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需要予測とは何か?|定義・目的からビジネスでの重要性までを体系的に解説

2026年2月6日号(Vol.213)

AI需要予測とはコラムのサムネイル

昨今、ビジネスを取り巻く市場環境はかつてないスピードで激変しています。具体的には以下のような変化が企業を悩ませています。

消費者ニーズの超細分化:「皆が同じものを買う」時代から「個人の嗜好に合わせた商品」が求められる時代へ。
商品ライフサイクルの短縮化:ヒット商品が生まれてから陳腐化するまでの期間が極端に短くなり、売り逃しが許されない。
労働力不足の深刻化:日本国内における生産年齢人口の減少により、無駄な業務(過剰な在庫管理や緊急の生産調整など)に割く人的リソースがない。
サプライチェーンの分断リスク:地政学的リスクやパンデミック、自然災害により、調達から配送までのリードタイムが不安定化している。

このような環境下において、従来のように「長年の勘」や「度胸」、「前年踏襲」だけに依存した意思決定を行うことは、経営にとって致命的なリスクとなり得ます。勘が外れた時のコストインパクトが、以前より遥かに大きくなっているからです。
本コラムでは、需要予測の基本的な定義から、企業活動における具体的な役割、従来の手法と最新手法(AI・機械学習)の違い、そして実務で直面する課題と解決策までを体系的に解説します。

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需要予測とは何か(基本定義)

需要予測の定義

需要予測とは、 過去の販売実績データや顧客データ、さらには市場動向や気象情報などの「各種要因(説明変数)」をもとに、数理統計的アプローチや定性的な判断を用いて、将来の特定の期間における「需要量」を推定するプロセス を指します。
ここで強調すべきは、「需要(Demand)」とは、商品やサービスが将来どれだけ求められるかという量的な概念であり、必ずしも「売上(Sales)」そのものを意味するわけではないという点です。
需要予測は、企業のサプライチェーンマネジメント(SCM)やマーケティング活動の出発点となります。具体的には、以下のようなものが予測の対象となります。

商品の販売数量(SKU単位):どの商品が、いつ、何個売れるか。
来店者数や利用者数:店舗や施設に、いつ、何人の客が訪れるか。
サービスの予約件数:ホテルやレストラン、交通機関の座席がどれくらい埋まるか。
コールセンターの入電数(呼量):時間帯別にどれくらいの問い合わせ電話がかかってくるか。
エリアや拠点ごとの需要規模:特定の地域で潜在的にどれくらいの市場ポテンシャルがあるか。

また、需要予測は「予測する期間の長さ」によって、その目的と求められる精度、使用するデータが大きく異なります。

■ 短期予測(数日〜数週間先)
目的:日々の発注数決定、店舗のシフト作成、配送トラックの手配。
特徴:直近のトレンドや天候、曜日特性の影響を強く受ける。高い精度と即時性が求められる。
■ 中期予測(数か月〜1年先)
目的:季節商品の生産計画、予算策定、販促キャンペーンの準備、資材の先行手配。
特徴:前年同月の実績や季節性(Seasonality)が重視される。
■ 長期予測(数年〜10年先)
目的:新工場の建設、新規出店戦略、M&A、新製品開発(R&D)。
特徴:人口動態や市場構造の変化など、マクロな視点が必要となる。定性的な判断も多く含まれる。

需要予測と、売上予測・販売予測との違い

売上予測・販売予測との違い

需要予測を学ぶ上で最も多くの人がつまずきやすいのが、「売上予測(Sales Forecast)」や「販売予測」との混同です。これらはビジネスの現場では同義語として使われることもありますが、SCMやマーケティングの厳密な定義においては、明確に役割が異なります。

実績予測とポテンシャル評価の違い

なぜこの区別が重要なのか?
例えば、ある人気商品が店頭で「在庫切れ(欠品)」になったとします。
この時、レジを通ったデータ(POSデータ)上の「売上数量」はゼロですが、「欲しかった人(需要)」は存在していたはずです。これを「機会損失(ロス)」と呼びます。

需要予測:「在庫があれば100個売れていたはずだ」と予測する(供給制約を受ける前の純粋な需要)。
販売予測:「在庫が50個しか用意できないから、50個売れるだろう」と予測する(供給制約を加味した現実解)。
売上予測:「50個 × 1,000円 = 5万円の売上になる」と予測する(予算管理用)。

