エリアマーケティングラボ

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年末年始Uターンラッシュはどう動く?|人流データで読み解く最新傾向

2025年12月8日号(Vol.199)


Uターンラッシュイメージ

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\専門知識が無くても、人の動きが数クリックで詳細に分かる!/

はじめに:2025年-2026年の年末年始、人の動きはどう変わる?

2025年も終わりが近づき、年末年始の帰省や旅行需要が本格化するシーズンがやってきました。今年の年末年始も最大9連休!異例の長期休暇が予想される中、Uターンの動きはどう変化するのでしょうか?

この時期の人流トレンドを正確につかむことは、商戦計画・販促企画・出店戦略などあらゆる意思決定に直結します。特に年末年始は、カレンダー配列の違いがダイレクトに人の動きに影響するため、毎年「前年同週比較だけでは読めない」難しさがあります。 本コラムでは、人流分析ツール「KDDI Location Analyzer」をを用い、東京駅・羽田空港・海老名SAを対象に、今年と昨年の年末年始を振り返り、来る2026年の商戦に向け、データに基づいた戦略立案をヒントになる情報をご提供します。

年末年始の動きイメージ


分析対象とデータの捉え方

今回の人流分析では、以下の3つの視点からデータを整理しました。


    (1)時系列比較でみるUターンラッシュの変化
    ・2023–2024年:感染症流行後の過渡期で、休暇は比較的短い年。帰省ピークが分散。
    ・2024–2025年:物価上昇・円安が定着し、9連休による移動需要の明確な押し上げ。

    (2)地点別の特徴
    ・東京駅:広域鉄道の要として、帰省者、出張層、観光客が混在
    ・羽田空港:長距離移動・国際線の拠点で、旅への投資意欲を示す指標
    ・海老名SA:自動車移動の中心で、自由度の高い移動を選択する層を反映

    (3)属性別比較(性別・年代別)
    ・性別・年代ごとの差異、移動ピークの違い、滞在時間の長さを比較することで、移動者の意思決定の傾向を読み解く。

これらの視点を総合的に捉えることで、単なる移動量の増減だけでは見えにくい「なぜそう動いたのか」という背景に迫ります。

移動イメージ


全体傾向:年末年始の移動量はどう変わったか?

2023年末から2024年始にかけての期間と、2024年末から2025年始にかけての期間を比較した場合、移動手段によって人流の増減に顕著な違いが見られました。


    1.東京駅(鉄道・新幹線):活動時間の「長時間化」
    東京駅の来訪者数は、2023-2024年(約100.6万人)から2024-2025年(約117.6万人)にかけて、約17%の大幅な増加が見られました。 これは、新幹線を利用した帰省やUターン移動が大きく回復または増加したことを示唆しています。
    2.羽田空港(飛行機):全体的なベースアップ
    羽田空港の来訪者数も増加しており、2023-2024年(約58.1万人)から2024-2025年(約63.4万人)にかけて約9%の増加となりました。
    3.海老名SA(自動車):より「安全・健全」な移動へ
    海老名SAの来訪者数は、2023-2024年(約30.4万人)から2024-2025年(約28.4万人)にかけて約6.6%の減少となりました。

これらの傾向から、2024-2025年の年末年始は、長距離移動において新幹線や航空機といった公共交通機関の利用が優先され、自家用車による移動は相対的に抑制された可能性が推測されます。

全体傾向イメージ


性別・年代別の傾向

世代ごとにUターンラッシュの動きが異なっており、ターゲット戦略にも重要な示唆を与えます。


    1. 東京駅(鉄道・新幹線):現役世代を中心に爆発的な回復
    30代 (+27.8%)、40代 (+22.1%) の伸びが突出しています。
    20代も+12.9%と好調ですが、30-40代の回復力が全体を牽引しました。
    一方で、70歳以上は微減 (-0.5%) となっており、高齢層は依然として慎重な姿勢を崩していないことが分かります。
    →ファミリー層・働き盛り世代の帰省が鉄道へ回帰。
    2. 羽田空港(飛行機):60代の動きが活発化
    30代 (+15.4%) がトップの伸びですが、他エリアと異なるのは60代 (+16.1%) の大幅な増加です。
    「アクティブシニア」層が、時間に余裕のある長距離旅行へ戻ってきた可能性があります。
    しかし、こちらも70歳以上 (-4.1%) は減少しており、60代と70代で明暗が分かれました。
    →アクティブシニア層が旅行・帰省に再び積極的。
    3. 海老名SA(自動車):全世代で減少、特に高齢層が顕著
    唯一、全年代でマイナスとなりました。
    特に70歳以上 (-15.1%)、60代 (-12.9%) の落ち込みが激しくなっています。
    昨年は「公共交通を避けるためのマイカー移動」として高齢層も高速道路を利用していましたが、今年は「そもそも外出を控えた」か、あるいは「公共交通に戻った(60代の一部)」可能性があります。
    → 高齢層のマイカー移動は大幅に縮小。

