エリアマーケティングラボ

～業界の最新動向～

【GIS×AI】「可視化だけ」から、「理解できる」へ
～エリアマーケティング歴0年から実現できる、新時代の商圏レポート作成術～

2025年12月23日号（Vol.203）

はじめに

「GIS（地図情報システム）を導入したが、
　きれいな地図やグラフを出力して終わりになってしまっている」

「データはあるが、それを読み解くスキルを持った担当者が育っていない」

多くのチェーンストア企業様から、このようなご相談をいただきます。
地図上にデータを「可視化」することは容易になりましたが、そこからビジネスに役立つ示唆を導き出し、関係者に「理解」させるには、これまで長年の経験と勘が必要でした。

今回は、「位置情報アワード2025」で優秀賞を受賞した弊社の「商圏レポートAI（MarketAnalyzer® × 生成AI）」の開発チームへのインタビューを基に、エリアマーケティング歴の浅い担当者でも、ベテラン並みの分析レポートが作成できる最新技術について解説します。

▼ 商圏レポートAI開発者インタビューはこちら

目次（▶をクリックすると詳細な目次が表示されます）

GIS×AIで変わる店舗開発の現場

「商圏レポート」作成をAIが自動化。その仕組みとは？

「数字」を「物語」に変換する

なぜ「半径〇km」では不十分なのか？人流データが見せる「真の商圏」

「住んでいる人」と「来ている人」は違う
事例：二子玉川ライズの「いびつな商圏」

生成AIの課題「ハルシネーション」への技術的挑戦

：信頼性を担保する「RAG」技術の採用

活用事例：「巣鴨＝おばあちゃん」というバイアスを打破

今後の展望：定性データへの拡張

無料で使い始められる商圏レポートAI

GIS×AIで変わる店舗開発の現場

これまでのエリアマーケティング業務は、ツールが出した膨大な統計データを人間が目視で確認し、その意味を解釈してテキスト化するという、非常に負荷の高いフローが一般的でした。ここには2つの大きな壁があります。

「読み解き」の壁

「属人化」の壁

ここで注目されているのが、エリアマーケティングにおけるAIの活用です。 AIがデータを「理解できる言葉」に翻訳してくれるため、エリアマーケティング歴0年の担当者であっても、データに基づいた客観的な商圏評価が可能になります。

「商圏レポート」作成をAIが自動化。その仕組みとは？

弊社が開発した「商圏レポートAI」は、GIS（地図情報システム）「MarketAnalyzer® 5」上の分析結果を生成AIが読み込み、自然な日本語でレポート文章を作成する機能です。専門知識がなくても高度な分析が可能になる、その仕組みをご紹介します。

「数字」を「物語」に変換する

従来のレポート作成では、人口ピラミッドを見て「若者が多い」と自分で文章を考える必要がありました。しかし、本機能では以下のようにAIがテキストを出力します。

出力例：
「この商圏は、20代〜30代の単身世帯の割合が全国平均と比較して高く、特に駅周辺には高層マンションの建設が進んでいるため、今後も人口増加が見込まれます。ファミリー層よりも、職住近接を好む若年層向けのサービス需要が高いと言えるでしょう。」

商圏レポートAIの特長

このように、「データから何が言えるのか」というインサイト（洞察）まで踏み込んで出力するため、そのまま社内会議の資料や、出店判断の根拠として活用できます。

なぜ「半径〇km」では不十分なのか？人流データが見せる「真の商圏」

「商圏レポートAI」の精度の高さを支えているのは、AIの文章力だけではありません。AIに読み込ませるデータの質も大きな鍵を握っています。 MarketAnalyzer® 5は、信頼性の高い公的統計データはもちろん、タイムリーな来訪者把握ができる「人流データ（GPS位置情報）」も取り込んで分析に活用できます。

公的統計と人流データ、この２つのメリットを生かしたエリア分析をすることで、よりリアルな理解が可能になります。

「住んでいる人」と「来ている人」は違う

従来のエリアマーケティングでは、国勢調査などの「夜間人口（そこに住んでいる人）」データを基に、店舗から半径1km、3kmといった同心円で商圏を設定するのが一般的です。
しかし、商業施設やオフィス街の店舗にとって重要なのは、「住んでいる人」だけでなく、「買い物や仕事でそこに来ている人」です。

