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街の使われ方を、売上予測モデルの新たな説明変数へ
~c-japan® Dynamicsの特徴量データをどう活用するか~

2026/08/05

街の使われ方を、売上予測モデルの新たな説明変数へ|c-japan® Dynamicsの特徴量データをどう活用するか

前回は、c-japan® Dynamicsに収録される4つの主成分得点(以下、特徴量)が、エリアを単なるカテゴリではなく、複数の特性を持つ連続値として表現するデータであることを説明しました。

関連記事: エリアセグメントを「分類」で終わらせない|c-japan® Dynamicsの特徴量が保持する情報

エリアセグメントコードが「その場所はどのようなタイプか」を示すのに対し、特徴量は「どの特性を、どの方向に、どの程度強く持つか」を示します。

では、この特徴量を、実際のエリア分析や店舗の売上予測モデルにどのように活用できるのでしょうか。 c-japan® Dynamicsが提供する特徴量は、平日・休日別、時間帯別の人流パターンから抽出された、街の時間的な使われ方を表す連続値です。

人口、世帯、競合、周辺施設、駅距離などの従来変数と組み合わせることで、これまでモデルへ取り込みにくかったエリアの時間特性を、新たな説明変数候補として利用できます。

1.これまでモデルへ投入しにくかった「街の時間構造」

エリアマーケティングで利用される代表的なデータには、人口、世帯数、年齢構成、所得、昼間人口、事業所数、店舗数、周辺施設、競合店舗、駅距離などがあります。 これらは、地域の市場規模、居住者属性、就業者属性、施設集積、競合環境、駅からの近さなどを説明する重要な変数です。

一方、同じ人口規模、同じ昼間人口規模を持つエリアであっても、人が滞在する曜日や時間帯が異なれば、そこで発生する需要も異なります。 たとえば、次の二つの地点を考えます。 一方は、平日の午前から夕方に人が集中し、休日には人流が大きく減少する地点です。 もう一方は、平日にも一定の人流がありますが、休日の午後にさらに人が増加する地点です。 人口量や昼間人口だけを見れば似ていても、前者は平日の業務需要、後者は休日の買い物やレジャーなどの目的来街需要との関係が強い可能性があります。

また、総滞在人口が同程度であっても、

  • 一日を通して安定して人が滞在する地点
  • 朝夕の限られた時間に人流が集中する地点
  • 夕方以降に人が増え、深夜まで活動が継続する地点

では、店舗の利用時間、営業時間、商品構成、販促タイミングに対する示唆が異なります。

従来のエリアデータからは、市場の規模や属性、競合環境などを説明変数として利用できました。 しかし、「その場所が平日・休日や時間帯ごとに、どのように使われているか」を表す情報は、一般的な統計データだけではモデルへ取り込みにくいものでした。

c-japan® Dynamicsは、この街の時間的な使われ方を、職住軸、平休軸、繁華街軸、特定時間軸という4つの連続値で表現します。 これにより、これまでモデルへ投入しにくかった人流の時間構造を、新たな説明変数候補として分析へ追加できます。

従来の説明変数が主に、「どのような人や施設が、どの程度存在するか」を表すのに対し、c-japan® Dynamicsは、「その場所が、いつ、どのように使われているか」を表す変数を提供します。


2.セグメントコードを補完する、特徴量の応用的な活用

2.セグメントコードを補完する、特徴量の応用的な活用

c-japan® Dynamicsの基本的な活用方法は、エリアセグメントコードを用いて、街のタイプを把握し、地図上で可視化・集計することです。 一方、統計解析や機械学習を行うユーザーは、セグメントコードの作成に用いられた4つの特徴量を、既存の予測モデルへ追加する説明変数候補として活用できます。 特徴量は、すべてのユーザーが必ず利用することを前提としたものではありません。しかし、店舗売上や来店数などを目的変数とする予測モデルを構築する場合には、既存モデルを補完する応用的なデータとなります。

c-japan® Dynamicsの特徴量だけで店舗成果を説明するのではなく、人口・世帯属性、競合店舗、周辺施設、駅距離、店舗面積、営業時間など、従来から利用されてきた説明変数と組み合わせて使用します。 さらに、人流の規模を表す人流ボリュームを加えることで、街の時間的な使われ方と、その場所に存在する需要規模を分けて分析できます。

