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自動車保有台数から読み解く地域特性

月刊GSI 2018年6月号(Vol.84)

今回のマンスリーレポートでは、自動車保有台数データを用いた自主調査や、本データを商圏分析にどのように活用するかをご紹介します。

はじめに

 自動車を保有することが大人の証、ステータスという時代はひと昔前のこととなってしまいました。人々のライフスタイルの多様化に伴って自動車を保有しない生活も定着しています。東京近郊や都市部では自動車がなくてもさほど生活に不便を感じることはないでしょう。

 それに伴い小売業や飲食業の商圏分析において、その商圏の定義も変わってきています。従来は自動車での来店を想定し、店舗から自動車◯◯分圏という範囲をマーケットの調査対象としていました。自動車という来店手段が減少している現在、自動車商圏の範囲自体が縮小していることを認識した方がよいかもしれません。

 今回のマンスリーレポートでは、自動車保有台数データを用いた自主調査を行い、このデータを商圏分析にどのように活用するかをご紹介します。

年代と自動車保有の関係

 若者の自動車離れという言葉をよく聞くようになりました。趣味趣向の選択肢が増え、必ずしも自動車保有がステータスとなる訳ではなく、また、地域によっては鉄道やバスが網の目のように整備され、移動手段の選択肢も増えていることもあるでしょう。

 まずは自動車保有の地域別傾向を見てみましょう。東京を中心とする首都圏1都3県内の市区町村ごとの自動車保有台数と世帯数、1世帯あたり自動車保有台数を用います。下の表をご覧ください。

 

【1都3県の市区町村別1世帯あたり自動車保有台数】

 

 まず、このデータの1世帯あたり自動車保有台数の項目を使い、その分布を地図上で表現しました。青や水色のエリアは1世帯あたりの自動車保有台数が1未満、つまり自動車を持っていない世帯も多くあるということを表します。東京都を中心とした都市部に多く見られます。黄色やピンク、赤のエリアは一家に1台以上車を保有している世帯が多く、郊外、地方部に分布しています。交通の便が良い都心部は他の移動手段の選択肢もある一方、地方はいわゆる車社会で自動車が生活に欠かせないということでしょう。

 

【1世帯あたり自動車保有台数分布】

 

 次に自動車保有と年代別の傾向を見てみます。下の表の縦軸は1都3県の都道府県、横軸は年齢別です。中の数値は都道府県単位の自動車保有率と年代別人口の構成比との相関係数です。相関係数は2つのデータ項目間の関係性を見る指標で、絶対値が1に近ければ関係性が高いと解釈できます。マイナスの係数は片方が高ければ片方が低くなるという関係性があると考えます。

 

【自動車保有率と年代別人口構成比の相関係数】

 

 この表を読み解いていくと、どの都道府県も20~40代構成比が高いほど自動車保有率が下がる傾向があることがわかります。逆に60代以上の構成比が高い市区町村では相関係数がプラスとなっています。若者の自動車離れはこの表からも言えるでしょう。

人口集中地域

 先の年齢と保有率の分析は、1都3県全体が対象でした。地方部のもともと人口が少ない地域は自動車保有率も高くなる傾向があるため、次は分析対象エリアを都心部に絞ってみていくことにします。

 1都3県の全251市区町村について、人口総数と面積を用いて人口密度を算出し、その上位100市区町村を対象とします。下記の地図の赤い部分です。

 

【人口密度が高い市区町村】

 

【上位100市区町村の自動車保有率と年代別構成比の相関係数】

 

 先程と同じように対象エリアの自動車保有率と年代別人口の構成比を用いて相関係数を算出しました。この結果を見ると、10歳未満の子供の年齢構成比が高いエリアでは自動車保有率が高い一方、やはり20代~30代の構成比が高いと保有率が低く、自動車離れが見て取れます。高齢者層では60代~70代まではまだ運転が可能な元気な方が多いようで、80代以上から保有率が低くなるということでしょう。免許返納の年代ということでしょうか。

自動車保有台数データのエリアマーケティング活用

 ここからは、今回のテーマである自動車保有台数データがエリアマーケティングにどのように活用できるかをご紹介します。

 

