあたりか」「隣接する自治体はどんな傾向か」「災害の影響はどこまで面的に広がっているのか」といった、位置関係や広がりを伴う問いに答えるには限界があります。そこで後編では、前編で使用したデータを実際に当社のGIS(地図情報システム)「MarketAnalyzer® 5」にインポートし、地図上で可視化することで見えてくる実態を解説します。
2. なぜ人口データはGISで可視化すべきなのか
エクセルのランキング表は、数値の大小を比較するには優れたフォーマットです。しかし、人口データが本来持っている「地理的な広がり」という情報は、表形式では表現できません。例えば前編で取り上げた大阪市の浪速区・中央区・西区・北区・天王寺区は、ランキング表の上では別々の行として並んでいるにすぎません。しかし実際には、これらは大阪市都心部に隣接するエリアであり、面としてひとつながりの「増加ベルト」を形成しています。この事実は、地図に落とし込んで初めて視覚的に把握できます。
同様に、能登半島地震の影響を受けた石川県珠洲市・輪島市についても、ランキング表では単独の自治体としてしか表示されませんが、地図で見れば能登半島の先端部という特定の地理的範囲に減少が集中していることが一目で分かります。この「面としての広がり」を捉えられるかどうかが、表形式のデータとGISによる可視化の決定的な違いです。
さらにGISでは、人口データを道路網・鉄道路線・競合店舗・自社店舗網といった他の地理情報レイヤーと重ね合わせることができます。「なぜこのエリアで人口が増えているのか」という問いに対して、「新駅の開業と時期が一致している」「幹線道路沿いに宅地開発が集中している」といった、要因の仮説を立てやすくなる点も、地図化する大きなメリットです。
加えて、地図というフォーマットは、社内での合意形成にも大きな効果を発揮します。ランキング表やグラフだけでは「専門的で分かりにくい」と感じる経営層や営業部門のメンバーであっても、地図上に色分けされた増減パターンであれば、直感的に状況を共有しやすくなります。出店戦略会議や商圏診断の場で「この色の濃いエリアが伸びています」と一目で伝えられることは、データに基づいた意思決定を組織全体に浸透させる上でも重要な要素です。
3. MarketAnalyzer® 5に国勢調査データをインポートして可視化
実際の作業の流れを簡単に紹介します。前編で使用した市区町村別の人口・世帯データは、総務省統計局が公表する市区町村コードに紐付ける形で整理されています。この市区町村コードは、MarketAnalyzer® 5が保持している行政界(市区町村の境界線)ポリゴンデータと共通のキーになっているため、CSV形式でインポートするだけで、各市区町村のポリゴンに人口・世帯数・増減率といった属性値を結合できます。
インポート後は、増減率や人口密度といった任意の指標を選び、数値の大小に応じてポリゴンを色分けする「コロプレスマップ(塗り分け地図)」を作成します。色の階調(何段階に分けるか、どこを境界値にするか)を調整することで、全国的な大きな傾向を見せる地図から、特定エリアの微妙な差を際立たせる地図まで、目的に応じた見せ方が可能です。
当社は30年以上にわたりGIS・商圏分析サービスを提供し、2,000社を超える導入実績を持っています。定額制でデータ量や分析回数を気にせず使える料金体系のもと、今回のような全国規模のデータであっても、追加費用を気にせず何度でも塗り分けパターンを試しながら分析できる点は、MarketAnalyzer® 5ならではの強みです。
4. 全国人口密度マップから見える都市構造
まず、令和7年時点の人口密度を全国地図上に塗り分けてみます。市区町村単位の人口密度データを地図化すると、太平洋ベルト地帯(首都圏・中京圏・近畿圏)に沿って高密度エリアが帯状に連なっている様子が一目で分かります。特に東京都特別区部は突出しており、豊島区(23,528.5人/km²)、中野区(22,792.4人/km²)、台東区(22,590.5人/km²)、荒川区(22,291.5人/km²)といった区が、周辺の区と隙間なく高密度エリアを形成しています。


