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医療・介護・シニアマーケティング分野の見える化マップ

 

月刊GSI 2015年4月号(Vol.51)

「アクティブシニアマップ」

年金受給年齢の引き上げや生産人口の減少を背景に、女性や高齢者の就業促進が国の基本政策となりつつあります。図は2010年から20年における、各自治体の高齢就業者率の変化の推計を示したものです。高齢就業者率とは、ここでは60歳以上人口のうちの就業者人口の割合を指します。

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「アクティブシニアマップ」

 今回の推計値は2000年から2010年の実績値を基にしています。高齢者の就業率は地域のアクティブシニア指標の一つとして捉えることができるでしょう。健康だから働き、働き続けるから健康が維持されるということです。地方部で就業率が高い地域は、漁業や商店主のような自営業者が多いのが特徴です。逆に被雇用者が多い都市部やその近郊部は、国のシニア起業施策や民間の再就職・就業支援サービスによる高齢者の社会参画促進が図られていると解釈することもできます。
 高齢者が現役生活を続けることによる、都市生活のライフスタイルに対する価値観の変化は大きいです。コンビニエンスストアなどの立地戦略は、現役高齢者が多い地域でも利便性価値が十分見込まれると考えられます。一方で、就業率に現れないアクティブシニアも存在します。経済力が高く、ボランティアや文化活動などの社会参加が盛んな地域は、コト消費マーケティングのターゲットエリアになるでしょう。例えば、国が推進する「介護支援ボランティアポイント制度」は、元気な高齢者に介護施設などへのボランティア活動を通じて、社会参加・地域貢献を促すものです。自らの健康増進、介護予防にもつながり、今後普及が期待されます。

 社会参加を通じて地域とのつながりを密にし、孤立を防ぐ。地域包括ケアの実現には医療・介護の専門職に加え、このようなアクティブシニアの役割の位置づけも重要となってきます。

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「高齢者住宅需要マップ(関東編)」

 団塊世代が後期高齢者になる2025年の地域包括ケア実現に向け、住まいの整備は医療・介護・生活支援サービスと並行して重要課題に位置づけられています。
 サービス付き高齢者向け住宅(以下、「サ高住」)の急増など、多様化する高齢者の住宅・施設が、今後どのようなエリアで拡大していくのか。今回は、利用者の負担に焦点を当てた需要マップを示します。図は2015年から2024年までの10年間に新たに後期高齢者となり、厚生年金を受給する人口を市町村別に推計したものです。東京23区、国道16号線沿いのベッドタウン、各県庁所在地での高齢者増が目立ち、地方との差が顕著に表れています。
 多くの高齢者の住まいは、生活費が月額15~25万円程度の厚生年金受給者をターゲットとしています。高齢者住宅財団の調査研究でも、サ高住の月平均利用額(医療、介護保険サービスを除く)は約14万4,000円となっています。事業者は適切な住宅・施設の供給をはかるため、このように地域性を理解した上で、事業スタイルとのマッチング判定を行わなければなりません。庶民の街に高級有料老人ホームを建てても集客が困難なのは目に見えているでしょう。実際には利用者負担だけでなく、要介護者の増加予測や、住宅の補完的役割となる訪問サービスの充実度などのエリア分析も重要です。
 自宅で最期まで住み続けたいと思う高齢者が多い中、住み替えによる医療・介護・生活支援の付加価値を明確に示し、5~10年後の安心生活をイメージしてもらわなければ、需要を掘り起こすことができません。

 なお、政府の日本再興戦略では、高齢者住宅・施設を対象とした投資法人(ヘルスケアリート)の活用など、民間資金による住宅・施設供給のスキームが示されています。こうした市場が活性化することで、事業者には「選ばれる住まい」になるための客観的評価がますます求められてくるでしょう。

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「高齢者住宅需要マップ(近畿編)」

 サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の登録数は、2014年3月末時点で4,555棟、14万6,544戸にのぼり、2011年10月の登録開始以降、順調な伸びを示している。なかでも大阪は350棟、1万4,643戸で全国最多。兵庫の6,948戸とあわせると戸数全体の15%を占め、近畿圏での高齢者住宅の整備がすすんでいる。
 高齢者住宅財団の調査研究によると、医療、介護保険サービスを除くサ高住の利用額は月平均14万4,000円です。高齢者住宅の多くは、生活費15~25万円程度の一般的な給与所得世帯をターゲットにしています。
 今回のマップは前回同様、高齢者住宅需要の指標の1つとして、15~24年の10年間で新たに後期高齢者となる厚生年金受給者数の推計値を、近畿2府4県の市町村ごとに示しました。
 前回の首都圏編では、都区部での需要急増が予測されました。これは、80年代に都心部の著しい地価高騰から周辺地域への転出が増えたものの、90年代のバブル崩壊後には都心部への転入、いわゆる「都心回帰現象」が起こり、その影響が続いているものと考えられます。

