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年齢別人口構成に関する各指標と経営情報モデルへの応用について

[2010年6月24日]
06『年齢別人口構成に関する各指標と経営情報モデルへの応用について』

はじめに

さまざまな地理統計情報の基盤となる国勢調査の中で、さらにその核となるのは年齢別人口情報です。居住者をセグメントする際や市場モデルを策定する際には、たいてい用いられます。通常、地区居住者の年齢構成を概観する際に、人口ピラミッドグラフが使用されます。グラフの概形(ピラミッド型、釣鐘型、ひょうたん型)によって地区居住者属性の描写は可能ですが、それらを数値指標化することによる応用的な分析も試みられてきました。

以下では、そうした指標の中から代表的なものを取り上げ、経営管理における応用の可能性について説明します。

1:PQ比について

町丁目等の小地域居住者の年齢構成比率は、流通小売業の出店判断の際の立地調査で注目されてきました。林原氏(2001)は、若年層の年齢構成的な特徴をP比(20歳から24歳までの人口を10歳から14歳までの人口で割ったもの)、成人層の年齢構成的な特徴をQ比(50歳から54歳までの人口を30歳から34歳までの人口で割ったもの)を用いた分析を行っています。

若年層の年齢に注目すれば、学童期の子を抱える家庭多いのか、または親元を離れる前後の青年が多いのかについてその程度を把握できます。また成人層については、子育てを抱えるニューファミリーが多いのか熟年夫婦が多いのかついてその程度を把握できます。PQ比と単独世帯率や高齢者比率とを併せることによって地区のライフサイクルを見極めることも可能です。年少家族型のエリアは子育て前期のニューファミリーが多く居住するエリアです。市場としてみた場合には、居住者の可処分所得はまだそれほど高くはありませんが、今後の拡大が見込める「成長期」の市場を抱えるエリアです。また成人家族型のエリアは子供たちが巣立った後の熟年夫婦が多く居住するエリアです。市場としては「成熟期」を過ぎたエリアです。中高年者の自己実現消費や高齢化対応サービスなど新たなマーケティングの工夫が必要なエリアと言えましょう。

2:人口バランス度(PB)について

都市計画においてサスティナブル(持続性のある)な街づくりの観点から居住者属性(年齢構成比率)の多様性に注目したのが原田氏ら(2002)の人口バランス度(PB)です。「多様な居住者、多様な空間は様々な生活形態を生み出し、家族形態などが変化しても住み慣れた地域で住み続けられ、居住の継続性と地域の安定性が得られる」とし、居住者属性の多様性指標の他に、空間の多様性(建物用途混合度)指標と生活利便性指標とを組み合わせたクラスター分析を行い、多様性バランスを軸とした将来分析を行っています。

以下の人口バランス度指標では、0に近いほどバランスが良く、サスティナブルな街であるとされます。

3:世代バランス係数(GBI)について

大規模ニュータウンの高齢化やエンプティネスト化という問題意識から世代間のバランスを捉えようとしたのが藤井氏ら(2005)の世代間バランス係数(GBI)です。持家住宅が多いニュータウン地区では、世帯の高齢化により子の世代が地区から流出し、街は活気が失われてゆきます。子供の世代の流出率を計測し、流出トレンドの経時分析を行うことで将来的な住環境予測を行うことも可能です。GBIの計算は、人口動態統計と完全生命表を用い、母親生年別の子供の現在人口の理論値を推計します。

(例)1954年から1965年生まれの子供の現在人口理論値

そのうえで、実際の子供の人口との比を取ることによってGBIを求めます。実際数/理論値が、1未満であれば子世代が流出している地区であると考えます。2000年の各歳データの他に、2005年5歳階級データから各歳人口および各年度出生率および生存率を推計し算出することも可能です。(付図)

既に流出が大きい地区や流出が増加しつつある地区を示すだけに留まらず、今後流出増加懸念地区の特定を行うことも可能です。藤井氏ら(2006)は「日本の市区町村別将来推計人口」を利用し2020年時点におけるGBIを推計しています。将来、世代交代が進展しないため、結果として高齢化した親世代を支える子世代が失われ世代間バランスが崩れた地域では、社会資本の遊休化や生活基盤施設の維持の問題等が発生する恐れがあることが指摘されます。

4:不動産への応用

上記のフレームと関連して山崎氏(2007)は不動産実務の観点から有用な示唆を与えています。不動産(分譲マンション)価値の下落率と年齢別人口構成との関係についてです。「急成長している街を選ぶと、自動的に衰退する街を選ぶことになる」人工的に作られたニュータウンのような街では、短期間に同じような所得と年齢構成の世帯が居住を始めます。そうした街は20年程経過すると子供の世代は流出し街には活気が失われ、商業施設も撤退し、不動産価値も急激に下落をし始めるということです。不動産価値は生活利便性や商業収益力の中長期的な将来予測の上で、シビアに推定されます。エリアの商業分析を実施する際においても、不動産分析に倣い中長期的な街の衰退トレンド予測を重視した市場モデルの観点は取り入れてもよいでしょう。

参考文献

林原安徳(2001)「実査で商圏の質を見る」飲食店経営2001.12
原田芳博・有馬隆文・萩島哲・坂井猛(2002)「都市における多様性に着目した生活環境の評価に関する研究」
都市・建築学研究 : 九州大学大学院人間環境学研究院紀要Vol.3(20030100) pp. 79-86
藤井多喜子・大江守之(2005)「世代間バランスからみた東京大都市圏の人口構造分析」日本建築学会計
藤井多喜子・大江守之(2006)「東京大都市圏郊外地域における世代交代に関する研究」日画系論文集 第605号pp. 101-108
山崎隆(2007)「東京のどこに住むのが幸せか」

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