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築年数データを用いた鉄道沿線の都市開発の変遷

月刊GSI 2015年8月号(Vol.55)

 当社は商圏分析用GIS(地図情報システム)「マーケットアナライザー(MarketAnalyzer™)」の開発・販売をしておりますが、そこで利用する各種データベースの開発も行っています。今回は「築年数データ」について概要とその活用例をご紹介します。

 建物とそこに居住する世帯をターゲットとしたビジネスを展開する企業は、過去より多くあります。例えば戸建てやマンションなどの住宅であれば、建て替えやリフォーム、その中でも高層マンションであれば耐震構造の強化という需要に応えるビジネスがあります。また、築年数が経過している家が多ければ下町、新しい家が多ければ新興住宅など、エリアの質を測る指標としても「築年数データ」は重視されています。
※各図は巻末に拡大したものを掲載しています。併せてご参照ください。

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1.築年数データの概要

 「築年数データ」は、総務省統計局の住宅・土地統計調査と国勢調査を当社独自のロジックで掛け合わせて開発したデータベースです。
 データ項目は、1970年以前とそれ以降10年刻みで2013年9月までの築年別の住宅数、更にそれを持家や借家などの居住形態別に集計したデータが収録されています。データの集計単位は3次メッシュ(1km四方)、4次メッシュ(500m四方)と町丁・字等別があります。
 それではこの「築年数データ」を分析してみましょう。テーマは「鉄道沿線・駅ごとの年度別の開発状況と都市開発の変遷を探る」ということにします。

2.主な路線ごとの築年数別住宅構成比

 首都圏を通る主要路線の各駅を中心として、駅商圏をイメージして、それぞれ半径500mの円を描き、商圏内の住宅数を築年ごとに集計、路線ごとに構成比化しました(図1)。
 内房線は千葉県の房総半島を千葉市中央区から鴨川市まで半周するJR線です。首都圏で最も築年数が古い住宅が沿線に存在するということが分かります。次に古い住宅が多いのは山手線とつくばエキスプレスですが、この2路線は、同時に築年数が浅い新しい住宅が最も多い沿線となります。対して最も新興住宅的要素が強い路線は横浜市地下鉄グリーンラインです。

 

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 【図1:路線ごとの築年数別住宅構成比】

◯地下鉄東西線主要駅の築年数別住宅数
 次に東京都中央区から千葉県船橋市まで、東京と千葉を文字通り東西に結ぶ地下鉄東西線を見てみます。図2は東西線の主要駅半径500m圏内の築年数別住宅数の集計結果です。図の赤い枠で囲った部分、九段下駅/竹橋駅/大手町駅/日本橋駅周辺は2001年以降に建築された住宅が突出しています。

 これらの駅がある東京都中央区は、1990年代後半から容積率を緩和し、住宅の新築や建て替え時の高層化を政策誘導しました。結果的に築年数の浅い住宅が多く供給されたのも影響していると思われます。

 

 

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 【図2:地下鉄東西線主要駅の築年数別住宅数】

◯JR南武線主要駅の築年数別住宅数
 南武線は東京都立川市から神奈川県川崎市川崎区までを通る路線です。武蔵小杉駅やそこに近い駅は築浅の住宅が多い傾向が見て取れます(図3)。武蔵小杉駅はJRと私鉄が乗り入れ、接続駅としての役割もあります。近年駅前も再開発され、大型のタワーマンションが11棟建設され、住みやすい街として名を馳せています。

 

 

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【図3:JR南武線主要駅の築年数別住宅数】

◯JR埼京線主要駅の築年数別住宅数
 埼京線は東京都品川区から埼玉県さいたま市大宮区を結ぶ路線です。東北新幹線の高架建設にともない「通勤新線」という通称の在来線を新しく整備し、赤羽線などの従前からの在来線と接続した路線です。図4の戸田駅などは、1990年代に建築された住宅が多いことがわかります。当時、埼京線の開通に伴い、埼玉県戸田市や大宮市(現在の大宮区)では住宅供給が急激に進みました。

 

 

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【図4:JR埼京線主要駅の築年数別住宅数】

 図5は戸田市内の埼京線の北戸田駅周辺の性・年代別の人口ピラミッドです。棒グラフは実数で、折れ線グラフは構成比を表します。構成比は緑色が全国、赤色が埼玉県、青色が各駅500m商圏です。埼京線開業後に住宅供給が進んだため、1980年代以前の住宅が少なく、50歳以上の人口構成比が極端に低いことがわかります。

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【図5:JR埼京線戸田駅周辺の年齢構造】

◯JR武蔵野線主要駅の築年数別住宅数
 最後は武蔵野線です。これまでの分析は主に東京と周辺の県を直線的に結ぶ路線でしたが、こちらは都心近郊を扇状に結ぶ路線です。築年数別の傾向も駅ごとによって異なります。西浦和駅周辺は1970年代以前の古い住宅が多く、新三郷駅周辺は1970年代の住宅が圧倒しています。住宅所有別に見ればこの時代の住宅は公団住宅ということもわかります。そして南流山駅は首都圏で最も新しい路線のつくばエキスプレスとも接続しており、利便性も高まったことから比較的新しい住宅が増えています(図6)。

 

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【図6:JR武蔵野線主要駅の築年数別住宅数】

3.その他の築年数データ活用例

◯リフォーム需要マップ
 一般的に新築から20年を経過するとリフォーム需要が増えると言われています。図7は築年数データを用いて、1都3県において1990年代に建築された住宅が多いエリアを表示しています。図の赤いメッシュは今日現在リフォーム需要が高いエリアと定義できます。

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【図7:リフォーム需要マップ】

◯耐震構造強化需要マップ
 1978年の宮城県沖地震の発生による住宅被害を受けて、建築基準法が改正され、耐震基準が強化されたのが1981年です。1980年代以前と以降に建築されたマンションでは、耐震構造が異なります。1980年代以前のマンションはまだ建て替えるには早いが、耐震補強のニーズがあると定義できます。図8は1都3県で1980年以前に建築された住宅が多く、且つ11階建て以上の共同住宅が多いエリアを表します。

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【図8:耐震構造強化需要マップ】

4.最後に

 今回の分析は、商圏分析用GIS(地図情報システム)「MarketAnalyzer™」で築年数データと国勢調査データを用いて行いました。ご興味をお持ちいただきましたらお気軽にお問い合わせください。

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