事例：二子玉川ライズの「いびつな商圏」

例えば、東京の商業施設「二子玉川ライズ」の来訪者データをGPS位置情報で分析すると、商圏はきれいな円形にはなりません。多摩川や主要道路、鉄道網の影響を受け、アメーバのようにいびつな形状を描きます。

従来の同心円商圏: 「川の向こう側」も商圏に含んでしまうが、実際には橋が少なく来訪者はほとんどいないかもしれない。
GPS人流データ: 「実際に人が来ているエリア」だけを抽出できるため、商圏の分断や広がりを正確に把握（実勢商圏）できる。

この「真の商圏（実勢商圏）」内のデータをAIに分析させることで、「半径◯km内の一般論」ではなく、「自店舗に実際に来訪する可能性が高い人々の特性」を浮き彫りにしたレポートが作成可能になります。

生成AIの課題「ハルシネーション」への技術的挑戦

ビジネスでAIを使う際、「AIがもっともらしい嘘をつく（ハルシネーション）」ことは許されません。
特に土地勘のないエリアを分析する場合、AIの嘘に気づけないリスクがあります。

信頼性を担保する「RAG」技術の採用

この課題に対し、弊社ではRAG（Retrieval-Augmented Generation）という技術を採用しています。

一般的な生成AI:

商圏レポートAI:

これにより、AIが勝手な想像で語ることを防ぎ、「データに基づいた客観的な事実」のみを言語化します。また、「多い・少ない」という評価も長年のエリアマーケティング分析のノウハウに基づく当社独自の閾値に基づいて判定されるように設計しているので、担当者の主観に左右されない、均質なレポートが作成できます。

▼ 商圏レポートAIでレポートを出力するまでのデモ動画

活用事例：「巣鴨＝おばあちゃん」というバイアスを打破

AI活用の意義がよく分かる事例として「東京・巣鴨エリア」の分析事例があります。
人間の感覚では「巣鴨＝高齢者の街」というイメージ（バイアス）を持ちがちです。しかし、AIがデータに基づいて出力したレポートは意外なものでした。

AIの分析結果（要約）：

これは家賃相場や交通利便性などのデータに基づいた事実です。人間はどうしても「イメージ」に引きずられますが、商圏レポートAIは偏見のないフラットな視点を提供してくれるため、経験の浅い担当者でも「隠れたターゲット層」を見落とすことなく発見できます。

今後の展望：定性データへの拡張

現在、「商圏レポートAI」はExcel形式での出力がメインですが、今後はHTMLレポートへの対応や、住民の「ライフスタイル・価値観（サイコグラフィックス）」といった定性的な要素まで踏み込んだ分析の実装を予定しています。

「可視化するだけ」の時代は終わりました。
技研商事インターナショナルは、データ活用を「誰もが理解できる」形へと進化させ、皆様の店舗開発・マーケティング業務の変革を支援してまいります。

【PR】無料で使い始められる商圏レポートAI

従来、エリアや商圏の特徴を示す様々なデータは量が膨大で、読み解きには一定の慣れが必要でした。

「MarketAnalyzer® 商圏レポートAI」は、指定した地域の特徴を生成AIで要約・テキスト化し、Excel形式で出力できます。分析の知識や習熟度に寄らず、誰もが地域特性を分かりやすく把握できるようになります。
例えば、店舗・施設のエリア分析に伴う膨大な商圏データを読み解くのが難しく、時間がかかっている場合、商圏レポートAIではAIがエリアのあらゆるデータを要約・テキスト化します。マーケティングに活用しやすい形でレポートし、地域特性の理解をサポートします。

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監修者プロフィール

市川史祥
技研商事インターナショナル株式会社
執行役員マーケティング部部長シニアコンサルタント

医療経営士／介護福祉経営士
流通経済大学客員講師／共栄大学客員講師
一般社団法人LBMA Japan 理事
Google AI Essentials
Google Prompt Essentials

1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS（地図情報システム）の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。