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「家計調査2025」から読み解く、日本人の消費支出と暮らしの実態(2人以上世帯編)

2026/09/25

コラムカバー

家計の実態は、一人ひとりの実感だけでは掴みにくいものです。そこで役立つのが、総務省が公表する家計調査の統計データです。2025年の最新データを見ると、日本の家計には見過ごせない変化がいくつも表れています。中でも目を引くのが、世帯間の「二極化」です。以前のような画一的なライフサイクルはすでに崩れており、所得や年齢、家族構成によって、家計の実態は大きく異なってきています。

本コラムでは、家計調査2025年データをもとに、二人以上世帯の家計の全体像を整理しました。基本的な収支から、年齢階級別・世帯人員別・年間収入階級別に見た消費の違い、高齢世帯の実態、そして2000年から2025年にかけての長期的な支出の変化まで、幅広く取り上げています。

※本コラムで使用しているデータは、総務省統計局「家計調査」(2025年)の二人以上世帯の結果に基づいています。出典:政府統計の総合窓口「e-Stat」掲載データ



二人以上世帯の基本家計収支

二人以上世帯の基本家計収支イメージ

2025年の集計データを見ると、二人以上世帯の平均世帯人員は2.87人(うち有業人員1.34人)、世帯主の平均年齢は60.7歳です。持家率は87.3%、家賃・地代を支払っている世帯は11.7%となっています。

二人以上世帯の1か月当たりの消費支出は314,001円で、前年から名目4.6%、実質0.9%増えました。うち勤労者世帯の消費支出は346,297円(名目6.5%増、実質2.7%増)、1か月当たりの実収入は653,901円(名目2.8%増、実質0.9%減)です。なお、消費支出に占める食料費の割合を示すエンゲル係数は28.6%(勤労者世帯では27.1%)でした。

1か月当たりの用途別消費支出の内訳(全世帯平均:314,001円)

支出項目 月額実数(円) 主な内訳と特徴
食料 89,754 穀類8,521円(米3,374円、パン2,820円、麺類1,779円)、肉類8,384円、魚介類6,081円、調理食品13,238円、外食14,446円など
交通・通信 45,562 自動車等関係費28,308円、通信11,661円、交通5,593円
教養娯楽 30,796 教養娯楽サービス17,931円、教養娯楽用品7,541円、書籍・他の印刷物2,864円など
光熱・水道 24,544 電気代13,218円、上下水道料5,067円、ガス代4,882円
住居 18,665 設備修繕・維持10,571円、家賃地代8,094円
保健医療 15,785 保健医療サービス8,942円、医薬品2,834円など
家具・家事用品 12,869 家庭用耐久財4,352円、家事用消耗品3,785円など
教育 11,936 授業料等9,148円、補習教育2,611円など
被服及び履物 9,702 洋服3,702円、シャツ・セーター類2,016円など
その他の消費支出 54,387 諸雑費26,371円、交際費16,750円、こづかい5,744円、仕送り金5,523円

教育費のピークは「50代」にやってくる ―― ライフステージ・年齢別の消費動向

教育費のピークは「50代」イメージ

世帯主の年齢によって、消費支出の総額や力を入れる費目は大きく変わります。消費支出の総額を見ると、50〜59歳(367,643円)が最も高く、次いで40〜49歳(348,607円)が続きます。一方、29歳以下(264,285円)や70歳以上(264,332円)は30万円を下回りました。

教育費の負担は子供が成長する40代が中心、というイメージはもはや過去のものです。年齢階級別データを見ると、教育費の月間支出額は40〜49歳で26,635円であるのに対し、50〜59歳では30,385円と、全年代の中で最も高くなっています。大学など高等教育費の負担が、定年を控えた50代にまでずれ込んでいることがうかがえます。本来50代は、老後に向けた資産形成を進めたい時期です。しかし教育費のピークと重なることで、貯蓄や資産形成に回すお金を十分に確保しづらい、いわば「中高年の資金繰り」の課題が生じています。子育てと老後準備を同時に抱えるこの世代の負担は、日本経済全体の消費にも影響を与えています。なお、教育費は29歳以下で2,943円、70歳以上では336円と、50代とは対照的に低い水準にとどまっています。

