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GIS(地図情報システム)によるデータ表現の魅力と魔力

月刊GSI 2015年12月号(Vol.59)

 GSI Monthly Report(月刊GSI)はエリアマーケティング・商圏分析についての情報提供を目的に、毎月1回発行しています。弊社メンバーを中心に、時には外部のパートナー企業の方が執筆し、分析の切り口・データの読み取り方をご紹介してきました。早いもので今回で59号となり、もうすぐ丸5年が経過しようとしています。

 今回は、分析というよりは少し肩の力を抜いて、地図にデータを表現する面白さについてご紹介します。表現によっては、分析した結果が社内や外部のステークホルダーにきちんと伝わらないことがありますが、実際のアクションにつなげるという本来の分析目的からすれば、データ表現は分析手法云々の前に非常に重要です。本コラムで、同じデータでも表現の仕方を変えると違った結果に見えるという「魅力と魔力」を感じていただきたいです。

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1.地図の表現

 ほとんどのGIS(地図情報システム)では地図の見た目をユーザー側で自由に変更できます。搭載している地図のデータ形式にもよりますが、道路や鉄道などのラインの情報、市区町村名などの文字の情報がレイヤーという単位で構造化され、それぞれ別々に管理されています。表示/非表示や、太さ・フォント・サイズをレイヤー単位で調整可能です。
 GIS分析の手法は様々なデータを重ね合わせて見るというものなので、普段見慣れている地図では情報過多となる場合もあり、見やすいように調整することも大事です。図1と図2は全く同じ地図データを用いて表現を変えたものです。好みはあるかと思いますが、受ける印象は大分異なると思います。
※弊社エリアマーケティング用GIS「MarketAnalyzer™」の最新バージョン4.0.0では図2の地図デザインを標準搭載しています。

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【地図の表現 図1(上) 図2(下)】

2.ポイントデータの表現

 ポイントデータというのは、地図上に点でプロット(表示)するデータの総称です。例えば自社店舗データ、競合店舗データ、顧客データなどです。緯度経度や漢字住所からジオコーディングという処理により地図上にプロットします。
 今回は「主要商業施設売上データ」の中のショッピングセンターのデータを用いて表現しました。

◯単純なプロット
 図3は各施設のレコードに含まれる売上などの属性に関係なく、各施設を同じ赤い点で表現したものです。単純なプロットですが、どこにショッピングセンターがあるかが見える化されています。

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 【図3:単純なプロット】

◯売上によって色を変える
 図4は本データに収録されている属性のうち、2014年売上額に応じて色を変更したものです。濃い青の施設は売上が低く、水色から黄色、オレンジにかけて売上が高くなっています。図3と比べると施設の違いが明確ですが、ショッピングセンターの売上は施設によって差が激しいので、この表現ではまだわかりにくいかも知れません。
 統計学的に言えば、売上というデータの分布が正規分布から離れていればいるほど、この表現では差が視覚的にわかりにくくなります。

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 【図4:売上によって色を変えた表現】

◯売上によって大きさを変える
 そこで売上によって色を変えて表現してみました(図5)。売上が高い施設はアイコンが大きく、相対的に低い施設は小さく表示しています。同じ施設でもその違いが一目瞭然となります。

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【図5:売上によって大きさを変えた表現】

◯地図表現の効果
 参考事例として、弊社クライアント(自動車販売店様)は、毎月の店長会議で営業所の売上実績や目標達成率をこのように地図表現しているそうです。
 従来は単純な集計表だけでしたが、地図で表現すると近隣の他店舗との違いが明確になり、店長の顔つきと真剣度が変わったそうです。笑い話ではありますが、地図という表現の効果ということではないでしょうか?

3.統計データ分布の表現

◯データの集計単位の違い
 エリアマーケティングで利用される統計データは、小地域単位で集計されています。大きくメッシュ単位(例えば500m四方のマス目=4次メッシュ)と町丁目単位があり、それぞれ人口や世帯数などがセットされています。メッシュ単位と町丁目単位のデータは、それぞれ長所と短所があり、分析テーマによってうまく使い分ける必要があります。

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 【図6:メッシュ単位の人口分布】

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 【図7:町丁目単位の人口分布】

 

 図6と図7は同じ場所、同じ商圏範囲で、同じ人口総数という指標を使い、それぞれメッシュ単位と町丁目単位でデータ分布を表現しています。緑色が濃い小地域ほど人口密度が高いことを表します。人口密度が高いエリアはどこかという観点で地図を見ると、図6のメッシュ単位では南東側、図7の町丁目単位では南西側が該当エリアと見てとれ、同じ人口総数でも集計単位の違いによって解釈が大きく異なります。実際の感覚と近いのは図6のメッシュ単位の分布ではないでしょうか。メッシュは全国どこでも大きさが均一ですが、町丁目はそれぞれ大きさが異なり、一般的に大きな町丁目ほど人口が多くなるので、このように見えるのです。

