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介護事業所の商圏分析手法~単独型ショートステイ編~

月刊GSI 2015年3月号(Vol.50)

  ご存知のように、当社は商圏分析システムとエリアマーケティングデータを取り扱っております。これまでは外食・小売チェーン企業が新規出店時に明確な判断材料となる商圏データを利用するケースが多かったのですが、3年ほど前からは、サービス付き高齢者向け住宅の推進をきっかけに介護事業を絡めた事業展開を目指す企業や、介護事業者への導入事例が増えています。当社はこれらのニーズに応えるために介護分野の分析用データベースを拡充・提供してきました。しかし、データの具体的な分析方法や判断基準はいまだ確立されてはいないと感じます。

 そこで今回は、介護事業関連で商圏調査・分析がお手伝いできることは何かを解説します。但し、介護保険制度の次期改正が控えているタイミングですので、事業によっては環境が大きく変わる可能性もあります。

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1.増加する単独型ショートステイ

 まずは、次期介護保険制度改正においても影響が比較的少ないと見られている単独型ショートステイの商圏分析を試みます。これまでショートステイ事業は特別養護老人ホーム(特養)の人員、資格者の兼務/兼任をベースに、施設・設備の兼用を前提とした併設型・空床利用型がほとんどでした。しかし最近は単独型ショートステイ(20室以上)が増えてきており、これをメインの事業として多拠点の展開をされている介護事業者もおられます。
 単独型ショートステイが増加している背景として、施設内給食の事情が大きく変化したことが一因と言われています。従来、施設内給食は設備費、人件費、委託料などのコスト負担が大きいため20室規模の施設では採算が取りづらかったのですが、各種配食サービス、チルド食の提供の質と量が向上したため、これらの外部サービスを取り入れることで採算が取れるようになってきたことが大きいようです。 
 このような状況を踏まえてもなおショートステイが足りないと言われることが多く、商圏データを確認、分析しなくても大丈夫な事業かもしれませんが、実際はどうなのでしょうか。

2.利用者像の確認

 まず、ショートステイの利用者像の確認です。社団法人日本介護支援専門員協会による平成24年の研究報告によると、『サービス利用者は要介護3を中心に重度の方の利用が目立つ。利用の主な目的はレスパイトケアである。平均利用日数は10.26日、月の3分の1をショートで3分の2を在宅で過ごしている。』となっています。このことから、高齢者夫婦のみ世帯、または高齢者同居世帯の要介護3程度の方が家族の都合で毎月1~2週間利用している姿が想定されます。(高齢単身世帯で介護度の重い方は施設入所など他の介護サービスを利用されています。)
  このことを踏まえて、GIS(地図情報システム)「MarketAnalyzer™」で作成した商圏分析レポートの【世帯特性】をご覧ください(次ページの図1)。ここでは千葉県内のある商圏をモデルにしました。
図から「2人世帯内訳」の中の「高齢者夫婦世帯数」(A)と、「65歳以上世帯員のいる世帯内訳」の「65歳以上親族のいる世帯数」(B)に利用対象者がいると予想されます。さらに(A)に各2人の高齢者、(B)に各1人以上の高齢者がいるものとします。

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【図1:世帯特性) 】

県の要介護認定率を14%とした場合、6,260世帯(A)×2人×14%=1,753人、9,058世帯(B)×1人×14%=1,268人の合計3,021人の要支援・要介護高齢者がいることになります。
 図2の「第1号被保険者構成比」から要介護3以上の方の構成比が37.7%とわかりますので、3,021×37.7%=1,139人がショートステイの利用対象者(現在利用しているか今後予約が取れれば利用したい)となります。1,139人が毎月10.26日間ショートステイを利用すると考えると、1,139人×10.26日×12ヶ月=140,233人(年間延利用者数:泊数)であることも予想できます。これを365日で割ると約384人となり商圏の全ての需要を満たすためには、圏内に384室(ベッド)分のショートステイ施設が必要と想定されるわけです。

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【図2:第1号被保険者構成比 】

 次に「介護サービス情報公表システム」を利用して、近隣のショートステイ事業所データからサービス供給量を確認します。それによると同商圏内の施設数は20で定員数の合計は705でした。
 単独型のショートステイでは定員数が明確ですが、特養併設、空床利用のショートステイについては、実際に何床がショートステイに使用されているのかを推定するため、調査対象の件数や物理的な距離に応じ、直接訪問や電話によるヒアリングを通じてより精度を高めることが可能です。