概念的には、次のようなモデルです。

店舗成果 = 従来のエリア・店舗変数 + 採用された特徴量 + 人流ボリューム + 誤差

分析上は、まず従来変数だけを使用したベースモデルを作成します。

ベースモデル

Yi = β0 + βTXi + εi

次に、c-japan® Dynamicsの特徴量候補と人流ボリュームを追加した拡張モデルを作成します。

c-japan® Dynamicsを追加した拡張モデル

Yi = β0 + βTXi + βFTFi + βVTVi + εi

ここで、それぞれの記号は次の変数を表します。

  • Yi:店舗または地点 i の売上、来店数などの店舗成果
  • Xi:人口・世帯属性、競合、周辺施設、駅距離、店舗条件などの従来変数
  • Fi:c-japan® Dynamicsが提供する特徴量のうち、モデルで使用する変数
  • Vi:平日・休日の滞在人口密度などの人流ボリューム変数
  • β, βF, βV:それぞれの変数に対応する係数
  • β0:切片
  • εi:モデルに含まれた変数だけでは説明できない誤差

上付きの T は転置を表します。ここでは、複数の変数とそれぞれに対応する係数を掛け合わせ、その結果を合計するためのベクトル表記です。

両モデルを比較することで、街の時間的な使われ方を表す特徴量や人流ボリュームが、従来変数だけでは説明できなかった店舗成果の差を捉えられるかを検証します。 確認するのは、単なる予測精度の向上だけではありません。 追加的な説明力が得られるか、どの特徴量が目的変数と関係しているか、業態によって有効な時間特性が異なるか、分析結果を街の使われ方として解釈できるか、といった点も重要です。

c-japan® Dynamicsの特徴量は、従来のエリアデータを置き換えるものではありません。人口、競合、周辺施設、駅距離などの従来変数に対して、これまでモデルへ取り込みにくかった「街の時間的な使われ方」を加える、新たな説明変数候補です。


3.4つの特徴量は「説明変数候補」である

3.4つの特徴量は「説明変数候補」である

c-japan® Dynamicsでは、職住軸、平休軸、繁華街軸、特定時間軸の4つの特徴量を提供します。 ただし、4つの特徴量を常にすべて最終モデルへ採用することを意味するわけではありません。 どの特徴量が有効かは、次の条件によって変わります。

  • 目的変数
  • 対象業態
  • 対象地域
  • 店舗フォーマット
  • サンプル数
  • 利用するモデル手法
  • 既存の説明変数との関係

初期的な検証では、4つの特徴量をまとめて投入し、ベースモデルに対してどの程度の追加説明力が得られるかを確認する方法があります。 そのうえで、重回帰分析であれば、係数の方向、有意性、安定性、多重共線性(説明変数同士が強く相関し合い、それぞれの効果を正しく分離できなくなる状態)、検証データでの再現性などを確認します。 機械学習モデルであれば、特徴量重要度、SHAP値(各説明変数が予測結果にどの程度、どの方向に寄与したかを個別に示す指標)、交差検証結果、モデル全体の汎化性能などを確認します。

最終的なモデルでは、4つすべてが採用される場合もあれば、一部だけが採用される場合もあります。 アルゴリズムによっては、すべての変数をモデル内に残しながら、実質的な寄与が小さい特徴量にほとんど重みを与えないこともあります。