大阪市西区(22,159.1人/km²)のように、関西圏でも東京23区に匹敵する密度を持つエリアが存在する一方、地図の大部分を占める地方部は、人口密度が極めて低い薄い色で表示されます。ランキング表では上位の数値だけが目に入りますが、地図で見ると「高密度エリアは国土のごく一部に限られている」という、日本の人口分布の偏りがより直感的に理解できます。

| 順位 | 自治体名 | 人口密度(人/km²) |
|---|---|---|
| 1 | 東京都豊島区 | 23,528.5 |
| 2 | 東京都中野区 | 22,792.4 |
| 3 | 東京都台東区 | 22,590.5 |
| 4 | 東京都荒川区 | 22,291.5 |
| 5 | 大阪府大阪市西区 | 22,159.1 |
興味深いのは、前編で人口増加率上位に入っていた台東区・大阪市西区が、密度ランキングでも上位に名を連ねている点です。これは、もともと人口密度が高い都心エリアに、さらにタワーマンション等の高層住宅が供給され続けていることを示しており、都心の人口集積が「拡大」ではなく「深化」という形で進んでいることがうかがえます。
5. 増減率を色分けした「勝ちエリア・負けエリア」の空間パターン
次に、2020年比の人口増減率を指標として塗り分けてみます。増加を暖色、減少を寒色系のグラデーションで表示すると、全国地図の大部分が寒色に染まる中で、いくつかの特徴的なパターンが浮かび上がります。
大阪市都心部(浪速区・中央区・西区・北区・天王寺区)が、隣接する複数の区にまたがって濃い暖色の「増加ベルト」を形成している

つくばエクスプレス沿線(つくば市・流山市)は、路線に沿って線状に暖色エリアが連なっている

福島県双葉郡(大熊町・富岡町・浪江町・楢葉町・双葉町)が、周囲を寒色(減少)に囲まれた中で、点在する形の強い暖色として際立っている
※双葉郡双葉町は増減率算出元の2020年の数値がないため増減率もありません。

能登半島の先端部(珠洲市・輪島市周辺)が、一帯としてまとまった濃い寒色(大幅減少)エリアを形成している

補足:塗り分けのしきい値設定について
なお、こうしたパターンを地図上で意図した通りに際立たせるには、色分けのしきい値設定に工夫が必要です。今回のデータは、中央値-6.3%に対して最大値が+81.11%(大熊町)という極端な外れ値を含んでおり、最小値から最大値までを単純に均等割りしてしまうと、大半の自治体が収まる-20%〜+10%のレンジがスケールの中央に圧縮され、大阪都心のベルトもつくばエクスプレス沿線も、周囲との違いがほとんど分からなくなってしまいます。
そこで、増加率0%を境にした発散配色(増加=暖色、減少=寒色)を採用した上で、+20%以上・-20%以下をそれぞれ「オープンエンド」の最上位・最下位区分としてまとめ、残りのレンジは全国分布の密集する-10%〜0%付近を厚めに区分する、手動でのクラス分けを行っています。この設定により、双葉郡4町(+20%以上)は突出した最も濃い色として、大阪都心・つくば沿線(おおむね+5%〜+15%)はひとまとまりの帯として、能登半島(-20%以下、全国でわずか6自治体)は際立った濃い寒色として、それぞれ意図通りに視認できるようになります。
このように地図で見ると、「増加エリアは点・線として散在し、減少エリアは面として広がっている」という、前編のランキング表だけでは掴みにくかった空間構造が明確になります。特に福島県双葉郡のように、増減率では全国トップクラスでありながら、地図上では周囲を減少エリアに囲まれた「点」として存在しているケースは、表だけを見ていると誤解しやすいポイントです。ランキング1位という情報だけでなく、その地域が地図上でどのような文脈に置かれているかを合わせて見ることで、より正確な実態把握につながります。
6. ケーススタディ①:都心回帰エリア(大阪市都心部)を深掘りする
大阪市都心部の増加ベルトを拡大表示し、地下鉄・JR路線図と重ね合わせてみます。青い点は駅です。浪速区・中央区・西区・北区・天王寺区は、いずれも大阪メトロ御堂筋線・中央線など複数路線が交差する利便性の高いエリアに位置しており、再開発事業やタワーマンション供給が集中しているエリアと、増加率が高いエリアがほぼ重なることが視覚的に確認できます。