住居費は29歳以下が47,007円(家賃地代36,970円、家賃・地代を支払う世帯の割合49.6%)と最も高くなっています。年齢が上がるにつれて持ち家率が高まるため住居費は下がり、70歳以上では16,803円まで下がります。食料費は40〜49歳(99,922円)と50〜59歳(95,209円)が高く、保健医療費は年齢とともに増え、60〜69歳(17,240円)と70歳以上(17,330円)で高水準です。エンゲル係数は29歳以下が23.3%と最も低く、70歳以上は31.4%と最も高くなっています。

年齢階級別の主要指標(月額)

年齢階級 消費支出総額 住居費 教育費 食料費 保健医療費 エンゲル係数
29歳以下 264,285円 47,007円 2,943円 61,673円 10,886円 23.3%
40〜49歳 348,607円 18,240円 26,635円 99,922円 12,897円 28.7%
50〜59歳 367,643円 17,608円 30,385円 95,209円 14,663円 25.9%
60〜69歳 327,405円 19,630円 3,788円 92,209円 17,240円 28.2%
70歳以上 264,332円 16,803円 336円 83,000円 17,330円 31.4%

住居費のパラドックス ―― 世帯人員が増えるほど支出が下がる「世代間格差」

住居費のパラドックスイメージ

「大家族ほど広い家が必要で住居費がかさむ」というイメージは、データを見ると当てはまりません。世帯人員別データによると、2人世帯の住居費は20,739円であるのに対し、世帯人数が増えるほど支出は少なくなり、5人世帯では11,968円と、世帯人員別で最も低い水準になります。

この逆転現象の理由は、世帯主の「年齢」と「持家率」にあります。2人世帯の世帯主の平均年齢は68.5歳であるのに対し、4人世帯は48.9歳です。高齢の2人世帯は持家率が88.3%と高い一方、築年数の経過に伴う「設備修繕・維持」費に月13,319円(4人世帯は8,562円)をかけており、これが住居費を押し上げています。一方、現役世代の多人数世帯では、住宅ローンを完済していたり、親から住宅を引き継いでいたりするケースが多く、現金で支払う住居費は少なくなります。つまり住居費の大きさを決めているのは、家の広さではなく、その世帯が人生のどの段階にいるかということなのです。

一方、消費支出全体は世帯人員が増えるにつれて段階的に増えていきます。食料費は2人世帯の79,340円から6人以上世帯の123,241円へ、光熱・水道費は2人世帯の22,691円から6人以上世帯の33,534円へと増加します。教育費は2人世帯では417円にとどまりますが、4人世帯(33,198円)や5人世帯(36,470円)では特に高くなります。

世帯人員別の消費支出(月額)

世帯人員 消費支出総額 食料費 光熱・水道費 教育費 住居費
2人世帯 281,014円 79,340円 22,691円 417円 20,739円
3人世帯 324,047円 92,240円 25,626円 10,887円 17,629円
4人世帯 362,923円 103,384円 25,942円 33,198円 17,245円
5人世帯 364,255円 112,019円 28,271円 36,470円 11,968円
6人以上世帯 387,505円 123,241円 33,534円 36,604円 13,885円

食と教養娯楽の二極化 ―― 年収階級別の消費構造

食と教養娯楽の二極化イメージ

二人以上世帯の平均年間収入は813万円です。家計にどれだけゆとりがあるかを見るには、年収を5段階に分けた「年収階級」ごとの比較が有効です。年収階級が上がるほど消費支出は大きくなり、逆にエンゲル係数は下がっていく傾向がはっきりと表れています。

年間収入五分位階級別の消費支出(月額)

階級 平均年収 消費支出 エンゲル係数
第Ⅰ階級 267万円 214,152円 33.1%
第Ⅱ階級 412万円 266,634円 30.6%
第Ⅲ階級 582万円 296,386円 29.1%
第Ⅳ階級 792万円 335,836円 28.5%
第Ⅴ階級 1,289万円 456,995円 25.0%

品目別に見ると、格差はさらにはっきりします。全世帯ベースの五分位階級表では、外食費は第Ⅰ階級の5,619円に対して第Ⅴ階級では27,269円(約4.9倍)、教育費は第Ⅰ階級の1,806円に対して第Ⅴ階級では30,404円(約16.8倍)です。

