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再確認!GIS(地図情報システム)とは?

月刊GSI 2016年4月号(Vol.63)

 新年度がはじまりました。出店戦略、販促戦略、エリア戦略も新たに定義の見直しを行う等のタイミングかと思います。今一度GIS(地図情報システム)とは何か、そして活用の意義についてご紹介したいと思います。

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1.GISとは?

 GISはGeographic Information Systemの略で、日本語では地図情報システムや地理情報システムと言います。地図や各種データが階層構造として搭載されており、それらデータを空間的に処理する仕組み(GISエンジン)を含めた総称です。コンシューマー向けのGISではカーナビゲーションが馴染み深いでしょう。官公庁でも都市計画や防災、行政サービス、情報公開等で地図を使ったシステムを活用しています。当社の守備範囲は民間企業向けの商圏分析・エリアマーケティングですが、後述する様々な活用用途があります。

2.GISの歴史

 民間企業向けの商圏分析・エリアマーケティング用途と言えば、国内で最初にGISを本格的にビジネスで利用したのは日本マクドナルドで、約20年前からと言われています。当時は国内にまだGISが普及しておらず、先行している海外のGISを参考に自社開発されたそうです。大量出店時代の到来と共に、手作業や勘だけの商圏調査は終わり、データに基づく意思決定に移行しはじめた時期といえるでしょう。

 弊社もほぼ同じ時期にパッケージ化した商圏分析用GIS(当時はターゲティングマシンという製品でした)をリリースしました。今では導入実績社数が2,000社を超えています。

 経験と勘だけで意思決定するのであればGISは不要です。経理財務システムや顧客システムのように、それがなければビジネスが成り立たないというものでもないかも知れません。しかしながら、小規模ビジネスであれば属人的な経験と勘でも十分ビジネスは進化しますが、組織が大きくなるとデータという共通言語がない限りスムーズな意思決定が困難です。時代の流れからも、ますますエビデンスベースドな経営が求められており、今後一層GISの価値・意義は向上していくと思われます。

3.GISの構造と搭載するデータベース

 GISの構造の概略図は次ページの図1を参照してください。簡単に言えば、地図とデータが搭載されている仕組みということになりますが、地図とデータそれぞれに大きな意義があります。

 ◯地図

 地図は単に眺めるためのものではありません。勿論データや分析結果の「可視化」という意味で地図は重要な要素ですが、GISの地図はデータ同士を空間的に処理するための素材という意味でも重要です。

例えば顧客と店舗との距離、自動車◯◯分圏という商圏範囲、営業テリトリーの重複や空白地帯など、空間解析をすることによって初めてわかることがあります。

 

◯データ

 GISで利用するデータは、データ項目数で言えば数千種類程度あり、大きく3つのカテゴリに分類できます。当社ではそれぞれをポイントデータ、統計データ、自社データと呼んでいます。

・ポイントデータ

 地図上に点でマッピングするようなデータのことです。自社店舗、顧客、競合店舗などが該当します。自社店舗と顧客については自社データの欄で後述します。競合データは単にどこに競合が存在するかを把握するだけではなく、自社のマーケットサイズを測定する際に重要な要素です。例えば2つの商圏があり、商圏人口が同じ5万人規模だったとします。この段階で人口が同じだからマーケットサイズも同じだと判断するのは早計です。片方の商圏は競合が5店舗あり、もう片方は競合が1店舗という状態だったらどうでしょうか?商圏内の5万人は当然競合店舗にも流れますから、マーケットサイズが大きく異なってしまうということです。これについてはハフモデル分析という手法が有効で、商圏人口に対して競合の影響を加味して吸引人口を知る際に活用されています。

・統計データ

 国勢調査や住民基本台帳、経済センサスなど、国や自治体がソースの公的なデータを指すのが一般的ですが、それらを組み合わせて推計したデータなどもエリアマーケティングでは活用されています。個人情報や特定の店舗などを示すものではなく、メッシュや町丁目、郵便番号界、市区町村など、エリア単位で集計・秘匿化されたデータです。点ではなく面のデータとも言えるでしょう。

・自社データ

 ユーザー企業が保有する自社店舗のデータや顧客データ、つまり実績を表すデータです。地図上にマッピングして分布を見るのは勿論のこと、面の単位で集計して統計データと重ねあわせて分析します。統計データと重ねあわせるとポテンシャルに対する実績(=シェア)を把握することができます。

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【図1:GISの構造】

4.GISでできること(活用用途)

image5 エリアマーケティング分野におけるGISの主な活用用途として、店舗開発、既存店分析、顧客分析、販売促進、リテールサポート、開業支援、テリトリー管理などが挙げられます。

