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地図で見る地域医療と高齢化社会

月刊GSI 2013年1月号(Vol.24)

~地域課題の「見える化」と共有で、地域力の再生に貢献~
 近年のマーケティングで業種を問わず共通のテーマとなっているのは、地域への深い関わりです。地域分析では、調査や分析結果を地図の上に表現することが多いのですが、施設から半径300㍍の居住者特性を見るような、かなりズームインした大縮尺の地図を使うことが多くなってきました。

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1.企業のミッションとして「地域の見える化」

 近年のマーケティングで業種を問わず共通のテーマとなっているのは、地域への深い関わりです。地域分析では、調査や分析結果を地図の上に表現することが多いのですが、施設から半径300㍍の居住者特性を見るような、かなりズームインした大縮尺の地図を使うことが多くなってきました。商業施設開発や店舗開発の世界では、少し前から小商圏対応型と言われていたのですが、最近ではそれをさらに推し進めた「ピンポイントマーケティング」を提唱する人も出てきました。地域の個別ニーズを浮き彫りにして、それぞれの地域に対応した経営計画を策定するという考え方です。不況にあえぐ外食業界では足元商圏深耕型の経営が増えてきましたし、大手のコンビニエンスストアでは、地域ニーズ対応型の食品スーパーのような店舗に改装するところが増えています。かつてのような金太郎飴式のチェーン経営では立ち行かない時代なのだと思います。 

 マーケティング調査で消費者インタビューに立ち会うことがあります。実際の購買行動はPOSデータで分かるのですが、行動以前の消費意識や態度は、グループ形式でのディスカッションを行なってヒアリングします。その際「地域の見える化」に関連して、最近少し気になっていることがあります。それは、地域力の格差です。マーケティングでは、生活者をライフステージ(年齢層)と社会階層(年収層)とで区分して分析することが多く、そういう「見える化」マップ作成はオーソドックスなのですが、最近気になっているのは地域の「絆」の強さと言いますか、地域社会への参画(コミットメント)意識が、地域や地区によってかなり異なるようだということです。一般に地方圏の方が都市圏より地域共同体の紐は強いような気がしますが、一概にそうとばかりも言い切れません。人工的なベッドタウンのような街でも自治会やコミュニティの活動が活発な所も少なくないようです。地域におけるコミュニティ力の格差というのは、宣伝・販促戦略や顧客コミュニケーション戦略において無視できないファクターですので注目していました。

 経済分野だけでなく、医療や健康・福祉分野で、地域におけるソーシャル・キャピタルと住民の健康状態との強い関連性を示す研究があるのは興味深く思います。地域包括ケアシステムでは、「自助・互助・共助」というキーワードが示すように、地域共同体が本来持つ「地域力」の再生・強化が重要なモチーフであるように感じます。弊社では、地域や地区において、現状の「自助・互助や共助」のレベルがそれぞれどういう状態であるのかを、一部の専門家だけではなく、誰でも理解できるような形で「見える化」するためのマップづくりを計画しています。目下、評価尺度や小地域統計との整合について、検討しているところです。

 震災以降、「信頼と絆」のコンセプトが単なる流行語の域を超えて、人々の生活信条に大きく影響する価値観となっていると感じます。そうした風潮の中で、コミュニケーションを基軸とした地域浸透戦略や地域ニーズ対応戦略に関する議論というのは、単なるビジネス的関心の範疇を超えて、公益に資する地域活動に繋がると考えています。弊社がミッションとして取り組んできた「地域の見える化」が、こうした分野で役立つようになれば、喜ばしいことです。 

 

2.オープンデータ時代における地域の「見える化」技術

 位置情報技術を用いた「地域の見える化」技術の進展には目覚しいものがあります。また技術の発達とともに新しいビジネスの考え方も出てきました。例えばO2O(オンライン・ツー・オフライン)マーケティングという言葉があります。インターネット上のオンラインサービスと実店舗上のサービスとを巧みに組み合わせて行う営業活動を指します。この2、3年でGPS付きのスマートフォンが急速に普及したこともあって、生活者の行動に焦点を当てて、時間帯や地区別に情報提供や広告活動を行う等、今まで考えられなかったサービスが実用化されました。