詳細分析イメージ

年代

キーワード

考察

20代

旅行・帰省とも回復

東京駅・羽田ともに増加。行動制限緩和の恩恵を素直に享受しています。

30-40代

Uターンラッシュの主要層

東京駅での伸びが圧倒的。ビジネス需要だけでなく、ファミリー層の帰省が車から鉄道へ大きくシフトバックしたと考えられます。

50代

堅調な推移

全体のトレンドに沿った動きですが、突出した変化はなく安定しています。

60代

空の旅へ

鉄道(東京駅)は微増にとどまりましたが、飛行機(羽田)への回帰が鮮明です。時間とお金を使う旅行スタイルが復活しています。

70歳以上

「出控え」継続

東京駅・羽田で減少、さらに頼みの綱だった車(海老名)でも大幅減。感染リスクへの警戒感からか、全世代で唯一、明確に「移動総量を減らしている」世代と言えます。



時間帯別の分析(2023年から2024年データに基づく)

時間帯別データからは、各交通機関のピーク時間帯と利用者の属性に大きな違いが見られます。

1.東京駅(鉄道・新幹線)の利用時間帯

東京駅は、昨年と比較して最も劇的な回復を見せています。単に人が増えただけでなく、活動時間が朝晩に大きく広がっているのが特徴です。

    早朝の立ち上がり:
    7時台ですでに約5万人(昨年4.2万人)と、動き出しが早まっています。

    ピークの高さ:
    午前中から昼過ぎ(10時半から13時半)にかけて利用が集中します。昼のピーク(13時)は16.2万人を超え、昨年の12.6万人を大きく凌駕しています(約+28%)。

    深夜の強さ:
    特筆すべきは深夜帯です。24時(午前0時)時点で昨年5,400人だったのが、今年は約9,000人と1.6倍に増加。終電間際や深夜バス、あるいは深夜営業の店舗利用など、夜の経済活動が戻っていることが示唆されます。

    →年末年始の新幹線移動は「早朝+昼+深夜」という三段構えのピーク構造。

2.羽田空港(飛行機)の利用時間帯

羽田空港は、特定の時間にピークが偏ることなく、日中(8時〜20時)を通して常に高い水準(15万〜19万人台)を維持しています。

    夕方〜夜の滞留:
    昨年は夕方18時以降に急速に人が減っていましたが、今年は20時台でも12万人(昨年10万人)と高い水準を保っています。遅い時間のフライト利用や、空港施設での滞在時間が増えている可能性があります。

    早朝の活動:
    5時台から既に多くの利用があり、特に5時半には男性が28,129人と、東京駅や海老名SAと比較して非常に活発です。

    深夜利用:
    24時以降も2万〜2.5万人が利用しており、深夜フライトや早朝フライトに備える利用者が一定数いることがわかります。

    → フライトスケジュールに合わせた滞在時間の長期化が鮮明。

3. 海老名SA(自動車)の利用時間帯

海老名SAは非常に興味深い対照的なデータを示しています。

    日中の激増: 昼のピーク(13:30)は2.8万人を超え、昨年の2.3万人を大きく上回っています。「昼間に堂々と移動する」層が完全に復活しました。

    深夜の逆転現象:
    一方で、深夜25時(午前1時)以降を見ると、今年の方が昨年より人が少ない時間帯があります(例:26時半 昨年1.48万人→今年1.41万人)。
昨年は「密を避けるための深夜移動」や「分散移動」が推奨されましたが、今年はそうした無理な移動が減り、「日中に移動し、夜はしっかり休む」という通常のサイクルに戻った、あるいは渋滞回避のための過度な深夜走行が減った可能性があります。

→ 「深夜移動で密を避ける」行動が大幅に減少し、日中移動が完全復活。

時間帯別の分析


考察とまとめ

この人流データ分析から、年末年始のUターンラッシュにおける移動手段のトレンドと、利用者の行動パターンに関するポイントは以下のとおりです。

    1. 公共交通機関へのシフトと回復
    2024-2025年の期間は、東京駅(鉄道・新幹線)と羽田空港(飛行機)の利用者が増加しており、コロナ禍後の移動需要の回復と、特に新幹線による長距離移動が活発化したことが示唆されます。対照的に、海老名SA(自動車)の利用者は減少しており、全体として公共交通機関へのシフトが見られます。
    2. 移動手段とターゲット層の明確化
    羽田空港は男性ビジネス利用や家族旅行など、費用対効果や速達性を求める男性を中心とした層が利用する傾向が強いです。 東京駅は男女比が均衡し、特に20代の若年層や、帰省・旅行で新幹線を利用する層が中心です。20代女性の利用が多い点は注目に値します。
    海老名SAは40代を中心とした層が利用しており、自動車による家族旅行や帰省の拠点となっていると考えられます。
    3. 混雑ピークと移動戦略
    各交通モードのピーク時間帯は分散しています。
    新幹線利用者は午前中から昼過ぎに集中し、特に昼食時間帯前後にピークを迎えます。
    飛行機利用者は午後の早い時間帯にピークがあり、チェックイン時間やフライトスケジュールに合わせた動きが見られます。
    自家用車利用者は、渋滞回避のために深夜帯(24時以降)の利用者が非常に多いのが特徴で、特に海老名SAの深夜帯の混雑は、早朝移動を試みる若年ドライバーが多いことを示しています。


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監修者プロフィール

市川 史祥
技研商事インターナショナル株式会社
執行役員 マーケティング部 部長 シニアコンサルタント
医療経営士/介護福祉経営士
流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師
一般社団法人LBMA Japan 理事
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1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。




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