さらに世帯数増減率のレイヤーに切り替えると、浪速区(世帯数+24.53%)を中心に、人口増加率以上に世帯数が伸びているエリアが浮かび上がり、単身・少人数世帯向けの住宅供給が集中していることが地図上でも裏付けられます。こうした「隣接する複数の行政区にまたがるエリア」を一つの商圏として捉える視点は、表形式のランキングだけを見ていては得にくいものです。出店計画において、行政区の境界線をまたいだ「実質的な生活圏・商圏」を把握できる点は、GISならではの強みといえます。

同様の視点で名古屋市中区・東区・中村区を世帯増減率で確認すると、大阪市ほど広い範囲ではないものの、名古屋駅周辺の再開発エリアを中心に、隣接する区にまたがって増加パターンが連続していることが分かります。都市ごとに増加エリアの広がり方や規模は異なりますが、「都心の再開発は行政区の境界を越えて面的に広がる」という共通性が、複数の都市を比較することで見えてきます。

7. ケーススタディ②:福島県双葉郡5町村の復興を地図で追う
続いて、福島県双葉郡5町村を拡大表示します。大熊町・双葉町・浪江町・富岡町・楢葉町は、太平洋沿岸に沿って南北に連なっており、地図で見ると、避難指示解除が進んだ沿岸部のエリアを中心に人口が回復している様子が確認できます。

