エリアマーケティングラボ

~業界の最新動向~

人流データとは?業界別活用の基礎から応用、海外事例まで。

2023年9月6日号(Vol.112)

はじめに

新型コロナウイルスの流行により、街の人出や混雑状況等を示す指標のひとつとして認知が高まった「人流データ」。2020年頃より、認知度と共に民間企業や官公庁・自治体での利活用も広がっています。
今回のコラムでは、位置情報を基にした人流データの活用について、業界別の利用例や実際の具体事例、海外の動きなどを紹介します。



人流データとは

スマートフォンのGPS位置情報やWi-Fi、ビーコン等を通じて収集・分析された人の動きや流れを示すデータです。人流データを活用することで、人が移動する時間や場所、人の流れのボリューム、各エリアや施設・店舗内での人の動きや滞在時間等を把握できるようになります。




人流データが注目される理由

■ 精度の高い位置情報データを取得しやすくなった

スマートフォン等の携帯端末やWebアプリケーション、屋内の人流計測ができるAIカメラやビーコン等の普及により、精度の高い位置情報が容易に取得できるようになりました。

■ AIの発達で膨大なデータを分析しやすくなった

AIが登場する前は、ビッグデータの解析は専門知識を有するスタッフを要したり、分析するためのデータの下処理に途方もない時間がかかったりと、活用に至るまで多くの労力がかかっていました。昨今のAIの発達により、日々、膨大に蓄積していく位置情報データを誰でも使える簡単なツールで容易に解析できるようなサービスも増えてきました。

■ コロナ禍以降、人流データの認知が高まり、活用事例も増えてきた

2020年にコロナ禍で混雑・密回避の必要性が高まり、連日ニュース等で主要エリアの人出情報が流れていたこともあり、“人流データ”の認知度は一気に高まり生活に身近なものとなりました。こうした認知度や需要の高まりを受け、人流データを活用する企業や官公庁・自治体が増えていくにつれ、活用事例も増えていき、注目を集めることとなりました。



人流データでどんなことが分かるか

位置情報等のデータを用いると常に最新の人流を把握できるため、人口動態の把握に最適といわれています。こうしたタイムリーな人流の把握は、民間のエリアマーケティングや官公庁・自治体の都市計画、観光分析、防災計画等において、機動的な戦略立案のためのエビデンスとして活用されています。

■ 来訪者の推移が分かる

特定の施設やエリアに来訪する人のボリュームを時系列で把握できます。
従来の人力による出口調査等と比べて、リソースを割かずに机上でデータを定点観測すれば、簡単に人流の推移を把握できるようになります。

人流データによる来訪者推移グラフ
とある3施設の来訪者推移の時系列比較

■ どんな人が来ているかが分かる

スマートフォンの位置情報等を活用した人流データの場合、端末の契約者情報等から性別や年代等の属性を紐づいていることがあるため、来訪者の属性を分析することも可能です。
また、滞在している時間や長さにより、来街者なのか勤務者なのか居住者なのか等の推測も可能です。

人流データによる来訪者属性分析
店舗別年齢別来訪者数

■ どこから、どんな手段で来ているかも把握できる

例えば、夜間に滞在している位置情報から推定の居住地を把握できるため、どこから来訪しているかといった分析も可能となります。
また、位置情報データの移動速度等を加味し、徒歩なのか自動車なのか等の移動手段も分析することが可能です。

人流データによる来訪者居住地分析
複数店舗間の来訪者居住地分布地図

■ 施設や店舗、観光スポット等の併用状況や回遊状況が分かる

GPSデータ等の位置情報の活用で、例えば観光地にいくつかある観光スポットをどのように回遊・併用しているのか、混雑しているエリアはどこか等を把握することができます。GPSデータ等は館内のフロア毎の人流把握等は難しいとされていますが、ビーコンやカメラ等を活用すると、施設内や店舗内等の屋内の人流を細かく把握することも可能です。

人流データによる来訪者居住地分析
指定した複数店舗間の併用状況分析



【業界別】人流データの活用例(基礎編)

■ 小売・サービス業

・出店エリア分析(店前や周辺の直近の通行量を把握でき、売上予測の変数として活用)
・自社/競合店舗の顧客分析(性別・年代等の属性が分かる人流データの活用により客層や客足を把握し、MDや販促戦略に活用)
・自社/競合店舗の商圏分析(店舗来訪者の居住地を把握し、リアルな商圏サイズを把握)
・混雑状況の把握や防犯対策(ビーコン等で店内の混雑状況の把握、AIカメラ等で不信な動きの検知等も実現)

■ 飲食業

・店舗のポテンシャル評価(店前や周辺の通行量を把握し、ポテンシャル評価に活用)
・広告配布エリア分析(自社や競合店舗への来訪者の居住地を把握し、販促エリアを最適化)

■ 不動産デベロッパー

・既存店分析(自施設の客層や客足を把握。テナント誘致や施設運営に活用)
・競合店分析(競合の店舗や施設への来訪者を把握し、自施設の店舗運営、販促施策に活用)

