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「オープンデータのエリアマーケティングデータ化(2)」 ~IDW法による地価ポテンシャルデータ開発手法~

月刊GSI 2014年10月号(Vol.45)

前回のマンスリーレポートでは、「オープンデータ」の活用事例として、政府統計の総合窓口 e-Stat等で簡単に入手できる広域な行政区画単位の統計情報を利用して、地域メッシュや町丁目等の小地域レベルのデータを推計する手法の1つをご紹介しました。
 今回は、「地価」(土地価格)に関するオープンデータと、同データを基に弊社で開発した「地価ポテンシャルデータ」について技術的側面からご紹介します。

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1.はじめに

 前回のマンスリーレポートでは、「オープンデータ」の活用事例として、政府統計の総合窓口 e-Stat等で簡単に入手できる広域な行政区画単位の統計情報を利用して、地域メッシュや町丁目等の小地域レベルのデータを推計する手法の1つをご紹介しました。
 今回は、「地価」(土地価格)に関するオープンデータと、同データを基に弊社で開発した「地価ポテンシャルデータ」について技術的側面からご紹介します。

2.地価とエリアマーケティング

 「地価」とは読んで字のごとく土地の価格のことですが、それから何がわかるのでしょうか?
 その土地に住む人のことをイメージしてみると、一般に地価が高い地域に住む世帯は平均年収が高いというイメージがあります。実際、地域ごとの平均地価と平均年収の関係を見てみると、強い相関があることが知られています。このことから、富裕層向け商品のチラシやダイレクトメール配布先を選定する際の指標として利用できるかもしれません。
 また、地価は「地ぐらい」(そこに住みたい、オフィス・店舗を構えたいという土地のブランド力のようなもの)を表す1つの指標と考えられます。例えば、駅周辺の平均地価を算出し、駅同士で比較してみることで、駅の相対的な地ぐらいを推し量る指標とすることもできそうです。

3.地価の種類とオープンデータ

 「地価」にはいくつかの種類があります。以下に、国や自治体が公表している公的地価および不動産取引情報(表1)と代表的なオープンデータ(表2)をご紹介します。

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【表1 公示地価および不動産取引情報の種類】

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【表2 地価に関するオープンデータ】

※国土数値情報ダウンロードサービス http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/
※土地総合情報システム http://www.land.mlit.go.jp/webland/
※全国地価マップ http://www.chikamap.jp/

 この内、国土数値情報ダウンロードサービスの地価公示・都道府県地価調査、および土地総合情報システムの不動産取引価格情報は、CSV形式のデータをダウンロード可能となっており、二次利用が容易です。特に、国土数値情報ダウンロードサービスで公開されているデータは、GISで利用することを前提としており、地図上に表現する上で必要となる座標情報が予め付与されていますので、GISでの利用が大変簡便になっています。

4.GISでの地価公示の利用

 それでは、国土数値情報ダウンロードサービスの地価公示データをどのようにGISで活用するか、例を見ていきましょう。同サービスよりダウンロードした地価公示データをGISにインポートして、2014年時点の公示地価で色分け表示してみます。

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【図1 都心部の地価分布】

 図1では、赤系のポイントは地価50万円以上で色が濃いほど地価が高く、青系のポイントは50万円未満で色が濃いほど地価が低いことを表しています。分布状況を見ると、東京駅、新宿駅、渋谷駅付近を中心として、山手線の内側に250万円以上の地点が集中していることがわかります。また、都市から離れるに従って地価が下降する傾向がありますが、鉄道路線沿線の中・大規模駅付近に飛び石状に地価の高い地点が存在していることがわかります。

 地価公示データには、昭和58年以降の地価が搭載されています(※地点ごとに地価調査の対象となった年次以降の地価のみを搭載)。ここでは、リーマン・ショック以降の地価の変動を見るために、平成20年と平成26年との地価の差額を算出し、その値で色分け表示してみましょう。

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【図2 平成20年と平成26年の地価差額】

 図2では、赤系のポイントは地価が上昇しており、色が濃いほど上昇幅が大きく、青系のポイントは地価が下落しており、色が濃いほど下落幅が大きいことを表しています。図1で示した通り、都心部の地価は非常に高いですが、リーマン・ショック以降は全体的に地価が下落していることがわかります。その中で、川崎市の武蔵小杉駅、溝の口駅周辺の再開発が進む地域では、地価が上昇していることがわかります。

5.地価をポイントとして見るときの課題

 地価をポイントとして地図上に表現することで、ある程度地域ごとの傾向を掴むことができます。しかし、地価ポイントが存在しない地域は近くの地価ポイントから見た目で類推する必要があり、ポイントが密集している地域では状況が把握しづらい場合があります。更に、国勢調査などのメッシュや町丁字等の小地域単位の統計データ(面のデータ)との関連性を知るのが困難といった課題があります。このような課題の1つの解決策として、地価ポイント情報を小地域単位のデータに置き換えた「地価ポテンシャルデータ」をご提供しています。

