エリアマーケティングラボ

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商圏をデータで読み解く|三軒茶屋駅周辺の分析事例

2025年7月23日号(Vol.163)

はじめに:経験とデータで商圏を捉える

本コラムでは当社の商圏分析用GIS(地図情報システム)「MarketAnalyzer® 5」を用いて、商圏をデータで読み解く手法について解説します。まず、従来の基本的な分析手法について述べ、その後、近年注目されている生成AIの活用法に触れていきます。
商圏を理解する上で、店舗開発担当者の土地勘や経験は非常に重要です。しかし、それだけに頼るのではなく、ビジネスを安定的に継続させるためには、客観的なデータ活用が不可欠です。つまり、経験とデータの両輪で分析を進めることが成功の鍵となります。

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従来の商圏分析手法

具体的には、どのようにデータを抽出するのでしょうか。当社の地図情報システムでは、分析したい店舗(既存店・出店候補地)の位置を登録し、半径〇kmや徒歩〇分といった範囲を設定します。ボタン一つで指定範囲内のデータが自動で抽出・集計され、Excel形式の帳票として出力することもできます。
分析において最も重要なのは、これらのデータをいかに読み解くかです。本コラムではその一例として、東京都世田谷区にある三軒茶屋駅周辺の商圏を取り上げ、分析のプロセスをご紹介します。



【分析事例】三軒茶屋駅周辺の商圏データ

今回は、三軒茶屋駅から半径1km圏内を商圏として設定し、その内部のデータを分析します。


三軒茶屋半径1km
【三軒茶屋駅半径1kmの範囲】


詳細に入る前に、まずは分析の基礎となるデータについて説明します。当社では約10万項目ものデータを扱っていますが、立地の特性を捉える上で特に重要なのが、以下の「3つの人口」です。
1. 夜間人口:その地域に住んでいる人。居住地の特性を表す。
2. 昼間人口:その地域で働いている人や学んでいる人。オフィス街・学生街の特性を表す。
3. 商業人口:その地域に買い物や遊びに来る人。繁華街の特性を表す。

3つの人口という商圏を読み解く切り口
【3つの人口という商圏を読み解く切り口】

ほとんどのデータは、この3つのいずれかの系統に分類できます。このフレームワークを用いることで、街の性格を多角的に理解しやすくなります。

データの読み解き①:居住者の特徴(デモグラフィック)

まず、三軒茶屋駅半径1km圏内のデータを例に、居住者の特徴を見ていきましょう。

【性別・年代の人口ピラミッド】
【性別・年代の人口ピラミッド】

帳票の数値をそのまま見ても特徴は掴みにくいため、グラフ化することが重要です。
例えば、性別・年代構成を人口ピラミッドで見てみると、三軒茶屋エリア(青色の折れ線)は、日本全国平均(緑色)や東京都平均(赤色)と比較して、20代から40代前半の女性の比率が特に高いことが一目瞭然です。このことから、この層をターゲットとした商品企画やサービスが有効である可能性が示唆されます。

データの読み解き②:ライフスタイルと消費傾向

次に、ライフスタイルに関するデータを見ていきます。

世帯構成と住居形態
【世帯構成と住居形態】

世帯構成:”一人暮らしの比率が62%”と、東京都平均(50%)を大きく上回っており、単身者向けの市場が大きいことが分かります。
住居形態:持ち家よりも賃貸の比率が高く、その多くがアパートやマンションなどの共同住宅です。


世帯年収と消費傾向
【世帯年収と消費傾向】

世帯年収
平均世帯年収は616万円と、東京都平均(549万円)より高く、所得水準の高い層が住んでいるエリアだと推測できます。

消費傾向
家計に占める支出の割合を見ると、東京都平均に比べ「住居費」「教養娯楽費」、そして「外食費」が高い傾向にあります。

これらのデータから、「賃貸住宅に住む、可処分所得の多い20~40代の単身者」という具体的なターゲット像が浮かび上がってきます。

データの読み解き③:街の特性(3つの人口)


