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競合店舗を加味した店舗吸引力の算出

月刊GSI 2017年11月号(Vol.77)

 今回のマンスリーレポートでは、ハフモデルに代表される重力モデル(グラビティーモデル)についてご紹介します。

 

はじめに

 店舗分析や立地分析では、商圏ボリュームの把握が必須ですが、自社店舗の周辺の人口がどれくらいかは、GIS(地図情報システム)を用いれば数クリックで簡単に知ることができます。しかしながら本当の意味での商圏ボリュームを定量的に知るのは、簡単なようで実は難しいことです。例えば、店舗から半径1km圏内の人口総数が10万人だとした場合、それはGISを用いればすぐにわかりますが、実際に自社店舗のターゲットとして見込めるのは10万人全てではないからです。何故なら自社店舗商圏内には必ずと言ってよい程競合店舗があり、10万人の内一定割合は競合店舗に行くことが想定されるからです。

 ではどうすれば競合を加味した上で、自店舗の本来のマーケットボリュームを知ることができるでしょうか?GISを用いた商圏分析ではいくつかの方法があります。

重力モデル(グラビティーモデル)とは?

 商圏分析における重力モデルのルーツは1600年代に遡ります。重力モデルというからには文字通り重力に関係があり、アイザック・ニュートン(1643年-1727年)の万有引力の法則が元になっていると言われています。万有引力の法則は簡単に説明しますと以下の3つの法則から成り立っています。
 

 それぞれの言葉を店舗や地域に置き換えればイメージできると思います。店舗と地域の間には引力がはたらく、店舗の魅力が大きいと引力も大きくなる、店舗への距離が近いと引力も大きくなるということです。この法則を小売業の店舗への吸引力を求める様々なモデルとして進化させてきた学者がいます。商圏分析では以下の3人を知っていればよいでしょう。それぞれのモデルの考え方を簡単に紹介し、その後ハフモデルについて紹介します。

 

◯ライリーモデル

「ある地域から2つの都市A、Bへ流れる購買力の比は、AとBの人口に比例し、その地域からAとBへの距離の2乗に反比例する。」

 
◯コンバースモデル

「小都市における購買力は、大都市に吸引される分と小都市に残る分の2つに分かれる。」


◯ハフモデル

「人々の店舗の選択確率は、移動コストが小さい店舗ほど高くなり、店舗自体の魅力度が大きいほど高くなる。」

ハフモデルとは?

 ハフモデルはGISマーケティングでは標準的な分析ロジックの一つで、アメリカの経済学者であるデービット・ハフ博士が1960年代に考案しました。小売店舗の出店前に、立地(商圏)と競合店を加味した集客力調査や売上予測を行う手法です。

 下のイメージ図をご覧ください。真ん中の家(地域)に住んでいる人が周りのお店に行く確率(吸引率)を求める場合のサンプルです。吸引率は主に2つの要素で決まるとされています。一つ目は距離です。家から各店舗への距離が近い方が行きやすいということです。もう一つは各店舗が持つ魅力値です。これは共通のものさしで計測された数値であれば何でも構いません。下のイメージ図で使用した魅力値は売場面積です。つまり「近くて大きいお店ほど吸引力が高い」ということです。
 

GISでのハフモデル分析イメージ

 下の画面は当社の商圏分析GIS「MarketAnalyzer™」のハフモデル分析画面です。画面真ん中の青い三角形が自社店舗で、周りの青いラインは想定する商圏です。赤い三角形は競合店舗で、地図内の色塗りの濃淡は自社店舗への吸引率を表します。自社店舗に近いほど赤色が濃くなり、競合店舗の足元は吸引率が低いことがわかります。

 

 下の表1は商圏内の明細です。町丁目やメッシュ単位で自社店舗への吸引率が算出されており、さらに統計データと掛け合わせて実質の吸引人口や吸引世帯が出力されています。

【表1:商圏内の町丁目別吸引率】


 さらに表2は商圏全体のサマリーで、左の集計データ人口総数(1,398,201人)という数値は競合を加味しない商圏内の単純な人口で、右のハフ集計データ(137,053人)は吸引率を掛け合わせた吸引人口です。この店舗の場合、商圏内のマーケットボリュームの最大値が137,053人で、人口の吸引率は9.8%となるわけです。