食生活の所得格差は、勤労者世帯に限定したデータでも同様に見られます。勤労者世帯の外食費は、第Ⅰ階級(低所得層)の9,849円に対し、第Ⅴ階級(高所得層)は30,949円と、3倍以上の開きがあります。エンゲル係数(勤労者世帯)も、第Ⅰ階級が29.9%と家計の3割近くを食費が占めるのに対し、第Ⅴ階級は24.2%にとどまります。高所得層にとって外食は、単なる食事にとどまらず、「体験」や「社交」への投資という意味合いが強くなっているといえそうです。

所得による差は、衣食住といった基礎的な消費以上に、教養娯楽の支出でより大きく表れています。勤労者世帯の第Ⅰ階級と第Ⅴ階級を比べると、教養娯楽費は第Ⅰ階級の17,679円に対し、第Ⅴ階級は49,681円と、3万円近い差があります。内訳を見るとさらに差がはっきりします。宿泊料などを含む「教養娯楽サービス」は、第Ⅰ階級が9,192円であるのに対し、第Ⅴ階級は30,499円と、3.3倍の開きです。高所得層は、書籍や旅行といった「知的な体験」への投資に積極的である様子がうかがえます。所得の差が、経験の幅や学びの機会の差にもつながっているとすれば、見過ごせないポイントといえるでしょう。

所得階層間の主な支出格差(勤労者世帯・第Ⅰ階級と第Ⅴ階級の比較)

項目 第Ⅰ階級(低所得層) 第Ⅴ階級(高所得層) 倍率・差
外食費(月額) 9,849円 30,949円 3倍以上
エンゲル係数 29.9% 24.2% ―
教養娯楽費(月額) 17,679円 49,681円 約2.8倍
うち教養娯楽サービス(月額) 9,192円 30,499円 約3.3倍

高齢無職世帯の「命綱」―― 収入の8割を占める社会保障給付の現実

高齢無職世帯の「命綱」イメージ

高齢者の生活が、いかに公的年金に支えられているかがよく分かるのが、65歳以上の無職世帯(二人以上世帯)のデータです。この層の実収入は266,377円で、うち社会保障給付・公的年金等は212,296円です。社会保障給付だけで実収入の約80%(213,731円)を占めており、生活のほとんどを公的年金に頼っている実態がうかがえます。

可処分所得(実収入から税金・社会保険料を除いた額)は231,198円であるのに対し、消費支出は264,149円で、収支差額は△32,951円の赤字(平均消費性向114.3%)です。可処分所得を消費支出が上回っており、貯蓄を取り崩しながら生活を補っている世帯が多いとみられます。

この数字から見えてくるのは、高齢世帯の家計に「余裕がない」という現実です。現役の勤労者世帯は186,111円の黒字を確保している一方(第1表)、高齢無職世帯は赤字となっています。公的年金という支えが少しでも縮小すれば、生活への影響は決して小さくないといえるでしょう。

65歳以上の無職世帯(二人以上世帯)の家計収支(月額)

項目 金額
実収入 266,377円(うち社会保障給付・公的年金等 212,296円)
可処分所得 231,198円
消費支出 264,149円
収支差額(黒字額) △32,951円の赤字(平均消費性向114.3%)
食料費 82,611円
光熱・水道費 24,843円
教養娯楽費 25,344円
保健医療費 17,393円
住居費 17,368円

2000年〜2025年における長期的な支出シフト

長期的な支出シフトイメージ

2000年から2025年にかけての品目別支出データ(二人以上世帯)を見ると、世帯構造の変化に加え、通信・食生活・ワークスタイル・教養娯楽など、暮らし全般の変化を読み取ることができます。世帯人員は2000年の3.31人から2025年には2.87人へと減り、世帯主の平均年齢は52.8歳から60.7歳へと上がりました。有業人員も1.52人から1.34人へと減少しています。年間消費支出総額は2000年の3,807,937円から減少傾向が続き、2020年には3,335,114円まで落ち込みましたが、2025年には3,768,007円まで回復しました。交通・通信費全体は2000年の438,748円から2025年の548,754円へと増えています。

主な品目の長期推移(二人以上世帯・年間支出額)