需要予測は、価格設定や生産能力、物流制約の影響を受ける「前段階」の概念として位置づけられます。まず 「世の中がどれだけ求めているか(需要)」を正しく知り、その上で「自社はどれだけ供給するか(販売計画)」を策定するための意思決定の「基礎情報」として用いられる のです。ここを混同すると、過去に欠品していた商品の需要を過小評価し続け、いつまでも売上が伸びない「縮小均衡」に陥るリスクがあります。

売上予測・販売予測との違い


なぜ需要予測が重要なのか

企業活動における需要予測の役割

需要予測は、特定部署だけの業務ではありません。企業のバリューチェーン全体を貫く、まさに「背骨」のような役割を果たしています。正確な需要予測情報は、以下のように各部門の業務へと変換されていきます。

■ 調達・生産部門(生産計画・仕入計画)
「来月は製品Aが1万個必要だ」という予測に基づき、原材料をいつ、どこから、どれだけ仕入れるかを決定します。リードタイムの長い部材ほど、早期の正確な予測が不可欠です。

■ 物流・倉庫部門(在庫管理・物流計画)
予測された量を保管するための倉庫スペースの確保や、商品を運ぶトラック・ドライバーの手配を行います。物流2024年問題への対応としても、積載率向上のために予測精度が求められています。

■ 店舗運営・人事部門(人員配置・シフト計画)
「来週の土曜日は14時にピークが来る」という予測があれば、その時間帯にアルバイトスタッフを厚く配置できます。逆に暇な時間のシフトを削ることで、人件費率(F/Lコスト)を適正化します。

■ マーケティング・営業部門(販促施策・価格戦略)
需要が落ち込むと予測される時期にクーポンを配布したり、逆に需要過多が見込まれる時期には値引きを抑制して利益率を高めたりする「ダイナミックプライシング」の判断基準となります。

■ 経営企画・開発部門(新規出店・設備投資判断)
中長期的な需要予測に基づき、新店舗の立地選定や、数十億円規模の工場ライン増設といった投資対効果(ROI)を試算します。

これらはいずれも、「将来どれくらいの需要があるのか」という見通しなしには、論理的かつ合理的に決定することが不可能な業務です。需要予測は、部門間の連携をスムーズにし、全社最適を実現するための共通言語(プロトコル)と言えます。

企業活動における需要予測の役割

需要予測が不正確な場合に起こる問題

需要予測が不十分、あるいは精度が著しく低い場合、企業は「見えないコスト」を大量に払い続けることになります。

■ 需要を過小評価した場合(予測 < 実需)
機会損失(チャンスロス): 売れるはずだった商品が欠品し、みすみす利益を逃します。 顧客満足度の低下: 「いつ来ても品切れだ」という不満が蓄積し、顧客が競合他社へ流出(ブランドスイッチ)します。 緊急対応コストの増大: 急遽、商品を用意するために高額な空輸を使ったり、残業で生産対応したりと、余計なコストがかかります。

■ 需要を過大評価した場合(予測 > 実需)
過剰在庫と廃棄ロス: 売れ残った商品は在庫スペースを圧迫し、保管料(倉庫代)がかかります。賞味期限のある食品や流行性の高いアパレルでは、最終的に廃棄処分となり、仕入原価がそのまま損失となります。 キャッシュフローの悪化: 在庫は「現金がモノに変わって眠っている状態」です。過剰在庫は企業の現金を拘束し、経営の健全性を損ないます。 不当な値引き販売: 在庫を処分するために無理なセールを行い、ブランド価値を毀損させます。

■ 現場への影響
予測がない、あるいは外れ続けると、現場は常に突発的な対応に追われます。これが常態化すると従業員の疲弊を招き、離職率の上昇につながるなど、組織崩壊の引き金にもなりかねません。
特に多店舗展開や広域でビジネスを行う企業では、1店舗あたりの誤差が小さくても、全社集計すると膨大な金額の損失になります。

需要予測が不正確な場合に起こる問題

不確実性の高い時代における需要予測

現代は「予測困難な時代」と言われますが、だからといって「予測を諦める」ことは許されません。むしろ、不確実性が高いからこそ、「シナリオプランニング」としての需要予測が求められています。