 ただし、これまでもそうだったのですが、マーケティングで利用されている理論や考え方の中には、学術的にも実務的にも、実証されていないものが少なくありません。新しいマーケティング手法ならなおさらです。例えば、ネット通販を利用されている方は、ネットショップやモールからのレコメンデーションメールの頻度が、年を追う毎に増加していることにお気づきでしょう。このような広告メールの多くは不要な迷惑メールとして受けとめられている可能性があります。大量の迷惑メールを出している企業は、企業イメージを損ない、マーケティングが失敗している恐れもあるわけです。そうした検証は未だ手付かずの分野です。

 弊社でも、診療圏における集患シミュレーションや、自治体内の施設の最適配置モデリング等を行い、マーケティング計画のお手伝いすることがあります。しかし重要なプロセスは、計画段階よりも実際に運用し検証してみて、不具合のリカバリーを検討したり、キャリブレーションも注力する段階です。そういう意味では、オープンデータ時代になることで、様々なデータがリアルタイムに集まるようになれば、経営計画の検証や軌道修正のためのエビデンス・ベーストなマネジメントに一歩近付けるわけです。

 生活者の行動分析には、ビッグデータの解析が不可欠です。学術分野の先端研究から実務家による応用に至るまで、現在最もホットな分野です。弊社も、マーケティング計画、運用・検証・調整にいたるマネジメントプロセス支援の立場から、様々な角度で地域分析を活用するための手法を開発しているところです。ロケーションデータや位置情報は、医療や健康と関わりのあるものが多いためいずれ医療・介護事業や自治体が提供する保健サービスでも利活用される時代がやってくるものと思っています。

3.民間ニーズと「見える化」技術の利活用の現状

 近頃、高齢者住宅の事業計画に関わるご相談が増えてきました。収益計画を策定するためには、中長期にわたる需要予測と、地域高齢者の家計支出に見合った賃料やサービスの設定等のコスト計画が基本になります。これまで、賃料の設定は、自治体の担当者やケアマネージャーにヒアリングを行い、周辺の一般不動産の相場を見ながら慎重に決定していたわけですが、明確な客観的基準はありませんでした。高齢世帯の収入の分布は年金種別によって左右されますので、地区によって大きく異なります。地域間における所得の格差というのは、情報としてセンシティブな側面がありますので、推計データを乱暴に「見える化」してしまえば、誤解や濫用につながる恐れがあります。利活用法の慎重な検討と丁寧な説明が求められます。事業者に対して、経営情報としての適切な用い方を指導することで、次世代の医療者や介護事業者の持続的な活動を支援していきたいと考えています。

 最近では公的統計の利用環境も整ってきました。今回の国勢調査では、町丁・字別に集計した小地域集計表をインターネット上から自由に閲覧できます。コンピュータでそのまま読み込める形式になっていますので、地域高齢者の実態を統計的に分析することが以前より容易になりました。しかし、医療や介護サービスの実務で利用するとなると、多少ハードルがあるようです。地域の高齢者を分析する上で重要なのは75歳以上の後期高齢者の分布です。生活実態に迫ろうと思えば、年齢だけではなく単独世帯か同居家族がいるかどうかという点も重要です。配偶者に先立たれた独居高齢者に対しては、介護サービス付きの高齢者住宅への転居を薦めたほうが良いというような施策的な判断とも関わるからです。しかし、そうした情報は国勢調査の集計表から読み取ることはできません。世帯属性や配偶関係別の高齢者数という情報は、小地域で集計されていないからです。