項目 2000年 中間年 2025年 変化の特徴
世帯人員 3.31人 ― 2.87人 減少
世帯主平均年齢 52.8歳 ― 60.7歳 高年齢化
有業人員 1.52人 ― 1.34人 減少
消費支出総額 3,807,937円 3,335,114円(2020年) 3,768,007円 V字型で回復
食料費 973,680円 ― 1,138,736円 増加
米 40,256円 20,397円(2023年) 42,739円 半減後に急回復
パン 27,512円 ― 34,244円 堅調に増加
調理食品(中食) 99,691円 ― 162,964円 約1.6倍に拡大
外食 173,430円 129,726円(2020年) 198,759円 コロナ禍で急減後に回復
固定電話通信料 69,956円 ― 13,307円 約8割減少
携帯電話通信料 28,598円 126,973円(2020年) 108,814円 急増後にやや落ち着く
インターネット接続料 7,802円(2002年) ― 35,447円 約4.5倍に拡大
新聞 36,288円 ― 24,397円 約33%減少
パック旅行費 70,794円 8,105円(2021年) 38,290円 激減後に回復途上(2000年比半分程度)
被服及び履物全体 206,742円 ― 120,761円 約4割減少
男性用スーツ 10,118円 ― 3,104円 約7割減少
テレビ 7,351円 30,168円(2010年) 5,530円 地デジ特需後に沈静化

通信・ITインフラの主役交代

固定電話通信料は2000年の69,956円から2025年には13,307円へと、約8割減少しました。反対に携帯電話通信料は2000年の28,598円から大きく増え、2020年には126,973円に達した後、2025年には108,814円となっています。インターネット接続料も2002年の7,802円から2025年には35,447円へと約4.5倍に増えており、通信費の主役が固定電話から携帯電話・インターネットへ移り変わったことが分かります。

食生活の変化(中食の拡大と主食の推移)

調理食品(中食)は2000年の99,691円から、2025年には162,964円へと約1.6倍に拡大し、手軽な調理食品へのシフトが進んでいます。米への年間支出は2000年の40,256円から2023年には20,397円へと半減近くまで低下しましたが、2025年には42,739円へと急回復しています。一方、パンは2000年の27,512円から2025年には34,244円へと堅調な増加傾向を維持しています。外食は2000年の173,430円から、コロナ禍の影響を受けた2020年には129,726円まで大きく落ち込みましたが、2025年には198,759円となり、外出機会の回復とともに支出も戻ってきています。

ワークスタイル・衣料品の変化

被服及び履物全体は2000年の206,742円から、2025年には120,761円へと約4割減少しました。中でも男性用スーツは2000年の10,118円から、2025年には3,104円へと約7割減少しており、働き方やオフィスカジュアル化の影響が窺えます。

イベント・社会情勢による急変動

パック旅行費は2000年の70,794円から、2021年には8,105円(約1/8以下)まで大きく落ち込みました。2025年には38,290円まで回復していますが、2000年比ではまだ約半分の水準です。テレビへの支出は2000年の7,351円から、地上デジタル放送移行期の2010年には30,168円(約4.1倍)へと一時急増しましたが、特需終了後は落ち着き、2025年には5,530円となっています。新聞は2000年の36,288円から、2025年には24,397円へと約33%減少しており、デジタル化の影響を示しています。


まとめ

まとめイメージ

2025年の家計調査から見えてくるのは、かつての「一億総中流」という考え方がすでに過去のものとなり、世帯ごとの違いがくっきりと分かれた日本の姿です。

  • 50代という人生の後半戦で訪れる、教育費の大きな壁。
  • 住居費を左右する、年齢に応じたメンテナンスコストの罠。
  • 所得階層によって数倍もの差が開く、外食や教養への投資。
  • 社会保障という一本の命綱に頼らざるを得ない老後の脆さ。

これらのデータが示しているのは、「なんとなく貯蓄する」段階から、「具体的にライフサイクルを見据えて備える」段階へと考え方を変える必要性です。50代で訪れる支出のピークにどう備え、老後の収支をどう安定させるか。統計データという客観的な指標を踏まえながら、自分たちの支出の中身を見直し、計画的な家計づくりを進めていくことが、これからますます重要になるといえるでしょう。


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監修者プロフィール

市川 史祥

技研商事インターナショナル株式会社
取締役 CMO シニアコンサルタント

一般社団法人LBMA Japan 理事
ロケーションプライバシーコンサルタント
流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師
統計士/医療経営士/介護福祉経営士
Google AI Essentials/Google Prompt Essentials

市川 史祥

1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。

電話によるお問い合わせ先:03-5362-3955(受付時間/9:30~18:00 ※土日祝祭日を除く)
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