商圏分析GISコラム | 立地による商圏範囲の違い

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立地による商圏範囲の違い

月刊GSI 2018年5月号(Vol.83)

スマートフォンの位置情報から「任意の店舗・エリアに来訪した人がどこに居住・勤務しているのか」を分析可能な「PPLAライフエリア分析機能」を用いて、都市型立地店舗と郊外型立地店舗の商圏範囲とその違いを分析しました。

背景

 多店舗展開のチェーン企業を中心に、昨今では当然のように行われている商圏分析ですが、「店舗や立地の商圏範囲」をデータに基づいて客観的に把握・定義している企業は意外と多くありません。商圏範囲を誤って定義してしまうと、店舗や立地を正しく評価できなくなり、出店判断や既存店の運営に支障をきたし、売上に影響を与えかねません。

 例えば、新規出店時に自社店舗との商圏バッティング(自社競合)は起こらないと判断したものの、結果的に商圏内の顧客を自社店舗同士で取り合い、既存店舗の売上を大きく損なってしまったケースや、集客のために折り込みチラシを配布したところ、店舗周辺のみを販促対象としたため、期待する効果が出なかったというケースが挙げられます。

 商圏範囲を正確に定義することは、店舗運営に影響を及ぼす重要な要素と言えるでしょう。では実際にどうやって定義するかですが、自社で保有する顧客データやお客様アンケート等を材料としてそれを地図上にプロットし、来店分布を商圏範囲とするというのが一般的です。ただし顧客データを持っていない企業も多く、持っていたとしてもそれなりの労力や時間がかかっているのも実態です。しかしながら、デジタル化が進む現在では、店舗への来訪者を手軽に分析することができるように進化しています。当社では4月からスマートフォンの位置情報から「任意の店舗・エリアに来訪した人がどこに居住・勤務しているのか」を分析可能な「PPLA(プロファイルパスポート)ライフエリア分析機能」の提供を開始しました。「PPLAライフエリア分析機能」は当社商圏分析GIS(地図情報システム)「MarketAnalyzer™」の機能のひとつです。今回は「PPLAライフエリア分析機能」を用い、店舗の商圏の定義として、都市型立地店舗と郊外型立地店舗という対象的な軸で商圏範囲の違いを分析しました。

都市型立地と郊外型立地

 都市型立地店舗と郊外型立地店舗の商圏範囲の違いを分析する上で、今回は関東地方に展開するスーパーマーケットチェーンである株式会社マルエツの、標準店舗ブランド「マルエツ」と都市型店舗ブランド「マルエツプチ」を題材とします。マルエツは東京都西東京市の田無西原店を、マルエツプチは東京都港区の赤坂店を分析対象としました。
 (以降の分析内容と結果は当社独自のものです。)

 まずは、それぞれの立地における都市型、郊外型の度合いを統計データから確認します。都市型と郊外型を分ける指標として、最もポピュラーな「昼間人口」と「夜間人口」で比較します。

 

  上記の円グラフはそれぞれの店舗1km圏内の夜間人口と昼間人口の構成比です。左のマルエツプチ赤坂店の場合は夜間人口8%に比べて、昼間人口が92%です。この数字には住宅街性質よりもオフィス街性質が色濃く出ていると言えます。反対にマルエツ田無西原店は、都内にありながら昼間人口よりも夜間人口が多いことから、住宅街性質を確認できます。さらに詳しく分析する場合は、商業活性度や最寄り駅の乗降客数等を読み取っていくこともあります。今回は一旦、この数値から判断してマルエツプチ赤坂店を都市型店舗、マルエツ田無西原店を郊外型店舗として取り扱います。

店舗来訪者の居住地分布

 商圏範囲についての定説では、都市型立地は顧客の吸引範囲が広く、郊外型立地では顧客が店舗周辺に集中するとされています。実際にそのような傾向は見られるのかを確認してみましょう。PPLAライフエリア分析機能を用いて、まずは都市型店舗であるマルエツプチ赤坂店に、2017年5月1日から2018年4月30日の間に来訪した人の居住地分布を地図上に可視化しました。

 

 

 地図上の青色が店舗に来訪した人の居住地です。500mメッシュ単位で表現しており、丸の大きさは来訪者数の大小を表しています。来訪者の居住地が都内の路線沿線に沿って広く分布しており、都内23区内に集中している様子もみえます。 

 続いて、郊外型店舗の来訪者分布も確認してみましょう。

 

 

 こちらは郊外型店舗であるマルエツ田無西原店に、2017年5月1日から2018年4月30日の間に来訪した人の居住地分布です。マルエツプチ赤坂店に比べて、店舗の足元に集中していることがわかります。ただし、この商圏範囲の違いは、店舗の吸引力の違いによって生まれている可能性もありますのでもう1例を比較したいと思います。

 

 

