エリアマーケティングラボ

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位置情報とインタレスト情報で可視化するDMP「AudienceOne®」

今回のマンスリーレポートは、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)の川野様に寄稿いただきました。当社ではDACのオンライン興味・関心統計データをエリアマーケティングデータとして提供しています。

月刊GSI 2018年10月号(Vol.88)

冒頭

 皆様はじめまして。デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(以下、DAC)のソリューションビジネス開発部の川野と申します。今回は当社が保有するDMP「AudienceOne®」を活用した統計データについて、エリアマーケティングの分野においてどのように活用するか、より具体的にはチラシのプランニングや施策の効果検証・分析をどのように実施するか等、過去の事例などを交えご紹介させていただきます。よろしくお願いいたします。

会社紹介

 デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(以下、DAC)は、インターネット広告の黎明期にあたる1996年の設立以来、市場の形成に携わり業界をリードしてきました。

 主に媒体社や広告会社などのパートナー企業様に向けて、広告枠の仕入れ・販売、プランニング、レポーティングまでトータルに支援するメディアレップ、国内最大規模のトレーディングデスクによる広告運用、高い技術力を誇るソリューション開発など、デジタルマーケティングにおける広告を基点とした様々なサービスを提供しています。

 今回は上記の内、ソリューションサービスとして当社が提供するDMP「AudienceOne®」、中でも「AudienceOne® Discovery統計データ」という、WEB上のユーザーの行動を郵便番号単位に集計・解析したデータの活用方法をご紹介いたします。

DACのDMP「AudienceOne®」

 いきなり活用方法というよりも、そもそも弊社のDMP「AudienceOne®」とは何か?というところからご説明させていただきます。

 「AudienceOne®」は、所謂パブリックDMPもしくは3rd-party DMPと呼ばれるプラットフォームです。AudienceOne®上では、様々なWEBサイトやアプリから収集したユーザーのログデータを分析・加工し、セグメントデータとして保持しております。こうしたセグメントデータを、代理店様や事業主様において、広告配信やCRM領域でご利用いただいているというのが、プラットフォームの概略です。

―AudienceOne® 概要図―

 より具体的に施策例を交えてご説明させていただくと、例えば飲料系メーカーのクライアント様が広告配信において、「自社のブランド以外の清涼飲料水に興味があるユーザーをスイッチさせたい」という課題を抱えている場合、該当するユーザーセグメントを「AudienceOne®」にて作成し、実際の配信プラットフォームに連携することが可能です。これにより、広告主様および代理店様は、より効率的な広告配信が実現できます。

 他にも、同様にして作成したセグメントデータをクライアント様の自社顧客IDに対して1to1で戻すことも可能です。そうして付与されたセグメントデータを、事業主様において自社顧客の離反防止施策等に活用していただいた実績もございます。

-AudienceOne® 主要サービス概要図-

※前者の広告配信を「AudienceOne® Connect」、後者データの1to1での紐づけを「AudienceOne® Discovery」というブランドで提供しております。

エリアマーケティングに活用できるデータ

 ここまでご覧になった皆様は、なんとなく当社のDMPについては分かったものの、インターネット上のセグメントデータをエリアマーケティング分野に利用する方法についてはピンと来ないとおっしゃるかもしれません。ここからはエリアマーケティングの分野への導入として、当社が保有している「位置情報」と統計データについて、具体的に解説させていただきます。

 「位置情報」と一口に述べましても、昨今は多数のデータソースがございます。例えばスマートフォンのGPSログや、Bluetoothで検知するBeaconログ、またBSSIDで判断するWi-Fiログなどが、消費者の「移動」を捉える動的な位置情報として有名です。

 しかし、当社の保有する位置情報は、そうした「移動」ではなく消費者の静的な位置情報「居住地・勤務地」を郵便番号単位でセグメント化したものであり、名前を「郵便番号セグメント」といいます。「郵便番号セグメント」とは、ユーザーがアクセスするIPアドレスを解析する技術と、IPアドレスの利用位置を解析する技術の二つによって成り立っております。