 高齢化対策は自治体の重要課題の1つです。全国の自治体のうちおよそ7割が、将来人口推計を行なっています。そのうち本格的にコーホート要因法を用いて推計しているところも半数近くに上ります。しかし、推計の地域単位は、市区町村の全域の総数を対象とするところが大多数を占めており、日常生活圏域のような小地域の将来予測を行っているところは見かけません。

 こうした現状を踏まえ、弊社は独自に、国立社会保障・人口問題研究所等の推計と空間統計的な小地域推計技術を組み合わせて、世帯属性別の高齢者人数や、その将来推計値を小地域別に再集計するなどしています。統計情報や推計データによる「地域の見える化」が、地域課題の「見える化」や共有に繋がり、結果として地域力の再生に繋がれば幸いです。自治体やNPO等が行う公益的活動に対しては、一部を無償で提供していくつもりです(図1)。

image5【図1 地域の「見える化」で地域力UP】

4.公益に資する 「地域の見える化」

■事例1 後期高齢者の単身世帯数とその増加数
 図2は、神奈川県東部を示した地図です。日常生活圏域別に後期高齢単独世帯数の増加数を表しています。先ず現状の後期高齢者の独居世帯数の空間的な分布を推計し、次に将来予測数を推計した上で比較し集計しました。後期高齢期に差し掛かると、健康や生活の面で様々な課題が発生します。とりわけ単独世帯者の場合には、閉じこもりや食生活面等不安など、要介護のハイリスク群となってしまう心配があります。自治体による介護予防の取り組みだけに任せるのではなく、地域住民や民間事業者にも共有していただきたい地域課題です。

 例えば、高齢者住宅施策に関しては、自治体によって様々な考え方が存在すると思いますが、当事者である高齢者の需要や住替えの意向はどうかと言えば、世帯類型や住宅の所有形態によってかなり異なることが統計調査から確認されています。後期高齢者が多い地域だからといって、必ずしも高齢者住宅の需要が大きいということにはならないのです。高齢単身世帯が多い地区では、そうでない地区と比べて、住宅の住替え意向が数倍強いとされます。

 図2を見ると、こうした高齢者は、現時点では旧市街に多く分布していますが、今後は団塊世代が多く居を構える郊外での急増が予想されます。

 

■事例2 訪問看護師数等
 医療資源の偏在ということが言われます。地方部における医師数不足の深刻化や地域病院の再生は、切迫した課題なのだと思います。一方で、どうしても医師が定着しないという自治体のニュースを聞きました。献身的な医師たちの志が、一部の住民との人間関係が原因で潰えてしまうのは非常に残念なことです。医療資源の不足問題は、将来さらに深刻化することが予測されます。将来の看護師不足に備えて、今から人材育成や研修に取り組んでいる地域病院もあると聞きます。医療者や住民が、自分が住む地域医療の中長期的な見通しや課題を共有し、共に協力していく姿勢がなければ、地域力の再生は難しいように感じます。
「地域の見える化」が問題解決のきっかけになれば、と考えています。

 図3左図は、現状の訪問看護ステーションの看護師と准看護師の数をそれぞれの日常生活圏域へのアクセス可能性を考慮して分配し、地区における訪問看護リソースの分布として示したものです。多少でこぼこはあるものの、現在の後期高齢者の分布に近い形で配置されていることが分かります。図3右図は、訪問看護師一人あたりの2025年の後期高齢者推計値を示したものです。看護師一人あたりの担当患者数の偏在状態として捉えることができると思います。試算によると、高齢者急増地区を中心に数十倍の開きが出ることになります。勿論、訪問看護ステーションの移転や新設も進むでしょうから、こんな極端なことにはならないと思いますが、中長期的な見通しのもとに、今から対策を準備しておいたほうが良いと言えると思います。

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【図2 後期高齢者の単身世帯増加数(神奈川県東部)】

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 【図3 2025年の訪問看護リソースの偏在状況(神奈川県東部)】

『国勢調査データ2010年度版の基礎知識』~国内最大級の人口統計データベース~

国勢調査は総務省統計局が実施する国内最大級の統計調査です。エリアマーケティングにおいてもほぼ全ての企業が活用する最も基礎的なデータベースです。本コラムでは国勢調査の基礎知識や最新の2010年度版の概況を解説します。

1.国勢調査とは?

