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GISを用いた顧客データ分析手法

月刊GSI 2017年1月号(Vol.69)

デジタルマーケティングの世界で、位置情報ターゲティングという手法の利用が拡大しています。ここで言う位置情報は主に、SNSのチェックイン情報やスマホアプリから得られるGPS座標、携帯キャリアが保有する契約者のGPS情報や基地局の情報を指します。皆様やクライアントが保有する顧客データにも位置情報が含まれます。顧客の漢字住所や郵便番号です。本レポートでは、顧客データをGIS(地図情報システム)で分析する手法と事例をご紹介します。

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基本的な顧客分析手法

 顧客分析といえば、CRM(Customer Relationship Management)やOne to Oneという概念は当たり前になっています。これは顧客満足度の向上を目指して、顧客それぞれの属性や嗜好性に合わせて対応しようというものです。この概念において、顧客全体を分析する際の手法として、大きく3つの切り口があるかと思います。ひとつ目は顧客の抽出、2つ目はデシル分析、3つ目はRFM分析です。まずは簡単におさらいしていきましょう。

 

◯顧客の抽出

 基本的な考え方で、性別や年齢によって適した商品を提案したり、コミュニケーション方法を採用することを意味します。男性に「口紅を使いませんか?」と言っても反応は薄いでしょうし、育毛剤を20代女性にはオファーしないでしょう。このデモグラフィック的な顧客属性の次には、自社商品をどれだけ購入してくれているかという金額をベースに顧客を分類する発想が出てきます。

 

◯デシル分析

 デシルとは10等分という意味です。顧客を購買金額で10分類します。自社商品の購買という貢献度の高低により、オファーを変えることができます。分析手順は以下のとおりです。

【顧客数が1000人の場合】

 ①顧客を購入金額が多い順に並び替える。
 ②上位から100人ずつのグループに分ける。
 ③各グループの購入金額合計を算出する。
 ④累計を見る。

 

 図1をご覧ください。この場合、顧客全体の1000人のうち、400人で売上の78%を占めることがわかります。

【図1:顧客を購買金額で10等分】

 

 ただし、デシル分析の場合、分析対象期間内にたまたま1回だけ大きな買物をした顧客も上位グループに出現することがあります。購買金額に別の概念を追加した分析手法が次のRFM分析です。

 

◯RFM分析

 RFM分析とは、以下の3つの要素を用いて顧客を分類する手法です。

これを3つの軸として表現すると、以下のようなイメージになります。

 

【図2:RFM分析イメージ】

 

 左手前の下のグループは直近の来店もなく、過去からの購買額と回数も低い、非優良顧客です。右奥の上のグループは何度も購買してくれ、直近の来店もあり、累計購買金額も高い優良顧客です。右奥でも下のグループは、購買回数も金額も大きい顧客だが、しばらく来店していないため離反(予備軍)顧客というように定義できます。

  このように顧客を分類し、分類(個別の顧客)ごとに適切なコミュニケーションを取ることで、販促施策の反応率の上昇と顧客ロイヤリティの向上を図り、自社への長期に渡る売上の貢献を期待することができます。しかしながら、これらの分析に使う顧客データは「既存顧客」です。既存顧客のLTV向上、離脱防止を目的とする施策の一方で、如何に「新規顧客」を獲得していくかという課題も重要です。ここからGISを用いた顧客分析の意義と価値がさらに高まります。

 

GISで顧客分析をする意義

 GIS(地図情報システム)で顧客データを分析する意義は大きく3つあるかと思います。ひとつ目は顧客を地図にプロットすることによる見える化、2つ目はビッグデータ・プライバシー保護の時代に即した顧客データ分析、3つ目は市場シェアの把握と潜在顧客の発見です。

 

地図上の見える化

 来店型のビジネスを行う店舗展開をしている企業にとって、顧客がどこから来ているのかを知ることは大変重要です。顧客リストを眺めていてもその分布はわかりません。GISに顧客の位置情報を座標に変換して地図にマッピングするジオコーディングという機能があります。図3は顧客分布のイメージです。顧客分布は店舗を中心に同心円状に広がることはまずありません。地形や交通網、競合の位置によって変化します。この分布が店舗の実態としての商圏(=実商圏)と言えるでしょう。

 

 【図3:店舗を中心とした顧客分布】

 

