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買い物弱者が多いエリアとは?

月刊GSI 2013年9月号(Vol.32)

 エリアマーケティング用のデータとGIS(地図情報システム)「MarketAnalyzer™」を用いて、「買い物弱者が多いエリアはどこなのか?」を自主調査として分析しました。

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1.「買い物弱者」とは

 近頃「買い物弱者」という言葉を多く目にするようになりました。民間企業においても買い物弱者対策として様々な取り組みが始まっているようです。小売業におけるネットスーパーや送迎バスなどの対応は皆様ご存知の通りでしょうし、イトーヨーカドーさんが、多摩ニュータウン地区で移動車販売を開始したというニュースもありました。
 では、買い物弱者とは何かというと、経済産業省の定義によれば「流通機能や交通網の弱体化とともに、食料品等の日常の買い物が困難な状況に置かれている人々のこと」だそうです。

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【買い物弱者のイメージ】

 

 少子高齢化や過疎化によって、お年寄りのみの世帯が増える一方で、経済情勢の変化から彼らの周りの小売店が閉店あるいは撤退するなど、「お店が近くに無い」地域が増えているということです。遠くのお店に行けばよいのですが、お年寄りが通える距離に店舗が無いということでしょう。技研商事インターナショナルでは、エリアマーケティング用のデータとGIS(地図情報システム)を用いて、「買い物弱者が多いエリアはどこなのか?」を自主調査として分析しました。

2.買い物弱者エリアの可視化①

 使用したデータは国勢調査メッシュデータの「高齢単身世帯」と「高齢夫婦世帯」という項目と、リンク統計メッシュデータの「飲食料品小売店事業所数」です。これらを用いて、東京都内の各メッシュの中心点から半径500m圏内を集計し、主成分分析で合成しました。図1は、東京都における高齢単身世帯と高齢夫婦世帯の分布を表しています。人口集中地区ほど濃い色で表現されます。次にお店の分布を見てみましょう。図2は、飲食料品を扱う小売店の分布を表しています。東京都内では相対的に都市部の商業集積エリアに分布が集中しています。

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【図1 高齢単身世帯と高齢夫婦世帯の分布】

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【図2 飲食料品小売店の分布】

 

 そしてこれら2つの指標を更に合成したのが図3-1、3-2です。小売店1店舗当たりの高齢者数のボリュームを表しています。色塗りしているのは500mメッシュ単位ですが、集計単位は単純なメッシュ単位ではなく、各メッシュの中心点から半径500m圏内の値で計算しています。この空間解析処理によって、各メッシュ単独の比較ではなく、メッシュ毎に近隣の要素を加味した結果を得ることが可能となります。経済産業省が買い物弱者の多い地域としている多摩ニュータウン周辺は、今回の調査でもその通りの結果となりました。ただ、見落としてはならないのはそれ以外にも買い物弱者が多いエリアがたくさんあるということです。多摩都市モノレール線の中央大学・明星大学駅付近の集合住宅もはっきり買い物弱者エリアだと分かりますし、高尾山口駅南側のエリアも同様です。共通しているのは、数十年前に建てられた公団住宅付近だということです。また、町田市の玉川学園付近など住宅密集地にもかかわらず飲食料品店が少ないエリアもあります。このようなエリアはデリバリーでの食料品購買の需要があると考えてもよいかもしれません。

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【図3-1 1店舗当たりの高齢者】

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【図3-2 1店舗当たりの高齢者(拡大)】

3.買い物弱者エリアの可視化②

 団塊世代がいよいよ高齢期を迎え、買い物弱者がより一層社会問題化すると考えられています。買い物弱者の現状と今後について可視化します。
 まず、各年度別の「75歳以上人口」とリンク統計メッシュデータの「飲食料品小売店事業所数」を、東京都内の各メッシュの中心点から半径500m圏内で集計します。年度別の75歳以上人口を飲食料品小売事業所数で割ることで、飲食料品小売事業所当たりの75歳以上人口を算出しました。それによって、飲食料品小売事業所数も店舗分布も現状通りの場合、どの地域で、いつ飲食料品小売事業所の供給バランスが崩れるかを測ることができます。

 図4-1は2010年国勢調査より75歳以上人口を集計し、図4-2~4は推計将来人口を用いて75歳以上人口を集計しました。赤い個所は飲食料品小売事業所当たりの75歳以上人口が特に多い個所、緑の個所は逆に少ない個所を表します。

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【図4-1 2010年買い物弱者指数】

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【図4-2 2015年買い物弱者指数】

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【図4-3 2020年買い物弱者指数】

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【図4-4 2025年買い物弱者指数】

4.ファクターバンク

 今回の例は「買い物弱者」ということで、高齢者を表す指標、小売店の指標など複数の要素を統計解析によってスコア化し、さらに各町丁字からの距離という空間的要素によって解析・表現しました。弊社では、「Factor Bank(ファクターバンク)」というブランドで、お客様のターゲットを定義する様々なデータ項目のセットとその処理技術をご用意しています。