前編で触れた通り、これらの自治体は人口性比が極端に男性に偏っており(大熊町293.3、富岡町183.6)、世帯数の伸び率も人口の伸び率を上回っています。地図上でこのエリアを確認すると、常磐自動車道や国道6号線といった主要な交通インフラに沿って居住エリアが再形成されつつある様子がうかがえ、復興のフェーズがインフラ整備と連動して進んでいることが、表データだけでは分からない形で見えてきます。
双葉町のように、令和2年時点でほぼ居住者がいなかったために増減率という指標では捉えられない自治体があることも、前編で述べた通りです。地図上でこうした自治体を確認する際は、増減率の色分けだけに頼るのではなく、実際の人口数そのものを示すレイヤーや、避難指示区域の変遷を示す時系列データと合わせて見ることで、単なる数字の増減以上の「地域の再生プロセス」として捉えることができます。
8. 商圏分析・出店/撤退判断への応用の仕方
ここまで見てきたような人口・世帯数の地図データは、商圏分析や出店・撤退の意思決定に直接活用できます。MarketAnalyzer® 5では、店舗予定地から半径何kmという単純な円ではなく、道路ネットワーク上の到達時間(車で5分・10分など)に基づく商圏(到達圏)を設定し、その到達圏内に含まれる人口・世帯数を自動集計することができます。
今回のような国勢調査の最新データを反映しておけば、「このエリアは直近5年で人口が伸びているのか、減っているのか」「単身世帯が多いのか、ファミリー層が多いのか」といった問いに対して、5年前の古いデータではなく、最新の実態に基づいて判断できます。特に、福島県双葉郡のような急激な変化が起きているエリアや、逆に堺市南区・名古屋市港区のような旧ニュータウンで世代交代が進みつつあるエリアでは、直近のデータを反映するかどうかで商圏評価が大きく変わる可能性があります。
撤退判断についても同様です。人口減少率だけでなく世帯数の減少率、さらに前編で紹介したような「災害による急減」なのか「構造的な過疎化」なのかという背景を地図で確認することで、一時的な落ち込みなのか、今後も継続する傾向なのかを見極めた上での判断が可能になります。
例えば、車で10分圏内を商圏として想定する郊外型の小売チェーンを例に考えてみます。出店候補地が茨城県つくば市のような「郊外ベッドタウン型」の増加エリアにある場合、到達圏内の世帯数増加率・世帯構成(ファミリー層の比率)を確認することで、子育て世帯向けの品揃えが適しているかどうかを判断できます。逆に、大阪市中央区のような「都心型」の増加エリアであれば、同じ人口増加エリアであっても単身・共働き世帯向けの小型店舗・時短商材が適している可能性が高く、地図上で世帯構成の違いを確認しないまま同じ出店フォーマットを展開すると、需要とのミスマッチが生じるリスクがあります。
既存店舗の撤退判断であれば、堺市南区や名古屋市港区のような「旧ニュータウン型」の減少エリアにおいて、単に人口減少率だけを見るのではなく、高齢化の進行度合いや、近隣に新たな住宅供給が計画されているかどうかといった中長期的な地域動向まで踏まえて判断することが重要です。
9. 将来人口推計や事業所データとの重ね合わせで広がる分析の可能性
今回は令和7年国勢調査の速報値という「現在(過去5年の変化)」を扱いましたが、MarketAnalyzer® 5では、国立社会保障・人口問題研究所が公表する将来人口推計データなど、「これから」を示すデータを重ね合わせることも可能です。現在の増減トレンドと将来推計を組み合わせることで、出店後10年・20年先を見据えた立地判断の精度を高めることができます。
また、AIを活用した売上予測機能を持つ分析プラットフォーム「THE NOVEL」と組み合わせることで、分析に使えるデータ項目は標準の約100項目から、MarketAnalyzer® 5が保有する約20,000項目にまで拡張されます。人口・世帯データに加えて、事業所データ(経済センサス)、交通量データ、競合店舗データなどを重ね合わせることで、単なる人口動態の把握にとどまらない、精度の高い需要予測・売上予測につなげることができます。人口が増えているエリアでも、実際にどれだけの売上が見込めるかは業種・業態によって異なるため、こうした多角的なデータの重ね合わせが重要になります。
さらに、AIが自動でレポートを生成する「商圏レポートAI」を使えば、今回のように地図上で確認した人口動態の特徴を、担当者ごとに手作業で資料化する手間をかけずに、標準化されたレポートとして出力することも可能です。多店舗展開を行う事業者にとっては、全店舗分の商圏レポートを一定のクオリティで、かつ短時間で作成できる点が大きなメリットとなります。
10. まとめ:自社エリアの実態把握にGISを活用するには
前編・後編を通じて見てきたように、令和7年国勢調査の人口速報集計は、全国平均だけを見ていては決して分からない、地域ごとの多様な実態を映し出しています。震災復興によるV字回復、都心再開発による人口増加、鉄道インフラによる郊外の成長、そして自然災害や構造的な過疎化による減少、大都市圏の旧ニュータウンにおける高齢化——これらはいずれも、表形式のランキングだけでは全体像を掴みにくく、地図上で可視化することで初めて、地理的な広がりや隣接関係を含めた実態として理解できるものでした。
特に、増加エリアが「点」や「線」として散在し、減少エリアが「面」として広がっているという空間パターンは、表を眺めているだけでは決して気づけない発見です。自社の商圏や出店候補地が、こうした全国的なパターンの中でどのような位置づけにあるのかを把握することは、勘や経験だけに頼らない、データに基づいた立地判断の第一歩になります。
自社の出店エリアや既存店舗の商圏について、こうした最新の人口動態を反映した分析を行いたいという方は、ぜひ当社までお問い合わせください。
監修者プロフィール
市川 史祥
技研商事インターナショナル株式会社
取締役 CMO シニアコンサルタント
一般社団法人LBMA Japan 理事
ロケーションプライバシーコンサルタント
流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師
統計士/医療経営士/介護福祉経営士
Google AI Essentials/Google Prompt Essentials

1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。
電話によるお問い合わせ先:03-5362-3955(受付時間/9:30~18:00 ※土日祝祭日を除く)
Webによるお問い合わせ先:https://www.giken.co.jp/contact/
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