重要なのは、4つの特徴量を機械的に採用することではなく、その業態の成果差を、どのような街の時間特性によって説明できるかを検証することです。


4.特徴量の係数を、人流の文脈で解釈する

特徴量の係数を、人流の文脈で解釈する

c-japan® Dynamicsの特徴量を追加する価値は、新しい変数をモデルへ投入できることだけではありません。 各特徴量に、街の使われ方としての意味が付与されているため、分析結果を人流の文脈へ戻して解釈できます。

たとえば、ある業態のモデルにおいて職住軸が正方向に寄与していれば、ほかの条件が同じ場合に、平日日中の就業・就学機能が強いエリアで成果が高くなる傾向が示唆されます。 平休軸が休日方向に寄与していれば、休日の買い物、観光、レジャーなどの目的来街需要との関係が考えられます。 繁華街軸が夜方向に寄与していれば、夕方から深夜にかけた飲食・娯楽需要との関係を検討できます。 特定時間軸が朝夕方向に寄与していれば、通勤・通学時間帯など、特定時間に集中する人流との関係が示唆されます。

このように、特徴量の採否や寄与を単なる数値結果として終わらせず、

  • 平日日中の業務需要
  • 休日の目的来街需要
  • 夜間の飲食・娯楽需要
  • 朝夕の通勤・通学需要

といった業務上の文脈へ翻訳できます。

これは、モデルの説明可能性を高め、分析結果を出店判断、営業時間、店舗フォーマット、商品構成などへ接続するうえで重要です。


5.人流の「量」と「時間的な性質」を分けて扱う

5.人流の「量」と「時間的な性質」を分けて扱う

c-japan® Dynamicsでは、4つの特徴量に加え、平日・休日の滞在人口密度など、人流ボリュームに関する指標も利用できます。 人流ボリュームと特徴量は、異なる情報を表します。 人流ボリュームは、その地点にどの程度の人数が滞在しているかという、人流の規模を示します。 一方、特徴量は、その人流がどのような曜日・時間帯構成を持つかという、人流の性質を示します。

たとえば、人流量が同程度の二つの地点でも、一方は平日日中に人が集中し、もう一方は休日午後に人が集中する場合があります。 また、人流量が大きくても一日を通して安定している地点と、朝夕の短時間に鋭く集中する地点では、店舗が接触できる需要の形が異なります。

人流ボリュームだけをモデルへ投入した場合は、「人が多い地点ほど店舗成果が高いか」を検証できます。そこに特徴量を加えることで、「どのような時間構造を持つ人流が、その業態の成果と関係しているか」まで検証対象にできます。したがって、分析では、人流の規模と時間的な性質を分けて評価することが重要です。


6.業態によって有効な人流特性は異なる

業態によって有効な人流特性は異なる

すべての業態にとって、同じ人流特性が有利になるわけではありません。 平日日中型の需要を取り込む業態では、職住軸の就業地方向や、平休軸の平日方向が成果に関係する可能性があります。 休日の目的来街需要を取り込む業態では、平休軸の休日方向や休日人流ボリュームが重要になる可能性があります。

夜間需要を対象とする業態では、繁華街軸の夜方向が、朝夕の通勤需要を対象とする業態では、特定時間軸の朝夕方向が、それぞれ有効な説明変数となる可能性があります。 住宅地向けの生活サービスでは、単に居住地性が強いだけでなく、日中にも一定の活動が維持されているか動かが重要になる場合があります。

こうした関係は、あらかじめ固定的に決めるものではありません。 既存店の実績データと特徴量の関係を分析し、業態ごとにどの人流特性が成果と結びついているかを検証します。 c-japan® Dynamicsの特徴量は、業態適性を直接決定する答えではなく、業態ごとに異なる立地条件を検証するための分析軸です。


7.店舗間の関係は、必ずしも直線的とは限らない

7.店舗間の関係は、必ずしも直線的とは限らない

重回帰分析では、説明変数が一定量変化したとき、目的変数も一定量変化する直線的な関係を基本とします。 しかし、特徴量と店舗成果の関係が、常に直線的であるとは限りません。 たとえば、休日性が高くなるほど売上が上昇する業態もあれば、一定水準までは上昇するものの、休日・観光特化が強くなりすぎると、日常利用者が減少して売上が頭打ちになる業態もあります。

