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国勢調査小地域データを用いた地域評価

月刊GSI 2017年4月号(Vol.70)

 国勢調査は、我が国の人口の状況を明らかにするため、大正9年以来ほぼ5年ごとに行われており、平成27年国勢調査はその20回目に当たります。簡易調査と本調査が交互に行われ、今回は簡易調査です。商圏分析やエリアマーケティングでは、最も基本的なデータベースとして小地域単位(メッシュ/町丁・字等別)の集計データが広く活用されています。本コラムでは本年リリースが予定される2015年調査の国勢調査小地域集計データの結果を概観し、地域評価の切り口について解説します。

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国勢調査とは?

◯調査対象

 調査対象は2015年10月時点で日本に3ヶ月以上住んでいる人となっており、約1億2700万人全てにアンケートを実施している国内最大のリサーチデータと言えます。外国の外交官と外国の軍隊以外は全て調査対象です。住民票ベースではなく、実際に居住している場所をベースにしているため、学生の一人暮らしなどの実態もきちんと反映されています。

 

◯調査項目

 約300項目ありますが、エリアマーケティングで主に活用される主な項目群は以下のとおりです。

 

 国勢調査は毎回同じ項目を調査しているわけではありません。本調査と簡易調査を交互に繰り返しています。最新の2015年調査は簡易調査ですが、上図のとおり、通常とは調査項目が若干異なります。これは2011年の東日本大震災の影響を調査するためです。

国勢調査:気になるポイント

◯個人情報保護の時代、皆回答しているの?

 個人情報保護法やプライバシーに対する意識の変化を受けて、回答率が気になるのではないでしょうか。項目ごとに異なりますが、最終的な網羅率はかなり高いと思われます。 法律によって回答が義務づけられており、罰則規定もあります。個人情報保護法の適用対象外となっており、どうしても調査票が回収できなかった場合でも法律に基づいて聞き取り調査などを実施して網羅率を高めているようです。

 

 

◯住民基本台帳と何が違うの?

 国内の公的な人口統計は2つあります。国勢調査と住民基本台帳です。2つは似て非なるもので、違いは以下をご参照ください。違いを理解した上で、両者をうまく使い分ける必要があります。

国勢調査の集計単位(小地域集計)

  エリアマーケティングで活用される小地域データの集計単位には、「メッシュ」と「町丁・字等別」の2種類あります。下の地図は同じ「人口総数」の分布を表現したもので、緑色が濃いエリアほど人口が多いことを表します。

 

 左のメッシュ地図は南東側の人口密度が高く、右の町丁・字等別地図は南西側が高く見えます。メッシュの大きさは全国どこでも同じですが、町丁・字等別は場所によって大きさが異なるためです。どのエリアの人口密度が高いのかについての分析ではメッシュを用いるのが適切ですが、町丁・字等別は◯◯丁目という住所が紐付いているため、エリア販促などでは使いやすいでしょう。

国勢調査のエリアマーケティング活用

 ここからは国勢調査データを用いたエリアマーケティングについて解説します。チェーン企業が新規出店候補地の商圏調査をしたり、既存店を分析したりする際は、その商圏特性を把握します。商圏ボリュームから市場を判断し、商圏特性に応じた店舗コンセプトを策定します。

 

◯どんな場所でしょうか?

 駅商圏を例にします。東京都の豊洲駅、高田馬場駅、高島平駅と聞いて、どのような商圏かイメージしてみてください。

 左の地図のように、各駅を中心に半径500m圏を設定し、圏内の性・年代別人口構成(人口ピラミッド)を比較してみましょう。
※以下の3つの人口ピラミッドは2010年調査の国勢調査データを使用しています。

 

◯豊洲駅

 左の人口ピラミッドの棒グラフは実数で、折れ線グラフは構成比を表しています。緑色の折れ線グラフは日本全国、赤は東京都、青は駅500m圏です。

 実数と構成比ともに30代前後が突出しています。また0歳から4歳も突出しており、ニューファミリー構造が強い商圏といえるのではないでしょうか。

◯高田馬場駅

 こちらは豊洲のようなニューファミリー構造は見受けられません。特徴は20代前半の多さではないでしょうか。この年代は卒業・入学・就職で新しい生活を始め、住む場所が変わるライフステージにあります。