「楽観的なシナリオ(Upside)」
「基本シナリオ(Base)」
「悲観的なシナリオ(Downside)」

このように幅を持った予測を行うことで、「もし予測が外れて需要が急増しても、ここまでは対応できる」「もし需要が冷え込んでも、在庫リスクはこの範囲に収まる」といったリスク管理が可能になります。
現代の需要予測は、「一点張りで未来を当てる」占いのようなものではなく、「変化を前提として、準備するための幅を持たせる」リスクマネジメントツールへと進化しています。



需要予測で「予測」する対象とは

数量・金額・人流など予測対象の種類

需要予測の対象は、業種やビジネスモデルによって多岐にわたります。自社が「何を」予測すべきかを明確にすることが、プロジェクト成功の第一歩です。

【小売・流通業(スーパー、コンビニ、アパレルなど)】
対象: SKU(Stock Keeping Unit)単位の販売数量。
詳細: 「ポテトチップス うすしお味 60g」が「A店」で「何個」売れるか。色・サイズ別の予測も必須。

【飲食業(レストラン、ファストフード)】
対象: 時間帯別の来店客数、メニューごとの出数(Mix)。
詳細: 12時台に何人来るかだけでなく、「ハンバーグ」と「パスタ」のどちらが多く出るかによって、仕込みの内容が変わります。

【サービス業(コールセンター、ホテル、運輸)】
対象: コール数(インバウンド)、客室稼働率、乗車率。
詳細: 曜日やイベント有無による繁閑の差(波動)を予測し、適正な要員数を算出します。

【製造業(BtoB部品メーカー、素材)】
対象: 品目グループごとの受注量、内示情報との乖離。
詳細: 最終製品(自動車やスマホなど)の市場動向から、自社部品への需要を逆算(派生需要予測)することもあります。

【不動産・開発・インフラ】
対象: エリア単位の電力需要、交通量、人口流動。
詳細: 都市計画やインフラ整備のための超長期かつマクロな視点での予測。

このように、需要予測は単に「商品」だけを見るのではなく、「人(来店客)」や「行動(予約、解約)」、「物理現象(電力負荷)」など、あらゆるリソースへの要求量を対象とします。

数量・金額・人流など予測対象の種類

時系列と断面の考え方

需要予測を精度高く行うためには、データを時間の流れ(時系列)と、属性やエリア(断面・クロスセクション)の両面から立体的捉える必要があります。

【時系列(Time Series)の視点】
「過去から現在に至るまで、どのように推移してきたか」を見ます。
・トレンド(傾向): 右肩上がりか、下がりか。
・季節性(Seasonality): 1年周期など決まった波があるか(例:ビールは夏に売れる、ビジネスホテルは平日に埋まる)。
・循環(Cycle): 景気循環など、数年単位の大きな波。

【断面(Cross-section)の視点】
・「同じタイミングで、商品Aと商品Bはどう違うか」「店舗Aと店舗Bはどう違うか」を見ます。
・店舗の立地特性(オフィス街か住宅街か)、商品カテゴリーの相関関係(パンが売れると牛乳も売れるなど)。

例えば、「前年同月比で105%」という単純な予測をするのではなく、「全体トレンドは110%で推移しているが、この店舗はオフィス街にあり、来月はテレワーク推奨期間なので90%に落ち込む可能性がある」といった具合に、時系列と断面の情報を組み合わせることで、より実態に即した予測(粒度の高い予測)が可能になります。

時系列と断面の考え方



需要予測の基本的な考え方

過去データを使うという前提と限界

需要予測の基本中の基本は、「歴史は繰り返す」という前提のもと、過去の実績データを出発点とすることです。過去の販売実績や利用実績には、そのビジネス特有の需要の「癖」や「パターン」が色濃く反映されています。 しかし、ここで注意すべきは「過去データは万能ではない」という点です。これを理解していないと、痛い目を見ます。

・構造変化(Structural Break)
コロナ禍のようなパンデミックや、強力な競合店の出店などにより、市場環境がガラリと変わった場合、過去のデータは役に立たないどころか、ミスリードの原因になります。
(例:2019年のデータを学習させて2021年を予測しても当たらない)

・データに含まれるノイズ
過去にたまたま大口注文があったり、台風で営業停止した日の「ゼロ実績」をそのまま使い続けると、予測モデルがそれを「通常のパターン」と誤認してしまいます。
したがって、現代の需要予測では「過去データをそのまま使う」のではなく、異常値を除去したり、補正をかけたりする「データクレンジング」や、直近の傾向をより強く反映させる重み付けの処理が必須となります。

