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DPCデータを利用したエリアマーケティング分析

月刊GSI 2013年7月号(Vol.30)

 「DPC」(Diagnosis Procedure Combination)とは医療費の包括請求の制度です。2003年(平成15年度)より大学病院や特定機能病院等で診療報酬の支払いに利用されてきました。私達が支払う医療費は「出来高払い方式」という仕組みで医療費が計算されていますが、「DPC方式」は病名や施術などの医療行為などによって分類され一日当たりの費用が決定するという仕組みです。DPC取り扱い病院は全国に1,496軒(約20%弱)存在し、DPCという共通指標を用いることで医療機関のマネジメントや病診連携、病病連携などの戦略全般に活かしています。今回は首都圏を対象エリアとし、公開されているDPCデータと地図情報システム(GIS)「MarketAnalyzer™」を組み合わせた簡易な事例をご紹介します。

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1.はじめに

 「DPC」(Diagnosis Procedure Combination)とは医療費の包括請求の制度です。2003年(平成15年度)より大学病院や特定機能病院等で診療報酬の支払いに利用されてきました。私達が支払う医療費は「出来高払い方式」という仕組みで医療費が計算されていますが、「DPC方式」は病名や施術などの医療行為などによって分類され一日当たりの費用が決定するという仕組みです。DPC取り扱い病院は全国に1,496軒(約20%弱)存在し、DPCという共通指標を用いることで医療機関のマネジメントや病診連携、病病連携などの戦略全般に活かしています。今回は首都圏を対象エリアとし、公開されているDPCデータと地図情報システム(GIS)「MarketAnalyzer™」を組み合わせた簡易な事例をご紹介します。

2.DPC機能評価係数の可視化

 DPCでは役割や機能に応じて病院が3つの群に分類され、各群に応じた評価係数が数年前より新たに導入されています。係数が高い病院は高水準の医療サービスを提供していると評価され、高額な診療報酬単価を請求できます。

【3つのDPC病院群とそれぞれの定義】
DPC病院Ⅰ群…大学病院
DPC病院Ⅱ群…大学病院に準じた機能を有する病院
DPC病院Ⅲ群…Ⅰ群、Ⅱ群以外の病院

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【図1 DPC対象病院分類(1都3県)】

 

■基礎係数
 基礎係数とは診療機能を評価する基本的な係数です。DPC方式の病院分布にそれぞれの基礎係数を表したのが図2です。青丸が大きいほど基礎係数が高い(評価が高い)ことを表します。また、青丸の下に表示されている黄色の数字は病床数を表しています。図2をみると評価係数と病床数は一致していないことが見てとれます。

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【図2 基礎係数(神奈川県)】

3.DPCデータを活用した診療圏分析

■DPC対象病院のカバー状況
 千葉県房総半島に属するDPC対象病院に対して、有料道路を除く30分圏の診療圏を作成しました。病院名に表記されている数字は病床数です。病院の手術件数と救急入院件数の数値を立て棒グラフで表現しています。この結果より亀田総合病院は診療圏が小さいにも関わらず、診療圏外からも患者を多く獲得できていることが判ります(図3)。

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【図3 DPC対象病院のカバー状況(千葉県房総半島)】

 

■地域医療指数と診療圏特性に着目した分析
 DPCの評価指数では、僻地などにおいて医療機関の機能を評価する「地域医療指数」という指数があります。この評価指数を利用し、千葉県内におけるDPC対象病院診療圏車30分圏内の高齢者割合と対比してみました。
 その結果、亀田総合病院や旭中央病院、君津中央病院、千葉労災病院などは高齢者を足元に抱えつつも、僻地などにおける医療機関の充足についても評価点数が高いことが判りました(図4)。

 従来、医療機関の比較基準は施設規模として病床数を比較することが一般的でしたが、DPCの評価係数を用いることにより医療の質の側面から比較できますので、医療関連のエリアマーケティングにご活用ください。

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【図4 地域医療指数と診療圏特性に着目した分析】

「販売促進業務における費用対効果の最大化」~エリアデータで見る居住者像と効果的なアプローチエリア~

 消費者の購買ニーズの多様性や限られた販促費用のため、見込み顧客への網羅的なアプローチはますます困難になっています。本調査では統計データを活用したエリアデータを使って居住者の特性を捉え、商品やサービスなどの購買活動につなげる販売促進を効果的に行うための統計解析手法をご紹介します。