 GISでは顧客分布の◯◯%を満たす範囲はどこまでか?という商圏を逆算する機能(目標値商圏作成機能)があります。次の図4は顧客数の7割をカバーする自動車到達圏(赤いライン=自動車8分圏)を表しています。広範囲から来店しているように見えますが、顧客の大多数は店舗の足元から来店していることがわかります。

 

【図4:顧客7割カバー商圏】

 

顧客データの秘匿化

 マーケティング施策やITの進化によって、企業が保有する顧客データのボリュームは膨大なものになっています。従来のようにExcelで気軽に分析できるデータ量ではなくなっています。また、個人情報保護法の制定とプライバシー保護の文化の確立に伴い、顧客データの扱いには細心の注意を払わなければならなくなっています。GISでは大量の顧客データを秘匿化し顧客分布を面で捉えることができます。例えば500mメッシュや町丁目単位、郵便番号単位に集計してその分布を見ることができます。図5は先の顧客分布を500mメッシュ単位で集計し顧客数の大小で商圏を色分けしたものです。

 

【図5:メッシュ単位の顧客分布】

 

 この地図を見ると、単純な点での顧客分布では広範囲に分布しているように見えた顧客も、実はそのほとんどが店舗の足元から来店していることがより一層浮き彫りになりました。

◯市場シェアの把握と潜在顧客の発見

 このようにGISで顧客分布を面の単位に集計すると、更にGISが持っている地域統計データと重ね合わせて分析できるようになります。以下で考え方を説明します。

 

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  顧客分布だけの分析では、Aエリアの顧客は100人、Bエリアは50人ということはわかりますが、この場合、Bエリアが少ないのでもっと増やそうという判断にしかなりません。決して間違っていませんが、市場データ、すなわちAエリアの元々のターゲットは1000人、Bエリアは200人ということと重ねて検討しなければなりません。潜在顧客を考えれば、Aエリアは1000人-100人で900人、Bエリアは150人しかいないことになり、Aエリアの方が新規顧客獲得効率が良い、と判断できます。シェアで見ればAエリアはBエリアの半分以下です。
 GISの持つ地域統計データは全国を網羅した全数データなので、このような分析が可能となります。これを地図で表したのが次の図6です。メッシュ単位の人口に対して顧客が何人いるかを表しています。計算式は顧客数÷人口×100です。

 

【図6:顧客シェア分布】

顧客の位置とシェアの関係

 店舗の場合、顧客住所と店舗の距離が離れるほど来店率が下がるという仮説を皆さんお持ちではないでしょうか?次に店舗から各地域への距離と顧客シェア率の関係を見ていきましょう。

 GISの距離計算機能を用いて、店舗と各メッシュとの距離を計算します。この場合の距離は単純な直線距離では実態からかけ離れることがあります。例えば川がある場合、橋を渡ってしか行き来できません。車で移動する場合、直線距離では近くても迂回が必要となり実質的には遠い場合があります。さらに渋滞や信号待ちを加味した運転時間を用います。

 次の図7は店舗からメッシュの中心点への運転時間ごとに顧客シェアを集計したものです。店舗から5分圏内のシェアは6.37%であるのに対して、10分圏では3.77%に半減しています。店舗からの運転時間が長くなればなるほど顧客シェアが減退していくことがわかります。

 

【図7:店舗からの時間とシェアの関係】

顧客データがない場合

 業種業界によっては、顧客データを持っていない企業もあるかと思います。冒頭に述べた位置情報マーケティング時代の昨今、スマホなどから得られる位置情報を用いて、このエリアに来た人はどこから来ているか、この店舗に来た人はどこに住んでいるか?などを把握できるようになりました。つまり顧客データがなくても来店分布がわかり、競合店舗への来店エリアも分析することができます。

 図8は例として某ショッピングセンターに来店した人(スマホの座標)がどこに住んでいるかを表したものです。某ショッピングセンターの敷地・区画にジオフェンスという目に見えない柵をGISで定義しておき、その範囲で検出されたスマホアプリの座標が、翌朝早朝(自宅で寝ている時間と想定)どこにあるかを示しています。

 

【図8:スマホアプリからの某SCの来店者分布】

 

進化するGISマーケティング

 今回は顧客分析をテーマにGISを用いた分析の一部をご紹介しました。GISの活用用途は従来の店舗の出店計画や販促から、デジタルマーケティングへと拡大しています。ますます重要さを増すGISマーケティングの最新手法や事例を今後もご紹介していきます。

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