◯店舗開発

 新しく出店する候補物件に対して、その立地・商圏のマーケットサイズの測定などを行います。バブルの時期は物件の取り合いで、いかに素早く出店するかが重視された面もあったかと思います。出せば売れたわけです。しかしながら現在ではどの企業も出店に関しては相当慎重となっており、緻密な商圏調査を必須としています。GISを活用した商圏分析は約20年前からと述べましたが、最初の活用例は小売チェーンや飲食チェーンによる新規出店時の商圏調査でした。現在はその分析レベルも高度化し、売上予測モデルを構築したり、ハフモデル分析によって競合の影響を加味したりと統計解析を駆使しているユーザーもいます。

 

◯既存店分析

 新規出店にしても判断基準が必要です。GISを用いれば「店舗から自動車10分圏で人口が3万人」などの条件で瞬時に商圏を割り出すことはできますが、それだけではそれが多いのか少ないのかがわかりません。そこで既存店を分析する必要があるわけです。売上上位店舗の商圏人口と比べて多いか少ないか、いわゆる「しきい値」を定義する分析は基本です。また商圏の構造自体が時代とともに変化していくため、現状と将来像を鑑みた業態の転換や再配置などのテーマでも活用されています。

 

◯顧客分析

 チェーン店舗においては商圏の定義を顧客分布から行うケースも多く見られます。顧客の来店マップが実態の商圏となります。最近ではチェーン企業だけではなく通信販売の企業が自社の顧客をプロファイリングする目的で活用するようにもなりました。商品の発送先住所を基に、細かい属性を統計データから類推する手法です。この手法はアドテクノロジーの分野でも応用され始めています。ネットの閲覧履歴に応じて最適な広告を配信するという従来のテクノロジーに加えて、ネットのオーディエンスデータやスマートフォンアプリからの位置情報を地域ごとの統計データを用いてより詳細にセグメントするなどの活用方法があります。

 

◯販売促進

 新規出店ではなく、既存店をいかに活性化させるかをテーマとする企業も少なくありません。具体的には、エリアに紐づく広告媒体の販促エリアを最適化する場合です。顧客分析と連動しますが、顧客分布という実績に対して人口や世帯数などの統計データ、つまりポテンシャルを重ねあわせて地域シェアを把握します。町丁目や郵便番号界単位の小地域ごとのシェアに応じて販促エリアに優先順位を付けて、販促ROI(費用対効果)を最大化しています。

 

◯リテールサポート

 文字通りリテール(小売)に対してサポート(支援)するという分野です。GISを利用するのは食品や飲料、化粧品などの消費財メーカーや卸です。自社の商品を小売店舗で販売してもらう際に、商圏特性というエビデンス・根拠に基づく提案を行っています。クライアントへの提案時に利用するという意味ではコンサルティングや広告代理店の業務もこのような用途ですし、次の開業支援の場合も同様です。

 

◯開業支援

 診療所や介護施設、飲食店や美容室関連でこのキーワードがよく出てきます。費用対効果やナレッジの問題から、それぞれの経営者が自前でGIS分析することはあまりありません。彼らとビジネスをしている企業がGISを営業ツールとして活用しています。診療所の開業支援の場合なら、開業候補地の診療圏に対する推計患者数を自動的に算出するなどの機能も充実しています。

 

◯テリトリー最適化

 BtoB企業においては営業所や営業員単位で営業テリトリーを定義している場合があります。その際に移動距離や既存顧客数とその実績、マーケットボリュームが均等になるようにテリトリーを組むためにGISとデータを用いています。また、ピザや寿司などの宅配チェーンでは、店舗間の配達可能エリアの重複や空白地帯がなく、配達時間が均等になるようにシミュレーションします。

5.GISの価値

 ここまではGISの構造や用途についてご説明しました。次はGISを導入して運用する価値・意義について解説します。

◯商圏のシュミレーション

 GISを使うかどうかは別としても自社の商圏範囲を把握することは必須です。紙の地図を広げて手書きで半径◯◯km圏や行政界単位(◯◯市など)を描くことはできます。しかしながら消費者は半径◯◯kmや◯◯市という単位で移動・行動するわけではありません。実際には徒歩・自転車・自動車・電車などを利用して来店します。来店手段に応じた商圏範囲を設定することは手作業では困難です。そこでGISの商圏作成機能が必要となります。

 

◯データを見える化する

 例えば顧客データをイメージしてください。普段、現場レベルではExcelなどの表形式で見ているかと思います。しかしExcelをいくら眺めても店舗の実商圏はわかりません。これを地図上にマッピングするとその分布は一目瞭然です。河川を超えてまで来店しない、大きな幹線道路で商圏が分断されているなどの気づきは、地図を用いて初めて理解することができます。また、大抵のGISには分析結果をグラフ形式で自動的に出力するレポート機能を搭載できるため、商圏やエリアの傾向が一目でわかることもメリットです。

 

◯市場を知る

 GISを利用して分析するデータのうち、過去から現在まで最もポピュラーなのは国勢調査です。現在の日本の人口は約1億2800万人で、これが多くの企業のターゲットの最大値と言えるでしょう。自社で保有している顧客データや購買データはその内の一部にすぎません。そしてそもそものマーケットボリュームを商圏単位、地域単位で知らないと市場を理解することにはなりません。図2をご覧ください。

