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【初詣2026】明治神宮・浅草寺・成田山における初詣の人流を比較してみた。

2026年1月9日号(Vol.209)

初詣の人出

はじめに~分析の背景と目的~

日本の伝統文化において、新年を祝う「初詣」は、多くの人々が参加する国民的行事です。年始の限られた期間に発生する大規模な人の移動は、宗教的な側面にとどまらず、地域経済や交通インフラ、さらには人々の行動心理を映し出す貴重なデータ源でもあります。M<,br> 本レポートでは、日本を代表する初詣スポットである「成田山新勝寺」「浅草寺」「明治神宮」の3地点を対象に、2025年と2026年のそれぞれ正月三が日の人流データを用い、来訪動向の推移、性別構成、年代別構成を分析します。

今回の分析では、単に来場者数の増減を整理するにとどまらず、場所・年別の来場者数に加え、性別および年代別の内訳データを多角的に分析することで、「人々の行動の変化」「人口構造の影響」「各スポットが持つ集客力の変化」を明らかにすることを目指します。特に、2026年において特定の地点で見られる大きな数値変動や、特定の年代層に現れた顕著な傾向は、今後の観光施策や人流予測を検討するうえで重要な示唆を与えるものです。本コラムでは、これらのデータが示す背景や意味を読み解いていきます。

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\専門知識が無くても、人の動きが数クリックで詳細に分かる!/

分析の概要

人流データの取得は、当社とKDDI株式会社で共同開発・共同提供する人流分析ツール、「KDDI Location Analyzer」を用いました。

分析対象: 首都圏でも人気の初詣スポットである、成田山新勝寺(千葉県成田市)、浅草寺(東京都台東区)、明治神宮(東京都渋谷区)の三つの寺社を対象としました。
分析期間: 2025年1月1日(水)~3日(金)と2026年1月1日(木)~3日(土)の2期間。
出力データ:各期間の寺社の男女別、年代別、時間帯別の推計来訪者数

【3つの寺社にジオフェンス(仮想境界線)を設定し人流を計測】
【3つの寺社にジオフェンス(仮想境界線)を設定し人流を計測】


参拝行動を決める外からの要因

人の流れのデータは、個人の「行きたい」という意志の集まりであると同時に、環境の影響に対する反応の合計でもあります。2025年と2026年を比べたときに最も決定的な違いを生んだのは、カレンダーの日並びによる「チャンスの増加」と、天気による「チャンスの損失」の対立でした。まずは人流データを見る前に環境面を考えていきます。

参拝行動を決める外からの要因

正月三が日の曜日(日並び)

初詣の人の流れは、正月三が日(1月1日〜3日)が週末とどうつながるかによって、どれくらい集中するか、あるいは分散するかが決まります。

2025年の日並び:分散と平均化の限界

2025年の1月1日は水曜日でした。この日並びが与えた影響としては以下が想定されます。

・休みの分断
週の真ん中に祝日があるため、役所や多くの企業では12月28日(土)から1月5日(日)までの9連休となるケースと、カレンダー通りに1月2日(木)・3日(金)だけを休みとし、4日(土)・5日(日)と合わせて飛び飛びの休みとなるケースが混在しました。

・参拝行動への影響
元日(1月1日)に人が集中しやすい一方で、翌2日・3日が平日扱いとなる仕事もあるため、三が日全体として爆発的に人が増えることは抑えられる傾向にあると考えられます。

2026年の日並び:理想的な「4連休」の誕生

2025年の1月1日が水曜日だったのに対し、2026年は1月1日が木曜日、2日が金曜日、3日が土曜日という並びでした。

・「超」大型連休の形成
多くの組織で、1月1日(木)から4日(日)までが完全に連続した休日となりました。これは、遠くへの帰省や旅行、あるいは成田山新勝寺のような郊外にある寺社へ遠出を計画する参拝客にとって、気持ちの面でも時間の面でもハードルを大きく下げる「理想的な日並び」でした。

・期待された人の流れ
本来であれば、この日並びは過去数年で最大級の人の動きを生み出す可能性を持っていました。特に、元日だけでなく、2日・3日・4日まで同じように高い水準で人が訪れ続ける「台形のような」需要の形が予測されていました。

天気(都心の初雪)

