ホーム > マンスリーレポート > チェーン店舗が行うべき店舗分析の王道

チェーン店舗が行うべき店舗分析の王道

月刊GSI 2017年10月号(Vol.76)

 GIS(地図情報システム)とGEOデータ(人口統計データ)を用いた商圏分析・エリアマーケティング手法も時代とともに変化・進化しています。今回のマンスリーレポートは、「チェーン店舗が行うべき店舗分析の王道」と題し、これまで当社が支援してきたチェーン企業の店舗分析の取り組みの中から、業種業態にかかわらず多くの企業が実践している分析の切り口を紹介します。

一般的な商圏分析

 GISを用いた日々の商圏分析業務の中で一番多い分析手法は、新規出店候補地や既存店の位置を中心に半径◯◯kmや自動車◯◯分圏といった商圏を設定してから、商圏内の人口や世帯数などのターゲットを示すデータのボリュームを集計し、小地域(メッシュや町丁目)単位でその分布を把握するというものです。まずはおさらいとして、そのイメージを確認しましょう。図1は当社の「MarketAnalyzer™」での分析例です。東京都の豊洲駅を中心に半径2km(赤い線)と自動車10分(青い線)の商圏を設定し、2015年の最新国勢調査の人口総数を町丁・字単位で色塗りしたものです。緑色の濃いエリアは人口が多く、薄いエリアは少ないことを表します。右下の表は各商圏内のデータの集計値です。

 

【 図1:豊洲駅商圏設定と商圏データ集計値 】

商圏データを判断するための比較軸やしきい値の必要性

 先の豊洲の半径2km圏は人口が257,547人という結果が得られました。ではこの数値は自社にとってどういう意味を持つでしょうか。257,547人が多いのか少ないのか、これだけでは判断できません。それには比較軸やしきい値が必要です。下のグラフ(図2)を例に解説します。

 

【 図2:豊洲駅半径2kmの人口ピラミッド 】

 

 図2は豊洲2km圏内の性・年代別の人口ピラミッドです。年齢別人口データは2015年国勢調査を用いています。左側は男性、右側は女性です。棒グラフは実数、折れ線グラフは構成比の比較で、緑色の折れ線は全国、赤は東京都全体、青は豊洲2km圏を表します。例えば30代~40代の女性人口を見てみましょう。この年代は棒グラフでは他の年代よりも右に飛び出しているため他の年代と比べてボリュームが多いこと、折れ線グラフでも緑(全国)、赤(東京都)より大きく飛び出しているため、構成比も高いことがわかります。また、この年代は母親世代でもある可能性も想定されます。一番下側の0~5歳の人口も同じように飛び出しており、0~5歳が単独で世帯を形成していることはないため、親子関係であると判断できます。つまり豊洲駅前の居住特性は、全国、東京都と比べ、30~40代の親世代と小さな子供で構成される、いわゆるニューファミリー構造が強い商圏と解釈できます。その商圏内の数値だけではなく、さらに広域の都道府県や全国と比較することで始めてその特性が見えてきます。

データを複眼的に見る

 ただし性・年代別人口というひとつの要素だけで商圏を定義するのは乱暴です。様々なデータ項目を複眼的に見なければ商圏の特徴は見えません。下の図3は先程と同じ豊洲2km圏内の年収階級別の世帯数を出力したレポートです。左上の平均世帯年収を見ると、東京都の平均525万円と比べて609万円と非常に富裕度が高いことがわかります。年収階級別の世帯数では年収500万から1500万円以上の世帯数が多く、平均年収を押し上げていることがわかります。つまり豊洲はニューファミリー構造だけが特長ではなく、富裕度が高いという特徴も兼ね備えている商圏とも言えるでしょう。ここまでは年齢構造と年収構造を重ねて見てきました。実際の分析ではさらに世帯構造や消費構造、商業性、昼間人口なども重ねるケースが多くあります。

 

【 図3:豊洲商圏内の年収データ集計値 】

既存店舗を分析して、しきい値を定義する

 ここまでは新規出店候補地でも既存店でも1カ所、1店舗の商圏分析例でした。得られる商圏データを全国や都道府県と比較したり、複数のデータで商圏を読み解くイメージを紹介しましたが、まだ十分とは言えません。チェーン企業はその名の通り複数の店舗を展開しているため比較軸が多いと言えます。まずは既存店全体を俯瞰・分析することによって、しきい値や判断基準を定義してはじめて、どこか1カ所の分析結果が既存店全体の平均値と比較して高いのか低いのかが分かります。そこでチェーン店舗全体を分析する手法について、ステップごとに説明します。

 

STEP1:既存店舗データのGISへのインポート

 まずは既存店舗のデータをGISへインポートします。インポートするには最低限位置を特定できる住所が必要です。さらに売上や面積・席数など店舗に紐づく属性情報があれば後の分析に活用できます。下の図4は店舗データの例と、地図にマッピングしたイメージです。

 

【 図4:店舗データとマッピングイメージ 】

 

STEP2:商圏データの一括集計

 地図にマッピングした後は、各店舗に商圏を設定しデータを集計します。GISには複数の店舗に一括で商圏を設定し、各商圏内のデータを集計する機能が備わっています。当社の「MarketAnalyzer™」では「ユーザー項目集計」という名称です。例えば500店舗の半径2km圏内の人口総数を集計する場合、数秒で完了します。下の図5は店舗データに対し、集計した商圏データを店舗の属性として付与したイメージです。このデータが店舗分析の基本形となります。

