エリアマーケティングラボ

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【年末特集】深夜の賑わいは戻ったか?アフターコロナの“定着期”「2024年」から紐解く、新橋・渋谷の対照的な「夜の過ごし方」

2025年12月11日号(Vol.200)


渋谷新橋の夜のイメージ

師走に入り、街はクリスマスイルミネーションに彩られ、忘年会シーズンの到来を感じさせる季節となりました。コロナ禍を経て、今、街の賑わいは日常を取り戻しているように感じますが、その内実はかつてと同じでしょうか。

今回、私たちは、コロナ禍からの揺り戻しや一時的なリベンジ消費といった「過渡期のノイズ」が含まれていた数年間を経て、人々の新しい行動様式が真の意味でスタンダード化したのが「2024年」と捉え、アフターコロナの“定着期”と言えるこの2024年を俯瞰することで、一過性の現象ではない「構造的な変化」を読み解くことにしました

これからのエリア戦略の揺るぎないベースラインとなり得る「2024年のデータ」を、KDDI Location Analyzerを使い、コロナ禍前の2019年と比較検証。夜の街で不可逆的に変わってしまったもの、そして新たに生まれた機会について解説します。

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夜間人口は「7割回復」が目安。エリアによる濃淡も

まず、各エリアの平日夜間(18:00~)の人流ボリューム(来街者数総計)を、コロナ禍前の2019年と比較しました。

【主要5エリア 平日夜間人流の回復率(2019年比)】
渋谷駅 :77.4%
北新地駅:73.8%
栄駅  :72.5%
新宿駅 :71.8%
新橋駅 :65.5%


全体として、人流は2019年水準の 7割程度 までの回復にとどまっています。中でも「若者の街」である渋谷駅は約77%と比較的高い回復率を示した一方、ビジネスパーソンの聖地である新橋駅は約65%と、総量としての回復は遅れている傾向が見られました。

夜の街イメージ


「若者の夜」へシフト? 年代別構成比の劇的な変化

次に、来街者の「属性(年代)」に注目すると、全エリア共通の興味深い傾向が浮かび上がりました。 単なる構成比の変化だけでなく、実数ベース(推定来街者数)での回復率を分析することで、より鮮明な実態が見えてきます。

■ 20代は「8割超」の回復も、シニアは「半減」の衝撃

まず、2019年と2024年の人流ボリュームを年代ごとに比較しました。

    20代の回復率:86.5%(渋谷)、80%(北新地)
    多くのエリアで20代の回復率が一番高く出ています。
    特に渋谷や北新地では回復率が8割超となり、完全復活に近い状態にあると言えます。
    60代以上の回復率:54.5%(全エリア平均)
    一方、シニア層は実数ベースで見てもほぼ「半減」しており、
    栄以外のエリアでは70代以上の来街者が2019年比で40%台まで落ち込んでいます

■「女性比率」の上昇が示す、夜の街のライト化

もう一つの大きな変化は、女性比率の上昇です。今回の調査対象である全5エリアにおいて、夜間(18時以降)の女性比率が2019年よりも高くなっています。

    渋谷駅:43.6% → 47.5%(+3.9pt)
    新橋駅:33.2% → 36.3%(+3.1pt)
    新宿駅:45.1% → 47.2%(+2.1pt)

かつて「サラリーマン(男性中心)の聖地」という印象が強かった新橋や新宿でも、女性の割合が確実に増えています。 これは、接待や大規模な会社飲み会といった「男性主体のオフィシャルな飲酒機会」が減少し、友人同士や少人数で楽しむ「プライベートな食事・飲み会」へと、夜の利用シーンがシフトしていると見て取れます。

夜の繁華街は今、「若者中心」かつ「女性も入りやすいカジュアルな場」へと、その質を大きく変えつつあるのかもしれません。


女子会イメージ



「2次会需要」の明暗:復活する新橋、早まる渋谷

本調査で最も特徴的な違いが見られたのが、時間帯別の滞在傾向です。ビジネス街の代表格である「新橋」と、若者の街「渋谷」のデータを比較すると、夜の過ごし方が対照的な変化を見せていることが分かりました。



■ 新橋駅:21時以降の「深夜滞在」比率が増加

新橋駅周辺では、夜間の総人流に対する「21時~24時」の滞在シェアが、2019年よりも増加しています。

21時以降のシェア:各時間帯でプラスに推移(+3.8pt)

多くのエリアで「早めの帰宅」トレンドが見られる中、新橋においては21時以降の遅い時間帯、いわゆる「2次会・3次会」の時間帯の存在感が増しています。 総量は減りつつも、「新橋で飲むなら、夜遅くまでしっかり楽しむ」という濃厚なコミュニケーション需要が、以前よりも強まっていると言えるでしょう。


■ 渋谷駅:21時半から「帰宅」へ加速

一方で、渋谷駅周辺は真逆の動きを見せています。

21時半以降のシェア:2019年と比較して明確に 減少(-1.6pt)

渋谷では20代の構成比が増えているにもかかわらず、夜のピークは早まり、21時半を過ぎると潮が引くようにシェアが低下しています。若年層を中心に、タイパ(タイムパフォーマンス)を意識した「短時間集中型」の楽しみ方が定着している様子がうかがえます。


渋谷タイパ志向イメージ



まとめ:エリア特性に合わせた「時間軸」の戦略を

今回の分析から、夜の繁華街を一概に「人流減・早期化」と括ることはできないことが分かりました。


    ・新橋
    人流の戻りは鈍いが、深夜帯(2次会需要)の粘りは強い。遅い時間帯の集客・単価アップ施策が有効。
    ・渋谷
    人流の戻りは早いが、夜は早く去る(帰宅?)する傾向。早い時間帯の回転率向上や、体験価値の提供が鍵。

「誰が」戻っているかだけでなく、「いつ」活動しているか。 人流データを用いた精緻な商圏分析(エリアマーケティング)を行うことで、街ごとの「時間の使われ方」の変化を捉え、最適なタイミングでアプローチする戦略が求められています。



※本コラムで使用したデータは、KDDI Location Analyzer等の人流データを基に独自に集計したものです。



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監修者プロフィール

市川 史祥
技研商事インターナショナル株式会社
執行役員 マーケティング部 部長 シニアコンサルタント
医療経営士/介護福祉経営士
流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師
一般社団法人LBMA Japan 理事
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1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。




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