◯高島平駅

 こちらは明らかに60歳以上人口が突出しています。

 3つの駅商圏を国勢調査の年齢別人口で比較しましたが、その構造は大きく異なっています。店舗や販促を行う際に、商圏特性に応じた施策を行わなければ地域ニーズとのミスマッチが起こるのではないでしょうか。

 

時系列比較

 次に2010年と2015年を時系列で比較してみます。47都道府県のうち、人口増減率がプラスだったのは8都県しかありませんが、その内の神奈川県の川崎市中原区を例にします。川崎市は神奈川県の中でも人口が大きく伸びた市です。

 

◯川崎市中原区の町丁・字等別人口増減数(2015年-2010年

 左の地図は2010年と2015年の町丁・字等別単位の人口増減数です。青いエリアは人口が減り、赤いエリアは人口が増えたことを表します。

 全体として人口が増えた川崎市中原区ですが、すべての地域で増加したわけではないことが分かります。

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 左の地図は中原区の内、武蔵小杉駅近くの新丸子東3丁目を拡大したものです。ここは2014年に駅前に大型商業施設が開業し、周辺にタワーマンションが建築された地域です。買物利便性・交通アクセスが良く、急激に人口が増加しています。

実質人口増減分析

 ここまでは国勢調査のエリアマーケティングを活用する際の視点として、年齢構成と時系列について触れてきました。年齢別人口を時系列で分析する際に押さえておきたいポイントがあります。例えば2010年と2015年の比較をする際、5年の経過を勘案してデータを見なければいけません。2010年に30代前半だった人は2015年には5歳年をとっているからです。計算式は以下のとおりです。

   実質人口増減の計算例

30-34歳人口増減数=2015年30~34歳人口-2010年25~29歳人口

 

◯実質人口増減の考え方

 下の図は異なる2つの地点の人口ピラミッドです。棒グラフは2010年(左の青が男性、右のオレンジが女性)、赤い折れ線グラフは2005年の年代別構成比、青い折れ線グラフは2010年の年代別構成比を表します。

 

  左の図に示す2005年の赤い折れ線グラフと2010年の青い折れ線グラフの変化を見ると、2005年当時の人がそのまま5歳年をとったという傾向があります。5年間で年齢構造の変化がなかったと言えます。対して右の図は2005年と2010年の年齢構造が大きく異なります。開発が進み商業性が高まったり住宅供給が進むと、他地域から人口が流入します。流入する人々と年齢・ライフステージには傾向があります。

  

 

 

 

 

 

 

   上の図は実質年齢人口増減率の標準偏差(ばらつき)です。数値が高ければ人口流動性が高く、低ければ人口流動性が低いと解釈できます。まず高校卒業をきっかけに人口移動が発生し、次に20歳~30歳代にかけて大学卒業・就職による人口移動が発生、さらに30歳代前後の住宅購入以降、人口移動が収束(終の棲家)していることがわかります。

実質年齢別人口増減率マップ

 実質年齢別人口増減率を地図に見える化しました。

 左の地図は5歳~9歳人口の2010年~2015年の人口増減率を市区町村単位に表現したものです。

 千葉県印西市は増加率が高く、千葉県浦安市は低くなっています。

 次に住宅購入世代として30代前半と30代後半の実質年齢人口増減率マップをご覧ください。

 千葉県印西市は東洋経済新報社が2016年に発表した「全都市住みよさランキング」で総合1位となっています。千葉ニュータウンの開発による人口増や、それに伴う住宅の新築、商業施設の開発が進んでいることが原因とのことです。一方で千葉県浦安市は東京ディズニーランドが近く、都内への通勤圏でもあり人気のエリアでしたが、震災による液状化現象でその後の伸びが鈍化したと言われているエリアです。

終わりに

 少子高齢化により人口減少社会と言われています。つまり市場規模全体としては縮小しているわけですが、地域によって差があるということはご理解いただけたかと思います。

 エリアマーケティングは今後ますます重要性が高まると考えられ、国勢調査データの活用は不可欠と言えるのではないでしょうか。

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