 国勢調査は、我が国の人口の状況を明らかにするため、大正9年以来ほぼ5年ごとに行われており、2010年国勢調査はその19回目に当たります。5年毎に簡易調査と本調査が交互に行われ、調査項目が異なります。今回の2010年度版は本調査で、2005年度版と比べてエリアマーケティングに役立つ項目が増えています。

■調査目的
 本来の目的はエリアマーケティングという訳ではありません。総務省によると以下の用途とのことです。(一部抜粋)
 ・国内総生産(GDP)等の算出/・衆議院小選挙区の改定
 ・地方交付税交付額の算定/・過疎地域の認定
 ・政党交付金の算定/・少子高齢化対策
 ・防災計画/・国土開発/・学術分野

■調査対象
 2010年10月時点で日本に3ヶ月以上住んでいる人と定義されています。住民票からの住民基本台帳とは異なり、実際の居住地ベースの調査ですので、病院の入院患者は病院が、刑務所の服役者は刑務所が、ホームレスの方はいわゆるダンボールハウスが居住地としてカウントされています。調査対象とならないのは、外国人の外交官と軍隊、3ヶ月以上国内にいない外国からの旅行者等のみです。

■調査項目
 前述のように元来エリアマーケティング用途で設計・調査されている統計ではありませんが、ほぼ全てのGIS(地図情報システム)ユーザーが活用しています。約300項目の内、エリアマーケティングで活用される項目群は以下のとおりです。(表1)

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【表1:エリアマーケティング活用される調査項目】

 

 

2.国勢調査:気になるポイント

 「個人情報保護の時代、皆回答しているの?」というご質問を多くいただきます。結論から言うと、網羅率は圧倒的で、項目によって異なりますが、人口や世帯等の基本的な項目はほぼ100%と考えて良いかと思います。余談ですが、総務省に「網羅率はどの位ですか?」と問い合わせしたところ、「回収数とか網羅率という概念自体がないので答えられない。」との回答でした・・・。その根拠は以下のとおりです。

■法律による回答義務
 報告が義務づけられており、これを拒み、又は虚偽の報告をしてはならない。(統計法第13条第2項)
→自分の都合で回答しないということは許されません。

■罰則規定
 報告を拒み、又は虚偽の報告をした者は50万円以下の罰金に処される(統計法第61条)
→国勢調査が始まった大正9年以降、この罰則を適用した
 事例はないそうです。

■個人情報保護法の適用対象外
 調査票情報に含まれる個人情報については、個人情報の保護に関する法律の例外扱いとされており、調査対象者となる者すべてが回答する義務を有する。
(統計法第52条、統計法第13条)
→そもそも個人情報ではないということです。

■聞き取り調査等
 指定統計調査の実施者が、その指定統計調査を行うに際して必要があると認めるときは、関係各行政機関の長又はその他のものに対し、調査、報告その他の協力を求めることができる。(統計法第17条)
→出張等でどうしてもつかまらない場合、隣の家に聞き取り
 調査を行ったり、自治体の住民票を参照したりしています。

 

3.国勢調査2010年度版の概況

 ■世界から見た日本の人口

 いわゆる国勢調査は日本だけではなく、世界各国でも実施されています。下のグラフ1は2010年の人口を比較したものです。やはり中国とインドが突出しているのがわかります。

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【グラフ1:世界各国の人口(2010年 単位:億人】

 

■人口の推移
 下のグラフは大正9年(1920年)から2010年までの人口推移です。棒グラフは実数で、折れ線グラフは増減率を表します。昭和20年(1945年)の終戦後、第一次ベビーブームとして一気に増加率が高まり、昭和50年(1975年)が第二次ベビーブームです。これ以降、人口増加率は低下しつづけています。

