導入企業インタビュー

株式会社 市浦ハウジング&プランニング

株式会社 市浦ハウジング&プランニング

本社所在地
東京都文京区本郷1丁目28-34 本郷MKビル4階
事業概要
都市計画、建築に関わる計画、設計、コンサルティング業務
公式サイト
http://www.ichiura.co.jp/

都市構造の解釈に使う人流データは
伝わりやすいビジュアルはもちろん
エビデンスとしての信頼性も欠かせない。


ハウジング分野の専門家集団として、70年に及ぶ団地やニュータウンの計画・再生支援や自治体住宅政策、住宅・建築関連諸制度の策定支援等を手掛ける株式会社市浦ハウジング&プラン二ング様。
都市構造を読み取るための現況分析に、KDDI Location Analyzer(以下KLA)の人流データをご活用なさっています。今回、取締役の荒井様(お写真右)と都市計画・設計室の後藤様(お写真左)に、ツールの導入や活用メリット、今後の展望等についてお話を伺いました。


【課題】
まちづくり計画や具体的なプロジェクトの検討のベースとなる現況分析の際に、パーソントリップ調査や交通量調査等の静的なデータで人流を把握していたが、限定されたエリアの分析となり、また属性や時間で細かく区切った分析がしにくかった。

【効果】
受注前の提案段階でも気軽に人流を分析でき、かつ性年代別や時系列、曜日別等、詳しく把握できるため、一歩踏み込んだ現況分析ができるようになった。  

貴社のご紹介と、皆様のお仕事内容をお教えください。


荒井様:
当社はハウジングコンサルタントを行っている企業で、歴史は古く2022年5月で創業70周年を迎えました。ハウジング分野の専門家集団として、「建築設計部門」、「計画部門」、「住宅事業技術部門」の大きく3つの部門で動いており、コンサルティング(ソフト面)から実際の建築(ハード面)まで、幅広い領域を手掛けています。私は「住宅事業技術部門」のチーフをしていますが、この部門では国土交通省の技術政策等を担っています。

後藤様:
私の所属する「計画部門」は、大規模団地の再生や、まちづくり計画等を担当する部署です。ただ単体の敷地や施設を見るだけではなく、都市の構造を読み解いたうえで、どういう方針で進めていけばよいかというような上流の工程を担っています。

都市構造を読み解く大事な要素となる“人流”。
これまでは、分析で得られる情報に限界があった。


KLAに着目したきっかけは?

後藤様:
弊社では、もともとハウジングに関する計画の手法・ノウハウは蓄積されているものの、計画をする前の「地域の読みとり」・「現況把握」のフェーズでの、人の動きの把握に課題がありました。
具体的には、どこに人が集まる拠点があり、どういう人の流れがあるのか、景観の軸はどこで、このエリアはどういう人々が住まわれており、どういう人たちが訪問している、といったように、ゾーニングの切り口で都市構造を読み解いていくのですが、この読み取りには地図や公的な統計データに加え、“人流”も大事な要素となります。
これまでは、パーソントリップ調査や交通量調査等で人流を把握していましたが、どうしてもエリアが限定されたり、属性や時間で細かく区切って分析できなかったり、といった課題があり、分析で得られる情報に限界を感じていました。

また、現地の視察では「実はこの裏道のほうが安全、居心地が良いなどの理由で多く人が通っているのではないか」とった感覚的な情報を取ることもありますが、人流データがあれば、その感覚を裏付ける客観的な根拠が得られるのではないかということで、人流データの活用を検討するようになりました。
最初はKLAとは別の位置情報分析ツールを使っていたのですが、段々と自分たちの使い方には少し合わない部分が出てきて、リプレイスを検討しKLAの導入に至りました。

リプレイスの決め手は、
意図がすぐに伝わる直感的なビジュアルと
エビデンスたり得るデータの精度、信頼性。


リプレイスを検討しKLAに決めた主な理由は?

