ホーム > マンスリーレポート > 超高齢社会の市場分析

超高齢社会の市場分析

月刊GSI 2018年3月号(Vol.81)

 少子高齢化がますます進展している国内市場において、シニア層を意識した出店戦略・販促戦略を練ることが重要です。今回のマンスリーレポートでは、国勢調査を利用したシニアマーケティングの例をご紹介します。

超高齢社会での市場分析

 今回の国勢調査(2015年調査)では大正9年の調査開始以来、初めて国内の人口が減少する結果となりました。一方で高齢者人口(65歳以上人口)は一貫して増加を続けており、総人口の26.6%を占めています。また、75歳以上人口の割合は12.8%と、15歳未満人口の12.6%を初めて上回り、少子高齢化がどんどん進展していることが分かります。

 今後も高齢化率は上昇し続けることが予想され、2035年には3人に1人(33.4%)、2060年には約2.5人に1人(39.9%)が高齢者という社会が到来すると推計されています。

 このようにますます高齢化が進むと予想される国内市場においては、シニア層を意識した出店戦略・販促戦略を練ることが重要です。今回のマンスリーレポートでは、国勢調査を利用したシニアマーケティングの例をご紹介します。

買い物弱者

 国勢調査は日本に居住するすべての人と世帯を対象とした調査で、エリアマーケティングにおいては地域別の需要を示すデータといえます。供給を示す小売店舗の位置情報や飲食事業所数データなどと重ね合わせれば、地域別の需給バランスを分析できます。ここでは、シニア需要に小売店舗の事業所数(供給)を重ねることで買い物弱者の分布を明らかにし、シニア対策を実施すべきエリアを見つけていきます。

 

■ 買い物弱者とは?

 買い物弱者とは、経済産業省の定義によると「流通機能や交通網の弱体化とともに、食料品等の日常の買い物が困難な状況に置かれている人々」を指します。
 高齢者の世帯が増える一方で、経済情勢の変化から商店街・小売店が閉店あるいは撤退するなど、「お店が近くに無い」地域が増えています。そのようなエリアでは来店誘導の施策よりも、宅配サービスや送迎サービスなどが求められるでしょう。

 

 

 それでは買い物弱者が多いエリアはどこなのか、当社の商圏分析GIS(地図情報システム)MarketAnalyzer™を用いて分析を行いました。使用したデータは国勢調査(2015年調査)の「65歳以上人口」という項目と、経済センサス(2014年調査)の「小売店事業所数」です。

 この2つのデータを基に、小売店1店舗当たりの65歳以上人口を買い物弱者指数として算出し、指数が高いエリアを探します。買い物弱者指数の計算式は以下としました。

 

 

 下記は、埼玉県の市区町村を買い物弱者指数で色塗りをした地図と、買い物弱者指数上位10市区町村と下位10市区町村のリストです。最も高齢者人口に対する小売店数が少なく買い物弱者度合いが高いのは比企郡鳩山町、最も低いのはさいたま市大宮区ということを表しています。

 

【埼玉県の市区町村別買い物弱者指数】

 

【埼玉県の買い物弱者指数上位10市区町村と下位10市区町村】

 

 さらに詳細に見てみましょう。埼玉県の中で最も買い物弱者指数が高い比企郡鳩山町を3次メッシュ(1km四方)単位で確認します。東部のエリアが特に買い物弱者指数が高いことがわかります。

 

【比企郡鳩山町の買い物弱者指数分布】

 

 このようなエリアでは、生活に欠かせない食料品・日用品に対する需要があると考えられ、宅配サービスや移動販売、もしくは出店などを検討できます。

高齢化に対応すべき店舗の選択

 先ほどは埼玉県全体を俯瞰した分析を実施しました。次は実際の運用に沿って、買い物弱者指数を用い、スーパーマーケットを例に商圏内に買い物弱者を抱える店舗を探します。下の地図は埼玉県のとあるスーパーの分布です。各店舗から徒歩10分の商圏を作成し、それぞれ買い物弱者指数を集計します。

 

【某スーパーの徒歩10分商圏】

 

 店舗商圏ごとに集計された買い物弱者指数をランキングすることで、優先的に宅配サービスなどのシニア対策を実施すべき店舗を抽出できます。

 

【店舗徒歩10分商圏の買い物弱者指数ランキング】

 