■ メーカー・広告代理店

・クライアントへの販促提案(広告主および競合店舗の来訪者分析をもとに、販促エリアを最適化)
・リテールサポート(店舗の来訪者や来訪の多い時間帯の把握により、MDや販促キャンペーン提案に活用)
・OOH媒体のオーディエンス把握(屋外広告周辺に集まる人や、媒体前道路の通行量を把握し、媒体選定時の検討材料に活用)

■ 自治体

・コロナ禍における人流モニタリング(人流の定点観測、繁華街等の滞在人口分析、大型連休時の観光エリア混雑状況把握等)
・観光動態の把握(観光エリアやスポットの混雑状況や回遊率、来訪者の属性を把握し、周遊ルート最適化や観光PR施策に活用)



【業界別】人流データの活用例(応用編)

■ 建設コンサルタント

・パーソントリップ調査(パーソントリップ調査の補完データとして対象エリアの人流データを活用)
・再開発エリアの現況把握と効果測定(開発前後の人流を分析し、現況把握や開発施策の効果測定に活用)

■ 大学・研究機関

・人流データの予測モデル構築(新型コロナウイルス拡散のモデル化や、スマートシティ計画における人流変化の予測等、モデルに投入する変数として人流データを活用)

■ 金融 シンクタンク

・工場の稼働状況の推測(工場に滞在する人流を分析し、工場の稼働状況を推測。企業の景況分析等に活用)
・繁華街の人出から景況を探る(景気と相関関係の高い人流を、主要エリアにおいて定点観測し、景況分析に活用)

■ 交通機関

・バス路線の新規開発(対象エリアの人流を把握し、需要の高そうな路線の新規開発に活用)
・交通機関利用者の需要分析(通勤・通学の人流を分析し、利用ニーズの高いエリア選定等に活用)



当社の人流データ分析事例

人流データの活用例として、当社システムを活用した分析事例をご紹介します。

■ 観光地の人流・周遊行動分析(2021年10月)

新型コロナウイルスのワクチン普及や感染者の全国的な減少を受け、アフターコロナを見据えた観光地づくりの需要が高まりつつあった2021年秋に実施した自主調査事例です。人流データを活用し、観光地の対策・施策に役立つ観光スポットの人流傾向や周遊状況をレポートしています。

〇 詳細はこちら:https://www.giken.co.jp/column/202110/


■ 投資情報としてのGPS位置情報(人流)データ(2020年1月)

投資情報としての人流データ活用
「投資情報としてのGPS位置情報データ」と題して、位置情報ビッグデータを使った景況把握を紹介します。

〇詳細はこちら:https://www.giken.co.jp/column/202001/



人流データ活用の海外事例

海外では、位置情報は個人情報保護の観点からセンシティブな情報と捉えられるものの、AIの発達に伴い人流データの活用も活発に行われています。シンプルに位置情報を活用するだけでなく、人流データと様々なデータと組み合わせることで、より詳しいインサイトを得てビジネスに活用している印象を受けます。
ここでは、人流データ活用の海外事例を紹介します。

■ 渋滞中のドライバーの位置情報を捉え、移動中の車にフードデリバリー

某ハンバーガーチェンが、渋滞が激しいエリアにサイネージ広告を出し、移動中の車に商品をデリバリーするキャンペーンを実施しました。
オーダーを受けるとGoogle Maps APIを使ったシステムで車の位置情報を把握し、配達員が商品をバイクで届けるという仕組み。渋滞に悩むドライバーに好評のキャンペーンとなったようです。

Burger King Mexico「LA TRAFFIC WHOPPER」


■ 精緻な位置情報で、人流をより精緻に可視化

GPS等の位置情報は、ビル等の屋内のフロア別に時流を把握することが難しい傾向にありますが、海外ではGPSにそのほかの位置情報を補完することで、高精度な位置を把握することが可能になっています。
例えば、店舗に入った瞬間に入店を感知しタイムセール情報を配信したり、滞在時間を精緻に計測して待ち時間に応じた割引クーポンを配信したり、人の行動に即して適切なタイミングで顧客接触を実現するサービスも登場しています。


おわりに

さて、本コラムでは、人流データの活用についてのほんの一部をご紹介いたしました。
人流データは、単に人の流れやボリュームを追えるだけでなく、どんな人の流れなのかといった属性や時系列での変化等、より幅広い視点で分析することで、そのエリアや施設・店舗の使われ方や来訪者のニーズ等も推測することができ、またその他のデータと組み合わせて分析することでも多くの示唆を得ることができます。

また、今回のコラムでは、当社開発の人流分析ツール「KDDI Location Analyzer」を使った具体的な事例などもご紹介しましたが、当社では他にも人流が分かる様々な位置情報データを取り扱っております。
それぞれ、用途により適するシステムやデータが変わってきますので、詳細説明をご希望の方はお問い合わせください。


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