-郵便番号セグメント概要図-

 IPアドレスとはインターネット接続を行う上での住所のようなもので、例えば「111-1111という郵便番号で利用されている」といったような情報を組み合わせることも可能です。また、このIPアドレスは家庭等のWi-Fiに個別に採用されており、該当するアドレスへの接触時間や頻度、同接続端末の数を分析することで、そのアドレスが法人のものなのか、もしくは家庭で利用されているものなのか、といった情報も推定で付与することが可能です。

 更にこれらの「郵便番号111-1111で利用されている」「おそらく家庭のIPアドレスである」といった情報を持ち寄り、そのIPアドレスからアクセスするユーザーのID(cookieやAAID/IDFA等)まで紐づけることで、最終的には「111-1111に住んでいるユーザー」といったようなデータを作成することが可能となります。

 この時点で勘のいい方は気づかれているかもしれませんが、上記の情報だけでもエリアマーケティングの分野に利用できるデータを作成することが可能です。

 国勢調査を例に説明しますと、国勢調査がエリアごとの消費者の人口という情報を作成している一方で、当社はエリアごとの消費者の「インターネット人口」という情報を作成している形です。ちなみに、当社がDMPにて捉えているトラフィックは、ユニークなユーザーの数において、cookie単位で月間4.8億件、またアプリ(ADID/IDFA)単位で9,000万件にも上るため、国勢調査と比較しても、データの規模において信用に足るということが理解いただけるのではないでしょうか。

AudienceOne® Discovery統計データ

 また国勢調査を例にして説明しますと、国勢調査においては一人の消費者に対し、様々な調査設問結果が紐づいており、消費者の回答を統計処理したデータが、これまで広告主様や代理店様のエリア施策立案に活用されてきました。

 当社のデータも一人の消費者(cookieやAAID/IDFA)に対し、郵便番号以外の様々なセグメントデータを付与しております。そうした様々なセグメントデータを消費者の興味関心情報として統計的に処理したものを「AudienceOne® Discovery 統計データ」として販売しております。

 一例として、下記のようなセグメントが当社のDMPでは用意されております。

AudienceOne®で保有するデータ一例

 興味関心データは、ユーザーのWEBサイト閲覧情報やインストールしているアプリの情報を基にして生成しております。上記の図にあるカテゴリは一例に過ぎず、総カテゴリ数は900件弱に及びます。実際のデータは下記のようなイメージで保持しております。

 前項でご説明した郵便番号セグメントローデータイメージとcookie IDで組み合わせることで、総カテゴリ数900件弱を誇る、これまでのエリアマーケティングにはなかった大規模なユーザーの興味関心情報の統計データを生成できるというわけです。

「AudienceOne® Discovery 統計データ」

 ここからは統計データを地図上に落とし込むなどの方法でより詳細に見ていきましょう。例えばAudienceOne®のセグメントに「不動産>賃貸」があります。このセグメントは、賃貸系のWEBサイトを直近でよく見ているユーザーに対して付与されるものです。東京都の2018年7月~2018年9月までのデータを実際に地図上で表現すると下記のようになります。

-不動産>賃貸 ユーザー数推移-

 これは単純に郵便番号当たりのユーザー数によって地図を色分けしているだけですが、都心中心に分布が偏っているのが見て取れるかと思います。しかしこの時点で賃貸物件に関心を持つ層が都心に多いと結論付けるのは早計です。何故なら上記のデータは単純に「数」のデータであるため、インターネットユーザー人口が多い地域に濃く出がちなのです。こうした情報を精査するため、その郵便番号にいる該当ユーザーの内訳を同都道府県で偏差値化したデータも、当社はデフォルトで用意しております。偏差値データを地図に反映させると下記のようになります。

-不動産>賃貸 ユーザー偏差値分布-

 どうでしょうか?単純に都心に集中しているわけではない結果となりました。ちなみに西多摩のユーザー数が多いのは、そもそもインターネット人口も少ないエリアであるためのノイズと推測されます。実際に分析する際は母数で足切を行う必要がございます。ではもう少し細かく見ていきます。

-不動産>賃貸 偏差値フォーカス図-

 ざっくりですが、都心、特に23区内は賃貸ユーザーの含有率が高いようです。23区から少し西に行くと途端に含有率が低くなり、国立市まで行くとまた徐々に増えていくといったような分布になりました。