 データの分布や商圏単位でマーケットボリュームを把握するのであれば、メッシュ単位のデータを活用するべきでしょう。ただ、実際にエリアごとにアクションをする段階になると、メッシュは住所とは紐付いていないため扱いにくく、町丁目は文字通り町丁目住所が紐付いているため、折込チラシやポスティングなど「どこに向けて」という情報が必要になる場合には利便性があります。それ故に例えばチェーン企業の店舗開発部では、メッシュ単位で人口を把握し、販促やマーケティング部では町丁目単位でエリア戦略を練るなどしています。

◯データの値の捉え方
 小地域単位の統計データの値の捉え方も重要です。基本的な観点として「絶対数」と「構成比」があります。図8は、東京23区における500mメッシュ単位の年収1,500万以上世帯数の分布です。赤いエリアは高年収世帯が多く、青い世帯は少ないことを表し、港区に赤いエリアが集中していることがわかります。

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 【図8:年収1,500万以上世帯数の分布(絶対数)】

一方で、東京23区でお金持ちが多い地域というと世田谷区というイメージがあるのではないでしょうか?図8の分布では世田谷区は赤くありません。そこで図9をご覧ください。図8では「年収1,500万以上世帯数」という絶対数を使用しましたが、こちらは「世帯総数に対する年収1,500万以上世帯数の構成比」で表現したものです。高年収世帯の比率が高ければ赤となり、世田谷区にも赤いエリアが出現しました。

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【図9:年収1,500万以上世帯構成比の分布】

 港区では高層マンションに居住する高年収世帯が多い傾向があるのに対して、世田谷は広い一戸建てが多く、同じ500mメッシュ単位で比較すると、世田谷区では絶対数は少ないが構成比は高くなるということです。ターゲットボリュームで地域を捉えるという軸と、ターゲット地域を質で見るという軸の両方を知っておく必要があります。

4.バッファ商圏という考え方

◯バッファ商圏とは?
 最後に応用編としてバッファ商圏という考え方をご紹介します。これまでメッシュなどの集計単位でデータを見てきましたが、消費者の行動範囲はメッシュという区画に限定されません。一般的に高層マンションが存在するメッシュや町丁目は、先に絶対数と構成比の話で見たようにターゲットボリュームは大きくなります。そこで各小地域を商圏という単位で把握し、極端な値を「まるめる」と、地域傾向がはっきり見えてきます。バッファ商圏というのは、各メッシュの中心に存在する座標から任意の商圏範囲を設定(図10)し、その商圏内の数値をメッシュに持たせるというデータ処理の仕方です。学術的に一般的という訳ではないですが、エリアマーケティングの最前線・現場では時折採用されています。

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 【図10:メッシュ代表点から半径1km圏の設定イメージ】

◯東京23区の人口分布
 図11は、バッファ商圏処理をしていない500mメッシュ単位の東京23区の人口分布です。それに対して図12は500mメッシュの代表点から半径1kmを設定し、1km圏内の人口総数を当該メッシュに再集計した値の分布となります。この表現の方が、ターゲット分布を大きく捉える際に見誤ることが少ないのではないでしょうか。
 参考までに同じ1km圏でバッファ処理をした地図をご紹介します。図13は6歳未満人口の分布、図14は75歳以上人口の分布です。

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 【図11:バッファ処理をしない人口分布】

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【図12:半径1km圏でバッファ処理をした人口分布】

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【図13:半径1km圏でバッファ処理をした6歳未満人口分布】

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 【図14:半径1km圏でバッファ処理をした75歳以上人口分布】

◯バッファ商圏のさらなる応用
 この考え方を応用した分析テーマに、チェーン企業の「出店余地エリアの検索」があります。自社店舗の売上や競合の店舗数も同様のバッファー単位で集計し、需要と供給のバランスから、どのメッシュの出店余地が高いかを知るというものです。

※当社のMarketAnalyzer™では、出店余地エリア検索機能が標準搭載されています。

 GISは単なる道具です。大事なのはどう使うか、出力された結果をどう読みとくかということです。当社は20年以上にわたる、2,000社へのエリアマーケティング支援で培ったノウハウがございます。皆様の課題をお聞かせいただければ最適な解決策とその選択肢をご提示できるかと思います。お気軽にお問い合わせください。

タグ: GIS 商圏分析
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