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【図2:実績と市場の比較】

 地域Aには顧客が100人、地域Bには顧客が50人いるとします。このまま比較すれば地域Bの顧客が少ないためもっと増やそうとし、地域Bを重点地域と定義してしまいがちです。そこでGISを用いて市場という要素を追加し、地域Aは人口が1,000人、地域Bは200人というデータを確認できたとします。あと何人顧客になり得る人がいるのかという観点で計算すると、地域Aは900人、地域Bは150人となり、余地が潤沢な地域Aに注力しようという、全く逆の判断が可能です。どちらが正しいかは課題やテーマにもよりますが、市場を表すデータと重ねあわせて分析しなければ、判断を誤る可能性があるということです。

 

◯分析ナレッジを全社共有のものとする

 分析の目的が、出店や販促の意思決定を正しく行い、地域戦略を立てることだとします。経験豊かなベテランはGISに頼らずとも結果的に正しい判断ができるかも知れません。しかしベテランという限られた人の属人的な判断だけで経営の舵取りをすることには、リスクが伴います。GISでの分析は基本的には誰が行っても同じ結果となり、その出力結果はドキュメントとして共有することができます。つまりベテランの知見を全社に共有しやすくなるということです。

6.GISで成果を挙げるポイント(事例)

 GISがどんなものか、どういう用途で利用されていてどんな価値があるのかについて説明してきました。GISを単に導入すれば自社の課題が解決されるというものではありません。適切に運用し、GIS本来の価値を十分活用することが重要です。

 弊社は20年以上に渡って2,000社以上にエリアマーケティング用GIS「MarketAnalyzer™」の提供・運用支援を実施してきた経験を基に、分析手法や事例を紹介する無料セミナーを毎月開催しています。次はセミナーでもあまり紹介していない事例をご紹介します。

 

事例1:経営の重大決定のエビデンスに

 某飲食チェーン様では、新規出店候補地として複数地点を検討し最終的に2つに絞られた。経験と勘だけではどうしてもどちらかに絞り込むことができず、GIS分析を実施し、客観的なデータで最終判断した。

 

事例2:人材リソースの有効活用

 某コンサル会社様では商圏調査とそのレポート作成は業務上必要で、従来は営業員がそれぞれ手作業で行っていた。人によって調査の内容と質が異なり、作成には数時間~数日を要していた。GIS導入によって作業時間が数10分の1~数100分の1になり、本来の業務に人員を投下できるようになった。

 

事例3:販促のROIが劇的に向上

 某小売チェーン様は毎月、各店舗への集客を目的として折込チラシを配布している。配布エリアは各店長が判断し、それ以上精査していなかった。そこでGISを導入し、顧客データと統計データを用いて強いエリアと弱いエリアを把握し、「ここには配布しないでこっちに配布する」というように全店舗の配布エリアを細かく定義し直した。結果的にチラシの予算が20%削減できた上、来店数は3%増え、販促ROI(費用対効果)は劇的に向上した。

 

事例4:属人的営業から提案営業へ

 ターゲットが飲食チェーンの企業様。営業スタイルは既存取引先企業へルート営業を重ね、担当者と仲良くなって受注をもらうというもの。年々競合との価格競争も激しくなり、売上や商談数が下落傾向だった。そこで新規顧客の開拓が課題となったが、これまでの営業スタイルでは全く通じない。GISを導入し、訪問する店舗の商圏調査レポートを作成し、持参したところ、店長が気になる情報を提供できることになり、商談率が向上。段階を追って色々なデータを提示することによって商談回数が増えクライアントとの接触機会も増やせた。自社商品を提案する際にも、店舗周辺の商圏特性を提示することで説得力のある提案が可能となった。

 

事例5:店長の目つきが変わった

 住宅メーカー様。GISの主な利用目的は建築主への提案営業。特に問題なく運用していたが、一方で各店長が一同に介する毎月の店長会議で、店長がネガティブな言い訳ばかりするという悩みがあった。そこで会議の配布資料である店舗別売上予実表に、店舗をプロットした地図を加え、実績に応じてプロットしたアイコンの大きさを変えてみた。今までは自分の店舗の予実を見る程度だったが、地理的に近い他店の予実を意識し自分の店舗のアイコンの大きさを気にするようになった。

7.終わりに

 GISを運用して成果を収めるにはGISという道具の良し悪しだけではなく、何に利用するのかという目的や課題設定と、それを支えるパートナーが重要です。導入を検討したい、既存のGISを見直したいという課題をお持ちであれば是非弊社にお声がけください。お客様の状況に合った最適な運用形態をご提案します。

 最後に、最近店舗開発のために新規に当社GISを導入いただいた企業の社長様の言葉で終わりたいと思います。

 

「GISを導入したって出店に失敗することもあるだろう。しかしながら、きちんと分析してデータに基づく判断をした上での失敗と、そうでない場合の失敗とでは、そこから受けるダメージが全然違うだろう。」

タグ: GIS 商圏分析
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