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商圏分析の手法3|ジオデモグラフィクス手法による顧客プロファイリング

今回のマンスリーレポートでは顧客の住所情報や位置情報を基に、ジオデモグラフィクス手法によって顧客属性の見える化やライフスタイルを推定する手法をご紹介します。

月刊GSI 2018年7月号(Vol.85)

はじめに

 少子高齢化、人口の都市部への集中などにより、家族の姿や暮らし方・働き方などのライフスタイルが多様化する中、消費者の購買やサービス利用に対する嗜好性も多様化しています。企業のマーケティング活動においてはより消費者起点によるマーケティング活動が求められています。

 消費者・生活者をターゲティングする上で重要なデータのひとつに、企業が保有する顧客データや会員データがあります。顧客データを分析し可視化することによって自社の売上に貢献する生活者属性を推察できますが、それには顧客データに付随する性年齢・世帯構成・所得などの属性情報が必要となります。多くの企業では自社の顧客データに何らかの属性情報が紐付いており、それを既に分析に活用していますが、一方で顧客の住所情報しか持ち合わせていない場合も多いかと思います。

 今回のマンスリーレポートでは顧客の住所情報や位置情報を使ったジオデモグラフィクス手法により、顧客属性の見える化やライフスタイルの推定を進める方法をご紹介します。

ジオデモグラフィクス手法とは?

 ジオデモグラフィクス手法とは、ジオグラフィ(地理学)とデモグラフィ(人口統計学)を組み合わせた造語です。地理情報と人口統計学情報を掛け合わせれば、顧客属性の住所データに「意味」と「価値」を持たせることができます。

ジオデモグラフィクス手法を用いた顧客セグメンテーションに欠かせないデータベースにジオデモグラフィックデータがあります。今回は技研商事インターナショナルの「居住者プロファイリングデータ」をご紹介しつつ、このデータを用いた顧客データのジオデモグラフィクス分析について解説します。

 居住者プロファイリングデータは、生活者のライフスタイルやライフステージを説明する約60のデータ項目(総務省の国勢調査から、年齢、家族構成、住宅関係、職業の計60項目を採用)を主成分分析によって9つの因子に縮約し、因子の波形パターンからクラスター分析によって30の居住特性に分類したデータベースです。下の図のように町丁目などの小地域単位で30のクラスターコードがセットされています。

【居住者プロファイリングデータの30種類のクラスターコード】

【地域ごとのクラスター分布】

顧客プロファイリングの分析ステップ

 顔の見えない顧客に関して、居住者プロファイリングデータを用いて顧客プロファイリング分析を実施するための手法をご紹介します。下の図は顧客データのイメージです。顧客の住所があれば地図上にプロットすることができます。

【顧客の住所・位置情報をマッピング】

 次に各顧客住所に対して居住者プロファイリングデータのクラスターコードを紐づけます。商圏分析GIS「MarketAnalyzer™」を用いれば数クリックで作業を完了できます。

【顧客住所にクラスターコードを付与】

 そして最後にクラスターコード単位で顧客数などを集計します。下の図は各町丁目の世帯数と、顧客数がどれだけ浸透しているかのシェア率とを重ね合わせ、居住者のボリュームに対する顧客の出現率も同時に集計したものです。

【クラスター単位で顧客の出現率を集計】

 これによって、首都圏14「新興富裕層」と首都圏15「都会のセレブ」という2つのクラスターコードの地域に顧客の多くが居住していることがわかります。

 それでは例として首都圏14「新興富裕層」の地域特性を見ていきましょう。

 このクラスターに居住する人数は全国の人口の5.09%を占めています。都心エリアの中で最も平均年齢が低いエリアです。賃貸マンションに住む富裕度の高い高学歴単身世帯が多い一方、00~4歳の子供とその親世代である20~40代のニューファミリーが増えています。このように自社顧客の住所情報とジオデモグラフィックデータを重ね合わせることで、顧客のプロファイリングを行います。

 今回は単純に全顧客をクラスター単位で集計・分析しましたが、特定の商品カテゴリごとに実施すれば、それぞれのカテゴリの支持層を類推することもできます。

新規顧客を獲得するための販促エリアの最適化

 自社顧客をプロファイリングした後は、自社顧客に類似した潜在顧客が多いエリアを絞り込み、折込チラシやポスティング、郵便番号ターゲティングを組み合わせて新規顧客を開拓します。

 これを先ほどの首都圏14と首都圏15のエリアに絞って地図に表現してみました。地図上の赤い網掛けのエリアが、自社顧客に類似したターゲットを多く含む優先販促エリアと定義できます。

【クラスター14と15の地域分布】

顧客をプロファイリングする要素としての距離

 店舗に誘導する販促エリアを最適化したい場合、店舗から商圏内の各町丁目への距離を基に、店舗から近いエリアへは店舗への誘致を目的とする販促を行い、店舗から遠いエリアへはECでの購買を促すことを目的に販促を行うなど、距離を加味した販促手段の選定も可能です。

顧客データがない場合の顧客プロファイリング

 そもそも顧客データを保有していない企業や、保有していても分析に利用できない環境・ルールの企業もあるかと思います。そうした場合、顧客データを用いないで自社の顧客をプロファイリングすることもできます。

 店舗やその周辺エリアに来訪した人のスマートフォンから取得できるGPS位置情報を顧客データと同じように分析対象とする方法です。当社では2018年4月から当社の商圏分析GIS(地図情報システム)で「任意の店舗・エリアに来訪した人がどこに居住・勤務しているのか」を分析可能な「PPLA(プロファイルパスポート)ライフエリア分析機能」を提供しています。逆に言えば、属性のない、顔の見えないGPS位置情報も居住者プロファイリングデータと組み合わせることでどんな人が来訪しているかを類推することが可能となります。

※本機能による顧客プロファイリング手法は特許出願中です。
※本機能の詳細はこちらをご参照ください。

店舗の来訪者分布

 PPLAライフエリア分析機能を用いて、とある商業施設の来訪者分布(来訪者の居住地分布)を地図上に表現しました。来訪者分布は個人を特定できる情報ではなく500mメッシュ単位となっています。

【GPS位置情報を用いた店舗来訪者分布】

 この来訪者の居住地分布と居住者プロファイリングデータを重ね合わせて分析します。先ほどと同じ分析ステップでプロファイリングしました。下の結果から、首都圏21「都市型ニューファミリー」が最も出現率が高いクラスターとなりました。この店舗の来訪者は「6歳未満の子供がいるニューファミリー世帯の特徴が強く、マンション住まいが多く、居住年数が短い」という傾向が読み取れました。

【GPSによる来訪者居住地のクラスター出現傾向】

終わりに

 ライフスタイルが多様化する中、企業のマーケティング活動、とくにエリアマーケティングにおいては、顧客をより詳細にセグメントし、顔の見えない顧客の顧客像を「見える化」していく必要があります。保有している顧客情報は、弊社の居住者プロファイリングデータを合わせることで、マーケティング活動により有効にご活用いただけます。

※居住者プロファイリングデータの詳細はこちら

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