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サービス付き高齢者向け住宅のデータ活用による事業判断

月刊GSI 2014年12月号(Vol.47)

本コラムでは、サービス付き高齢者向け住宅(以下サ高住)の事業判断について、建設会社、運営事業者、土地オーナーそれぞれの観点から、成功するためのポイントと商圏分析について解説します。

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1.サービス付き高齢者向け住宅の供給推移

 国の施策として土地オーナーにサ高住を建ててもらうことを目的として、助成金や税会計の優遇措置を充実させた結果、短期間にサ高住の整備が進みました。しかし3年半を経過した現在、棟数、室数の供給の伸びは鈍化しており、頭打ち感の漂う状況とも見えます(図1)。
 このような状況では長期に渡る経営安定化のために、事業構想段階からデータに基づいた事業判断がますます重要になっています。

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【図1 サ高住の供給推移】

2.サ高住事業の成功とは

 サ高住事業における関係者は建設会社、土地オーナー、運営事業者です。当然、各々にとって『サ高住事業の成功』が意味するところは異なります。

以下、それぞれの関係者におけるサ高住成功のポイントをまとめました。

◆土地オーナー
 建設費の助成、割増(減価)償却、固定資産取得税の優遇などすべてのメリットを取り込んだ上で優秀な運営事業者と長期一括賃貸契約を締結し、有効活用の目論見が実現されること。
 
◆運営事業者
 オーナーがメリットを取り込むことで一括借り受けの賃料が抑制でき、入居者にリーズナブルな料金で案内できる。結果として早期満室・安定運営が実現できること。

◆建設会社
 これまで一般賃貸住宅等では採算の合わなかった物件に対し、前記のオーナーメリットを取り込めるサ高住プランを提案し建設工事を請負うこと。

3.土地オーナーと運営事業者の関係

 運営事業者が成功しなければ、オーナーに成功の果実は生まれません。運営事業者が努力をしても早期満室・安定運営が達成できないサ高住では、近い将来オーナーに大きなリスクが発生します。 
運営者の撤退してしまった場合、代替運営者を確保する際、賃料等条件がオーナー側に不利になりがちです。一般賃貸他への用途変更をする場合でも、助成金の返還や改修工事費が発生します。建設会社の提案営業でも『サ高住がオススメですよ』では、今やオーナーは動きません。『有力な運営事業者を紹介するので大丈夫です』というところまで含めての提案が必要でしょうし、既に実行されている方もあるはずです。サ高住事業の成功はオーナーと運営事業者のマッチングビジネスの成功なのです。

4.運営事業者の動向

 運営事業者の動向としては、全国的な展開をしていたサ高住運営の大手数社はすでに抑制的な方針をとっていますし、新規にサ高住運営に参入すると発表した介護大手も、既存の自社施設と連携のとれる物件を選んで展開するようで、やみくもに件数だけを求めているわけではありませんから、なかなかクレジットのある大手運営事業者を当て込めないことも考えられます。

 一方で既存の中小介護事業者の中には、平成27年4月の報酬改定や人員・設備の基準変更(特に小規模デイサービス)等を見据えて、サ高住の運営に参入(転換)したいと考えている事業者が多数存在します。ただし、このグループにはサ高住と併設介護サービスの運営方法の理解が十分でない事業者も見受けられ、注意が必要です。
 介護事業マトリクス(図2)に示したようにサ高住事業は従来の施設・居住系の介護関連事業と重なりあう部分が大きく運営の自由度が高いものです。それだけに運営事業者の方向性(入居者ターゲット、想定介護度、介護サービス料金設定、併設事業等)が定まっていないと無駄な投資をしてしまう可能性があります。例えば常に介護が必要な方を入居者ターゲットとするならば、各部屋に浴室やキッチンを設置してもあまり意味がありません。
運営事業者を中心に、計画地域内のサ高住を調査・分析し、他サ高住と競合しない差別化ポイントを明確にして、それを反映したサ高住を建設することが必要です。次ページで調査分析資料の例を紹介します。参考になれば幸いです。

