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家計調査年報から読み解く地域の傾向とチェーン企業の売上想定

月刊GSI 2016年9月号(Vol.66)

 家計調査年報は総務省統計局が調査している指定統計(※)で、日本国内の家計の支出を知り、個人消費を捉えることができる統計です。消費に関する統計は他にもいくつかありますが、需要・消費者側から見ることのできる統計は本統計のみで、また項目も細かいため使いやすく、商圏分析やエリアマーケティング分野の分析で広く使用されています。本統計はいわゆる標本調査で全国約9,000世帯を対象としています。

 当社では家計調査年報と国勢調査を用いて、空間的・統計解析的処理により、全国1kmメッシュ/500mメッシュ単位の「推計消費支出データ」を開発・提供しています。本コラムでは推計消費支出データ2015年版を用いて、地域ごとの品目別消費傾向を見ていき、その後小売業における本データを用いた売上想定について解説します。

(※)指定統計:統計法2条によって指定された統計で、国が基本政策を決定する際の基準となる。家計調査年報の他に国勢調査、事業所統計、商業統計などがある。

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消費の地域傾向や時系列傾向

○ライフスタイルの変化からパン食文化へ!?

 2人以上の世帯の米の消費額は以前から減少が続いていますが、平成20(2008)年 以降は、パン類(食パン、菓子パン、調理パン等)への年間の支出額が米への支出額を上回っています。
下のグラフは2008年の消費額を1として表した、米とパンの消費額の推移です。

 

 日本人の食文化の欧米化ということでしょう。ただし、米を使う弁当やおにぎり等は増加傾向にあります。家庭での調理を必要とする米と比べて、パン類や弁当類は手軽に食事ができる利便性があると考えられ、共働き世帯の増加、核家族化の進展など、ライフスタイルの変化とも関連しているのではないでしょうか。

 

 米の消費額を地域別に見ると、やはり米どころと言われる新潟などが高くなっています。地図は消費額を偏差値に変換して市区町村単位で色塗りしたものです(以下同様)。

 

◯東西で異なる食文化!?

 品目別に見ると、西日本と東日本では消費傾向が大きく異なるものがあります。まずは魚類から、まぐろと鯛を比較してみます。

 

 上の地図の赤やオレンジは消費額が高く、青や緑は低いことを表します。まぐろは関東地方を中心に中部や東北で消費額が高いのに対して、鯛は逆に九州、四国、近畿で高く、中部以東は北海道まですべて低くなっています。

 

次に肉類の中から牛肉と豚肉を比較しました。

 

こちらも東西で大きく傾向が分かれています。おおよそですが、牛肉は西高東低、豚肉はその逆と言えるのではないでしょうか。

 

東西で大きく嗜好性が異なる食品と言えば、やはり納豆です。東西の差が一目瞭然です。

 

酒類の嗜好も東西で異なる!?

 飲料も東西で傾向が異なるものが多くあります。代表的な例として清酒(日本酒)と焼酎があり、両者を比較すると、清酒は新潟や東北の各県、焼酎は特に鹿児島が目立ちます。

 

◯TVドラマの影響でウイスキーの消費が伸びた!?

 

 酒類の中ではウイスキーの消費が伸びています。2014年から2015年にかけて放映されたNHKのテレビドラマの影響もあるのではないでしょうか。

 

その他の品目の地域傾向や時系列変化

 このように、推計消費支出データを用いればカテゴリや品目別に地域ごとの消費額を把握することができます。全部で約600項目あり、食品関係の一部をご紹介しましたが、その他大きく地域傾向が分かれたものや時系列で変化が大きい品目を見ていきましょう。

 

寒い地域ほど灯油の消費が高いのは当然!?

 

たんすも地域差が大きいです。

 

携帯電話やスマートフォンの普及により、固定電話に費やす額の減少と移動電話通信料の増加が顕著です。

 

ペットブームによって動物病院への出費も増えています。

 

商圏分析における推計消費支出データの活用

 ここまでは消費傾向の地域差と時系列変化について一部ご紹介してきました。
次に推計消費支出データの活用法として、小売チェーン企業におけるハフモデル分析の事例をご紹介します。

 

ハフモデル分析とは?

 ハフモデル分析については本マンスリーレポートでも何度か解説しているため詳細は省略しますが、おおまかに言えば、自店への消費者の吸引率を、自店を中心とした商圏内の小地域ごとに競合店舗の魅力値と各小地域との距離によって算出するモデルです。要するに消費者が「近くて魅力のある店舗に引き寄せられる」ことを数字で表します。算出結果のイメージは「商圏内の◯◯丁目からは自店へ60%来店し、競合店Aには30%、競合店Bには10%来店する」というものです。

 

 

◯売上を想定するために推計消費支出データを活用 

 下の地図はハフモデル分析の結果のイメージです。中心の青い三角印が自社店舗で、周辺の赤い三角印は競合店舗です。青いラインが設定した商圏範囲で、赤い濃淡の色塗りは500mメッシュ単位の自社への吸引率を表しています。

 

 このように、ハフモデルは商圏内の各小地域単位(メッシュや町丁目)で吸引率を算出するものですが、GIS(地図情報システム)に搭載されている各種統計データもメッシュや町丁目単位で集計されたデータベースです。下の表は商圏内の各メッシュのリストです。メッシュごとの吸引率が算出されているため、これを各メッシュの世帯数に掛け合わせ、実際に自社店舗へ吸引できる獲得世帯数を求めます。

 

 

 売上想定を行う場方法は、大きく分けて2通りあります。1つは吸引率を加味した獲得世帯数に客単価を掛け合わせる方法です。もう1つは吸引率にカテゴリ・品目ごとの消費額を掛け合わせる方法です。どちらの方法を採用するかは企業ごとの考え方や精度により異なります。消費額を掛け合わせる場合、業種業態ごとに何の消費項目用いるかもさまざまです。

 

◯食品スーパーの場合

 食品スーパーの場合、いわゆる生鮮三品を重要な消費項目として採用することが多いです。

例えば、魚介類合計/肉類合計/生鮮野菜合計などです。これら項目は中分類で、さらに小分類で魚介類なら鮮魚と貝類、さらにまぐろやアジなどに分かれています。肉類なら生鮮肉と加工肉、さらに牛肉やソーセージなどに分かれています。自社店舗で取り扱っている商品カテゴリに応じて選択することができます。

 

◯ホームセンターの場合

 ホームセンターの場合は、リフォーム分野では畳替え/給排水関係工事費/外壁等工事費/植木・庭手入れ代などの項目が該当し、インテリア分野では、室内装備・装飾品、家庭用品分野では家事雑貨/家事用消耗品がよく活用されます。ペット分野ではペットフード/愛玩動物・同用品です。

 

推計消費支出データの詳細や各消費項目についてはこちらをご参照ください

 

 

■終わりに(分析精度をあげるためのグラビティーモデル)

 このように、ハフモデル分析によって得られる自店への吸引力に推計消費データの消費額を掛け合わせることで、商圏内の全体の消費額全体から競合店舗の影響度を差し引いて、自店がどれだけの金額を獲得できるかをシミュレーションすることができます。
一般的には、まず売上実績がわかっている既存店舗でシミュレーションを行い、ハフモデルの色々な設定を調整します。最近のGISにはそのような調整(トライ・アンド・エラー)が一層容易になった新しい機能(当社ではグラビティーモデル)も備わっています。消費データの活用だけではなく、ハフモデルによる売上想定に限界を感じている方も、今一度取り組んでみてはいかがでしょうか?

※グラビティーモデルについてはお気軽にお問い合わせください。お問い合わせはこちら

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