夜間活動性についても、夜型であるほど常に有利とは限りません。 夜間需要を取り込める一方で、昼間需要が弱くなり、全日利用型の業態では不利になる可能性があります。

こうした関係を検証する方法として、二乗項を加えた回帰、スプライン回帰、一般化加法モデルなどがあります。 二乗項は、特徴量と成果の間に山型や谷型の関係がある場合に利用できます。 スプライン回帰は、一定水準を超えると効果が生じる、途中から伸びが鈍化する、極端な水準で再び低下するといった、より柔軟な曲線関係を表現できます。

一般化加法モデルは、複数の説明変数について、それぞれの非線形な関係を滑らかな曲線として推定する方法です。 決定木、ランダムフォレスト、勾配ブースティングなどの機械学習モデルでも、こうした閾値や非線形な関係を捉えられます。


8.特徴量同士の組み合わせを検証する

8.特徴量同士の組み合わせを検証する

特徴量は、単独ではなく、ほかの特徴量や人流ボリュームとの組み合わせによって、店舗成果と関係する可能性があります。 たとえば、休日性が高いだけでは、大きな店舗成果につながらない場合があります。休日性が高く、かつ人流ボリュームも一定以上ある地点で、はじめて大きな需要が形成される可能性があります。 この関係を回帰式で表すと、次のようになります。

休日性と人流ボリュームの交互作用

Yi = β0 + β1Hi + β2Mi + β3HiMi + εi

ここで、Hi は地点 i の休日性、Mi は人流ボリューム、HiMi は両者の交互作用項を表します。 β3 は、休日性と人流ボリュームが組み合わさることで生じる追加的な関係を表します。

このモデルによって、次の三つを分けて検証できます。

  • 休日性そのものと成果との関係
  • 人流ボリュームそのものと成果との関係
  • 休日性と人流ボリュームが同時に高いことによる追加的な関係

同様に、就業地性が高く、かつ朝夕の人流集中が強い場合に、通勤導線型の需要が顕在化する可能性があります。

就業地性と朝夕集中性の交互作用

Yi = β0 + β1Wi + β2Pi + β3WiPi + εi

ここで、Wi は地点 i の就業地性、Pi は朝夕集中性、WiPi は両者の交互作用項を表します。 就業地性だけが成果と関係するのか、朝夕集中性だけが関係するのか、あるいは両方の特性を併せ持つ地点で成果が高まるのかを検証できます。

決定木、ランダムフォレスト、勾配ブースティングなどの機械学習モデルでは、こうした変数同士の組み合わせがモデル内部で捉えられる場合があります。 一方、重回帰分析で検証する場合は、想定する組み合わせを交互作用項として明示的に追加します。


9.セグメントによって売上構造が異なる可能性

同じ説明変数でも、街のタイプによって店舗成果への影響が異なる場合があります。 たとえば、駅距離の影響は、駅前型のビジネスエリアでは大きく、車利用が中心となる住宅地では相対的に小さいかもしれません。 休日性の影響も、商業・レジャー系エリアでは正方向に働く一方、日常利用型の住宅地では、極端な休日特化が必ずしも有利とは限りません。 全店舗を一つのモデルで分析すると、こうしたセグメントごとの違いが平均化される可能性があります。

そのため、分析では次のような方法を検討できます。

  • セグメントをダミー変数として追加する
  • セグメントと説明変数の交互作用を設定する
  • セグメントごとに別のモデルを構築する
  • 店舗フォーマット別・都市規模別にモデルを分ける

セグメント別モデルは、街タイプごとに異なる売上構造を直接推定できる点が利点です。 一方で、モデルを分割すると、セグメントごとのサンプル数が減少します。 十分な店舗数がない場合は、係数が不安定になる可能性があるため、まず全体モデルでセグメント別の残差を確認したり、交互作用を検証したりする方法が現実的です。