1.顧客像をヒントに効果が期待されるエリアを探索する

 ここでは例として、広告主を自動車ディーラーと想定し、東京都大田区を対象に高級外車を販売すると仮定します。広告媒体は無宛名DMで、予算から逆算した5万部を配布する計画です。

 まず、東京都大田区には2010年の国勢調査によると約35万世帯が存在します。つまり、計画している配布数の5万部では到底足りません。

 高級外車の需要がある人はどのような人物像でしょうか。所得水準が高く、広い住宅に住む人ほど期待できそうです。今回はこの2条件をヒントにエリアデータを用い、見込み顧客にアプローチします。

 エリアデータとは公的な調査結果をもとに小地域ごとに集約したデータです。一例をあげると、総務省統計局で実施する国勢調査です。つまり、エリアデータは個々人の情報ではなく、行政界(例町丁目)単位等で集計された面としての情報です。 

2.分析方法と解析結果

 販促エリアの探索方法を、2つご紹介します。

【2つの条件を個別に判断する】
 図1は、推計年収階級別世帯数データの平均年収情報を使い、平均年収の高い地域から世帯数を累積し、5万世帯になる地域(赤網掛け)を表します。

 一方、図2は国勢調査の1世帯当たりの住宅延べ面積情報を使い、住宅延べ面積の広い地域から世帯数を累積していき5万世帯になる地域を表します。両図を比較すると、それぞれの条件で別々にエリアを絞り込んだため、異なった有望地域を示していることに気が付きます。つまり、所得水準の高さか住宅の広さのいずれか優先されなかった条件の地域が欠落してしまうことが問題となります。

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【図1 平均年収が高い5万世帯】

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【図2 1世帯当たりの延べ面積が広い5万世帯】

 

【2つの条件を総合的に判断する】
 先の「2つの条件を個別に判断する」場合のように、優先させる条件によって結果が異なることに不都合があれば、Zスコアを使った総合的な判断方法を使用することで問題を回避できます。

 Zスコアとは0を基準にした偏差値です。Zスコアの値が0より高い場合は、それが平均以上であることを表します。Zスコアは複数の要素を総合的に判断する場合に利用されます。表3①、②は2つの条件をそれぞれZスコアに直したものです。さらに、販促エリアを総合的に判断するために、それぞれのZスコアを合計したものが表3、地図上に上位5万世帯を満たす地域を表したものが図3です。今回は2つの条件(①所得水準が高い、②広い住宅)を同質として使用しましたが、条件ごとに重点を置きたい場合は、そのZスコアにあらかじめ重み付けすることもあります。

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【図3 Zスコア合計による有望販促エリア】

3.最後に

 Zスコアを使った総合的なエリアデータの解析の結果、田園調布など富裕度が高く住居が広いエリアが上位にランキングされました。感覚的な思い込みではなく、データによって示すことで、説得力のある販促プランを策定することができます。

 技研商事インターナショナルでは、今回ご紹介した一連の工程を実現する配布エリア最適化システムを開発しました。本機能はMarketAnalyzer™商圏分析ソフト)のオプション機能として販売しています。詳しくは弊社へご相談ください。

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【表3 2つのZスコアの合計(抜粋)】

「マーケティング実務におけるジオデモグラフィクスの応用」

1.はじめに

 ジオデモグラフィクスとは、居住者特性を基準変数としたエリア分析手法の総称です。これは近年、小地域のセンサスデータの入手と統計数理的な分類・判別手法の活用により可能となった比較的新しい解析分野です。本稿では、カテゴリーに分類された小地域マップ(以下ジオデモマップ)について、マーケティング実務での活用上の留意点と、今後の課題に関して説明します。

 

2.分析の目的

 欧米ではジオデモマップが、マーケティング対象地域における居住者の消費者行動を理解・予測し、適切なマーケティング活動を行うための意思決定ツールとして活用されてきました。その応用は多岐にわたり、店頭政策、店舗施設政策(スクラップアンドビルド、テナントミックス)、プロモーション政策(宣伝、集客、店頭政策)、商品政策(商品サービスの企画開発、価格設定、ブランディング)、物流政策、顧客政策(ワントゥーワン、接客、地域広報)という広大な範囲をカバーします。