 また、現在の高齢者人口だけでなく、2040年までの高齢者人口を推計したデータを用いて、将来シニア対策を実施する店舗の優先順位を分析することも可能です。 

 下のマトリクス図は各店舗徒歩10分圏内の現在の買い物弱者指数を縦軸に、将来(2025年)の買い物弱者指数を横軸にとった、既存店舗のポジショニングを表します。

 

 【現在と将来の店舗商圏の買い物弱者指数ポジショニング】

 

 次は、多店舗展開している企業における、既存店舗に対するシニア対策の成功事例の横展開と、高齢者向け施設の新規出店について事例をご紹介します。

既存店舗に対するシニア対策の成功事例の横展開

 フィットネス事業を複数店舗展開している企業が、一部店舗で試験的にシニア向けのプログラムを開始したところ、ある店舗で収益の拡大に成功しました。このプログラムを他の既存店舗に横展開する場合、どの店舗から実施するべきかをMarketAnalyzer™を利用して分析します。分析の仮説として、シニア向けのプログラムが成功した店舗と商圏特性が似ている既存店舗で実施すれば、成功確率が高いと想定します。

 下の図は、各店舗から徒歩10分圏内の高齢者人口比率、高齢者数、貯蓄高、高齢単身比率、アクティブシニア人口を集計し、これらのデータを基に立地特性が類似している店舗を抽出したものです。

 

【商圏特性比較】

 

【成功店と類似する商圏特性を持つ店舗】

高齢者向け施設の新規出店

 次に、デイサービスを運営している企業を例に、新規出店の際の出店候補地選びというテーマで分析します。下の図は、埼玉県の中で65歳以上人口が多い3次メッシュ(1km四方)上位100位を表示しています。この赤く囲われたエリアは需要が多いと想定されるため、出店候補地となり得ます。

 

 

 【埼玉県内高齢者数上位100メッシュ】

 

 さらに、上位100位の3次メッシュの代表点と既存店から自動車10分商圏を作成し、既存店の同じ商圏とまったく重ならないエリアを検索し、65歳人口でランキングしたものが下の図です。ランキングの上位のエリアに関しては、65歳以上人口が多く、かつ既存店舗との商圏が被らないエリアであるため、優良な出店候補地だと言えます。

 

【出店余地エリアマップ】

 

【出店余地エリアランキング】

 

 このように、マーケットボリュームがあり、既存・競合店舗と商圏が重ならないエリアを検索すれば、効率的に新規出店候補地を探し出すことが可能です。

まとめ

  今回は超高齢社会に対応すべく、国勢調査の高齢者人口データなどを活用した分析事例をご紹介しました。今後も人口が減少し、高齢者人口が増加すると予測されており、出店・企画などを目的とした分析時にはシニアを念頭に置き、データに基づいた意思決定をすることが必要ではないでしょうか。今回分析に使用したGIS(地図情報システム)とデータベースについて、以下にご紹介します。

  

商圏分析GIS「MarketAnalyzer™」

 導入実績2,000社以上のエリアマーケティングGIS(地図情報システム)のスタンダードモデル。マーケティング用高速GISエンジン「TacticianOne®」を搭載し、標準的な地図・機能・データをパッケージング。
 国勢調査などの統計情報と自社店舗情報などの保有情報をデータベース化し、地理的に集計や分析を行うことでエリア戦略をサポートします。

 https://www.giken.co.jp/specific/marketanalyzer/

 

■ 国勢調査

 国勢調査は総務省が5年ごとに調査する、国内に住むすべての人や世帯を対象にした最も基礎的で最大の統計データです。小地域単位で居住者の性年齢別人口・世帯特性等約300項目を収録しています。

  https://www.giken.co.jp/datalineup/censusdata/censusdata-1/

 

■ 経済センサス

 経済センサスは、総務省が5年の間に2回に分けて、日本全国にあるすべての事業所及び企業を対象として実施する統計調査で、「経済の国勢調査」といわれています。国内の事業所の種別・従業員数を収録しています。

 https://www.giken.co.jp/datalineup/censusdata/economic_census/

ご相談・資料請求はお気軽にどうぞ!
無料で資料請求 ➤
GSI
 ☎ 03-3506-1800
(受付時間:9:30~18:00 祝祭日を除く)