『統計データから見えてくる地域性の違い』

 戦後日本社会はベビーブームによる人口急増、高度経済成長に伴う都市部への人口流入、地価高騰に伴うドーナツ化(近郊、郊外の開発)、都市再開発に伴う都心回帰など、時代ごとに開発エリアを変えながら発展を続けてきました。この結果、地域別のライフステージの違いが色濃く表れるようになりました。今回はもっとも基礎的な統計データである国勢調査を用いて、地域性の違いについてご説明いたします。

1.高齢化の進行状況

 まずは、65歳以上の高齢者人口構成比を一都三県の駅の半径500m圏内で集計しました(図1)。65歳以上人口構成比が21%以上で超高齢社会と呼ばれ、地方から都市部にかけてこのようなエリアが年々広がっています。図1から分かるように、東京の下町や郊外で超高齢社会に突入している駅が散見されます。しかし、中には高齢者人口比率が減少した駅(流山おおたかの森)、変化しない駅(三軒茶屋)もあります。これらに高齢者人口比率が急上昇した我孫子市の布佐駅を加え、3つの駅の地域性の違いを分析していきます。

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【図1  高齢者比率 一都三県駅500m圏(2010年)】

2.3つの駅の人口特性

 図2は布佐駅(千葉県我孫子市)の人口構成です。この5年間で高齢者人口比率が17.95%から31.0%となり、13%増加しています。年換算では毎年2%以上伸びていることになります。この駅の特徴は、極端に団塊世代が多く、幼年人口が大きく減少している点です。団塊世代が65歳以上になり、一方、人口増加要因がないために高齢者人口比率が著しく増加しました。駅の乗降客数では93年をピークに現在では半分以下に減少しています。70年代後半から80年代にかけて、都市から近郊にかけて住宅が飽和しました。子供の誕生に伴い家族が増え、広い家を求める当時のニューファミリー層(団塊の世代)は新たな造成エリアを求めて郊外へ転居しましたが、布佐駅はまさにその典型といえます。都市部までのアクセスの利便性が悪いことから、成人を迎えた子ども世代が都市部に転居したことで、団塊の世代を中心とした高齢者の人口構成が突出するいびつな人口構成になっています。

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【図2 布佐駅500m圏内人口ピラミッドと人口推移】

 

 図3は流山おおたかの森駅(千葉県流山市)です。つくばエクスプレスの開業に合わせて2005年8月に新設された駅です。2005年当時は布佐駅と同様、団塊世代の構成が高い駅でしたが、ショッピングセンターやマンションなどの都市開発が進み、ニューファミリー層を中心に人口が急増しました。人口減少社会に突入していますが、局地的にはこのような人口増加エリアが存在します。

image17【図3 流山おおたかの森駅500m圏内人口ピラミッドと人口推移】

 図4は三軒茶屋駅です。いわずと知れた若者に人気の高い住宅地で、人口構成を見ても、20歳代から30歳代の人口構成比が突出しています。 2005年と2010年の人口構成を比べるとほとんど変化していないことが分かります。結婚、就職、進学などライフステージの変化に伴い人口の流出入が活発に行われていることが推測されます。

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【図4 三軒茶屋駅500m圏内人口ピラミッドと人口推移】

3.3つの駅の違いを分析

 前セクションでは、国勢調査の年齢別人口を用いて3つの駅の特徴を説明しました。ここでは年齢別人口以外の世帯、住宅、居住期間等の特性から駅の特徴を見てみます。

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【3つの駅の居住特性比較】

 

■住宅所有関係別構成比(図5)
 布佐駅、流山おおたかの森駅では持ち家世帯が多く、三軒茶屋駅では民営の借家が多いことが分かります。三軒茶屋駅の人口流出入に触れましたが、若年層が民営の借家で暮らしており、それらの層の賃貸住宅平均居住年数は、4年未満が9割近くであることから、転居、転入が繰り返され、街自体が常に若さを保つ住民の新陳代謝の良い構造になっていることが分かります。

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【図5 住宅所有関係別構成比】

 

■住宅の面積別構成比(図6)
 ファミリー向け住宅の目安を70㎡以上と定義してみると、布佐駅、流山おおたかの森駅は7割以上がファミリー向け住宅であることが分かります。先述のとおり持ち家世帯も多いことから、永住の地を求
めてニューファミリーが入居していることが分かります。これは逆に住民の流動性が低いとも言えるため、例えば流山おおたかの森の場合は現在の人口ボリュームゾーンである30歳代が年々歳を重ね、30~40年後には布佐駅のような構造になっている可能性もあります。
 三軒茶屋駅では単身層やDINKS層が住みやすい面積の住宅構成比がほとんどを占めます。子育てを行いながら住むにはそれに適した住宅が少ないのに加えて、相場が高いことから、30歳代以上のファミリー層にとって、三軒茶屋は住みにくい街といえます。

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【図6 住宅の面積別構成比】

 

■住宅の居住期間別人口構成比(図7)
 この項目は国勢調査本調査(国勢調査調査年度の末尾が0の年)で公表される項目です。布佐駅では20年以上居住人口が半数近くですが、流山おおたかの森駅、三軒茶屋駅では居住期間が短いことが分かります。この指標で街の年齢を測ることができます。三軒茶屋駅は古くから開発の進んだ駅ですが、居住者の新陳代謝が良く、若者人口が多いことから常に若さを保っている駅といえます。

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【図7 住宅の居住期間別人口構成比】

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