 しかしいずれの分野でも、我々がジオデモマップを活用する際にまず留意しておかなければならないことがあります。それはその分析が、 1)探索的な解析を目的とするのか?、2)検証(予測)的な解析を目的とするのか?という点です。

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【図1 全国基準のジオデモマップ】

 

1)探索的な解析
 探索的解析とはデータマイニング的な観点によるものです。マーケティングモデルが未だ不明瞭な場合には、強力な分析ツールとなります。例えば、新規出店時に行う商圏レポーティングでは、実地調査では分からない、その商圏の定性的な特徴をジオデモマップから発見することが求められます(Aという商圏は意外なことに、B商圏よりもC商圏に近い特徴を持つ、など)。また、店舗業績の予実要因分析の際に、ジオデモマップを用いることも可能です。従来説明のつかなかった業績不振の原因を、市場の質の違いによって説明できる場合があります。ジオデモマップは、現実の居住者が住むエリアの特徴を単純化して示しますので、複雑なマーケティング構成要素間の新たな関係性を発見するのに有効な材料となります。

2)検証(予測)的な解析
 検証的解析とは、既に存在するマーケティングモデルの妥当性を計量的に確かめるためのものです。

 また、ある仮説に基づいたマーケティングコンセプトに従って予測モデルを作成することもこれに含まれます。マーケティングを行うどのような事業会社も、巧拙の違いはあっても、必ずマーケティングコンセプトを持っています(例:「出店する際には家賃坪1万円以上の物件」等々)。そうしたコンセプトは計数化されておらず、明示的でない場合がほとんどですので、従来数理モデルによって客観的に評価を行うには骨が折れる場合も多く、そのための様々な方法が開発されてきました。

 ジオデモマップは、マーケティングの3C(自社、競合、消費者)の全ての範囲において、多種多様の指標を与えてくれます。財務諸表を利用した経営分析では、指標の数は主なもので数百に及びますが、それと同程度の指標を提示できるでしょう。
 その中からどれを取捨選択し、又それらをどのように使うのか、判断しなくてはなりません。そのためには、まずその事業会社のマーケティングコンセプトを明らかにする必要があります。

 

3.何を基準にすべきか?

 マーケティングの評価を行う際に何を基準にすべきかも、重要なポイントです。
ベースラインの設定方法によっては、新事業の評価や利益額すら変わってしまいます。
ジオデモマップでエリアカテゴリー別集計を行った場合を例にとり説明します。以下ではダイレクトメールのレスポンス(コンバージョン)率やショッピングセンターの出向(浸透)率を念頭に置いて話を進めます。ベースラインの設定法としては、1)全国平均基準、2)ローカル基準、3)時系列基準の3つが考慮されます。

1)全国平均基準
 各エリアカテゴリー内の居住者の数にはばらつきがあります。大きな人口を擁するエリアカテゴリーもあれば、僅かな居住者しか存在しないエリアカテゴリーもあります。各エリアカテゴリーの人口構成比率をベースラインとした時に、自社の顧客の各エリアカテゴリーに対する出現割合はどうなのか?都市型顧客エリアの集客が良いのか?農村大家族エリアからの支持は低下していないか?等の示唆を得ることができます。

2)ローカル基準
 ネットビジネスや通信販売、若しくはコンビニエンスストアの場合には、前記の全国平均基準をベースラインにした顧客とエリアの評価が有効です。ただし、それ以外の企業の場合には、日本全国を基準にしなくてもよいかもしれません。首都圏エリアだけを対象とする企業の場合には、都市圏の中の更なる微妙な差異に注目したい、という分析ケースもあるでしょう。その場合には、一都三県内平均を基準とすることも有効です。また、全店舗の商圏範囲の合計やダイレクトメールの全配布エリアの合計を基準とした分析も可能です。この分析は、店舗間の比較や商品カテゴリー別比較に威力を発揮します。

3)時系列基準
 プロモーションの効果を測定する場合には、週単位から四半期単位の収益比較がよく行われます。前年同月の各エリアカテゴリー別出稿率をベースラインとした時に、足下ではどの顧客セグメントの反応が大きいか?といった分析は、具体的なマーケティング判断に重要な示唆をもたらすことでしょう。

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