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エリアマーケティングラボ
2025年5月31日号(Vol.149)
2024年4月16日(火)に開催されたウェブセミナー「オープンデータを活用したエリアマーケティング手法とその事例」の第二部の講演内容を基に、GIS(地理情報システム)を活用した具体的なエリアマーケティング分析手法と事例をご紹介します。
オープンデータや各種推計データ、人流データなどを活用した分析にぜひご注目ください。
新規出店を検討する際、まずは対象エリアの現状を把握することが重要です。この調査では、1都3県(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県)におけるコンビニエンスストアの出店状況を分析します。
ベンチマークの考え方(スターバックスインデックスの例)
国土交通省の資料によると、市区町村の人口規模とスターバックスの出店確率には相関が見られます(例:人口17.5万人の市区町村では出店確率5割、27.5万人では8割)。このように、特定の業態が成立する商圏規模の目安を把握する考え方を応用します。
各店舗の1km圏内の「3つの人口の合計」を、その圏内の「コンビニ総店舗数」で割り、「1店舗あたり人口」を算出しました。これにより、1店舗がカバーしている潜在的な顧客数を測ります。
全16,000店舗の「1店舗あたり人口」をランキング化し、累積割合グラフを作成しました。この結果から、「既存店の上位50%に入るには、1店舗あたり人口が6,356人以上必要」といった判断基準(閾値)を設定します。新規出店候補地も、この基準を満たすことが望ましいと考えられます。
設定したベンチマーク(1店舗あたり人口6,356人以上)に基づき、GISを用いて出店余地のあるエリアを探索します。
発見された出店余地エリアも、その地域特性によって適切なアプローチは異なるため、エリアを類似性に基づいて分類(クラスタリング)することが有効です。
クラスター分析等で有望と判断されたエリアについて、さらに詳細な分析を行います。ここでは、埼玉県内のベッドタウン型クラスターで最も「1店舗あたり人口」が高かったエリア(越谷レイクタウン近隣)を例にとります。
GISツールで集計・分析した結果(各種グラフや数値)を読み解くには専門知識が必要ですが、近年はAIを活用したレポート自動生成機能が登場しています。
外部の生成AIを活用したアイデア発想支援
GISツールが出力した分析結果(数値データやAI生成レポート)を、外部の生成AI(ChatGPT、Geminiなど)に入力し、さらなる分析やアイデア発想に活用することも有効です。
(活用例)
特定エリアの商圏データ(人口構成、年収、ライフスタイル等)を入力し、「このエリアに飲食店を出店する場合、どのような業態が考えられるか?」といった質問を投げかけることで、AIが複数の業態候補を提案します。
(メリット)
無料で利用でき、短時間で多様な視点からのアイデアを得られます。自身の仮説検証や、新たな気づきを得るきっかけとなります。ただし、提案内容は鵜呑みにせず、あくまで参考情報として活用することが重要です。
本コラムでは、GISを活用したエリアマーケティングにおいて、オープンデータ、独自推計データ、サードパーティデータを組み合わせることの有効性が、コンビニエンスストアの出店戦略という具体的なケーススタディを通じて紹介しました。
現状把握からベンチマーク設定、出店候補地の探索、詳細分析に至るプロセスに加え、AIによる分析の効率化・深化といった最新動向も紹介し、データに基づいた意思決定の重要性と実践的な手法を解説しました。
これらの分析手法やAI技術の活用は、コンビニエンスストアに限らず、多くの業種・業態におけるエリアマーケティング戦略の高度化に貢献するでしょう。
GISの無償提供やトライアル
本コラムで紹介した分析は、GISの活用が必要となります。GISがどんなシステムか、どんなことができるのか、ご興味のある方は無償提供がおすすめです。 GISをいきなり導入するのはハードルが高いと感じるかもしれません。まずは、無償で提供されているGISソフトをお試しください。
▼ GISの例:MarketAnalyzer® 5
監修者プロフィール市川 史祥技研商事インターナショナル株式会社 執行役員 マーケティング部 部長 シニアコンサルタント |
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医療経営士/介護福祉経営士 流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師 一般社団法人LBMA Japan 理事 1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。 |
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