昼間人口と3つの人口のバランス
【昼間人口と3つの人口のバランス】

「3つの人口」の軸で分析を深めると、三軒茶屋は夜間人口が多い「ベッドタウン」としての性格が強い一方、商業力も一定水準あるため「繁華街」の要素も併せ持つ、バランスの取れたエリアであることが分かります。
また、購買力の流出入を見ると、三軒茶屋の居住者は域外で買い物をする傾向が若干強い(購買力がマイナス)というデータも得られました。



従来手法の課題と生成AIの活用

これまで見てきたように、データをグラフ化し多角的に分析することで、商圏の特性を詳細に理解できます。しかし、この「読み解き」には専門的な知識やノウハウが必要で、分析スキルが属人化しやすいという課題がありました。
そこで我々は、これらのデータ分析結果を生成AIがテキストで要約・説明する機能を開発しました。


商圏データをAIが読み解き、7つの軸で解説する「商圏レポートAI」
【商圏データをAIが読み解き、7つの軸で解説】



生成AIによる分析レポートの自動生成

この機能では、レポートの出力時に「業種(飲食、小売など)」「目的(出店分析、販促企画など)」「ターゲット(若者、ファミリーなど)」といった条件を設定します。すると、その条件を考慮した上で、AIが分析結果のサマリーや各項目の解説を自動で文章化します。


MarketAnalyzer® 5 商圏レポートAI機能
【MarketAnalyzer® 5 商圏レポートAI機能】

例えば、「家具・インテリア店の販促」という目的でレポートを生成すると、AIは「インテリア商品への関心が高い層」や「住み替えのタイミング」といったキーワードを盛り込みながら、ターゲット層のインサイトを的確に説明してくれます。
これにより、専門家でなくても、誰でも迅速にデータに基づいた商圏理解が可能になります。



生成AIの応用:さらなる分析と施策立案へ

この機能のポイントは、公開情報を基にするのではなく、あくまで帳票に出力された客観的なデータのみを基に商圏を説明している点です。

実務では、このAIが生成したテキストをベースに、さらに深掘りした分析を行うことが可能です。例えば、生成された文章をChatGPTやGeminiなどの対話型AIに読み込ませ、「この商圏で家具店を出店する場合、どのような店舗コンセプトやターゲット設定が考えられるか?」といった質問(プロンプト)を投げかけることで、具体的な施策のアイデアを得ることができます。


客観的な正解データを素材に更に生成AIで示唆を得る
【客観的な正解データを素材に更に生成AIで示唆を得る】


実際に試したところ、AIは「メインターゲットは若者単身層、サブターゲットは富裕な高齢者層」といった具体的なターゲット設定や、それぞれのニーズに基づいた商品展開の方向性などを提案してくれました。

生成AIが出力した分析レポートイメージ
【生成AIが出力した分析レポート】


AIが導く商圏理解(コラム誘導)


まとめ

本・コラムでは、商圏分析の基本的なプロセスから、生成AIを活用した次世代のアプローチまでを解説しました。

  1. 1. データ抽出:地図システムで商圏を設定し、定量データを抽出する。
  2. 2. データ読解:グラフなどを用いて可視化し、商圏の特性を読み解く。
  3. 3. AIによる要約:生成AIを用いて、分析結果を分かりやすい文章で説明させる。
  4. 4. AIによる応用:AIとの対話を通じて、具体的な施策のアイデアを得る。

このように、データとAIを組み合わせることで、商圏分析はより効率的かつ高度になり、ビジネスの意思決定を力強くサポートします。



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当社のGIS(地図情報システム)「MarketAnalyzer® 5」で提供している「商圏レポートAI」は、無料トライアルが可能です。まずは気軽にお試しください!

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監修者プロフィール

市川 史祥
技研商事インターナショナル株式会社
執行役員 マーケティング部 部長 シニアコンサルタント
医療経営士/介護福祉経営士
流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師
一般社団法人LBMA Japan 理事
ロケーションプライバシーコンサルタント
Google AI Essentials

1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。




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