過去データを使うという前提と限界

需要を左右する要因(ドライバー)

需要は勝手に増減するわけではありません。必ず何らかの要因(ドライバー)によって変動します。この要因を特定し、モデルに組み込むことが予測精度向上の鍵です。
主な需要変動要因(ドライバー)には以下のようなものがあります。

1. カレンダー要因
・曜日、祝日、連休の並び、給料日、五十日(ごとおび)。
※例:給料日後の週末は高単価なメニューが出る。

2. 気象要因
・気温、降水量、湿度、日照時間、体感温度。
※例:気温が25度を超えるとアイスクリームが売れ始め、30度を超えると氷菓(かき氷系)にシフトする。

3. マーケティング要因(内部要因)
・価格変更、チラシ配布、テレビCM放映、ポイントキャンペーン、陳列場所の変更。
※例:CMを打った翌週は指名買いが増える。

4. 外部環境要因
・競合店の出退店、近隣でのイベント(花火大会、コンサート)、インバウンド観光客の増減、景気動向株価。
※例:近隣でマラソン大会がある日は、スポーツドリンクとおにぎりが急増する。

需要予測では、これらの要因の中から「自社の需要に最も強く影響を与えるものは何か?」を分析(相関分析など)し、それを予測式に組み込みます。これを「多変量解析」や「因果モデル」と呼びます。

需要を左右する要因(ドライバー)

「当てる」ことより「使える」予測

実務において最も重要なマインドセットは、「需要予測は100%当たることはあり得ない」と認めることです。神様でない限り、未来を完全に予知することは不可能です。
需要予測のゴールは「ピタリと当てること(Forecast Accuracy)」ではなく、「ビジネスの意思決定に使える状態にすること(Forecast Value)」です。

▼ 極端な例
A:「予測は99%当たったが、データが出るのが納品の前日だったため、生産が間に合わなかった」→ ビジネス価値ゼロ
B:「予測は80%しか当たらなかったが、1ヶ月前に傾向が分かったので、安全在庫を積むことで欠品を防げた」→ ビジネス価値大
多少の誤差(ズレ)があったとしても、どの程度のズレなら許容できるか(許容誤差)をあらかじめ定義し、その範囲内に収まっていれば「判断材料として有効」とみなします。この「運用でカバーできる範囲」を見極めることが、実務家の腕の見せ所です。

「当てる」ことより「使える」予測



需要予測の精度とは何か

精度指標の考え方(概要)

「予測がどれくらい当たっているか」を客観的に評価するためには、数値化された指標が必要です。感覚的に「最近よく当たる気がする」では改善が進みません。
代表的な指標をいくつか紹介します。

■ MAPE(Mean Absolute Percentage Error:平均絶対パーセント誤差)
実績に対して、予測が何%ズレていたかを平均したもの。
※例:MAPE 10%なら、平均して1割程度のズレがあることを意味します。直感的で経営層への報告に使いやすい指標です。

■ RMSE(Root Mean Square Error:二乗平均平方根誤差)
誤差を二乗してから平均し、ルートをとったもの。大きな外し(大ポカ)をした時に数値が跳ね上がるため、「大きなミスを絶対に避けたい」場合に重視されます。

■MAE(Mean Absolute Error:平均絶対誤差)
個数や金額の絶対値でどれくらいズレたかを見ます。現場担当者が「あと何個在庫を持てばよかったか」を考える際に役立ちます。

精度指標の考え方(概要)

精度と実務のバランス

精度は高ければ高いほど良いと思われがちですが、「精度の壁」と「コストの壁」が存在します。
一般的に、精度を70%から80%に上げる労力と、90%から95%に上げる労力は桁違いです。後者を追求しようとすると、高度なAIシステムの導入や、詳細なデータの収集・加工に莫大なコストと時間がかかります。
ビジネスにおいては、「その精度向上は、コストに見合う利益を生むか?」というROI(投資対効果)の視点が必要です。

Cランク商品(あまり売れない商品): 精度が低くても、少し多めに在庫を持てば良い(予測コストをかけない)。
Aランク商品(主力商品): 1%の改善が数千万円の利益につながるため、コストをかけてでも精度を追求する。
このように、商品の重要度に応じて予測の力加減を変える「メリハリ」が、賢い需要予測の運用法です。