10.セグメントコードと特徴量を併用する

10.セグメントコードと特徴量を併用する

セグメントコードと特徴量は、どちらか一方を選択するものではありません。 両者は異なる役割を持ちます。 セグメントコードは、街のタイプをわかりやすい分類として捉え、地図表示、集計、対象地点の抽出、分析結果の説明に利用できます。 特徴量は、同じセグメント内にある地点ごとの強弱や、セグメント境界付近の連続的な違いを表します。 分析では、まずセグメントコードによって、対象地点の大きな構造を把握できます。

そのうえで、同じセグメント内の地点を特徴量で比較すれば、

  • より平日日中性が強い地点
  • より休日性が強い地点
  • より夜間活動性が強い地点
  • より朝夕集中性が強い地点

を識別できます。

さらに人流ボリュームを加えることで、その特性がどの程度の市場規模を伴っているかを確認できます。

セグメントで街のタイプを捉え、特徴量で特性の方向と強弱を比較し、ボリュームで需要規模を評価する、という使い分けになります。


11.出店候補地のスコアリングへ応用する

11.出店候補地のスコアリングへ応用する

既存店データから、店舗成果と立地条件の関係をモデル化できれば、未出店地点の評価にも応用できます。 既存店舗について、次のようなデータを結合します。

  • 売上、来店数、会員数、成約数
  • 店舗面積、営業時間、駐車場、席数
  • 人口、世帯、所得、昼間人口
  • 駅距離
  • 競合店舗、周辺施設
  • c-japan® Dynamicsの特徴量
  • 平日・休日の人流ボリューム

このデータから構築したモデルを、同じ説明変数を取得できる未出店地点へ適用します。 出力は、予測売上、成功確率、潜在需要スコアなどとして表現できます。 ただし、予測値だけを最終判断に使うのではなく、その評価がどのような変数から生まれているかを確認することが重要です。

同じ高スコア地点でも、

  • 人流ボリュームの大きさによって評価された地点
  • 平日日中需要との適合によって評価された地点
  • 休日の目的来街需要によって評価された地点
  • 夜間需要によって評価された地点

では、出店後に期待される顧客像や利用時間帯が異なります。 モデルの出力と特徴量の意味を組み合わせることで、営業時間、店舗フォーマット、商品構成、販促施策まで含めた意思決定へ接続できます。


12.高業績店と似たエリアを探索する

12.高業績店と似たエリアを探索する

特徴量は、予測モデルだけでなく、類似地点探索にも利用できます。 ある高業績店舗の立地点について、

  • 職住軸
  • 平休軸
  • 繁華街軸
  • 特定時間軸
  • 平日人流ボリューム
  • 休日人流ボリューム

などを特徴ベクトルとして表現します。 そのうえで、全国または対象地域の各地点との距離を計算すれば、人流特性が近い候補地を抽出できます。

業態によって重要な特徴量が異なる場合は、各変数に重みを設定することも考えられます。 夜間型の業態であれば繁華街軸の重みを大きくし、通勤需要型の業態であれば職住軸や特定時間軸を重視するといった設計です。

人流の性質だけを比較したい場合は4つの特徴量を使用し、市場規模まで含めて比較したい場合はボリューム変数を加えるなど、目的に応じて特徴空間を設計します。 セグメントコードの一致だけで候補地を探す場合に比べ、同じ分類内の近さや、分類をまたいだ連続的な類似性を評価できる点が特徴です。


13.人口・世帯データと特徴量を組み合わせる

13.人口・世帯データと特徴量を組み合わせる

c-japan® Dynamicsの特徴量は、単独で完結するデータではありません。 人口、世帯、所得、昼間人口、事業所、施設、競合などのデータと組み合わせることで、分析上の意味が広がります。 たとえば、人口が多い住宅地でも、