2026年の「理想的なカレンダー」というプラス要素を根底から覆したのが、天気でした。

都心の初雪のイメージ

雪が降った時間と場所

それに対して2026年は、1月1日が木曜日、2日が金曜日、3日が土曜日という並びでした。

・1月2日午前
青空が広がり、参拝に適した天気でした。この時点での人の出入りは順調だったと推測されます。

・1月2日15:00時点
栃木、群馬、埼玉で雪が降り始めました。これは北関東から来た参拝客が帰宅を急ぐと同時に、これから都心へ向かおうとする人たちの出足をくじくタイミングでした。
・1月2日夕方〜夜
雪の範囲が広がり、東京都心でも初雪が観測されました。予報では、箱根から多摩地方、秩父地方にかけて最大7センチ、関東南部の平野部でも3センチの積雪が見込まれました。

物理的・心理的な壁としての雪

この雪は、単なる「寒さ」以上の物理的な壁として働きました。

・路面凍結のリスク
1月3日の朝にかけて冷え込むことで、道が凍ることが警告されました。これは、砂利道や石畳が多い寺や神社(特に明治神宮や成田山の急な階段)において、転んでしまう危険性を直感させる情報です。
・交通マヒの予感
首都圏の交通網は雪に弱く、わずかな積雪でも電車やバスのダイヤが乱れます。1月2日の時点で「交通の乱れにも注意」という情報が流れたことで、リスクを避けたい人たち(家族連れや高齢者)は、翌3日の参拝計画を中止、または延期するという判断をしたかも知れません。

社会心理と生活様式の変化

物理的な環境要因に加え、2026年は社会心理的な「参拝離れ」がデータとしてはっきり見えた年でもあります。

「巣ごもり」の定着とお金の使い方の合理化

「くふう生活社総合研究所」の昨年末の調査によると、2025年〜2026年の年末年始の過ごし方として「自宅でゆっくり過ごす」が77.3%という結果でした。

・背景にある考え方
物価高の影響により、外出に伴う出費(交通費、お賽銭、屋台での飲食)を抑えようとする、お金に対する合理的な考えが働いています。また、かけた時間に対する満足度(タイムパフォーマンス、略してタイパ)を重視する昨今、寒い空の下で長時間並ぶ初詣は、費やす労力に見合わない活動とみなされつつありるのかも知れません。
・代わりとなる行動
「家事や掃除」(41.3%)や「近場への外出」(32.6%)が上位に来ており、わざわざ混雑する有名な寺社へ出向くという行動自体が薄れています。

社会心理と生活様式の変化


【人流データ検証】参拝者数と環境要因の関係

ここからは、人流データを用いて、各寺社における具体的な人の動きを分析していきます。

来訪者数の昨対比較

3つの寺社の正月三が日の推計来訪者数と増減率は以下の通りでした。

3つの寺社の正月三が日の推計来訪者数と増減率

全体として、明治神宮と浅草寺が増加傾向にある一方で、成田山新勝寺は前年の約6割強の水準まで大きく落ち込んでいるのが特徴的です。
この変化を例えるなら、「人気の分散と集中」が起きている状態です。明治神宮や浅草寺という都心の主要スポットにはさらに人が集まる一方で、成田山新勝寺のような郊外の拠点は、その年によって参拝客が大きく変動する傾向が見て取れます。特定の場所に人気が集中する、あるいは参拝先の選択に変化が生じている可能性があります。

来訪者数の昨対比


来訪者の年代別傾向(2026年)


年代別初詣先比較

データから、各寺社は以下のようなターゲット層を持っていると言えます。

浅草寺:圧倒的な「若者」中心
20代〜30代だけで来訪者の約半数(49.2%)を占めており、最も来訪者の年齢層が若いです。
観光地としての側面が強く、友人同士やカップルでの初詣需要が高いと考えられます。

成田山新勝寺:バランス型・「シニア」層が厚い
3寺社の中で最も年齢層が高めです。60代以上のシニア層が4人に1人以上(25.6%)を占めており、これは浅草寺(15.4%)の約1.7倍に相当します。伝統的な信仰心の厚い層や、家族連れ(3世代での参拝など)が多いことが推測されます。

明治神宮:中間的ながら「20代」が突出
浅草寺同様に若年層が多いですが、特徴的なのは「20代が多く(24.1%)、30代で一度減り(16.6%)、40代でまた増える(20.7%)」という動きです。原宿・渋谷という立地柄、若者の多さと、厄年などを意識する中年層が混在している可能性があります。