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【グラフ2:人口推移(単位:総数:億人 増加率:%】

■都道府県別人口増減率
 次に都道府県別に見ていきます。赤系の都道府県は2005年と2010年を比べて増加率が高く、黄色は現状維持、青系は減少している都道府県です。首都圏に人口が集中し、東名阪、福岡以外は減少していることがわかります。

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 2000年から5年毎の推移は下の表のとおりです。
2回続けて人口が増加しているのは、東京都・大阪府・千葉県・埼玉県の4都府県しかありません。全47都道府県の半数以上の29道県は2回連続減少しています。繰り返しですが、人口集積はますます都市圏に偏ってきているということです。

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【表2:都道府県別人口増減】

4.エリアマーケティングに利用する集計単位

 エリアマーケティングで活用できる国勢調査の集計単位は大きく2種類あります。1つはメッシュ単位、もう1つは町丁・字単位です。

■メッシュ単位(1km/500m/250m集計)
 日本全土を緯度経度で四角いマス目単位で区切った国の規格です。1次メッシュから5次メッシュまであり、いわゆる小地域単位は3次メッシュ(=1km四方)、4次メッシュ(=500m四方)、5次メッシュ(=250m四方)があります。
※5次メッシュは政令指定都市のみ整備されています。

■町丁・字等別集計
 ○○町○○丁目という単位で集計されたデータです。正式には調査区単位と言います。あくまでも国勢調査のための地域区分ですので、特に地方は自治体が定義する行政界よりも細かい場合が多いです。

 メッシュと町丁・字それぞれの集計単位には長所と短所があります。下図のように地図上にデータ分布を色塗り表現した際、実際に人口密度が高いエリアは南東のエリアです。このような見方をする場合には全国どこでも面積が均一で比較しやすいメッシュ表現が有効です。これに対して、販促等で具体的なエリアの住所が必要な場合には、住所に紐付く町丁・字単位のほうが使いやすいです。用途に応じて使い分けることが重要です。

 

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【図2:メッシュと町丁・字のデータ分布の違い】

5.エリアマーケティングで利用する意義

 弊社が提供する国勢調査データはメッシュや町丁・字単位のいわゆる小地域単位のデータベースです。小地域単位であるがゆえに店舗や施設のエリアマーケティングで活用することができます。例えば、田園調布という町は富裕度が高い、浅草は下町だ、豊洲は新興住宅街だという土地勘・イメージがあるかと思います。国勢調査をはじめとする統計データを用いて、これらのイメージを実証してみます。田園調布駅、浅草駅、豊洲駅それぞれを中心として、半径1km商圏を設定、統計データ項目の構成比を算出しました。(図3)

■田園調布と浅草の富裕度比較
 推計年収階級別世帯数データを用いて、年収階級毎の世帯構成比を算出しました。低年収層の比率は浅草の方が高く、高年収層の比率は田園調布が高いことがわかります。
(グラフ3)

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【図3:田園調布、浅草、豊洲各駅半径1km圏】

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【グラフ3:田園調布(青)、浅草(赤)の富裕度比較】

 

■田園調布と浅草の住宅面積比較
 次に住宅の面積で比較します。69㎡までの住宅比率は浅草の方が高く、70㎡を超えたところから田園調布の方が高いことが分かります。100㎡以上の住宅比率は田園調布が浅草の倍以上あることがわかります。(グラフ4)

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【グラフ4:田園調布(青)、浅草(赤)の住宅面積比較】

 

年収階級と住宅面積で田園調布と浅草を比較しましたが、イメージ通りといったところではないでしょうか?

■浅草と豊洲の居住期間の比較
 今度は浅草と豊洲を比較します。国勢調査は簡易調査と本調査が交互に繰り返されています。最新の2010年度版は本調査にあたり、本調査では「今の家にどのくらいの期間住んでいるか?」という項目もあります。(グラフ5)

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【グラフ5:浅草(赤)と豊洲(緑)の居住年数比較】

 

 豊洲は住み始めてから1年~5年未満という比率が圧倒的に高く、浅草は20年以上の比率が高いことから、それぞれ新興住宅街と下町というイメージとなっているのではないでしょうか?