精度と実務のバランス



従来の需要予測と現在の需要予測の違い

経験・勘・ルールベースの予測

かつての日本企業、特に職人カタギの現場では、需要予測は「ベテラン担当者(匠)の頭の中」にありました。「来週は運動会があるから、これくらい売れるだろう」「そろそろ寒くなるから、おでんを増やそう」といった判断です。

■ メリット
地域の特殊事情や、データに表れない微妙な空気を読むことができる。即応性が高い。

■ デメリット
属人化:その人が休んだり退職したりすると、途端に精度が落ちる。ノウハウが継承されない。
バイアス(偏見):「去年売れたから今年も売れるはずだ(現状維持バイアス)」や、
「目標達成したいから高めに予測しよう(希望的観測)」といった心理的な歪みが入りやすい。
限界:数千、数万の商品(SKU)すべてに対して、毎日緻密な予測を行うことは人間の処理能力を超えている。
また、「過去3週間の平均を発注する」といった単純な「移動平均法(ルールベース)」も多用されてきましたが、急激なトレンド変化には追随できないという弱点がありました。

経験・勘・ルールベースの予測

データ活用型需要予測への進化

近年は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、データサイエンスとAI(人工知能)を活用した需要予測が標準になりつつあります。

・処理能力の向上
クラウドコンピューティングにより、数億行のデータも瞬時に計算できるようになりました。

・アルゴリズムの進化
従来は扱えなかった「非構造化データ(テキストや画像)」や、複雑な相関関係をディープラーニングなどの機械学習モデルが処理できるようになりました。

・変数の多様化
気象データ、SNSの書き込み、人流データなど、社外のビッグデータをAPI連携で容易に取り込めるようになりました。

これにより、 「人間には気づけない法則性」を発見し、数万アイテムの予測を自動化・高精度化することが可能になりました。現代の需要予測は、人間の経験を否定するものではなく、「AIがベースラインを作り、人間が最終調整する」というハイブリッド型 へと進化しています。

データ活用型需要予測への進化



需要予測はどのような業務で使われているか

需要予測が具体的にどのようなシーンで価値を発揮しているのか、業界別の事例を紹介します。

小売・飲食・サービス業

・スーパーマーケット・コンビニ(自動発注システム)
POSデータと天気予報を連動させ、翌日のおにぎりやお弁当の発注数をAIが推奨。店長の業務時間を削減しつつ、廃棄ロスを削減。

・回転寿司チェーン(フードロス対策)
皿にICチップを取り付け、レーン上の寿司の鮮度と、来店客数予測・着席状況をリアルタイムに分析。「今、マグロを何皿流すべきか」を指示し、廃棄率を極限まで下げる。

・テーマパーク・ホテル(ダイナミックプライシング)
数ヶ月先の需要を予測し、混雑が予想される日はチケット価格を上げ、空いている日は下げることで、来場者を平準化させつつ収益を最大化(イールドマネジメント)。

小売・飲食・サービス業

製造業・サプライチェーン

・自動車メーカー(生産計画)
世界中の販売予測を集約し、車種ごとの生産台数を決定。さらに、数万点に及ぶ部品サプライヤーに対して、数ヶ月先までの内示(フォーキャスト)を提示し、サプライチェーン全体の在庫を最適化。

・食品メーカー(新商品需要予測)
過去の類似商品の動向や発売前のSNSでの評判、CM投下量から、新商品の初動売上を予測。発売直後の欠品や、過剰生産による在庫リスクをコントロール。

マーケティング・出店戦略

・アパレル(トレンド予測)
SNS上の画像解析や検索キーワードのトレンドから、来シーズン流行する「色」や「形」を予測。MD(マーチャンダイジング)計画に反映させる。

・チェーン店舗開発(売上予測モデル)
新規出店予定地の人口構成、競合店との距離、前面道路の交通量などの変数を用い、重回帰分析や機械学習で「オープン後の想定年商」を算出。投資回収の確度を高める。

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需要予測を導入する際の注意点

システムを入れれば魔法のように精度が上がるわけではありません。導入には「泥臭い」準備と運用設計が必要です。

データ整備の重要性(Garbage In, Garbage Out)

「ゴミ(質の悪いデータ)を入れたら、ゴミ(使えない予測)しか出てこない」というのは、データ分析の鉄則です。AIや統計モデルは、与えられたデータが正しいという前提で計算します。以下のようなデータ不備は致命的です。