-不動産>賃貸 フォーカス&主要路線可視化-

 更に解釈しやすいように何本か線を引いてみました。中央線や京王線等東京の西方面に伸びる主要な鉄道の路線です。なんとなくですが鉄道路線または大きな駅周辺には、不動産賃貸分布が集中しているような気がしませんか?当然ですが、所謂住宅街では不動産への関心が低く、逆に線路付近など賃貸物件の多い(=賃貸物件に住んでいる)地域では不動産関心度が高く出るようです。その他まだまだ検証可能な要素は多数ありますが、実際に当社のデータを使いユーザーの趣味趣向をエリア傾向として可視化するとこのような形になります。

施策活用事例:統計データを用いた効果検証

 では最後に具体的な事例についてご紹介させていただきます。まず、従来のエリアマーケティングにおいては、国勢調査等の統計データは施策立案段階やエリア分析で用いられることが多く、案件単位の効果測定という文脈では利用されなかったかと思います。今回の例では、当社の統計データを「時間軸を指定して作成」することによって効果測定に活用いたしました。

 お題は全国各地で実施したあるダイレクトメール施策に関して、申し込み以外の「間接指標」を可視化することができないか?というものでした。

-DM案件概要-

 上記のお題に対して当社が採用したアプローチは「該当地域において、該当する商材に関連するユーザーのキーワード検索行動が、施策を行う前後でどう推移したかを可視化する」というものです。

-施策前後分析概要-

 具体的には施策実施日を9月14日と仮定し、その7日前と7日後に、ダイレクトメールを投函した地域のユーザーを抽出し、推移を分析しました。同様に対象期間中にダイレクトメールを投函した地域に住んでいてかつ「今回の商材となる具体的な保険のキーワードを調べたユーザー群=ターゲットセグメント」を抽出し、推移を分析しました。両者の推移を比較し、前と後でターゲットセグメントの増加率がリフトしたかどうかを抽出しました。結果は下記のとおりです。

-検証結果-

 グレーのグラフが単純に該当エリアに住んでいるユーザー数の推移、赤のグラフがターゲットセグメントの推移となります。当然ですが、後者は前者に包含されているため、数としては全体よりも少ないです。グラフを見ていただけると分かるのですが、やはり施策後から約1.4倍のリフトが見られ、ダイレクトメールを投函された地域のユーザーが、商材に関する情報を更に深めるために検索したであろうということがうかがえます。

 また、上記グラフ上には記載がないのですが、施策後7日経過した後、ターゲットセグメントが減少するという結果から、ユーザーが商材に興味を持つのは施策後7日までがピークという仮説が考えられます。次回以降、ダイレクトメールを投函した日の直後に、WEB広告の入札を強める、あるいは検索広告を実施するなどの効率的なデジタル施策が展開できるかもしれません。

おわりに

 当社の保有する興味関心行動のエリアデータについて、概要と具体案件を紹介させていただきました。 昨今興味関心行動は移ろいやすく、パートナー企業様からはよりリアルタイム性のあるデータが求められていることを当社としても強く感じております。AudienceOne®のデータはそうしたリアルタイム性に対応できるものですが、一方でノイズはあり丁寧な分析や要件に応じたデータ作成が必要となります。

 今回当社からお伝えしたいメッセージとしては、消費者の興味関心行動が分かるデータが当社にはあるということと、また、当社にはその他様々なデータセットや分析する基盤環境があるということの二点になります。実際に利活用する段階においては、やはりただ漫然とデータを使うのではなく、具体的なイメージが必要ですが、デジタルかどうかにかかわらず当社のAudienceOne®で解決できるケースは多いです。「もしかするとこういったデータがAudienceOne®にあるのでは?」というほぼアイデアレベルのお話でも、当社としてはとても嬉しく思います。ご相談までいかなくてもちょっとした質問などございましたら是非是非お問合せください。最後まで長々とありがとうございました。

■ 著者プロフィール

デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社ソリューションビジネス開発部 川野 大 様2016年、DACに入社。広告商品・マーケティングサービス・自社の保有するDMP「AudienceOne® 」の企画開発に従事。位置情報に限らず、企業間アライアンスという点でデータを活用したソリューションを提供している。

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