エリアマーケティングラボ

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激戦区で勝つ「出店戦略」とは?人流データによる「店舗分析」と「競合比較」

2025年12月23日号(Vol.202)

店舗分析れぽーと コラムカバー

はじめに

成熟する首都圏のスーパーマーケット市場において、エリア特性に応じた「勝ち筋」をどう描くかは、多くの開発担当者様にとって共通の課題です。 今回は、2025年6月に待望のオープンを果たした「ヤオコー杉並桃井店(標準タイプ)」、都市型小型フォーマットである「八百幸成城店」に焦点をあて、KDDI Location Analyzerを用いて周辺の競合店舗を含めた来訪者データをクイックに比較・分析します。
最新の人流データからは、両店それぞれにおいて”勝ち筋”の方程式が浮かび上がってきました。

あくまで人流データから見る店舗来訪者のボリュームや属性から得られたインサイトですが、今後の店舗戦略を立てる際の一助となれば幸いです。

※本コラムは、流通向け専門誌『激流』へ提供した「ヤオコー杉並桃井店」および「八百幸成城店」の来訪者デ-タを基に作成した分析レポートです。

〇『激流』の記事はこちら(外部サイトにリンクします)
ヤオコー杉並桃井店分析:https://gekiryu-online.jp/2025/10/218460
八百幸成城店分析:https://gekiryu-online.jp/2025/10/218483



\専門知識が無くても。いつでもどこでも何度でも分析可能!/


激戦区を正面突破した「ヤオコー杉並店」

まず、2025年6月にオープンしたばかりの「ヤオコー杉並桃井店」です。
同店周辺は、「ライフ西荻窪店」や「サミットストア善福寺店」が長年シェアを固める、屈指の激戦区です。
しかし、オープン直後の6月・7月のデータを詳細に紐解くと、その勢いは「ロケットスタート」と呼ぶにふさわしいものでした。

ヤオコー杉並桃井店および周辺の競合店舗の来訪者推移
ヤオコー杉並桃井店および周辺の競合店舗の来訪者推移(2024/8~2025/7)
KDDI Location Analyzer調べ

    日次来訪客数
    オープン翌月の7月には、日次の推計来訪者数(日ユニーク)が平均で約1,800人、週末のピーク時には2,100人を超える水準で推移しています。
    夕方ピークのシェア逆転
    特筆すべきは、スーパーマーケットのゴールデンタイムとも呼べる夕食準備の需要が高まる17時台の集客力です。
    データ期間(2024/8-2025/7)の来訪者データの積上げ数値を営業日数※で割り戻して日均等で試算すると、地域有力店である「ライフ」が17時台に約185人/日であるのに対し、ヤオコーは約234人/日相当を集客している計算になります。

つまり、オープン直後の勢いがあるとはいえ、この需要の高い時間帯において地域の人気店を約1.2倍上回る集客を実現していることになります。「後発の標準店は埋没する」という懸念を吹き飛ばし、圧倒的な商品力で近隣住民のメイン冷蔵庫の地位を力強く奪いつつあることが、数値からも裏付けられました。

※2024/8/1〜2025/7/31の店舗来訪者データを基に、ライフ西荻窪店は通年営業(365日)、ヤオコー杉並桃井は2か月営業(61日)と仮定し、17時台の来訪者数を営業日で割り出した値にて比較しています。


「タイパ」で現役世代を掴んだ「八百幸成城店」

一方、都市型小型店である「八百幸成城店」は、人流データを見る限り、競合の隙間を突くアプローチで成功を収めているようです。
特筆すべきは、競合である大型店(西友調布入間店)が取りこぼした「30代・40代の現役世代」を吸収している点です。

データを見ると、この1年間で西友への来訪者は30代が約1.4万人(約40%)も減少しています。対照的に、八百幸への来訪者は同年代にて約5,000人(約24%)増加しています。 さらに、ボリュームゾーンである40代においても、西友が微増(+2.7%)にとどまる中、八百幸への来訪者は約15%増をマークしました。

西友調布入間店と八百幸成城店の30代、40代の来訪者データ
惣菜の品揃えでは大型店に及ばない小型店が、なぜこれほど現役世代に支持されるのか。その答えは「ランチ需要」にあるのではないかと考えます。

12時台(平日+休祝日)、八百幸は約2.8万人を集客し、西友(約1.2万人)の2倍以上の支持を得ています。
平日単独で見ても約2.4倍の差をつけており、「レジ待ちを避けたい」「サッと昼食を買いたい」という、現役世代特有の「タイパ(時間対効果)」ニーズに対し、小型店ならではの機動力が刺さっていると推測できます。

西友調布入間店と八百幸成城店の12時台来訪者データ



まとめ:2つの「勝ち筋」

今回の比較から、エリア攻略には2つの明確な解が見てとれます。


店舗イメージ


    1.【杉並モデル】圧倒的品質での正面突破
    標準店フォーマットで挑むなら、競合を凌駕する「商品力・提案力」を磨き上げ、既存客をごっそりと動かす力業が有効です。杉並店が示した「夕方ピークでの競合超え」という事実は、そのポテンシャルを証明しています。
    2.【成城モデル】ニッチトップの確立
    小型店や競合が強力なエリアでは、30代・40代の「タイパ需要」(あるいは高級路線)など、特定のニーズに「尖らせる」ことで、独自の商圏を確立できます。


今後の店舗開発においては、立地や競合環境を見極め、この「杉並モデル(横綱相撲)」でいくか、「成城モデル(局地戦)」でいくか、明確な戦略決定が成功の鍵となるのではないでしょうか。



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監修者プロフィール

市川 史祥
技研商事インターナショナル株式会社
執行役員 マーケティング部 部長 シニアコンサルタント
医療経営士/介護福祉経営士
流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師
一般社団法人LBMA Japan 理事
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1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。




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