技研商事インターナショナル技研商事インターナショナル
エリアマーケティングラボ
2025年11月28日号(Vol.197)

本コラムでは、2025年11月21日(金)に開催した当社主催のセミナー「AI×GISが導く、出店戦略の未来 ~勘と経験を超える「説明可能AI」と売上予測~」をクイックにレポートします。
セミナーでは、チェーン企業の出店戦略における「AI活用の現実解」と、2026年春リリース予定の次世代プラットフォーム『THE NOVEL』構想を発表しました。また、現場の声として、トリドールグループ企業であるアクティブソース社にてチェーン店舗の売上予測をご担当なさっている店舗開発部 部長のスワントン・ニコラス氏より、売上予測モデル構築の極意をご紹介いただきました。
同様のテーマで毎月無料のWebセミナーを行っています。本セミナーの概要で何かご興味のあるトピックスがあった方は、ぜひセミナーへご参加ください。
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〜「ハルシネーション」を排した、商圏分析の民主化〜
当社市川による講演では、ターゲット層のミスマッチによるチェーン店舗の早期撤退事例を題材に、「顧客」と「競合」の分析不足が失敗の主因になるリスクを紹介
店舗分析には膨大な周辺エリアの統計データを読み解く必要があり、熟練のスキルが必須となります。仮に生成AIに解釈させても、ハルシネーションリスクがあり信頼性に欠けることも現場の大きな課題です。その解決策として、独自の「商圏レポートAI」を紹介しました。
(商圏レポ-トAIの特性)
生成AIによる要約・翻訳:
複雑な統計データをAIがテキスト化し、誰でも地域特性を理解できるようにサポート
ハルシネーションの排除:
学習データ以外の情報を排除する設計により、AI特有の「もっともらしい嘘」を防ぎ、ビジネス判断に耐えうる信頼性を担保

〜「泥臭い仮説」がなければ、AIはポンコツになりうる〜
居酒屋「晩杯屋」を運営するアクティブソース社のニコラス氏(店舗開発部 部長)は、トリドールHD等での分析経験から、「ツールにデータを放り込むだけでは『残念な分析結果』しか出ない」と警鐘を鳴らし、データ分析を実務で活かすための具体的なステップを語りました。

いきなりAIで分析するのではなく、まずは現場で「顧客は誰か」「どう使われているか」を観察し、人間が仮説を立てる「下分析」のプロセスが必須であると説きました。
分析軸を明確に分け、以下の具体的な指標で評価することを推奨しました。
*立地データ(Micro):
物件そのものの力。店舗間口、看板の視認性、セットバック(歩道からの距離)など、物理的な要素を数値化
*商圏データ(Macro):
エリアの力。従来の国勢調査(夜間人口)に加え、「人流データ」を活用して、時間帯ごとの滞在・移動人口を把握することが重要
高度なツールがなくとも、既存店の実績をベースに「視認性:5点」「競合数:3点」のようにスコアリングし売上との相関を見ることで、根拠のある予測が可能になると紹介し、まずはできる範囲でセルフ分析をしてみることの有用性を解きました。
「店舗を作る人(開発)」と「評価する人(分析)」を分けることでバイアスを防ぎ、売上予測だけでなく投資額を含めたROI(投資対効果)で判断する仕組み作りを提言しました。
〜経営層の説得に必須となる「説明可能」の重要性〜
データインサイト社の山元氏は、AI(機械学習)による新規出店時の売上予測手法の説明を通して、「AIが導き出した解を説明可能な状態にし、人間が成功要因を理解すること」の重要性を説きました。

〜「属人スキル」を「組織の資産」へ変えるSaaSプラットフォーム〜
第4部では、InkField社の越口氏より、2026年春リリース予定の新プラットフォーム『THE NOVEL(ザ・ノベル)』が発表されました。単なる分析ツールではなく「組織を変える基盤」として設計された本作の、3つの革新点を紹介します。

解釈性に優れた「統計解析(重回帰)」と、予測精度が高い「機械学習」を同時に実行。AIの精度と、人間が説明できる納得感(アカウンタビリティ)を両立させ、経営判断に資する実務的な設計を実現しました。
予測モデル作成の肝である「どのデータを使うか(変数選択)」を自動化。
分析過程の思考プロセスを残せる「メモ機能」や「変更履歴」を搭載。担当者の頭の中にあったノウハウや失敗経験さえもシステムに蓄積し、属人化を防いで組織全体の資産へと変えていきます。 本セミナーは、小売・飲食業界の店舗開発担当者を中心に、多くの方々にご参加いただきました。 「AIが普及すれば、職人は不要になるのか」。 巷で見かけるそんな未来予測に対し、本セミナーは明確な「NO」を提示しました。
(ポイント)
「経営判断をすべてAIに任せることはなく、『経験と勘』&『データエビデンス(AI)』の両方を加味する」トレンドを叶えるツール設計。
② 30年の「暗黙知(経験・勘)」を実装、変数選択を自動化
当社が持つ30年のノウハウと2万項目の商圏データから、システムが最適な変数を自動で選択します。統計解析スキルがなくとも、熟練の「勘と経験」に裏打ちされた高精度なモデル構築が可能になります③ 「個人の気づき」を「組織知」へ変える
参加者の声
アンケートに寄せられた参加者様の声をご紹介します。
・AI導入の課題が当社とリンクしており、非常に参考になった(大手ホームセンター)
・実体験に基づきわかりやすい。分析担当者としての基本を学べた(大手外食チェーン)
・AIのハルシネーション除外が興味深かった(アミューズメント施設)
【レポート後記】 AIで「職人」は消えるのか?
登壇した4名のプロフェッショナルが同様に語ったのは、「AIは、熟練者の『勘』を否定するものではなく、むしろその正しさを証明するための『最強の通訳』である」ということです。
泥臭い現場観察から生まれる「仮説」と、30年の歴史が培った「分析ロジック」。
これらとAI(機械学習)で得られる知、両方を活用することで、属人化していたノウハウは初めて「組織の知」になると私たちは予測します。
GISの老舗である技研商事インターナショナルが、スタートアップ企業(データインサイト、InkField)と手を組み生み出した『THE NOVEL』。それは、「人間とAIの共創」という形骸化しがちな言葉に、”実務”を吹き込む挑戦です。
2026年春。日本の店舗開発は、孤独な職人芸から、データで語り合うチーム戦へと進化します。
その変革を、ぜひ貴社でご体感ください。

監修者プロフィール
市川 史祥
技研商事インターナショナル株式会社
執行役員 マーケティング部 部長 シニアコンサルタント
医療経営士/介護福祉経営士
流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師
一般社団法人LBMA Japan 理事
Google AI Essentials
Google Prompt Essentials
1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。
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