 

【 図5:商圏データを集計した例 】

 

STEP3:全体の傾向を探る

 分析の準備ができたら、まずは探索的にデータを俯瞰しましょう。店舗データの分布を見るために散布図を作成します。下の図6は縦軸が売上、横軸が各店舗2km圏内の夜間人口を表します。左上に分布する店舗群は足元の人口ボリュームが小さいにも関わらず売上が高いグループということがわかり、右下に分布する店舗群はマーケットがあるにもかかわらず売上が伸びていないグループと言えます。このように課題となる店舗を抽出することもありますし、縦軸に昼間人口系のデータ、横軸に夜間人口系のデータを使用し、ビジネス街型商圏なのかベッドタウン型商圏なのかというように立地タイプを判定することもあります。

 

【 図6:散布図の例 】


 散布図は視覚的にもわかりやすいことから、分析の糸口を探ったり、分析の道筋を立てる場合によく用いられます。しかしながら縦軸を売上などの実績値とした場合、店舗を評価する軸が横軸の1変数だけとなってしまい、それでは十分ではありません。先に述べたように店舗を評価するデータは複数あり、それらを複眼的に見ることが重要だからです。

 

STEP4:商圏データのスコア化とランキング

 店舗の属性に紐付けた様々な商圏データは、人口、世帯数、消費額、店舗数など単位も桁も異なります。これらを一つにまとめる方法として「データのスコア化」があります。下の図7は集計した店舗の商圏データをスコア化、つまり偏差値に変換するイメージです。

 

【 図7:店舗商圏データのスコア化イメージ 】


 人口XXX人という数値と世帯数XXX世帯という単位が異なる数値を合計しても意味はありませんが、人口スコアと世帯数スコアなら合計できるということです。合計スコアは投入した全ての要素を加味した一つの変数となりますので、先の散布図の場合、売上と合計スコアを軸にとれば、店舗の評価を複眼的に行ったことにもなります。

 図8はMarketAnalyzer™の分析画面です。各商圏データを自動的にスコア化し、合計スコアで店舗をランキングしています。最上位の三鷹下連雀店は夜間人口、世帯数、昼間人口、小売業年間販売額、外食支出額、平均年収という複数の商圏データのスコア合計が一番高い店舗です。

 

【 図8:店舗商圏データのスコア化とランキング 】

 

STEP5:売上と商圏データの相関

 ここまで、店舗を評価する軸と、評価するための商圏データの項目は複数あったほうが良いと説明してきました。ではそもそもどんなデータ項目を分析に投入すべきでしょうか。自社の売上や顧客数といった実績を示す数値と関連があるデータ項目を採用すべきです。そこで相関分析という、自社実績に貢献している商圏データ項目を見つけ出す統計解析手法をご紹介します。

 相関分析とは、2変数間の関係を数値で記述する分析手法で、その関係性の有無や強さは相関係数という数値で判断します。例えば、商圏内の人口が多ければ売上が上がるのか、商圏内の競合店が多ければ下がるのかなどの判断に役立ちます。相関係数は必ず-1.0から+1.0の間に出現し、絶対値が1に近いほど相関が高いと解釈します。売上と人口なら相関係数が+1.0に近い場合は正の相関があるとされ、人口が多ければ売上が上がると解釈できます。また売上と競合店数の相関係数が-1.0に近い場合は負の相関があるとされ、競合店が多ければ売上が下がるというような解釈が成り立ちます。

 

【 図9:相関係数 】

 

 先に図5で紹介した店舗分析の基本形である商圏データを集計した例を再度ご参照ください。このようなデータから相関分析を行います。売上と商圏データそれぞれの項目との相関係数を算出し、関係があると解釈できるデータ項目だけを店舗評価の分析軸として投入するのが良いかと思います。MarketAnalyzer™での相関分析は、図8の画面内で行えます。相関係数が高い項目だけを選択してスコアリングを行ったり、相関係数自体をデータ項目の「重み」としてスコアに掛け合わせたりすることも可能です。

次の店舗分析ステップ

 今回は店舗全体を俯瞰し、実績に関係がある複数の商圏データで評価するという流れをご紹介しました。ここまではチェーン店舗であればほとんどの企業が取り組んでいる基本的な分析手法です。GISの操作に慣れれば分析作業自体は数分で終わります。図5で示した店舗分析の基本形から、更に次の分析ステップとして以下のような手法があります。それぞれ本マンスリーレポートの別の号でご紹介していますので是非参考にしていただきたいと思います。

 

◯クラスター分析:商圏データから店舗を分類・グルーピングする統計解析手法
  「駅商圏を統計解析で読み解く~主成分分析とクラスター分析~」2016年12月号

 

◯重回帰分析:店舗属性や商圏データから売上予測モデルを作成する統計解析手法
  「チェーン企業のGISを用いた売上予測とその失敗事例」2015年5月号

ご相談・資料請求はお気軽にどうぞ!
無料で資料請求 ➤
GSI
 ☎ 03-3506-1800
(受付時間:9:30~18:00 祝祭日を除く)