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商業施設の商圏分析手法

月刊GSI 2015年10月号(Vol.57)

 日本にショッピングセンター(以下SC)が誕生して半世紀が経過し、繊研新聞によると現在国内に約3,200ヵ所あると言われています。一口にSCと言っても様々で、郊外型・駅ビル型・ファッションビル型・GMS附属型・地下街・高架下・エキナカ等の形態があります。テナント店舗数は約16万、核テナントは2,000店に達しており、売上は約29兆円で全小売業売上の22%を占めています。日本の商業にとってSCは今や欠かせない存在ですが、一方で、人口構造と消費行動の変化、また他業態との競合激化にさらされ、転換期を迎えており、データに基づく商圏の現状確認と将来像の把握が一層重要になっています。本コラムではSCや大型商業施設の商圏分析手法と事例を、基本から応用までいくつかご紹介していきます。

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1.商圏とは?

 商圏とは、来店するお客様の範囲と定義できます。GIS(地図情報システム)を用いれば来店手段に応じた様々な商圏シミュレーションが可能です。店舗の実情(郊外にあるのか都心部にあるのかなど)や、分析の目的(出店基準策定なのか販促エリア最適化なのかなど)に応じて使い分けることが重要です。以下は当社エリアマーケティング用GIS「MarketAnalyzer™」で設定できる商圏タイプの一部です。それぞれのイメージは巻末をご覧ください。

■円形商圏
もっとも基本的な商圏設定です。実質的な商圏範囲ではないので、各個店を分析するというよりは、全国や関東などの広域レベルで、他店や競合店と比較する際に用いられます。

■トラベルタイム商圏
車・自転車・徒歩による来店を想定した到達圏です。自動車に関しては国土交通省の交通センサスと道路ネットワークデータを利用し、渋滞や信号待ちなどを考慮した各道路別の平均通行速度を加味して作成することができます。

■電車商圏
電車と徒歩による到達圏です。駅の平均運行間隔や急行・快速の停車駅などのデータを用いて設定します。都市型店舗での分析によく用いられます。
■顧客分布
ハウスカードなどの顧客情報を地図にプロットしたもの。こちらは実質的な商圏範囲と言えるでしょう。
■顧客カバー商圏
顧客分布の応用です。「顧客数の70%を満たす自動車到達圏」というような定義が可能です。

2.商圏データ

  MarketAnalyzer™は以上のように定義した商圏内のマーケットボリュームを瞬時に集計することができます。500mメッシュや町丁目といった小地域単位にセットされた様々なデータ(人口や世帯数など)を、面積按分という手法で空間的に処理することによって、「◯◯店の自動車10分圏内の年収1500万以上世帯数は◯◯世帯」ということがわかります。このような集計結果を商圏データと呼びます。
 SCや商業施設での分析だけではなく、多店舗展開チェーン企業全般に言えることですが、複数の店舗・施設群の商圏データを一括集計し、色々な分析を行うことが昨今の分析トレンドとなっています。

複数店舗の商圏データを用いた分析の切り口として以下のような種類があります。

■既存店の評価
売上が商圏ボリュームに比例しているかを確認する。
■相関分析
売上に影響を与えるターゲット指標は何かを分析する。
■店舗ランキング
テナントとして出店するSCに優先順位をつける。
■店舗クラスター分析
SCのタイプによって分析の観点が異なるため、商圏特性別にSCを分類し、分類ごとに評価する。

 それではこの中からいくつかの分析事例をご紹介します。

3.SCのクラスター分析

 全てのSCを一律に評価・分析することはできません。売上規模・営業面積・キーテナント・SCのブランド・立地というような軸に基づいて分けるべきでしょう。今回は立地をテーマとし、SCの商圏特性の評価軸として「ベッドタウン性・繁華街性・ビジネス街性」という3つの要素を用いてSCを分類します。分類手法は「クラスター分析」を採用します。クラスター分析とは統計解析のひとつの手法で、異なる性質のものが混ざりあっている集団の中から互いに似たものを集めてグループ(クラスター)を作り、対象を分類するという方法を総称したものです。分類ロジックには階層クラスター分析と非階層クラスター分析など様々なものがあります。MarketAnalyzer™には商圏データ一括集計機能やクラスター分析機能があるため、簡単に作業を行うことができます。
 先の3つの要素に対応するデータとして、ここでは国勢調査の夜間人口、リンク統計の昼間人口、推計商業統計データの小売業年間販売額を用います。商業統計の小売業年間販売額は、最新の2012年調査を基に、当社独自のロジックで作成した項目です。