・欠損データ
在庫切れしていた期間の売上が「0」として記録されており、「需要がなかった」と誤学習してしまう。

・異常値の放置
レジの打ち間違いや、特売による異常なスパイク値がそのまま残っている。

・マスタ情報の不備
数商品分類がバラバラ、店舗コードが変更されている等、データの整合性が取れていない。

需要予測プロジェクトの時間の8割は、この「データの前処理(クレンジング)」に費やされると言っても過言ではありません。日頃からきれいなデータを蓄積する文化が必要です。

_データ整備の重要性(Garbage In, Garbage Out)

組織・業務との接続

需要予測システムは、作って終わりではありません。「現場の業務フローに組み込まれ、実際に意思決定に使われる」ことがゴールです。 よくある失敗例が、「本社が高精度なAI予測を作ったが、現場の店長がそれを信じず、結局自分の勘で発注数を書き換えてしまう」というケースです。これを防ぐためには、以下のアプローチが必要です。

・ブラックボックス化を避ける
なぜその予測値になったのか(「明日は雨だから」など)、AIの根拠を提示する(XAI:説明可能なAI)

・責任の所在を明確にする
予測を信じて外れた場合、誰が責任を取るのか。システムを信じた結果のロスは本部が許容するなど、現場が使いやすいルールを整備する。

・フィードバックループ
予測と実績の予実管理を行い、なぜ外れたのかを検証し、モデルを継続的にアップデートする運用体制を作る。

組織・業務との接続



これからの需要予測の方向性

AI・外部データ活用の広がり

これからの需要予測は、自社のデータ(内部データ)だけでなく、世の中のあらゆるデータ(外部データ)を取り込む方向へ進化します。

・オルタナティブデータ
クレジットカードの決済データ、衛星画像(駐車場の混み具合)、人流データ(スマートフォンの位置情報)など、従来は使われなかったデータが予測の入力値となります。

・因果推論AI(Casual AI)
単なる相関関係(AとBは一緒に動く)だけでなく、因果関係(Aが原因でBが起こる)を解明するAIの活用が進み、「なぜ売れたのか」「何をすれば売れるのか」という「打つべき手」の示唆まで行ってくれるようになります。

AI・外部データ活用の広がり

需要予測の高度化と民主化

かつて需要予測は、統計学の博士号を持つような一部のデータサイエンティストだけの専門領域でした。
しかし現在は、AutoML(自動機械学習)ツールや、クラウド型の需要予測SaaSが登場し、専門知識がない現場担当者でも、Excel感覚で高度なAI予測ができるようになりつつあります(需要予測の民主化)。
一方で、より複雑で大規模なサプライチェーン全体の最適化など、高度な領域はさらに専門化が進みます。
「誰でもできる予測」と「プロフェッショナルによる高度な予測」の二極化が進み、企業は自社の課題レベルに合わせて適切なツールや手法を選択できるようになるでしょう。



これからの需要予測の方向性

需要予測とは、単に未来を当てるゲームではなく、 不確実な未来に対して企業が主体的に準備し、意思決定の質を高めるための「経営のOS(基盤)」 です。

・需要予測は「売上予測」とは異なり、供給制約前の「顧客の欲求量」を捉えるものである。
・在庫最適化、機会損失の削減、業務効率化など、企業の利益構造に直結する。
・過去データの延長だけでなく、多様な要因(ドライバー)を加味することが重要。
・100%の精度を目指すのではなく、ビジネスで「使える」運用体制を構築することが鍵。

本コラムでは、需要予測の全体像について解説しました。基礎的な定義や考え方を理解した上で、次はより具体的な実践知識へとステップアップすることをお勧めします。
本コラムを起点として、次は

・需要予測の手法・統計・数理: 移動平均、指数平滑法、ARIMAモデルなどの具体的な計算ロジック
・AI・機械学習を活用した需要予測: ディープラーニングやランダムフォレストなど、最新技術の仕組み
・業界・用途別の需要予測事例: 自社に近い業種での成功事例や失敗事例の深掘り

といったテーマを掘り下げていくことで、より実務に直結した、現場を変える力が身につくことでしょう。

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監修者プロフィール

市川 史祥
技研商事インターナショナル株式会社
執行役員CMO シニアコンサルタント 市川 史祥
一般社団法人LBMA Japan 理事
ロケーションプライバシーコンサルタント
流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師
医療経営士/介護福祉経営士
Google AI Essentials/Google Prompt Essentials

1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。




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