 これに対し近畿では、都市部の京阪神への需要集中はそれほど大きくみられず、3都市を取り囲む衛星都市での需要急増が指摘できます。具体的には、大阪では豊中、高槻、枚方、兵庫では尼崎、姫路、滋賀では大津など、いずれも近年人気のベッドタウン地域です。また、奈良や和歌山では需要予測の高いエリアが県庁所在地に限られ、他地域との格差が大きい。もともとの集住の隔たりがそのまま表れています。
 高齢者住宅事業を展開するに当たっては、さらに小地域でのニーズ把握が当然ながら求められます。加えて、サ高住は提供する医療・介護・生活支援サービスの充実度が、住宅の付加価値を大きく左右します。対象地域の所得水準だけでなく、要介護度の分布や訪問・施設サービスの供給状況など、多層的な分析が必要となります。

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「住み替え需要マップ」

 国が地域包括ケアの基礎に位置づける「住まい」は、急伸を遂げるサービス付き高齢者向け住宅を筆頭に、多様な提供のあり方がみられています。高齢者の住み替えニーズには医療・介護・生活支援サービスの充実度が影響しますが、そのほか、現在の住宅所有や立地、収入、世帯類型なども無視できません。
 今回のマップはこれらの判断材料の中から、高齢夫婦世帯の「持ち家率」と「所得」の2指標を用いて、関東1都6県の市区町村を4つのカテゴリに分類しました。高齢夫婦世帯とは、夫65歳以上かつ妻60歳以上の2人世帯のことを指します。持ち家率は、1都6県の中央値である87.6%を基準に二分しました。当然、持ち家比率が高い地域ほど、住み替え需要は低いと予想されます。また所得は、介護保険料の所得段階で課税世帯となる第4段階以上に着目しました。世帯年収300万円以上の世帯割合を算出し、中央値の57.1%を基準に二分しました。
 最も住み替えニーズが高いと考えられるのは「低持ち家+高所得」に該当する緑色のエリアで、都心や神奈川、千葉の都市部に広がっています。
 反対に、郊外や中山間地域に多い「高持ち家+低所得」の青色エリアは、住み替えニーズが低いうえ、利用できるサービスも限られます。自治体が主導となり、NPOやボランティアによる生活支援サービスや、地域性に見合った互助機能の活用がより求められてくるでしょう。

 また、赤色の「高持ち家+高所得」エリアは、住み替え意向は弱いが、心身状況に応じた住宅改修ニーズは根強いと考えられます。加えて、手厚い在宅サービスの提供も期待できます。
 なお、これらのデータは総務省の「住宅・土地統計調査」をもとに作成しており、一部、資料がないエリアもありました(グレーの部分)。

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「バリアフリー化マップ」

 手すりの設置や段差の解消など、高齢者のための設備を充実させる「バリアフリー化住宅」の整備が進んでいます。2013年の「住宅土地統計」によれば、高齢者のいる持ち家世帯のうち、20%にあたる346万世帯が、高齢者のための設備工事を行っています。最近では、持ち家住宅のリフォームだけではなく、賃貸住宅や建売住宅でも、あらかじめ高齢者の居住を想定した設備を整えた住宅も増加傾向にあります。
 2011年より登録を開始したサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)は、高齢者専用の集合住宅の代表格です。2013年10月時点で総登録戸数は15万戸を超えており、「人にやさしい住宅」の普及に貢献していますが、整備の状況に地域差が認められる点には留意を要します。
 今回のマップは、関東1都6県の市区町村ごとに、65歳以上を1人以上含む世帯のうち、バリアフリー化住宅に居住する世帯の比率を示しました。世帯は持ち家だけでなく賃貸住宅等も含まれます。また、ここで言うバリアフリー化とは、2カ所以上の手すり設置または屋内の段差解消が施されている状態のことを指します。全体として、おおむね都心部、近郊部でのバリアフリー化が顕著ですが、一部の郊外以遠においても、整備が進んでいる地域が散見されます。これは、都心部を中心としたサ高住の登録ラッシュが一因であると考えられます。
 一方、世帯構成として、独居、老老世帯の割合が比較的低い地方部は家庭介護力が期待できることから、同じ状態像でも住宅改修にまで至らないケースがあると考えられます。

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「配食サービス将来性マップ」

 家庭給食、とりわけ高齢者向けの在宅配食サービス業は、外食産業や流通小売業、生協からの本格参入が相次ぎ、市場が拡大しつつあります。なかでも需要が大きいのは75歳以上の後期高齢者世帯です。主に65歳以上の夫婦のどちらかが要介護状態になる老々介護世帯や独居高齢世帯には欠かせないサービスの一つになるでしょう。近年では、市町村の委託を受け、宅配時に独居高齢者の見守りを実施する事業者も増え、地域を支える担い手としても同サービスの付加価値が高まっています。
 今回のマップは、現状の配達飲食サービス供給量に対する需要の増加予測を、関東1都6県の市区町村別に比較しました。配達飲食サービス業の従事者1人につき、2010年~2025年の15年間で増加する後期高齢者数を示しています。
 都心部や各県庁所在地は既存の事業者が充実していることから、増加は比較的穏やかです。これに対し、千葉、埼玉県内の都市周辺部では需要急増地域が多く、既存のサービス供給量では将来、過少になります。こうした地域は都市部より交通網が未発達であり、また飲食店やコンビニエンスストアが比較的少なく、店舗の立地も分散しています。数値以上に今後の配食サービスの需要が期待できるでしょう。
 なお、地図上の濃い緑のエリア(増加数10.5人以下)の中には、後期高齢者数が減少すると推計される市区町村も19ありました。