【表2:商圏内の総人口と吸引人口】

ハフモデル分析事例

 では具体的な活用例を見ていきましょう。とある小売チェーンで具体的に出店を検討している物件があるとします。ハフモデルを使い、出店する前と後で、想定する商圏内でどのくらいの世帯数をマーケットとして見込めるかをシミュレーションします。

 

出店前後の勢力分布

 まずは出店前のシミュレーションです。地図の真ん中が出店予定地であり、赤いラインは想定する1次商圏(自動車20分圏)です。商圏内を東西に走る国道(黄色い道路)を境に北側は競合AとB、南側は競合Cが既に出店しています。メッシュは各競合への吸引率で色塗りをしています。例えば赤系の色塗りエリアは競合Aへの吸引率が最も高く、青系のエリアは競合Cへの吸引率が最も高いことを表します。つまり各競合の最も強いエリアを示しています。

【出店前の勢力分布】

 

 次に出店後のシミュレーション結果です。紫系のエリアは新規に出店した後の自社店舗が一番強いエリアです。東西に走る国道の南北エリアはほぼカバーしています。国道の南側一帯を押さえていた競合C(青系のエリア)は更に南側に追いやられてしまう形です。

【出店後の勢力分布】


出店前後の吸引世帯数

 今回は商圏内の各500mメッシュ単位で自社店舗と競合店舗への吸引率を求めています。GEOデータ(人口統計データ)の一つである国勢調査の500mメッシュ単位の世帯総数を用いて、吸引率をかけ合わせます。下の表3は出店前後の獲得想定世帯数と吸引率の比較です。出店前は当然獲得想定世帯数がゼロですが、出店後は10万世帯を超え、競合Cの9.6万世帯を上回っています。

【表3:出店前後の吸引世帯数】

ハフモデル分析の注意点

 GISによる商圏分析ではこのようにハフモデルが活用されてきました。現状色々な業界のGISマーケッターと話をすると、一定のハフモデル否定派もいるようです。ハフモデルは「当たらない」というイメージを持っているようです。ハフモデルで吸引率を算出する際に主に2つの要素があるとご紹介しました。一つは距離、一つは魅力値です。本来、ハフモデルではそれぞれの要素を細かく設定する必要があり、その設定方法に決まった王道はありません。トライアンドエラーを重ねて自社にとっての距離とは何か、魅力値とは何かを定義する必要があります。いくつかそのポイントがありますのでご紹介します。

 

商圏分析における3つの距離

 GISでは3つの距離を計算することができます。直線距離、道のり距離、時間距離です。直線距離は文字通り店舗と地域を直線で結んだ距離、道のり距離は店舗と地域を結ぶ道路に沿った距離、時間距離は道路の渋滞状況や信号待ちを加味した距離で、実際には〇〇分と表現されます。店舗へ行く際に空を飛んで行く人はいないため、道のり距離や時間距離を採用します。目の前に店舗があっても間に川が流れており、直線距離では近くても橋まで迂回しなければならないため実際の移動距離は長いということはよく起こりえます。ただこのような計算ができないGISもあるため注意が必要です。

 

異なる距離抵抗

 ハフモデル分析では、距離と魅力値を何乗するかによって重み(距離抵抗)を付けます。例えばA地域と店舗の距離が2kmで、B地域と店舗の距離が3kmの場合、それぞれ2乗すると4:9という比率になります。昔ながらのハフモデルでは旧通産省が1973年に制定したいわゆる大店法の時代に設定した2乗が採用されていますが、交通網の整備にともなって距離抵抗が少なくなったり、最寄り品を扱う店舗では距離抵抗を大きくしたり、買回り品では小さくしたりと状況によって変える/変えられることが重要です。

 

魅力値の定義

 これが最も重要なポイントかと思います。ここまでご紹介した例ではわかりやすくするために店舗の魅力値を「売場面積」としていましたが、大きいだけでその店舗に行くと決められる訳ではありません。量的変数と質的変数の両方又は複数の変数を検討することが重要です。

 

 当社GISユーザー様の分析をご支援するなかで、経験上比較的当てはまりの良い変数はブランドです。自社と競合のブランドを何かしらの基準に則って数値化し、量的変数と組み合わせて魅力値とすると精度が高まったという事例が多くあります。

ハフモデルからグラビティモデルへ

 最後に宣伝となりますが、当社は従来のハフモデルを更に進化させたグラビティモデル分析機能を商圏分析GIS「MarketAnalyzer™」に搭載しています。

 

 本機能を体験できるハンズオンセミナーも随時開催しております。是非お問い合わせください。

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