  • 日中にも一定の人流が残る住宅地
  • 平日日中に人が流出するベッドタウン
  • 休日に生活活動が強まる住宅地

では、需要が発生する時間帯が異なります。 昼間人口が多いエリアでも、

  • 平日の日中に継続的な滞在があるオフィス街
  • 朝夕の移動だけが強い交通導線
  • 夜間まで活動が続く都市商業地

では、店舗との接点が異なります。 人口統計が「市場を構成する人」を表し、c-japan® Dynamicsが「場所の使われ方」を表すと考えると、両者の役割は補完的です。

「誰がいるか」 × 「どの程度いるか」 × 「いつ、どのようにその場所が使われているか」を組み合わせることで、エリアをより立体的に表現できます。


14.モデル評価では、空間的な偏りに注意する

エリアデータを用いたモデルでは、通常のランダム分割だけでは予測性能を過大評価する可能性があります。 近接する店舗や地点は、人口構成、駅距離、競合環境、人流特性などが似ているためです。 学習データと検証データに近接地点が混在すると、実質的に似た地域を使ってモデルを評価することになります。 未知地域への汎化性能を確認するには、用途に応じて次のような検証方法を検討します。

  • 都市単位で学習データと検証データを分ける
  • 都道府県や商圏単位で交差検証を行う
  • 一定距離以内の店舗を同じグループとして扱う
  • 既存エリアで学習し、新規エリアで外部検証する

15.実務での分析フロー

15.実務での分析フロー

c-japan® Dynamicsの特徴量を売上予測モデルへ組み込む際は、次の流れが考えられます。 まず、売上、来店数、成約数などの目的変数と、分析単位を定義します。 次に、人口、世帯、所得、競合、周辺施設、駅距離、店舗条件など、既存の説明変数を整備します。

そのうえで、従来変数だけを使用したベースモデルを作成します。 次に、c-japan® Dynamicsの4つの特徴量と人流ボリュームを説明変数候補として追加し、拡張モデルを作成します。 ベースモデルと拡張モデルを比較し、予測精度、説明力、係数の安定性、特徴量重要度、検証データでの再現性などを確認します。

必要に応じて、非線形性、交互作用、セグメントによる関係の違いも検証します。 最終的には、採用された特徴量がどのような街の使われ方を表しているかを整理し、出店候補地の抽出、店舗フォーマット、営業時間、商品構成、販促施策などへ分析結果を接続します。


16.人が理解するセグメントと、モデルが利用する特徴量

セグメントコードは、複雑な街の性格をわかりやすい分類として示します。 特徴量は、その分類の背後にある時間的な特性を、連続値の説明変数候補として提供します。 人流ボリュームは、その特性がどの程度の需要規模を伴っているかを示します。 実務では、この三つを分断せずに利用することが重要です。

モデルが高い予測値を算出しても、その理由を現場へ説明できなければ、出店判断にはつながりにくくなります。 一方、セグメントを見て直感的に判断するだけでは、同じ分類内の差や、複数要因の関係を定量的に検証できません。

人はセグメントで街を理解し、モデルは特徴量で街を分析し、特徴量の意味を通じて、分析結果を再び人へ返す。

c-japan® Dynamicsの特徴量データは、街を地図上で分類するだけのデータではありません。 これまで予測モデルへ投入しにくかった街の時間的な使われ方を、新たな説明変数候補として提供し、店舗成果との関係を検証可能にするエリアデータです。



監修者プロフィール

市川 史祥

技研商事インターナショナル株式会社
取締役 CMO シニアコンサルタント

一般社団法人LBMA Japan 理事
ロケーションプライバシーコンサルタント
流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師
統計士/医療経営士/介護福祉経営士
Google AI Essentials/Google Prompt Essentials

市川 史祥

1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。

電話によるお問い合わせ先:03-5362-3955(受付時間/9:30~18:00 ※土日祝祭日を除く)
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