「介護事業所の商圏分析手法~小規模多機能型サービス編~」

 来期の介護保険制度改正でマイナス影響が少ないと考えられている小規模多機能型居宅介護について、商圏分析の切り口を紹介します。厚生労働省が掲げる「施設から在宅へ」「地域包括ケアシステムの推進」の流れのなかで定期巡回随時対応訪問介護・看護(平成24年開始)とともに整備が進められてきた小規模多機能型施設ですが、公的な助成や補助制度などの後押しにもかかわらず、全国的な整備状況には大きなばらつきがあるようです。

1.小規模多機能型介護事業所の現状

 当初の整備方針は市区町村(≒介護保険者)が設定する日常生活圏域毎に1事業所ということでしたが、平成26年7月現在、全国1,579市区町村の1/3以上が事業所整備数ゼロの状況です。整備が進まなかった要因として、小規模多機能型施設の運営は介護事業者にとって難しく苦労しても収益が確保できない事業と見られ、参入事業者が少なかったことと、介護保険者にとっても定額制サービスは介護保険報酬の支出が増えるため好ましくないなどの背景があったようです。昨年半ばまでは、小規模多機能型施設の新規開設を企画するならば細かな商圏分析は特に必要ありませんでした。インターネットで公開されている「介護サービス情報公表システム」で事業所を検索し、小規模多機能型施設がなく、ある程度の人口がいる市町村を見つければ、とりあえず地域のオンリーワンとしてスタートできる状況だったのです。
 ところが昨年秋頃より来期の介護保険制度改正の内容が徐々に明らかになってきたなかで、デイサービスは「定員18名までを小規模デイサービスとし、地域密着事業とする。」などに定義が変更され、小規模デイサービス事業所は、定員増により通常規模デイサービスになるか、小規模多機能型もしくはそのサテライト事業所になるか、地域密着型デイサービスとして存続するかの選択を迫られています。

 特に宿泊サービス付小規模デイサービスは、現状の事業要素に訪問介護を加えれば小規模多機能型施設と同様の機能を持つことができ、利用者についてもほぼそのまま確保できるため、転換先事業として注目されています。来年度は転換型の小規模多機能型事業所が各地に開設されるものと思われます。
 もちろん当社は、小規模多機能型サービスの空白地域を探すだけではなく、成功する小規模多機能型施設の開設を商圏分析によりお手伝いするのが目的ですので、ここではもう少し踏み込んだ新規開設場所の検討をしてみたいと思います。

2.運営状況

まず小規模多機能型事業の具体的な運営状況を確認します。実態についてはNPO法人全国小規模多機能型居宅介護事業者連絡会が平成25年3月に調査、取りまとめた資料(下記①~⑤)と、厚労省介護事業状況報告を参考にしました。

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2.利用者数の想定

 次に、これらの項目を商圏分析データに反映させます。まず①の条件から商圏分析の範囲を「事業所開設予定地から半径5km」と設定して集計します(商圏地図の青いライン)。②及び③の情報については、商圏レポートにより小規模多機能型施設の利用見込者数を確認できます。

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【商圏地図 】

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【商圏レポート 】

条件④⑤については、小規模多機能型が在宅重視の居宅サービスで、利用者の「できる限り自宅で家族と暮らし続けたい。」という気持ちが現れた項目だと思われます。
  実はこの手法では、地方、過疎地域を除く大半の候補地が利用者見込ありという結果になってしまいます。また、半径5kmの商圏設定では、日常生活圏域や市町村境を越えてしまうこともあり、実態に近いとはいえ適切ではありません。
 ではどの範囲で商圏を設定すれば良いのか? 厚生労働省によると小規模多機能型の訪問サービスの機能を強化するため、「訪問体制強化加算」(仮称)を新設するとしています。その条件は人員配置と月間の訪問回数が一定数以上であること。これを勘案すると、事業所から訪問しやすい範囲として、半径ならば1km、より具体的には車で5分、自転車で10分などの時間距離を設定して集計します(商圏地図の赤いライン;自動車5分圏)。但し、この程度の小商圏では先行事業者がいる場合、新規参入は難しいかもしれません。
 この範囲内に利用見込者となる要介護者が何人いるかということですが、小規模多機能型の介護報酬は要介護3以上が優遇されていますので、商圏レポートの要介護3(以上)の人数に注目するべきです。

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横浜市内の小規模多機能型事業所の利用者構成(平成26年9月)

 実際にモデル事業所が複数あり事業所数も多い横浜市の状況をみると、要介護3以上の利用者がわずかながら過半数を超えており、平均要介護度も高い傾向が見えます。以上により、地域密着の小多機型事業では頻回訪問の可能な、より小さな商圏を設定した上で、要介護3(以上)の後期高齢者がより多く、住替え、施設入所せずに在宅生活を続けられる住居状況の方が多い候補地を最良と判断します。

 

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