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病院クラスター分析:機能と需要から病院を分類し、ポジションを把握

月刊GSI 2017年6月号(Vol.72)

 厚生労働省の社会保障審議会は、来年度に予定されている診療報酬と介護報酬の同時改定に向けての基本方針として、医療機能の分化・強化を掲げています。これは病院経営という観点からますます大きな環境変化と言えるかと思います。 

 今回のマンスリーレポートでは、病院機能と各病院の足元の人口特性を用いて、病院のポジションを明確化する分析を試行してみました。

 

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はじめに:少子高齢化と病院経営における変革

 超高齢社会と言われて久しいですが、最新の国勢調査(2015年調査)を基にした総務省の推計値によると、65歳以上人口(いわゆる高齢者)は全国で3,461万人で、総人口の27.3%を占めているとのことです。総人口に対する高齢者の割合が7%を超えると高齢化社会、14%を超えると高齢社会、21%を超えると超高齢社会と定義されているため本格的に超高齢社会に突入したと言えます。
 一方で少子化も進んでいます。総務省の資料によると、出生数は戦後1947年~1949年の第1次ベビーブーム時は約270万人で、1971年~1974年の第2次ベビーブーム時は約210万人。未婚化・非婚化、晩婚化・晩産化の進行もあり、2013年の出生数はその半分以下の約103万人に減少しています。

 国立社会保障・人口問題研究所による2060年の将来推計人口では、年少人口(0~14歳)約951万人、生産年齢人口(15~64歳)約4,793万人、老年人口(65歳以上)約3,540万人とされ、その比率は年少人口10.2%、生産年齢人口51.6%、老年人口38.1%です。つまり少子高齢化という現状は今後さらに拡大していくというわけです。

 このような状況において、国家の財政状況が今後ますます逼迫することは誰でも想像できます。税収入が低下し、医療保険・介護保険の支出が増大してくるからです。健康寿命の延伸や地域包括ケアシステムがテーマとなり、公助ではなく自助・共助を推し進める政策は当然やむなしというところかと思います。

 厚生労働省の社会保障審議会は、来年度に予定されている診療報酬と介護報酬の同時改定に向けての基本方針として、医療機能の分化・強化を掲げています。これは病院経営という観点からますます大きな環境変化と言えるかと思います。筆者の解釈では、高度な医療を提供する病院と日々の生活を支える医療を提供する病院の役割分担を明確にするということです。言い換えれば中途半端に高度な医療を提供している中堅クラスの病院は、経営上大きな変革を迫られているということではないでしょうか?

病院のポジションを把握するための分析

 今回のマンスリーレポートでは、病院機能と各病院の足元の人口特性を用いて、病院のポジションを明確化するための分析を試行してみました。分析の概要は以下の通りです。
 ※あくまでも自主調査であり、分析手法をご紹介することが目的です。

 

 

病院機能のスコア化

 厚生労働省の地方支分部局である地方厚生局が公表している、いわゆる施設基準から、傷病テーマごとに以下の加算状況をピックアップしました。これらの加算を受けている病院は高度な医療を提供している病院だと仮定します。

 

【病院機能を定義する加算フラグ】

 

 例えば緩和ケア病棟入院料加算を受けていれば、がんに対する高度医療を提供していて、超急性期脳卒中加算を受けていれば脳卒中に対する高度医療を提供していると解釈します。実際のデータのレイアウトは以下のようになり、病院リストに加算を受けているかのフラグが付いています。

【病院の加算状況】

 

 各加算のフラグの数を合計しても意味がないため、傷病ごとのフラグの数をスコアに変換します。今回はゼロが中央値の偏差値(Zスコア)としました。これによって、病院ごとに基本スコア、がんスコア、脳卒中スコア、心臓病スコアを算出しました。

【病院機能のスコア化】

 

病院のクラスター分析

 次に各病院の各スコアを投入変数として972病院を5分類し、非階層クラスター(k-means法)によるクラスター分析を行いました。下の画像は当社のGIS(地図情報システム)「MarketAnalyzer™」のクラスター分析機能の画面です。

 

【クラスター分析画面】

 

 まずは分類結果を地図上で見ていきましょう。5つのクラスターに分類したため、地図上に5色のアイコンがプロットされています。同じ色の病院は同じような機能を持ち、色が異なれば機能も異なります。

 

 【病院クラスターの地図分布】

 

各クラスターの解釈

 それでは、各クラスターの持つ意味を解釈していきます。下の図はクラスターごとに投入した変数(各スコア)を集計したものです。CL001は83病院あり、基本スコアは平均的、がんと脳卒中に強い病院グループと言えます。CL003の87病院は基本機能が最も強いグループで、CL005は相対的に病院機能全般が弱いグループと言えます。

【クラスター解釈1:病院機能】

クラスターごとの医療需要の推察

 クラスターごとの医療需要の現状と将来像を知るために、各病院の所在地を中心に半径3km圏を設定し、その圏内の人口等の下記データ項目を集計しました。

 

【各病院3kmの設定と集計データ】

 

 各病院の半径3km圏内の集計値を病院機能の時と同様にスコア化し、クラスター単位でスコアを集計したのが下記の表です。CL001とCL005の病院グループは将来の医療需要や介護需要が多いのに対して、CL002~CL004は相対的に低いことがわかりました。

 

【クラスター解釈2:将来の医療需要】

 

【クラスター解釈3:将来の介護需要】

 

クラスター解釈のまとめ

 ここまで、病院機能・医療需要・介護という3つの軸で各クラスターを解釈してきました。下の表はそれをまとめたものです。あくまでも解釈ということですが、例えばCL003に属する87病院は現状の機能も自院から3km圏の需要も他の病院と比べると曖昧であり、方向性を一層明確にする必要があると言えるのではないでしょうか?

 

【クラスター解釈のまとめ】

 

 2018年度からの第7次医療計画では病院機能の分化が進められていきます。病院経営という観点から自院のポジショニングを再確認し、方向性を定め、特化する分野に集中的に資源を投下していけば、「選ばれる病院」になるのではないでしょうか?

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