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【図2 介護事業マトリクス】

【参考】サービス付き高齢者向け住宅の調査分析資料の例

■周辺のサ付き住宅一覧

 

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■周辺のサ付き住宅のポジショニングと候補地における住宅のコンセプト案

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5.調査・分析と商圏データの関わり

 計画地域内の他サ高住の調査結果に商圏データの各数値を突合・検証することでハード、ソフトの両面で更に有効な計画策定が可能になります。

◆事例①

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【図2 埼玉県のターゲットマップ】

 上の地図(図2)は500mメッシュ単位で各データをスコア化し、埼玉県全体から後期高齢者と高齢単身世帯のスコアが高く、年収高のスコアが低いエリアを検索した結果です。赤い網掛けのエリア内にある物件であれば次のような物件コンセプトが考えられます。低額な料金設定、食事は宅配弁当の利用を想定し最低基準のキッチンを一か所。夜間は介護職員が1名で対応、ナースコールは建物組込みではなく無線式にする。単価の安い工法を選択するなど建設費を抑える工夫がうまれます。

◆事例②
 計画地を中心に商圏を設定し(図3)、商圏内の年齢構成をグラフ化した一部です(図4)。年齢、要介護度、世帯構成、居住形態、年収などから団塊世代が多く、その親とも同居していなく、現時点の要介護高齢者はあまり多くないと判断された場合、団塊世代を入居者ターゲットとするよりも、その親世代を当面のターゲットとし呼び寄せ需要を掘り起こすような建物設備、運営方法を考えます。

具体的には、瀟洒な外観、安普請に見えない程度の仕上げ (親を入居させて恥ずかしくない。更に将来、自分達が入居しても良いと思えるもの。)家族面会用ファミリールーム(将来看取時の家族待機室にも利用)を設ける。家族の訪問、同行外出が増えることを考慮し駐車スペースを整備。通院介助も家族の同行が前提となり、職員の業務ルーティンからは除外。

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【図3 計画地の商圏設定】

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【図4 商圏内の年齢構成】

◆事例③
介護度別人口データから、重度要介護者が多くない地域である場合、入居者ターゲットは要支援1~2要介護1~2となり自立支援、介護予防を目的とするリハビリ/機能訓練強化型のサ高住を計画することが考えられます。下の地図(図5)は横浜市のアクティブシニアマップです。年齢別人口データと要介護3以上の人口を差し引いた数をアクティブシニアと定義しました。色の濃いエリアにある計画地では、以下のようなコンセプトが考えられます。広めの機能訓練室を確保する。リハビリ用の小プールを設置する。循環型温水器のランニングコストを賄うため太陽光発電も設置。簡単な調理は本人ができるものとし全居室にミニキッチンを設置。運営面では理学療法士を採用する。人件費のアップ分は利用料金に反映させる。

 

 

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 【図5 横浜市のアクティブシニアマップ】

以上、諸々のデータを検証することで、入居者ターゲットが設定でき建物、設備、運営の方針が明確にイメージされます。

6.まとめ

 サ高住事業はオーナーに対する助成金、税優遇などの措置が縮小されることもあり、当初ほどの勢いはないものの、他の有効活用(ロードサイド店舗、ファミリー向け賃貸、戸建て、単身向けアパート等)に適さなかった物件でも事業化を図りやすいので、今後も着実に伸びてゆくものと考えられます。
 サ高住事業を土地オーナーと運営事業者に対するマッチングビジネスとして考えるならば、事例①~③のようなデータ検証に基づいた提案力が必要になるのではないでしょうか。

 最後に、今回の分析は、商圏分析用GIS(地図情報システム)「MarketAnalyzer™」を用いて行いました。
 弊社では、従来の商圏分析に加え介護事業に関する要素を分析指標に取り込み、介護関連事業の事業化検証、事業化支援にも取り組んでおります。詳しくは弊社へご相談下さい。

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