 このように、地図と小地域単位の統計データを用いれば、地域のイメージをデータに元づいて実証することができます。皆様の仕事に置き換えれば、実務上培った経験や勘を裏づける、言い換えればエビデンスベースドな判断・戦略立案が可能となります。

6.国勢調査データの付加価値

  弊社では最新の2010年度版に併せて、国勢調査データをベースとした新しいデータベースをリリースしました。

 

■基本単位区(国勢調査2010年度版ミクロデータ)
 国勢調査の様々な集計単位の中で、基本単位区は調査員が調査を行う際に用いられる最小単位の区域を指し、原則として一つの街区(概ね○○番地というエリア)で構成されています。国勢調査2010年度版ミクロデータは国勢調査の最小集計地域単位のポイントデータです。

 近年、特に都市部において、店舗商圏の設定範囲がより一層狭くなってきています。例えば駅前型店舗では駅の南口から国道までの間の区画のターゲット分布を把握したいといったリアルな商圏設定が求められています。本データにより、従来把握できなかった狭域でのターゲット分布を知ることができます。

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【図4:国勢調査2010年度版ミクロデータ】

※分布する点が当該データです。赤い点線は町丁・字区画。

 

■推計将来人口データ
 過去から現在の推移を知るだけではなく、商圏特性が将来的にどう推移していくかという観点が、少子高齢化を迎え益々必要になってきます。弊社では、国勢調査の新旧データを用い、出生率や死亡率を加味しながらコーホート法という手法で推計将来人口データを開発しました。

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【図5:2025年に75歳以上人口がピークを迎えるエリア】

 

上の図5は首都圏の高齢者ピークマップです。推計将来人口データを更に解析して作成しました。いわゆる「2025年問題」を可視化したものです。介護保険法において後期高齢者と呼ばれる75歳以上人口がピークを迎えるのが2025年と言われており、地図上の赤いエリアが該当地域となります。

 

7.終わりに

国勢調査データは消費者をセグメントする上で、最も網羅性が高く詳細情報を得られる統計データです。本コラムが皆様の国勢調査のさらなる有効活用の参考になれば幸いです。

『小商圏型分析とジオマイクロマーケティング』

1.はじめに

 少子高齢化が進む日本において、様々な業種業態で、シニアシフト・都市型小商圏シフト・中国進出という言葉をよく耳にするようになりました。エリアマーケティングを行う上でも、3つの指標を的確に表すことが必要とされています。

 前月号の月刊GSI(2012年12月号)自主調査(生活圏域を用いたエリアマーケティング分析)にてシニアマーケットを分析する際必要なことをレポートしましたが、要点は健常者と要介護者とでは必要とするサービス内容が異なることです。このサービスの違いを的確にエリアマーケティングに落とし込んで行くことが求められており、様々なデータ開発などが模索されています。

 同様に、都市型小商圏シフト・中国進出においても、目的にあった分析モデルとデータが必要です。今回は、都市型小商圏シフトに関する分析モデル・データがテーマです。都市型小商圏分析に必要なのは明確で、よりミクロなデータです。このミクロなデータの捉え方には『集計単位』と『クロスする情報の単位』の2種類があります。

2.ミクロデータ

 前述した集計単位から見たミクロデータとは、全国、都道府県、市区町村、町丁・字等、メッシュ単位などのデータ集計単位に基づくデータを言います。これらに加えて国勢調査では、基本単位区という集計単位も存在します。これは街区に近い細かいレベルの集計単位で、全国約200万ヵ所のデータがあります。ただし、公表されているデータは、人口・男女・世帯数のみです。この基本単位区データの活用や推計モデルの適用などは今後の課題と言えます。