後藤様:
まず、一番は「アウトプット時のビジュアルの良さ」です。
弊社の場合、分析データは社内活用だけでなく、事業の発注者(委託元)へのプレゼンテーションにも活用します。「ここにこれだけの人の流れや滞留があるから、この方針を検討しています」といった明確な根拠を、一目で伝わる直感的なアウトプットで示せるのは、導入の一番大きな理由です。

もう一つ決定的だったのは、人流データの推計手法が開示されている点です。
元々使っていた人流分析ツールは、収集したGPSサンプルからどうやって実際の数値に合うように推計しているかという手法が開示されていませんでした。
例えば、極端に高齢者が多く出て20、30代が全然いないというような、実際の感覚と合わない結果になった際に、どんな推計ロジックなのかを説明できないと、その結果を根拠とするのが難しく、社外向けには使いにくかったというのも理由のひとつです。

東京支店 都市計画・設計室 後藤 啓太様


KLAは、町丁目ごとに人口等を集計し、エリアの特性により推計方法を変えていると聞いていますし、その推計手法も開示されています。また、出てくる結果も感覚的に合っているため、これなら活用の範囲を広げていけると感じ、リプレイスを決めました。

荒井様:
実際に、発注者側から推計ロジックを聞かれることも少なくないため、その時にしっかりと根拠を説明できるのは強いですね。
今は、まちづくりや建築設計もそうですが、エビデンスをしっかり示しながらものを語ることが求められています。ひと昔前はそれが難しかったのですが、デジタルがこれだけ普及してきている昨今は、入手できるデータも増えています。ただ、データなら何でもよいというわけではなく、外に出したときにきちんとエビデンスとなるか、その信頼性か担保されているか否かは、特に我々のようなビジネスにおいては大事なポイントです。

どのような業務にご活用ですか。

後藤様:
特定のエリアや道路の人流を属性別に細かく見て、都市計画・再生支援の対象となるエリアや施設が実際にどういう使われ方しているのかを読み解く検討材料にしています。
例えば、駅前広場の再生をする場合、広場につながるどの道路に人を誘導したいかで、広場の形状は変わってきます。また公共施設の活用を検討する際は、単に公共施設というだけでなく、本当に街に貢献できるような”地域に開かれた使われ方“をされるにはどうすればいいか、実際の人の流れから現況を分析し、方針を組み立てていきます。

KDDI Location Analyzer主要動線分析画面
KDDI Location Analyzer主要動線分析画面
※市浦ハウジング&プランニング様の分析画面ではありません。


また、エリアや施設への来訪者がどこから来ているのかもよく見ています。
例えば幹線道路沿道のまちづくりを検討するプロジェクトでは、それぞれ商店街を有する鉄道の沿線3駅について、どのエリアの人達がどの商店街を使っているのかを調べたことがあります。単純に距離だけで見れば、各駅から同心円で広げた所が使われているという話になりますが、実際は真ん中の駅だけ利用率が高いことが分かりました。
パっと見では分かりませんが、主要な幹線道路に出るために高低差があったり、街区の中の道路が入り組んでいたりと、実際は単純な距離だけでは測れなかったりします。
主要動線分析と滞在人口分析を組み合わせて使うことで、想定とは違うことが見えてきたりする、そういった例は少なくありません。

事業を受託する前の提案段階でも
リソースを気にせず、気軽に人流分析ができ
分析レポートも、加工の手間なく活用できる。


周囲の評価や評判は?

後藤様:
導入理由にあるとおり、分析レポートの分かりやすさは社内でも共感を得ています。
グラフ等の表現で分かりやすいというのはもちろん、指定したエリアの滞在人口を見る際など、多い少ないの“閾値”が見栄えよいよう自動で設定される仕様になっているので、どのエリアの人流グラフを出してもきれいな図が作れます。目指すアウトプットに応じて分析地や各種条件を指定すれば、Excelでもそのまま使えるデータが出力されるため、プレゼンテーション資料を作成しやすく、時間短縮にもつながっていると感じます。
以前のツールは画面上で表示されたものをスクショして使っていたので、凡例を少し変えたいとなった時など直接加工できなくて困ることもありました。目指すところは、アプリケーション上でアウトプットを完成させることなので、KLAには満足しています。


