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顧客データを統計データで分析する意義と手法

月刊GSI 2015年11月号(Vol.58)

  ビッグデータ分析時代における重要な分析対象データとして、ID-POSや会員データなどの顧客データがあります。エリアマーケティング分野でも、顧客データを地図上に可視化して実商圏を把握したり、統計データとのクロス分析によりシェアを把握するなどの手法があり、約20年ほど前から実践されています。 

 現在では、消費者の購買チャネルも多様化(オムニチャンネル)し、リアル店舗での購買だけではなく、パソコンやスマートフォンでどこからでも気軽にネットショッピングが行えるという時代背景があります。もはや店舗周辺(店舗の商圏)だけを分析し来店誘導の施策を考えるだけでなく、「そもそも顧客とは誰か?」という顧客プロファイリングをしっかりした上で、必ずしも店舗周辺だけに存在しない「顧客はどこにいるのか?」という適切なマーケティングを実行する必要性が高まってきているのです。
 本コラムでは、改めてGIS(地図情報システム)MarketAnalyzer™と統計データを用いた顧客分析手法の基本をご紹介するとともに、今日的な分析意義をお伝えします。

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1.顧客分析手法①(実商圏の把握)

 まずは従来からの分析手法をご紹介します。顧客データをGIS(地図情報システム)で分析する目的として、リアル店舗の実商圏を把握するというものがあります。地図にプロットするわけですから顧客それぞれの位置を特定する情報が最低限必要です。一般的には漢字住所が用いられますが、場合によっては郵便番号でも可能です。郵便番号の場合には地図へのプロット精度が多少粗くなる点に注意が必要です。漢字住所からの場合もGISによっては◯丁目◯番地◯号というピンポイントまで認識しないものもあります。特に都市型小商圏分析がテーマの場合や、行政界が大きい地方の場合には、号レベルの精度が求められます。
 図1は単純に顧客リストの漢字住所から顧客分布を表現したものです。顧客分布は同心円状には広がらず、交通網や地形、場合によっては競合店の分布によっていびつな形となります。顧客リストをいくら眺めていてもイメージはできませんが、地図上にビジュアル表現すれば、実商圏が一目瞭然となります。

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 【図1:単純な顧客分布】

 まず最初に行う分析ステップは、目視で顧客分布を把握することです。次ページの図2は顧客が多い(点の密度が高い)地域を点線で囲ったものです。こちらもひとつの顧客分析の成果物となります。

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【図2:目視による実商圏】

 次の分析ステップでは顧客カバー商圏という考え方を用います。通常ですと店舗から自動車10分圏には顧客が何人いるかという分析ですが、これは「顧客数全体の7割をカバーする商圏は自動車何分圏か」といったように商圏を顧客データから逆算するやり方です。図3の青いラインは、顧客全体の7割をカバーする自動車到達圏です。この商圏を守るべき1次商圏と定義します。また、顧客が来店しやすい商圏と考えることもできます。

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【図3:顧客カバー商圏】

 図2の目視による実商圏と、図3の顧客カバー商圏を見比べてください。目視による商圏では地図の南西エリアからも顧客が来店していることがわかりますが、顧客カバー商圏(顧客が来店しやすい商圏)からは外れています。このエリアに新規顧客開拓のための販促をうつのは非効率と考えられるのではないでしょうか。

2.顧客分析手法②(地域シェアの把握)

 顧客データを地図上に可視化する際、単純な点の分布だけでは実態を見誤ることがあります。
 図4はGISを用いて顧客分布を町丁目単位で集計した地図です。色の濃いエリアは顧客数が多く、色の薄いエリアは顧客数が少ないことを表します。このように表現してはじめて、店舗に近い足元から来店している顧客が多いということがわかります。

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 【図4:顧客分布を町丁目単位で集計】

 顧客分布は顧客という実績を見ているに過ぎません。重要なのは、市場ポテンシャルに対して十分顧客を獲得しているのかどうかという観点です。つまり地域シェアを把握する必要があるのです。先のように顧客分布を町丁目などの小地域単位で集計すると、市場ポテンシャルを示す小地域単位の様々なターゲット指標(統計データ)と、重ね合わせることができるようになります。次ページの図5は顧客数と人口総数を町丁目単位でクロス分析した結果です。凡例の縦軸は顧客が多いか少ないか、横軸はターゲット(人口総数)が多いか少ないかを表します。凡例の右下の緑色のエリアはターゲットが多いにも関わらず、そのエリアから集客ができていない、地域シェアが低いということを示します。