 もう一方のクロスする情報の単位から見たミクロデータとは、例えば高齢単身世帯をさらに、持家世帯なのか借家世帯なのか、あるいは健常者なのか、要介護認定者なのか、というように2次要素で細分化したデータです。市区町村より大きな階層にある集計単位では様々なデータが公表されており、マーケティングへの応用が期待されています。例えば、当社で推計している推計年収階級別世帯数や推計要介護(要支援)認定者数などのデータも大きな階層のデータと組み合わせ、小地域データを作成しています。

 また、スマートフォンのGPS情報、カーナビの位置情報、ID-POSの購買情報などのいわゆるライフログや、個別に収集した動的なデータもミクロデータと言えます。

3.統計データの課題

 今回は、ミクロデータの中でも、政府公開の静的データを基にした推計データに関してレポートします。エリアマーケティングで取り扱われるデータで代表的な統計は国勢調査です。人口総数から年齢別人口、住宅関係、職業関連など、300以上の項目が公表されています。エリアマーケティングにおいて、これまでも、これからもこのデータがベースになることに変わりはありません。ただし、データの使い方が重要です。都市型小商圏分析でよく耳にする商圏設定は、半径300m圏や人口1万人エリアなどですが、小商圏になればなるほど難しくなるのがターゲットを見分けることです。2012年6月号GSI Monthly Report自主調査レポート(シニアマーケティングにおける空間的推計モデル)でもレポートした通り、現在公表されている国勢調査(小地域)ではミクロデータが含まれていないという課題があります。

4.都市型小商圏で必要とされるミクロデータ

 なぜ小地域データとしてミクロデータが公表されていないかというと、国勢調査は、個人情報保護の観点から秘匿措置が施されているためです。例えば、年齢別人口、世帯人員数、住宅所有(持家・借家)は単独項目としては公表されているものの、それぞれを掛け合わせた調査結果(クロスデータ)は小地域では公表されていません。ターゲットを的確に抑えるために、都市型小商圏分析ではこのクロスデータが重要になります。居住者の購買活動や求められるサービスは、家族構成(年代・人員)、所得、住宅所有などにより異なるものと考えられます。

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【図1 IPF法を用いた高齢単身世帯(持家・借家世帯)】

5.クロスデータの推計にあたって

 クロスデータの推計にあたっては、マイクロシミュレーション(IPF法)を使用します。このIPF法とは、月刊GSI(2012年6月号)のレポートの通り、周辺分布から多元配置表を推計するモデルの1つで、公表されていない同時分布を 周辺分布の比率にあてはめていき、収束値として得られる数値を同時分布の推計値とする手法です。

6.高齢単身世帯(持家・借家世帯)を推計

 今回は地域ごとの高齢単身者住宅所有区分を、IPF法と比例配分法の推計モデルを使って推計しました。図1はIPF法を使用し、作成した高齢単身世帯(持家×借家)の分布です。また、住宅所有の内、持家世帯と借家世帯を比較したグラフが図2、3です。この結果を見る限りでは、IPF法を活用した推計データの方が、小地域レベルでの散らばりが大きいことは明白です。詳しい検証結果は次月の自主調査にてレポートします。

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【図2 IPF法による持家・借家住まい別
高齢単身世帯数別地域出現度数】

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【図3 比例配分法による持家・借家住まい別
高齢単身世帯数別地域出現度数】

7.今後の課題

 今回は、商圏分析用GIS(地図情報システム)MarketAnalyzerを用いて都市型小商圏分析におけるミクロデータの推計モデルをご紹介しました。ただしこれだけでは真に課題が解決されるものでなく、集計単位のミクロ化、ライフログデータの活用も必要です。ライフログデータは、顧客を表すユニークなデータに、時間軸や購買といった複数の軸が属性として加わるため、ビッグデータとして扱われています。
これら全てを統合的に扱い、エリアマーケティングの進化系としてジオマイクロマーケティングという分野の取り組みが進むことが期待されています。

 

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