Excelレポート出力機能
Excelレポート出力機能(オプション)

荒井様:
パーソントリップ調査や交通量調査は、プロジェクトが進行している時でないと実施できません。分析すべき特定のエリアが判明しないと調査できませんが、KLAなら未確定要素が多い段階で当たりをつけるための調査ができたりします。
プロポーザルに応募する段階であっても気軽に調べられる点も良いですね。いままでは、道路に人を配置して長時間調べないといけなかったところを、ツール上ですぐに結果が分かるため効率がグンと上がりました。なんといっても、発注される前の提案段階なので、リソースを割かずに手軽に調べられるのはありがたいですし、数日前のデータも取れるので即効性もあります。

取締役(住宅事業技術部門/新領域ミライラボ総括) 荒井 一弘様

細かな人流データの読み解きにより、
今まで見えていなかった街の動線が浮き上がってきた。

荒井様:
図面や地図を見て、また実際現地に行って感覚として得ていたような読み取りが、客観的なデータとして提供されるようになったことで、今まで見えていなかった動線が浮き上がってきたように思います。
単純に人の動線を把握するだけでなく、もっと都市スケールで見て、「ここが都市の軸として機能していて、人の移動を支える軸として機能している」といったようなことが分かると、再生する際にも生かしていくべきエリアが見えてきます。また、いままで注目されていなかったこのエリアが、実は人の居心地のいい通りになっていたということが分かれば、取るべき方針も変わってきます。そういう分析ができるようになったことが大きいですね。

後藤様:
人流を、単なる数字の大小だけでなく、属性や時間や時期で切り分けて分析できる点も良いと感じます。駅前の2つの商業施設を比較しても、1つは週末利用が多く、もう1つは平日利用が多いなどが分かったり、長期休暇に人が集まるエリアなのか、逆に平日でも人が連続的に来るエリアなのかが分かったり、そういう一歩踏み込んだ解釈ができるようになりました。
発注者との話し合いの中で、それぞれの個人的な経験や感覚に沿って話をしていたものが、定量的なデータで示すことで、客観的に認識を共有することができることも大きなメリットです。



(今後の運用について)

荒井様:
人流データは、我々の業務ではとても必要なファクター。人の流れをどう読み解くかによって、街の骨格が変わってきます。それほど大事な要素なので、「エビデンス」としての信頼性が非常に重要になります。現在も、感覚と概ね合っている分析結果が出てきますが、人流データの精度がさらに高まっていくとありがたいです。

またデータは単体で見ていくのではなく、いかに組み合わせるかが大事だと思っています。
我々は幅広いデータを持っているので、それぞれ組み合わせながらどういう結果を出せるのか。試行錯誤ではありますが、検討をしているところです。例えば、同じ人流分析でも、交通量調査等は局所的なエリアの人流調査です。それに対して、KLAのGPSデータはとても広域の人流をみるもの。この2つの分析結果を、うまく橋渡しして平行に見ることができれば、現況の分析だけでなく再生後の人流シミュレーション等にも活用できると思います。

後藤様:
そうですね。私たちは、プロジェクトの企画だけでなく、実際に建てた空間が提案通りに使われているのかを、大学等の外部機関と連携し効果検証することにも取り組んでいます。具体的には、居住者の心身の健康のために必要な建築空間や、あるいはソフト的な仕掛けの検討・検証、建築環境の評価をするにあたり、再生後の住宅の環境変化や、居住者の方の行動変容を調べる必要も出てきます。

敷地内でどういう生活をしているか、どう人が動いているか。広域でみるとどうなのか。
団地であれば、建物を再生することで街にどういう影響を与えるのか。商業施設であれば、それができることで人の流れがどう変わるのか。
敷地内や局地的にセンサー等で調べる人流と、KLAの広域なGPSデータとの組み合わせにより、そんなシミュレーションが実現できると良いなと思います。

(取材月:2023年7月)

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