■地価ポイントが存在しない地域

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 地価ポイントの密度が低い地域では、地価を知りたい地点にポイントが存在しないことがあります。この場合、周辺のポイントからその地域の地価を類推することになり、感覚的な判断をせざるを得ません。特に地方部は地価ポイントの密度が低くなる傾向があります。

■地価ポイントが密集する地域

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 都市部のように地価ポイントの密度が高い地域は、地図を縮小表示したときポイントとポイントが何重にも重なってしまい、正確な分布状況を把握することが困難になります。

■小地域単位の統計データとの関連性

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 地価ポイント単独では、主に地価が高いか低いかを読み取ることしかできませんが、メッシュや町丁字などの小地域単位の統計データと組み合わせて地域を分類するなどの分析を行うことができれば、新たな知見を得られる可能性があります。

6.地価ポテンシャルデータとは?

 地価ポテンシャルデータは、地価データをメッシュや町丁字などの小地域単位に置き換えたデータです。地価ポテンシャルデータを使用することで、年収という観点だけでは見えてこない富裕層をセグメントするなど、一層高度なマーケティングが可能となります。

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【図3 町丁字単位の地価ポテンシャルデータ】

7.作成方法(IDWとは?)

 空間的に連続的な遷移が仮定されるデータ(地価公示データや店舗の商圏内出向率データ等)を基に、特定の地点のデータを求める場合には、IDW(Inverse Distance Weighted)法やクリギングといった空間的平滑化法が有効とされています。地価ポテンシャルデータでは、IDW法を用いて小地域ごとの平均地価を算出しています。
 IDWとは、日本語では「逆距離荷重法」と呼び、対象地点の近くに存在する、別の地点のデータ値の平均を取ることで、対象地点のデータ値を推計する手法です。平均を取る際、データ値を持つ地点までの距離の逆数を重みとして使用することからこう呼ばれています。

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【図4 IDW概念図】

 地価ポテンシャルデータでは、重みとして使用する距離に、道路ネットワークに沿って進んだ場合の道のり距離を使用しています。その結果を得るには膨大な計算処理を要しますが、道のり距離を使用することで、直線距離にはない地理要因・交通要因を推計値に加味しています。また、都道府県地価調査データも参照することで、更に推計精度を高めています。

8.地価ポテンシャルデータと地価ポイント

 それでは、1Kmメッシュ単位の地価ポテンシャルデータを地図上に表現してみましょう。

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【図5 地価ポテンシャルデータによる色分け】

 図5を見ると、ポイントとして表現した場合と比較して、地域ごとの傾向が把握しやすくなっていることがわかります。次に、元となった地価ポイントと地価ポテンシャルデータを重ねて表示してみます。

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【図6 地価ポテンシャルデータと地価公示ポイント】

 いわゆる平均を取っているため、ポイントとしてデータ値そのままを表現した場合と比較して、突出した部分が丸められていますが、地域一帯の傾向としては、ポイントから読み取れるものと乖離はありません。実務においては、大まなか傾向を地価ポテンシャルデータで掴み、より詳細を確認する場合に地価ポイントの分布状況を確認する、といった使い方が有効ではないでしょうか。

9.地価ポテンシャルデータの活用

 最後に、地価ポテンシャルデータの活用例として、持ち家世帯比率との組み合わせによる色分け地図を見てみましょう。

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【図7 地価と持ち家世帯比率】

 図7では、色の系統が地価の階級を表し、同じ地価階級の中でも色が濃いほど持ち家世帯比率の高い地域であることを表しています。
ここで注目したいのは、青系(地価50万~200万クラス)と赤系(地価200万~2000万クラス)のもっとも濃い色になっている地域です。これらの地域は、地価が高く、持ち家世帯の比率が高い訳ですから、富裕層が特に多く住んでいる地域と考えられます。図6では、例えば、青山・麻布エリア、白金・高輪エリア、田園調布・等々力、成城エリアなど、一般に高級住宅街のイメージが強い地域がこれに該当しており、感覚に一致する結果を可視化できていると言えます。

10.まとめ

 今回の分析は、商圏分析用GIS(地図情報システム)「MarketAnalyzer™」を用いて地価に関するオープンデータと、それを小地域単位のデータに置き換えた地価ポテンシャルデータについてご紹介しました。今後、国や自治体によるオープンデータの提供範囲はますます拡大し、様々なデータを入手・利用することがより簡便になることが予想されます。弊社は、皆様のオープンデータ活用を支援すると共に、エリア・マーケティング分野で長年培った技術により、オープンデータをより高度に活用するための製品・サービスを提供して参ります。

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