エリアマーケティングラボ

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~業界の最新動向~

GISと各種データを活用したコンビニエンスストアの出店余地エリア探索


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エリアマーケティングにおけるGISとデータ活用

GIS(地理情報システム)とは

MarketAnalyzer概要
GISは、地図情報に加えて、位置情報(店舗、顧客分布など)、統計データ(国勢調査、将来人口、人流データなど)を統合し、分析・可視化するシステムです。分析対象エリア(例:半径〇km圏)を設定し、各種データを重ね合わせることで、商圏の特性を把握できるようになります。
当社では「MarketAnalyzer® 5」というGISを提供しています。

エリアマーケティングで活用される主なデータ

商圏分析に用いられる4系統のデータ

商圏分析に用いられるデータは、主に以下の4系統に分類されます。

  • 1.ファーストパーティデータ
  • 企業が自社で保有する顧客データや売上データなどです。

  • 2.オープンデータ
  • 国土交通省の数値地図情報(ハザードマップ、用途地域、駅、バス停、学校等)、総務省の国勢調査(人口統計)、経済産業省の経済センサス(企業統計)など、公的機関が提供するデータです。これらは汎用的なデータであり、必ずしも商圏分析に最適化されているわけではなく、加工が必要なケースが多くあります。

  • 3.推計データ
  • GISベンダーなどが、公的統計やオープンデータ等を組み合わせて独自に推計・加工し、小地域単位(メッシュ、町丁目など)で整備したデータです。当社では「スマートセンサス」として提供しています。

  • 4.サードパーティデータ(オルタナティブデータ)
  • 他企業が収集・提供するデータです。位置情報データ(人流データ)などが代表的です。
これらのデータを小地域単位(メッシュ、町丁目など)で整備して用いることで、詳細な商圏分析が可能となります。


分析ケーススタディ
コンビニエンスストアの新規出店余地を探る(1都3県)

分析ステップ1:出店状況の現状把握とベンチマークの設定

新規出店を検討する際、まずは対象エリアの現状を把握することが重要です。この調査では、1都3県(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県)におけるコンビニエンスストアの出店状況を分析します。

ベンチマークの考え方(スターバックスインデックスの例)
国土交通省の資料によると、市区町村の人口規模とスターバックスの出店確率には相関が見られます(例:人口17.5万人の市区町村では出店確率5割、27.5万人では8割)。このように、特定の業態が成立する商圏規模の目安を把握する考え方を応用します。

ベンチマークの考え方

コンビニエンスストアの出店状況を可視化します

1都3県に存在する約16,000店舗のコンビニそれぞれについて、半径1km圏を設定し、GISを用いて圏内の「3つの人口」と「競合店舗数」を集計しました。

GISでコンビニ出店状況を可視化したイメージ


■ 「3つの人口」とは
商圏特性をより深く把握するため、以下の3つの人口指標に着目します。
・夜間人口(居住人口): その地域に住んでいる人の数
・商業人口(来街者人口): その地域に買い物や用事で訪れる人の数(当社推計)
・昼間人口(就業者・就学者人口): その地域で働いている人や学んでいる人の数

商圏特性を把握するための「3つの人口」


■ 競合考慮の重要性
商圏内の人口(マーケットポテンシャル)が多くても、競合店舗が存在する場合、自店が実際に吸引できる人口は少なくなることがあります。
そのため、単純な人口だけでなく、競合状況を考慮する必要があります。

1店舗あたり人口を算出します

各店舗の1km圏内の「3つの人口の合計」を、その圏内の「コンビニ総店舗数」で割り、「1店舗あたり人口」を算出しました。これにより、1店舗がカバーしている潜在的な顧客数を測ります。

1店舗当たりの人口算出イメージ

ベンチマーク(閾値)を設定します

全16,000店舗の「1店舗あたり人口」をランキング化し、累積割合グラフを作成しました。この結果から、「既存店の上位50%に入るには、1店舗あたり人口が6,356人以上必要」といった判断基準(閾値)を設定します。新規出店候補地も、この基準を満たすことが望ましいと考えられます。

コンビニの商圏人口分析イメージ


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分析ステップ2:ベンチマークに基づく出店余地エリアの探索

設定したベンチマーク(1店舗あたり人口6,356人以上)に基づき、GISを用いて出店余地のあるエリアを探索します。

探索方法

店舗起点ではなく、地図上の網目(メッシュ)や町丁目の中心点を分析起点とします。各地点から半径1km圏内の「1店舗あたり人口」を算出し、基準値を満たす地点を地図上に可視化します。これにより、まだコンビニが出店していないものの、ポテンシャルが高いエリアを発見できます。

GISでの出店エリア探索イメージ

探索結果

1都3県でシミュレーションした結果、基準値を満たすエリアが郊外を中心に点在することが示されました。都心部はコンビニが飽和状態に近い一方、郊外にはまだ出店ポテンシャルが存在する可能性が示唆されます。

GISでの出店余地エリア可視化イメージ

分析ステップ3:クラスター分析によるエリア特性の分類

発見された出店余地エリアも、その地域特性によって適切なアプローチは異なるため、エリアを類似性に基づいて分類(クラスタリング)することが有効です。

分析手法

埼玉県を対象に、500mメッシュの中心点から半径1km圏内の「3つの人口」構成比に基づき、クラスター分析を実施しました。その結果、エリアを5つのパターンに分類しました。

分析結果の解釈

各クラスターの「3つの人口」のスコア(特徴)を比較することで、「商業・オフィス中心地(大宮・浦和など)」「ベッドタウン」「郊外」といった地域特性をデータに基づき客観的に把握できます。