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【図1:主要商業施設データのSC分布】

 まず、図1の主要商業施設データの中の約1,000店舗に対して、一律半径3km商圏を設定し、3つの指標を集計します。そして、集計した3つのデータを用いて1,000店舗を5つにクラスタリング(分類)しました。
 図2の地図に表示されている丸い点がSCの分布です。クラスター毎に色が分かれています。地図を俯瞰してみると、クラスターCL004(黄色い点)は山手線の内側に集中しており、それを取り囲むようにCL002(ピンク)、CL005(紫)、CL003(黄緑)が分布しています。CL001は一部のエリアに見られます。

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【図2:クラスターごとのSC分布】

 次に、各クラスターを解釈するため、クラスターごとに3つのデータを集計します(図3)。

縦軸がクラスター、横軸は3つのデータです。夜間人口をベッドタウン性、昼間人口をビジネス街性、小売業年間販売額を繁華街性と記載しています。数字はZスコア(ゼロを真ん中とする偏差値)となっています。

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【図3:クラスターごとに3つの指標を集計】

 CL004のクラスターは全ての指標において突出しており、CL001が次に続いています。CL003は全ての指標が最も低く、CL002とCL005はベッドタウン性に寄っている傾向と解釈しました。
 このように客観的なデータで分類し、成功事例の横展開をグループ内店舗で行ったり、同じグループ内で各種評価・比較をします。図4はCL004(全ての指標が突出しているグループ)に属するSCを半径3km圏内の昼間人口ボリュームが多い順に並べたものです。一方で図5は夜間人口でのランキングです。東京の丸の内は昼間人口≒ビジネス街性が高い、高田馬場・早稲田≒ベッドタウン性が高いということでしょう。

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【図4:CL004の昼間人口ボリュームSCランキング】

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【図5: CL004の夜間人口ボリュームSCランキング】

4.類似商圏検索

 次に、似ている商圏を持つ店舗はどれかという類似商圏の検索手法をご紹介します。商圏特性とターゲットボリュームが似通っていれば目標とする売上を同じレベルに設定したり、ある店舗での施策が成功したら、その類似店舗で成功事例を横展開したりします。また、新規出店対象のSCの売上を想定するために、出店候補施設と類似した商圏を持つ施設に出店している既存店舗の売上を参考にすることもできます。
 今回は課題の設定例として、既にテナントをアトレ恵比寿に出店しており、その売上が好調なのでアトレ恵比寿と商圏が類似しているSCを探すということにします。
 まずターゲット層を20代~30代の女性と定義しました。全国のSC半径3km圏で国勢調査から20~30代女性夜間人口を集計し、更に推計年齢別昼間人口データから20~30代女性昼間人口を集計して商圏データを作成しました(図6)。

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 【図6:SC半径3km圏内のターゲット商圏データ】

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 【図7:アトレ恵比寿と商圏が類似しているSC】

 この2つの指標に更にSCの売上という要素を加えました。それぞれの指標を串刺しで分析するために実数ではなく、スコア(偏差値)に変換し、それぞれの偏差値が±5に収まるSCを抽出しました(図7)。結果として新宿ミロード、なんばウォーク、なんばパークスが該当しました。

 最後に、今回の分析は、商圏分析用GIS(地図情報システム)「MarketAnalyzer™」を用いて行いました。ご興味をお持ちいただきましたらお気軽にお問い合わせください。

様々な商圏タイプ(一部)

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