 このようなエリアを販売促進の優先エリアと定義するのが一般的な分析手法です。

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 【図5:顧客数と人口総数のクロス分析】

3.GISと統計データを用いる意義

 ここまで、GISと統計データを用いて顧客データを分析する手法をご紹介してきました。冒頭にも述べたようにビッグデータ分析時代において、まずます重要になってくる視点です。GISと統計データを用いて顧客データを分析する意義について再度確認しましょう。

【意義①:分析のしやすさと個人情報の秘匿】

 通常、顧客データは下の図6のようなレイアウトで管理されています。BtoC企業が保有する顧客数は数万ということはないでしょう。大手企業であれば数百万、場合によっては数千万という膨大な数となります。顧客数が多くなればなるほど、データのレコード数も大きくなり、それを分析するには専用のツールや仕組みが必要で、そうなると現場レベルで気軽に分析できるものではなくなります。

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【図6:顧客データのレイアウトイメージ】

 GISを用いて小地域単位で集計するとどうでしょうか?図7は色々な地域単位で顧客を集計したイメージです。つまり顧客データを統計化したものです。

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【図7:顧客データを統計化したイメージ】

 郵便番号単位であれば全国で約11万レコード、市区町村単位であれば約1,900レコード、都道府県単位であれば47レコードとなり、現場の表計算ソフトで簡単に分析できるようになります。町丁目単位でも全国で約25万前後です。また統計化されたデータは基本的には個人情報ではなくなるため、一層扱いやすくなります。

【意義②:市場シェアの把握】

 先にも触れましたが、顧客データを統計化し、統計データと合わせて分析することがこれからますます重要となってきます。図8をご覧ください。A丁目とB丁目を比較した表です。顧客データだけを見ると、A丁目の100人に対してB丁目は50人しかいないため、B丁目の顧客を増やそうという発想になるかも知れません。しかし、市場データである人口総数という統計データと合わせて見ると、A丁目は見込み客が1000人ー100人で900人、B丁目は同じように計算して150人となります。見込み客が多いA丁目のほうが開拓余地がある地域ということが見えてきます。

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4.顧客のプロファイリング

 消費者の購買行動や購買チャネルが多様化している時代、そもそも顧客はどんな人なのかという分析が必要です。各企業や商品にはターゲットイメージが設定されていると思いますが、実際の顧客はどのような人なのでしょうか。顧客データの中には詳細な属性が含まれるのもありますが、通販企業などは、購買された商品を配送しているため顧客の住所はわかりますが、その属性まで取得しきれていないのが実情です。ここからは顧客住所と統計データから顧客をプロファイリングする手法をご紹介します。
 まず「富裕層」というキーワードを例として基本的な考え方を説明します。富裕層の定義はひとつではありませんが、現金や預金、株式などの金融資産を1億円以上保有している人というのが一般的なようです。スイスの金融大手であるクレディ・スイスの2014年の発表によれば、日本国内には約270万人いるとされています。日本の総人口は1億2,800万人ですから、約2.11%です。国民の100人に2人強が富裕層ということです。別の言い方をすれば、東京ドームの収容人数は46,000人なので、満席の場合、その中には約970人の富裕層がいることになります。
 このような統計学的な考え方を用いて、地理的要素を追加しつつ顧客をプロファイリングします。例として富裕度を推察していきましょう。

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【図9:顧客分布と顧客が存在する町丁目】

 図9はとある顧客データを地図上にプロットしたものです。赤く網掛けしているところは、ある顧客が居住している町丁目というイメージです。
 町丁目単位で年収階級別の世帯数がセットされている推計年収階級別世帯数データを用いて、それぞれの顧客の属性に顧客が居住する町丁目の年収階級別世帯数の構成比を属性として付与します(図10)。

 

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 【図10:顧客属性に年収階級別世帯構成比を付与】

 図10の表の縦軸は一人ひとりの顧客で、横軸は年収階級ごとの世帯構成比を表します。表中の数値の単位は%です。この顧客ごとの構成比を全体で集計したグラフが下の図11です。

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【図11:顧客の年収階級プロファイリング結果】

 ここから、自社顧客は年収500万~700万の層と700万~1000万の層がボリュームゾーンだということがわかります。この他に、年齢構成、職業、住宅の居住形態などを推察することも可能です。

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