応用

分類されたクラスターごとに、ステップ1で設定したようなベンチマーク(閾値)を再設定し、より精緻な出店戦略を立てることが考えられます。例えば、ベッドタウン型クラスターと商業・オフィス中心地型クラスターでは、同じコンビニでも求められる品揃えやサービスが異なる可能性があるため、クラスターを意識した高度な出店戦略は有効です。

GISでクラスターごとに出店余地を可視化したイメージ

分析ステップ4:有望エリアの多角的な詳細分析

クラスター分析等で有望と判断されたエリアについて、さらに詳細な分析を行います。ここでは、埼玉県内のベッドタウン型クラスターで最も「1店舗あたり人口」が高かったエリア(越谷レイクタウン近隣)を例にとります。

GISでの出店有望エリア詳細分析イメージ

このエリアの半径1km圏内の商圏データを「MarketAnalyzer® 5」のExcelレポート自動作成機能を使って、商圏レポートを作成します。以下、レポートから主要な分析結果を見ていきましょう。

デモグラフィック(人口統計)分析結果

・人口ピラミッド:年齢・性別構成を見ると、当該エリアは20代、シニア層、ファミリー層が混在しています。

・世帯構成:単身世帯比率は全国や埼玉県平均より低く、ファミリー世帯が多いことが分かります。

・年齢×世帯構成クロス集計:30-40代のファミリー層が主なターゲット層とみられます。

・将来推計人口:2050年に向けて人口は微減傾向、少子高齢化の進行が見込まれます。

GIS商圏レポートイメージ(デモグラフィック分析)

ソシオグラフィック(社会経済属性)分析結果

・世帯年収:埼玉県平均(428万円)より高い519万円。富裕度が高い傾向があります。

ソシオグラフィック(社会経済属性)分析結果イメージ

サイコグラフィック(心理・ライフスタイル属性)分析結果

・価値観・興味関心:ガーデニング好き、テニス好きの比率が相対的に高いです。一方、セール志向は低い傾向があります。


「3つの人口」による再評価

当該エリアは、夜間人口(ベッドタウン性)、昼間人口(オフィス街性)、商業人口(繁華街性)がいずれも高いバランス型であることが確認されました(特に商業人口はレイクタウンの影響で高いと考えられます)。
これは、多様な顧客層にアプローチできるポテンシャルを示唆しています

商業特性分析結果イメージ


エリアマーケティング分析におけるAI技術の活用

GISツール内でのAI活用(商圏レポートAI)

GISツールで集計・分析した結果(各種グラフや数値)を読み解くには専門知識が必要ですが、近年はAIを活用したレポート自動生成機能が登場しています。

MarketAnalyzer商圏AIレポートイメージ

機能概要

分析結果データをAIに投入し、そのエリアの特性や傾向を自然言語(テキスト)で解説するレポートを自動生成します。同社でもこの機能を開発・提供開始しており、好評を得ています。

特徴

プロンプトエンジニアリングにより、分析結果を正しく解釈し、適切な表現で出力するようチューニングされています。消費傾向、オフィス街性、繁華街性など、複数の分析軸でのレポート出力が可能です。

効率化

手動でのグラフ読み取りやレポート作成と比較して、AIによるレポート生成は数分程度の時間を要するものの、専門スキルのある人の解釈や文章化の工数を大幅に削減できます。

商圏AIレポートイメージ


外部の生成AIを活用したアイデア発想支援
GISツールが出力した分析結果(数値データやAI生成レポート)を、外部の生成AI(ChatGPT、Geminiなど)に入力し、さらなる分析やアイデア発想に活用することも有効です。

(活用例)
特定エリアの商圏データ(人口構成、年収、ライフスタイル等)を入力し、「このエリアに飲食店を出店する場合、どのような業態が考えられるか?」といった質問を投げかけることで、AIが複数の業態候補を提案します。

(メリット)
無料で利用でき、短時間で多様な視点からのアイデアを得られます。自身の仮説検証や、新たな気づきを得るきっかけとなります。ただし、提案内容は鵜呑みにせず、あくまで参考情報として活用することが重要です。




まとめ
データとAI活用によるエリアマーケティングの深化


本コラムでは、GISを活用したエリアマーケティングにおいて、オープンデータ、独自推計データ、サードパーティデータを組み合わせることの有効性が、コンビニエンスストアの出店戦略という具体的なケーススタディを通じて紹介しました。

現状把握からベンチマーク設定、出店候補地の探索、詳細分析に至るプロセスに加え、AIによる分析の効率化・深化といった最新動向も紹介し、データに基づいた意思決定の重要性と実践的な手法を解説しました。

これらの分析手法やAI技術の活用は、コンビニエンスストアに限らず、多くの業種・業態におけるエリアマーケティング戦略の高度化に貢献するでしょう。


GISの無償提供やトライアル

本コラムで紹介した分析は、GISの活用が必要となります。GISがどんなシステムか、どんなことができるのか、ご興味のある方は無償提供がおすすめです。 GISをいきなり導入するのはハードルが高いと感じるかもしれません。まずは、無償で提供されているGISソフトをお試しください。


▼ GISの例:MarketAnalyzer® 5

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監修者プロフィール

市川 史祥
技研商事インターナショナル株式会社
執行役員 マーケティング部 部長 シニアコンサルタント
医療経営士/介護福祉経営士
流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師
一般社団法人LBMA Japan 理事

1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。




電話によるお問い合わせ先:03-5362-3955(受付時間/9:30~18:00 ※土日祝祭日を除く)
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