 こちらはマルエツ池袋店に同時期に来訪した人の居住地分布です。マルエツ池袋店はマルエツプチ赤坂店と同じく都内中心地に立地していますが、こちらはオフィス街ではなく住宅街のすぐ近くに立地しているため、マルエツ田無西原店と同様に店舗周辺から強く吸引している分布と言えます。 

 下記は、マルエツ田無西原店とマルエツプチ赤坂店、マルエツ池袋店の3店舗について、「PPLAライフエリア分析機能」で取得できた訪者のデータ総数をグラフにしたものです。

 

 

 このデータ件数を比較すると、一番来訪者数が多いのはマルエツ池袋店です。各店舗の吸引力を考えた場合に、来訪者が多いマルエツ池袋店でも来訪者の居住地分布は店舗足元に集中している状況から、単純に店舗の吸引力が居住地分布の範囲に影響するとは言えません。それでは、マルエツプチ赤坂店は、本当に都内全域から広く顧客を吸引する店舗なのでしょうか。

店舗来訪者の勤務地分布

 ここまでは店舗来訪者の居住地分布を確認しましたが、続いて各店舗来訪者の勤務地の分布を読み取ります。
 まずは、マルエツプチ赤坂店に先程と同じく2017年5月1日から2018年4月30日までに来訪した人の勤務地を地図上に表してみます。

 

 

 先程の居住地の分布が都内23区内に広がっていたのに対して、勤務地の分布はほぼ店舗周辺に集中していることがわかります。どうやら、店舗を利用する人の大部分が近隣で勤務しているようです。 

 一方で、同時期にマルエツ田無西原店に来訪した人の勤務地分布は下記のとおりです。

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 こちらは逆に、先程の居住地の分布に比べて広がりがあります。特に、都内23区内に分布がいくつか見受けられます。ただ、分布の違いはマルエツプチ赤坂店に比べて顕著ではありません。依然として店舗周辺にある程度の分布が見受けられますが、これについては、昼間人口の性質を確認することで読み解くことができます。

 

 

  上記のグラフは、各店舗1km圏内の昼間人口の内訳を表しています。

 マルエツプチ赤坂店は第2次・3次産業従業者が多い一方、マルエツ田無西原店は常住地滞在者の割合が非常に多くなっています。常住地滞在者とは家で家事に従事する主婦(主夫)や、定年でリタイアした高齢者が中心であり、通勤・通学のような移動があまりない層です。これらの人々は、日中自宅周辺にいるため、今回の分布では勤務地=居住地の分布が似た傾向になるのではないかと考えられます。

 ここまでの特徴をまとめると、郊外型店舗は来訪者の居住地が店舗周辺だが、勤務地は居住地に比べて少し広い分布傾向があり、都市型店舗は来訪者の居住地は広く分布するが、勤務地は周辺に極端に集中していると言えそうです。

 来訪者の居住地・勤務地分析を通して、定説通りの特徴が浮かび上がってきましたが、PPLAライフエリア分析機能から得られるその他の情報から更に商圏を読み解いていきましょう。

店舗来訪者の時間帯・曜日別傾向

 ここまでは、店舗来訪者がどこから多く来ているのか地図上に分布を表示して分析しましたが、このチャプターでは、来訪者の時間帯別・曜日別の傾向を見ていきます。

 まずは、曜日別傾向を確認します。

 

 

 マルエツプチ赤坂店は平日と土日を比べると土日は極端に来訪者が少なくなるという傾向があることがわかります。いわゆる都市型オフィス立地の商圏特性を持つ店舗なので週末は周辺の従業者の来店が期待できないということでしょう。一方でマルエツ田無西原店は土日の来訪者が若干多い傾向です。

 次に時間帯別の来訪者傾向です。マルエツプチは周辺の企業の勤務時間帯に来訪者が多いように見えます。マルエツ田無西原店は朝の6時から7時台にかけて来訪者が急激に増えます。これは居住地から勤務地に移動する際の来訪ということでしょう。マルエツ池袋店は日中よりは早朝と夕方以降の来訪者が多く、明らかに他の2店舗とは傾向が異なります。

 

終わりに

 今回はスマートフォンのGPS位置情報をソースとして、GIS(地図情報システム)での商圏範囲の定義についてご紹介しました。最近は各データホルダーがマーケティング用としてGPS位置情報の提供サービスを始めています。当社の商圏分析GIS「MarketAnalyzer™」に搭載されたPPLAライフエリア分析機能は、ユーザ企業独自の分析にGPS位置情報を用いることができる点で唯一のシステムです。詳しくは本年3月のプレスリリースをご参照ください。

 

プレスリリース(2018年3月5日)
「商圏分析GISのMarketAnalyzer™が、ブログウォッチャーのプロファイルパスポートと連携。」
 https://www.giken.co.jp/2018/03/05/25253/

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