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エリアマーケティングにおける「最寄り/距離」とは?

月刊GSI 2017年7月号(Vol.73)

  エリアマーケティングと商圏分析は、チェーン企業の出店、販促、店舗・顧客分析や、消費財メーカーのリテールサポートなどのシーンで実践されています。 

 その際に強力な分析ツールとしてGIS(地図情報システム)が活躍しますが、今回は「最寄り」や「距離」という概念を取り入れた分析手法をご紹介します。

 

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最寄り/距離とは?

  「最寄り」とはすぐ近くとか、最も近いという意味であることは今更説明するまでもありませんが、近いか遠いかという距離の計測はGISが最も得意とする分野です。

 GISにおける距離は主に3つあります。直線距離、道のり距離、時間距離です。例えば次のようなケースがあります。「直線距離で言うとすぐ近くにお店があるが、実際にそこに行こうとすると目の前に川があり、橋を渡るために迂回する必要がある。道のり距離で言うと遠い。また、橋が2つあり、片方は渋滞するが、もう片方はそうではない場合、ルートによって店舗へ到達する時間が大きく異なる」というようなことはよくあるでしょう。 

 

【GISにおける距離の考え方のイメージ】

 

  この場合は道のり距離や時間距離が重要になり、GISに搭載されている道路ネットワークデータや交通センサスなどのデータベースを駆使する価値がある訳です。

 さらに1店舗と最寄り駅という1つの距離ではなく、全店舗それぞれの最寄り駅というような一括処理ができるのもGISの強みです。

 それではいくつかの分析事例をご紹介していきましょう。

ケース1:自社店舗同士のカニバリゼーションを把握

  出店戦略としてドミナント戦略を採用しているチェーン企業があります。ドミナント戦略とはチェーン企業の出店戦略のひとつで、地域の市場占有率を高めるために同一地域を自社店舗の商圏範囲で埋め尽くすように集中的に出店することを言います。

 まずあらかじめ別の分析で自社店舗の実質商圏範囲を定義しておきます。ここでは例えば半径2kmとします。新規出店候補地を地図にプロットし、そこから複数の自社店舗との距離を計測します。その距離が4km以上離れていれば既存店舗の商圏を侵食しないと判定します(下記表参照)。出店候補地Aは既存の豊洲店と木場店の商圏を侵食する恐れがあると判定できます。出店候補地BとCはそれぞれの近隣の既存店と商圏を棲み分けられるということです。

 

【出店候補地と自社店舗のカニバリ判定】

ケース2:顧客への来店誘導の商品案内

  チェーン企業が採用する来店誘導の施策として、顧客住所から最寄りの店舗を顧客に案内する場合があります。ただし、全ての店舗が全く同じ品揃えをしている訳ではありません。新商品や戦略商品の場合はなおさらでしょう。販促キャンペーンを行い、消費者に新商品の案内をし、来店してくれた時にその商品を店舗で取り扱っていなければ、折角の販促効果がマイナスになってしまいます。そこで単純に顧客住所と既存店舗の最寄りを定義するのではなく、顧客住所に対して「最寄りの取扱店舗」を案内する必要が出てきます。

 

【顧客住所から最寄りの「取扱店舗」】

  

 また既存顧客への来店誘導だけでなく、新規顧客獲得のためにエリア販促を行うこともあるでしょう。その場合顧客住所は分からないため、町丁目の中心(代表点)から見た最寄り店舗を紐付ける方法が有効です。

  下の地図は、隣り合う2つの店舗から町丁目代表点の時間距離を計算し、近い方の店舗のテリトリー(商圏)を定義したイメージです。エリア販促を行う場合、どちらの店舗から実施すれば効率的か、来店率が高まるかを分析したものです。

 

【各店舗から最寄りの町丁目を定義】

ケース3:最寄りの◯◯を抽出

  単純に◯◯から最寄りの◯◯を抽出するという作業は頻繁に行います。例えばチェーン企業がウェブサイトなどで店舗案内をする際に、最寄り駅を掲載する場合も多いでしょう。数店舗であれば1つずつ目視で最寄り駅を判別すればよいですが、何百店舗、何千店舗となると人力では非効率です。GISに自社店舗と駅のデータをインポートすれば、数クリックの操作で下記のようなデータを効率よく作成することができます。 

 GISで最寄り駅を割り出す処理のイメージは以下のとおりです。店舗リストに対して、最寄りの駅名、店舗から駅までの道のり距離、最寄り駅の乗降客数を近い順に3つ紐付けたものです。

 

【店舗リストに対して最寄りの駅情報を付与したイメージ】

 

  店舗案内には最寄り駅の乗降客数は必要ないと思いますが、最寄りのポイント自体が持つ属性値も集計対象になるとイメージしてください。上記では他に道のり距離を付与していますが、距離ではなく徒歩による時間としておけば、不動産の表示に関する公正競争規約に準じた徒歩時間を計算することもできます。

  最寄りの◯◯を抽出するケースとして、その他以下のようなものが挙げられます。色々な分野で最寄りという概念が分析に組み込まれています。

  

 【最寄りの◯◯を抽出する例】

店舗と顧客の距離を分析する

 最寄りという観点だけでなく、店舗と顧客の距離を分析要素に組み込む事例が増えています。基本的には遠くの店舗より近くの店舗に人々は吸引されるからです。次は具体的な分析事例をご紹介します。

実商圏を定義する

 下の地図の赤い点は、某ショッピングセンターにテナントとして入居しているチェーン企業の顧客分布です。例えばこの顧客数が1,000人の場合、その7割をカバーする自動車到達圏が地図の青いラインです。つまり自動車26分圏内に顧客の7割である700人が住んでいるということを表します。このチェーンにとって守るべき1次商圏は自動車26分圏と定義しました。

 

【実商圏:顧客7割カバー商圏】

 

実商圏内の時間距離

 先に定義した26分圏内の各500m四方のメッシュに対して、ショッピングセンターへの運転時間を集計し色分けしました。冒頭に述べたように直線距離では同じでも河川や道路状況によって10分程度で到達できるエリア(青系)もあれば、40分以上かかるエリア(赤系)もあります。

 

【実商圏内のメッシュ別時間距離】

  

 この地図を表にしたのが次のような商圏内のメッシュのリストです。メッシュごとにショッピングセンターへの運転時間(赤枠)とターゲット人口、顧客数、シェアが計算されています。シェアはメッシュごとの顧客数÷ターゲット人口で計算しています。

 

【実商圏内のメッシュリスト】

 

◯時間距離とシェアの関係

 さらに上記のメッシュリストを運転時間でソートし、運転時間単位でシェアを集計しました。ショッピングセンターから5分未満の地域のシェア率は6.37%で、時間距離が大きくなるほどシェアが減退していくのが分かります。

 

【時間距離別シェア】

終わりに

 今回は最寄りと距離という概念に基づくエリアマーケティング手法をご紹介しました。企業の保有するデジタルデータが拡大し、ビッグデータ分析ニーズがますます高まっている現在、分析の軸に空間的な要素を加えることが新たな発見となり、その際にGIS(地図情報システム)は大いに貢献します。

   

エリアマーケティングGIS「MarketAnalyzer™」

 

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