郊外へのチェーン企業の進出と居住者特性の変化

 郊外型チェーン企業において、自動車での来店客数はこれまでも最重要の観点でした。1960年代後半、高度経済成長とともに自家用車を所有する家庭が増え、生活圏の範囲が広がったことにより郊外ではガソリンスタンドやスーパーマーケットの出店が加速しました。1970年代になると、無料駐車場を完備したファミリーレストランやホームセンターが出店し始め、1980年代になると、特に地方においては1人1台自動車を保有するようになり、中心市街地を回避するバイパス道路完成とともに道路沿線に比較的大規模な土地が供給され、カー用品・タイヤ専門店・自動車ディーラーなども出店し始めました。1990年代に入ってバブルが崩壊し地価が下落し始めると、郊外にはさらに多様な業種が参入し、コンビニエンスストアやレンタルビデオ店、量販店や家具店、ホームセンターなどが出店攻勢に出ていました。

 郊外型立地への出店戦略においては、首都圏、都市部に勤務する消費意欲が旺盛な会社員が30代~40代になり、子供の成長に合わせて郊外に夢のマイホームを購入し、マイカーで買い物や外食に出かけるというイメージでターゲットを設定していました。

 それではここで「居住者プロファイリングデータ」を用いて地域ごとの居住者の特性とその変化を分析します。居住者プロファイリングデータは居住者のライフスタイル・ライフステージを地域単位で知るために、年齢・家族構成・住宅保有・職業などの60ものデータ項目を縮約し、30クラスターの居住特性に分類したジオデモグラフィックスデータです。

 下の地図は2005年の国勢調査データを用いた居住特性クラスターの分布です。地域ごとの色分けをざっと説明するとピンクは都会型、赤はファミリー型、青は製造業従業者、緑は農村部、黄色は高齢者というイメージです。地図上に重ねた黒い道路は国道16号線を表しています。

 

【居住者プロファイリングデータ2005年版と国道16号】

 

 国道16号沿いにピンクや赤系の色も多く存在していることがわかります。ただし、人々のライフステージは時代とともに変化していきます。次はその変化を2015年調査の国勢調査による居住者クラスターの分布と比較してみます。全体的に黄色い地域(=高齢化地域)が16号線を中心に拡大しています。

 

【居住者プロファイリングデータ2015年版と国道16号】

 

自動車商圏の変化と対策

  自動車による来店を想定した商圏設定も自動車保有率の減少に対応していかなければなりません。下の地図は東京近郊の店舗を中心とした自動車商圏です。

 

 

 青いラインは自動車10分で到達できる範囲を表します。この範囲内の自動車保有台数が1990年に5万台だったとします。時代とともに商圏内居住者の自動車離れが進んだとしたら、この5万台が減少していくことになります。これまでと同じ自動車による来店ターゲットボリュームを維持しようとすると、商圏範囲を拡大しなければなりません。赤いラインは2015年の自動車保有台数データを用いて、同じ5万台をカバーする自動車到達圏を逆算した結果です。これまでは10分圏としていた商圏サイズの定義を12分としなければ同じ5万台をカバーできないということを示しています。商圏を広げるには、広域からも来店される理由が必要です。場合によってはリニューアルや業態転換の検討も必要になるでしょう。

 

◯ 自動車に頼らない来店・購買ルートの確立

 自動車による来店を待っているだけではありません。昔は自動車で来店できた世代も高齢化によって自動車の運転が困難になったり、免許証を返納したりするでしょう。そのようなターゲットに対しては送迎や宅配という施策が考えられます。下の地図は店舗の商圏内の高齢単身世帯の分布です。赤い点線で囲った地域は特に高齢者の一人暮らし世帯が多く、このような地域には送迎バスの巡回や宅配の強化を進めるということです。

 

終わりに

 生活者をターゲットにするエリアマーケティングにおいて、生活者の移動手段・購買手段としての自動車に関するデータに新たな切り口で目を向けてはいかがでしょうか?今回のマンスリーレポートに使用した自動車保有台数データの概要は、当社ウェブサイトにてご紹介しています。併せてご参照ください。

 自動車保有台数データについてはこちら

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