年代別に詳細に見ていくと、さらに各寺社の特徴が浮き彫りになってきます。

20代の動き(大きな差)
浅草寺(27.6%)や明治神宮(24.1%)では4人に1人が20代ですが、成田山新勝寺では15.0%にとどまります。都心部の寺社の方が若者を惹きつけていることがわかります。

40代の安定感
20代やシニア層では寺社間で大きな差がありますが、40代はいずれの寺社でも約20%(成田山21.1%、浅草寺19.8%、明治神宮20.7%)で共通しています。
40代は初詣という行事のコア層(厄年のお祓いや子供連れの親世代)として、場所を問わず一定数存在する層であると言えます。

シニア層(60代以上)の偏り
成田山新勝寺(25.6%)と浅草寺(15.4%)では、シニア層の割合に10ポイント以上の開きがあります。都心の混雑を避ける傾向や、郊外の大型寺院への選好がシニア層にある可能性があります。


来訪者の時間帯別傾向(2026年)

三つの寺社では、参拝客が集中する時間帯や深夜・早朝の動きに違いがあります。

来訪者の時間帯別傾向

【成田山新勝寺】
午前10時台から増え始め、12時台(9,341人)にピークを迎えます。17時以降は急激に減少しますが、深夜帯もわずかながら継続的に参拝者が記録されています。

【浅草寺】
お昼前から混雑し始め、15時台(9,381人)にピークとなります。夕方18時台でも6,000人以上が訪れるなど比較的遅い時間まで賑わいますが、深夜0時(24時)から早朝4時台(28時半)にかけては参拝者が0人となっています。

【明治神宮】
午後にかけて非常に多くの人が訪れ、14時台(20,375人〜20,987人)が最大のピークです。11時台から16時台まで1万人を超える状態が続き、圧倒的な集客力を誇りますが、浅草寺と同様に深夜23時台から早朝4時台は参拝者が記録されていません。

まとめ

需要の二極化・集中
明治神宮や浅草寺では前年を上回る集客が見られる一方、成田山新勝寺のように大きく減少する事例もあり、人気が特定の寺社に集中する傾向や、参拝先の選択そのものが変化している可能性が示唆されました。

若年層の影響力の高さ
浅草寺・明治神宮のデータからは、20代・30代が初詣の中心層となっており、若年層の動向が全体の参拝者数を大きく左右していることが読み取れます。

「日中参拝」への移行
いずれの寺社においても参拝客は昼前後に集中しており、深夜や早朝ではなく、日中の明るい時間帯に初詣を行うスタイルが主流になっていることが分かります。 これらの結果から、「観光・若者トレンドを牽引する浅草寺」「伝統性が高くシニア層にも支持される成田山」「若年層と厄除け目的層が共存する明治神宮」といった、寺社ごとの明確なポジショニングの違いが浮き彫りになっています。

本コラムでは、首都圏を代表する三つの初詣スポットを対象に、2025年と2026年の正月三が日における人流データを比較・分析してきました。分析の結果、参拝者数の増減は単純な「人気の上下」ではなく、曜日配列や天候といった外部環境、さらに生活様式や価値観の変化といった社会心理的要因が複雑に絡み合って生じていることが明らかになりました。
特に2026年は、理想的な日並びによる来訪増が期待された一方で、都心の降雪という突発的なリスクが人の動きを大きく抑制し、郊外型の成田山新勝寺では大幅な減少が見られました。その一方で、アクセス性が高く若年層を多く抱える明治神宮や浅草寺では、一定の集客力を維持・拡大しています。
年代別・時間帯別の分析からは、寺社ごとの「選ばれ方」の違いも浮き彫りになりました。初詣という伝統行事も、もはや一律ではなく、立地、環境耐性、来訪者層によって需要構造が分化しています。人流データは、こうした変化を定量的に捉え、将来の人の動きを考えるための有効な手がかりとなると言えるでしょう。


\専門知識が無くても、人の動きが数クリックで詳細に分かる!/


監修者プロフィール

市川 史祥
技研商事インターナショナル株式会社
執行役員 マーケティング部 部長 シニアコンサルタント
一般社団法人LBMA Japan 理事
ロケーションプライバシーコンサルタント
流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師
医療経営士/介護福祉経営士
Google AI Essentials/Google Prompt Essentials

1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。




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