 配達飲食業の従事者数は「経済センサス基礎調査」の2009年データを用いており、高齢者向け配食サービスのほかに、宅配ピザや仕出し弁当屋、給食センター、病院・施設給食業なども含まれます。

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「医療不足度予測マップ」

 2014年4月の診療報酬改定では7対1一般病床の算定要件厳格化や、各病棟へ在宅復帰率を課すなど、「病院から在宅」への流れが示されました。これを受け、昨年10月からは病床機能報告制度がスタートしました。急性期、回復期、療養期など各機能の病床数を見える化し、地域の介護事業者にとっても、退院支援等の連携に必要な基礎情報となってくるでしょう。現在、国では医療・介護を一体的に提供できる圏域の設定について議論が行われているところです。
 そこで、今回のマップは、関東1都6県の市区町村ごとに、一般病床1床あたりの高齢者数を示し、将来的な病床の過不足を比較しました。一般病床数は2013年の実数で、高齢者数は2025年時点での推計値としています。なお、グレーの地域は統計上、一般病床がない地域です。
 高齢化のスピードは都市部で加速しますが、ここでは病床不足が特に都市部に集中している傾向はみられません。
現在、都道府県が設定している二次医療圏は、複数市区町村を一体的な区域として捉えることから、例えば不足エリア(赤、紫、グレー)が過剰エリア(緑)に隣接していれば、一区域として過不足の均衡が保たれているとも考えられます。実際には、都道府県はこうした病床の供給量だけでなく、地域ごとに入院医療の需要予測を行い、それらを踏まえた上で必要な病床数を医療計画に盛り込むことになります。

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「ドラッグストア充足マップ」

 地域包括ケアの実現に向け、自治体には医療から介護、介護から予防・生活支援へ切れ目のないサービスの構築が求められています。そこには、介護予防の一部を担う新しい市町村事業モデルにもあるように、利用者の状態に応じて多様な主体が関わっていくことが想定されます。ドラッグストアもその一つです。高齢者の生活用品を拡充すると共に、将来的には宅配や訪問機能、買い物支援を担い、重要なインフラとなります。近年では訪問調剤の拡充や、介護保険サービスの併設などにより、多機能化した店舗も多く見られるようになってきました。
 今回のマップでは、関東1都6県における、ドラッグストア1店舗あたりの高齢者人口の分布を示しました。数値が低い地域ほど、店舗の充足率が高いことを表します。充足していないエリアは地方部だけでなく、人口集中に伴い高齢者が多い東京都23区の一部や、西東京エリアでも目立ちます。コンビニエンスストアやスーパーマーケットとの競合も影響していると考えられます。
 また地方部については、集住地域が少ないことから立地メリットが期待できず充足度が低い地域が多いと考えられ、店舗が訪問機能をもつなどの事業展開が今後期待されます。 なお、今回のデータには調剤薬局、コンビニ、スーパー併設のドラッグストアは含めていません。

 国や行政によるドラッグストアの明確な定義はなく、日本チェーンドラッグストア協会は「薬品と化粧品、日用家庭用品、文房具、フィルム、食品等の日用雑貨を取扱う店舗」としています。同協会の調べでは、2012年の店舗数は1万7,144店、市場規模は5兆9,408億円となっています。

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「医薬分業マップ」

 医師または歯科医師と薬剤師の役割を明確に分類し、薬物療法の有効性と安全性の向上をめざす「医薬分業」の推進により、調剤薬局の数は増え続けてきました。2012年時点で調剤薬局の登録件数は、コンビニエンスストアの4万7,000件よりも多い5万6,000件以上を数えます。また、日本薬剤師会のデータでは、2013年度の外来処方数のうち、調剤薬局、つまり院外で処方箋を受け取った割合(医薬分業率ともいう)は67.0%にのぼり、2003年の51.6%からは10年間で15.4ポイント、1993年の15.8%からは20年間で51.2ポイントも増加しています。しかし、都道府県別では秋田が最高の82.8%、福井が最低の40.7%と、地域性による差が多いのも現状です。
 今回のマップは、医薬分業の状況を関東1都6県の自治体ごとに細分化しました。数値は、医薬分業率の平均値を1とした場合の指数に置き換えています。東京、神奈川の都心部など指数が高い赤色のエリアでは、調剤薬局が十分に供給されていることがうかがえます。一方、郊外に多い青色のエリアは平均値より指数が低く、今後、調剤薬局の展開余地があると考えられます。加えて、訪問診療や在宅介護サービス事業者と連携した薬剤師の訪問機能も求められるでしょう。 なお、調剤薬局のデータは、「YanoPharmacyData」(矢野経済研究所)を利用し、外来数は技研商事インターナショナルによる「推計傷病別患者数」をもとに作成しました。

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本レポートはシルバー産業新聞社のシルバー産業新聞へ寄稿した記事を再編集してまとめたものです。

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